幼少期からめざした「カーデザイナー」への道
2005年に入社して以来、主にエクステリアデザインに携わってきた小池。2022年からは心機一転、インテリアデザインの部署に異動し、リーダーとしてチームを牽引しています。
小池 「私が現在所属するデザイン・戦略部インテリアデザイングループは、車のインテリアデザイン全般を手がけています。
三菱自動車にはさまざまな車種があります。そのうちの一つのプロジェクトを、私がプロジェクトリーダーという立場で、インテリアデザインの方向性やマーケットのニーズなどを整理して、メンバーと一緒に良いデザインを創出できるよう取りまとめています」
子どものころから車が大好きで、乗るのはもちろん、車の絵を描くことに夢中だったという小池。
小池 「当時、深夜に車のテレビ番組が放送されていて、親に録画してもらってはいろいろな車を見て憧れていました。
物心がついたころからカーデザイナーという仕事に就きたいと、将来の目標として具体的に追いかけるようになりましたね。よく読んでいた車の専門誌に、専門学校のカーデザイン科の広告を見つけて『これだ!』と思って願書を出しました」
専門学校に入学し、カーデザインのスキルを磨いた小池。就職活動を始めたとき、三菱自動車を志望した背景には大きな理由がありました。
小池 「私が就職活動をしていたのは、オリビエ・ブーレイ氏が三菱自動車のデザイン本部長に就任したタイミングでした。それをきっかけに、一気に流麗なデザインの車へと変わっていき『デザインコンセプトが変わることでこんなにも表現が変わるし、それを実行できる会社なんだな』と感銘を受けたんです。デザインの仕事が与えるインパクトの大きさに魅力を感じて、三菱自動車への志望を決めました」
東京、岡崎という2つのデザイン拠点で多くを学び、デザイナーとして成長を遂げる
入社後1年ほどの教育期間を経て、エクステリアデザイン部門に配属となり、東京や岡崎の拠点をローテーションで異動しながら、デザイナーとしてのキャリアを積んでいきました。
小池 「三菱自動車のデザイン部門では、グローバルでダイバーシティのあるデザイン開発を進めるために、日本国内では岡崎と東京、海外ではドイツにデザイン拠点を持っています。
各拠点が担う役割も特徴も違うので、デザイナーは複数の拠点を経験することでたくさんの学びがあると思います。東京のデザインスタジオでは先行デザイン以外にも、広告宣伝・販売活動のためのカタログなどの確認も行えたので、自分のデザインした車がどのような工程を経て販売につながるかにも携わることができました。
また、東京では車関連以外にもさまざまなイベントに参加をして、刺激的な良いインプットができました。一方で、岡崎のデザインスタジオは開発部門に近いため、車を作り上げる上ではコミュニケーションが格段に取りやすいと思います。各部門に足を運んで毎日会話をしながら、デザインの質を高めていくことができます」
開発部門とのコミュニケーションを大切にしている小池にとって、岡崎は絶好の環境だったと言います。
小池 「デザイナーとしてやりたいことが、技術的には難しい……というケースが車づくりではよくあります。そんなとき、開発現場の方と直接意見をすり合わせ、課題を乗り越え実現していく──そんな自分の足で稼ぐ地道な仕事が大切で、今でも自分のベースとなっている部分です。
たとえば、車のボディをつくるには、工場の大型の機械で鉄をプレスし、板金を成形していきます。そのときに、デザインが複雑だとプレスするノウハウもそ必要になり、再現が難しくなります。技術的に難易度の高いデザインを実現するために、開発部門と何度もシミュレーションを重ねました。毎日のように話し合ってトライして……を繰り返した結果、理想とする形に仕上がったときはとても嬉しかったですね」
お客様にとっての「憧れの車」に選んでもらい、大切に乗ってもらえる喜び
これまでさまざまな車種のデザインに携わってきた小池。「もっとも印象に残っているのは?」と尋ねると、迷わず「トライトンですね!」という答えが返ってきました。
