「ここまでやるんだ」と驚いた新入社員時代
農学部での大学時代を経て、食品に興味を持って就職活動をした川本晃大は三井農林の紅茶を主としたビジネスモデルに興味を持ちました。
三井農林入社後は営業担当者として、主にスーパーマーケットやドラッグストアに対して「日東紅茶」の商品などを販売する業務を担うことに。愛知、岐阜、三重の3県を中心に担当し、営業活動をはじめました。
川本 「最初に業務の一環で店舗を訪問したときは改装や新商品の陳列なども手伝い、『ここまでやるんだ』という驚きがありました。それから 3~ 4カ月はどうしたら紅茶が売れるのかについて悩んでいたのを覚えています」
紅茶専門店の商品と比べて小売店などで販売される紅茶は、商品の価格が決して高いわけではなく、市場規模として大きいとはいえません。
インスタントラーメンや飲料水などの生活必需品の中で、嗜好品である紅茶をどのように引き立たせるか?
その課題を解決するために、はちみつのように紅茶と親和性のある食品とのコラボレーション企画を提案するなどの施策を進めました。
川本 「そういった食品と組み合わせる工夫や企画ももちろん大切です。しかし、営業活動を続けて気が付いた根本的な課題は、コミュニケーション不足ということでした」
紅茶の取り扱いに関わる他のメーカー、食品卸、小売店のバイヤーなどの人々とコミュニケーションをとり、情報を共有し、信頼関係を築くこと。それが何よりも紅茶をお客様に届ける営業活動の礎になる。
この気づきが、川本の営業方法に大きな変化を与えていきます。
「営業は会社の顔」という覚悟とともに挑んだ信頼構築
その気づきから意識したことは、シンプルに「人との距離感の取り方」と「傾聴すること」の2点でした。特に、相手が言った発言内容を記憶することには力を入れていきます。
川本 「些細な事柄でもメモを取る習慣がつきました。たとえば、どこ出身の人だとか、コーヒーが好きだとか……そういったプライベートなことも含めてメモを取り、商談の前に確認していました」
仕事とプライベートの話題をうまく使い分け、相手との距離が身近であり、かつ居心地の良いものになるよう意識する。この積み重ねが川本とお客様との人間関係を徐々に深いものへと変えていきました。
しかし、若手としては大きいであろう規模のスーパーを任されたころ、ある出来事が起こります。
社内のミスが原因で、取引先からクレームが出たのです。もとより厳しくしっかりとした管理をする取引先担当者が相手だったこともあり、激しい怒りをぶつけられました。
川本 「当時 26歳だった私にとって、人生一の叱咤でした。自分のミスではないのに……という思いもあり、ショックが大きかったです」
こうした状況に置かれた川本に対して、当時の上司は「それも営業の仕事だ」と伝えます。
営業は会社の窓口であり、社内のミスがあったとすれば、それをもチャンスにして会社の信頼を取り戻すことが営業の役目であると説かれたのです。
その考えに沿って、川本は社内の他部署の担当者や取引先とのやりとりを密におこない、ミスが起きない環境の構築に励みました。改善の結果、その後同様のミスは起きませんでした。
川本 「めちゃめちゃに叱ってくださった担当の方が、今ではいつのまにか一番話せる相手になっています。
失敗しても反省して改善し、こまめに連絡をとって……そんなことの積み重ねが、何年後かに花開くということを、今は身に染みて感じています」
相手と信頼関係を築き、売上につなげる。営業をはじめた当初、大切だと思っていた目標は、いつしか会社の顔として責任を負い、相手と真摯な姿勢で向き合っていくことに昇華していました。
やがて川本は業績を伸ばし、静岡県全域を任されるようになり、さらに営業担当者としての責任が大きくなっていきます。
人間としての成長は「七転び八起き」の精神がくれている
2017年、担当エリアが静岡に変わったことで、川本のキャリアは新しい章に入ります。
川本 「担当エリアが変わったことで出張の頻度が増えました。それに伴い、スーパーに赴く頻度や商談のスケジューリングを今まで以上に効率化するようになりました。金額的にも任される規模が大きくなっているので、責任感は増しています」
変わったのは時間の使い方や一任される金額だけではありません。定年退職を機に現場を後にした所長の担当先を引き継いだ川本は、若くして静岡県全域を担当することになりました。
そんな川本がメーカーの会合に顔を出すと、支店長クラスの面々の中で自分が最年少になることも。
川本 「大先輩に囲まれて、ポジションが変わったのだなという自覚が強まりました。あいさつの仕方や立ち居振る舞い、会合での情報収集の仕方など、学ぶところがたくさんありますね」
時間の使い方や関わる人間の層が変わることで成長の幅が広がっていきますが、長年にわたる営業経験で培った相手との距離の取り方や傾聴の姿勢は変わらないものです。
川本 「商談に入る前に家族やスポーツの話はよくしますね。お酒が好きな方なら、飲み会に参加して楽しく酒を酌み交わす時間も大切です。
年齢が離れているからといって何か特別なことをしているわけではないのですが、ありがたいことに、かわいがってもらっています」
大切だと思った習慣を地道に続け、環境の変化に応じて改善すべき点を改善しながら仕事に臨む。そのスタイルは、働き方だけでなく人生の信条として持つ言葉が息づくものでした。
川本 「私は『七転び八起き』という言葉をモットーにして生きています。うまくいくことばかりではないけれど、継続することが大切だと思っているんです」
「七転び八起き」という人生における一貫したモットーはありつつも、その言葉の捉え方は三井農林での経験を経たことで変化していきました。
川本 「大学時代はただがむしゃらにやることが『七転び八起き』だと思っていました。しかし、三井農林で仕事をはじめてから、目標をもって最適な道で向かうためにはどう努力するかが大切だと感じるようになったんです。
何回も同じことを繰り返すのではなく、あの手この手と方法を変えながら、着実にゴールに向かう。これが本当の『七転び八起き』だと思います」
コミュニケーションを大切にすることでお客様との関係性を深くしながら進んできた川本。その道には多くの“痛い転倒”があったかもしれません。それでも諦めず、その都度考え、改善して起き上がったことの答えが、川本の今をつくり出しています。
努力の結果が必ず実を結ぶ「営業」という仕事に誇りをもって
川本 「私は営業という仕事がとても好きです。お客様とのコミュニケーションをはじめ、自分のやる・やらないが仕事の成果に直結しているところがとてもわかりやすいですから。やった分だけ成功体験が得られて、次のステージに行けるんです」
その言葉は、川本が粘り強く続けてきたことと踏みしめてきたステップがつながっているからこそ出てくるものでしょう。
川本の実直に取り組む姿勢と、三井農林がVALUESのひとつとして掲げる「Passion(粘り強く前向きに)」にはある種の関連性があるのかもしれません。
川本 「社内の仲間はとてもまじめです。とにかくコツコツ前向きに進めていく人が多い。私は大学時代、すぐにあきらめて何も大成できなかった過去があります。でも、今はあきらめずに粘り強くやっていたら成功するんだと、実感できていますね。いい環境だと感じています」
失敗をもとに得る成功が、自分自身を成長させてくれる。人生の「七転び八起き」はこれからも続きます。
今後も三井農林はお客様との関係性を実直に構築しながら、粘り強く課題解決に取り組んでいきます。その中で三井農林の顔のひとりとして、川本も着実にゴールを目指していくことでしょう。