小池 「トライトンはタイ、オーストラリア、中南米などがメインマーケットの車種です。そのため、マーケットのうちの1つ、アセアンに市場調査に行き、好まれるデザインを勉強するところから始めました。
自動車購入への考え方は地域によって様々です。一世一代とまではいきませんが、アセアンで車を持つというのは人生の一大イベントであり、まだ車がもの珍しい高級品という地域もあります。そういう地域では、とにかく先進的でかっこいい、スポーティーなデザインが好まれる傾向にあります。トライトンは、そんなお客様の感性にダイレクトに響くようデザインを提案しました」
トライトンのプロジェクトをきっかけに、小池はデザイナーとして独り立ち。自分が大きく成長できたという意味でも、とても印象深いプロジェクトだったと話します。
小池 「先輩からフォローしてもらいながらも、自分の手でいちからデザインをやり抜きました。
三菱自動車のデザインコンセプトである『Dynamic Shield (ダイナミックシールド)』そのモチーフを、どのように車に落とし込み昇華するのか、とても苦労し何度もトライしたことが思い出深いです。
苦労してデザインした車が世に出たときには、感慨深いものがありましたね。無事販売されたあとにタイに出張し、トライトンを購入したお客様の家に訪問させていただく機会がありました。その際に、お客様はすごく車を気に入ってくれて、大切に乗っていると話してくれました。
そのお客様は車を買うために一生懸命働いてお金を貯めて、生まれて初めて所有する車として『トライトン』を選んでくれた──そんな大切な一台に、自分のデザインした車が選ばれたことが最高にうれしかったのを今でも思い出します。この仕事をしていて良かったと心から思いましたね」
Mitsubishi Motors(日本)トライトンのデザイン情報ページ
コミュニケーションを大切にしながら、「成長し続けるチーム」を作っていく
三菱自動車という会社の魅力は「自由度の高さ」にあると、小池は考えています。
小池 「もちろんルールはありますが、自分の希望次第で仕事の幅をいくらでも広げられる環境だと思います。『この車のデザインをやってみたい』と手を挙げれば、チャレンジできるチャンスをたくさん与えてくれる会社です。
以前、エクステリアを担当していたときは、リーダーとして30人ほどのメンバーと一緒に仕事をする機会をもらいました。仕事のボリュームも多く複雑なプロジェクトでしたが、自分のキャパシティを広げる良い経験となりました。そういったプロジェクトを経て経験値が上がり、今のポジションに就けたのだと感じます」
自らも果敢にチャレンジし、成長を遂げてきた小池。これまで積んできた経験を現在のチーム運営に活かし、切磋琢磨できる組織をめざしています。そんな小池がリーダーとして心がけているのは、メンバーの個性や特性に合わせたコミュニケーションだと話します。
小池 「車のデザインって、決して1人ではできないものです。とても多くの部門、グループ、人が集まり協力し、商品化できるものです。デザインについてメンバーにフィードバックする機会が多いのですが、同じ言葉を伝えても受け取り方は千差万別。年齢も国籍もさまざまなメンバーと仕事をしています。それぞれにとっていかにわかりやすい言葉で伝えるか、どんな表現を選ぶと伝わるのか──そこを大事にしながらコミュニケーションをとるようにしています。
また、競争意識があると、デザイナーは常にレベルアップしていけるとも考えています。だからこそ切磋琢磨できる環境も大切にし、メンバーそれぞれの長所を拡張していきたい。自身も常に成長し、最高のアウトプットを引き出せるようなリーダーになりたいですね。
全社を上げて良いものづくりができるように、関わる人たちとのコミュニケーションを大切にしこれからも良いデザインを作っていきたいと思います」
2023年4月から小池はデザインマネージャーとして、自身、チームを牽引し、三菱デザインの新たなデザインを切り拓いていきます。
※2023年2月取材当時の内容です。