「感性品質」と「カラー」を突き詰め、魅力的な車作りに貢献

2022年2月現在、デザイン戦略部内にあるPQ(Perceived Quality=感性品質)グループとカラーグループを束ねる岡本。PQとは、車の見た目の品質だけでなく、触ったときの触感や素材の質感、耳に入る操作音、使ってわかる使いやすさなど、お客様が五感で感じるすべての品質を意味します。

岡本 「PQグループは、人が五感で感じる全ての部分に携わっています。

街なかを走っている車を見て、『なんかかっこいいな、魅力的だな』って感じることってありますよね。それは、エクステリアデザインが優れているだけでなく、PQの観点からもプロポーションや細部の質感などしっかりと作りこんでいることも理由の一つです。

またお客様が日々使っているうちにじわじわと気に入ってくる良さ、人に例えると性格のような部分です。このような部分もこだわりを持って開発しています。PQは車両開発の重要な要素の一つとなってきています」

もうひとつのカラーグループは、その名の通り内外装における色や素材を担うチーム。車種に合わせてボディ色や内装生地、加飾素材を決め、必要に応じて新たなカラーや素材を開発します。

岡本 「色は車を見た時の第一印象に大きく影響しますし、内装は毎日見て、触れる部分ですので、資材や質感はお客様にとってとても重要な要素です。

プレイヤー時代、私はおもにエクステリアデザインに関わってきたので、実はこの両チームでの実務経験はないんです。そんななかでマネジメントを担当することに、最初は難しさを感じていました。

抱えているプロジェクトもメンバーも多いので、自分がやりたいことを自分でどんどんやっていく、というより、チームメンバーがやりたいことを実現させ、その上で各プロジェクトを進めていく必要があります。 

そこで、考え方を少し切り替えたんです。これまで僕は『エクステリアデザイナー』でしたが、これからは『チームデザイナー』になるんだと。同じ「車をデザインする」のですが、役割が変わったのだと。 

つまり、車のコンセプトに対してチームメンバーが考えたものを実現させる。予算を確保し、メンバーを組み、自部門、他部門と協力しながらプロジェクトを成功させる。

『商品自体』をデザインする立場から、『チーム』をデザインする立場になったのだと意識し、みんながやりたいことをどう具現化させるか を考えるようになりました」

そんな岡本のモットーは、「なんでも楽しんでやる」ということ。「ギスギスしていたら、自分たちも楽しくないし、ましてや人を喜ばせるデザインなんてできないじゃないですか」と話します。

岡本 「誰かと意見の違いで衝突したとき、『この人とは話にならない』とシャッターを下ろしてしまっては、そこから何も進みませんよね。たとえ向こうがシャッターを下ろしていたとしても、自分は上げようと心がけていれば、いつかはその思いが通じる。そう思っています。

三菱自動車では、ひとつの商品を作り上げるまでに何百人、何千人という人が携わっています。決して一人のエゴで完成できるものではありません。どうすれば周りの人とうまく、楽しく、その上でやりたいことをやっていけるかを大事にしています」

いつも「今が一番楽しい」。プレイヤー・マネージャーそれぞれのやりがい

▲室外レビュー中の岡本

子どものころから絵を描くことが好きだった岡本は、美大に進学し、グラフィックデザインを専攻します。就職活動を始めた当初、広告代理店を志望していたという彼は、なぜ三菱自動車への入社を決めたのでしょうか。

岡本 「広告代理店に入って広告のデザインに携わった場合、実際に売れるのは広告ではなく商品ですよね。であれば、まずはその商品自体のデザインを経験した方が、より良い広告を作れるようになるのでは、と思ったんです。そのうえで、場合によっては広告代理店に進む道をまた考えてもいいかなと。

では、どんな商品を作りたいかと自問したところ、絵を描くことと同じくらい乗り物が好きだったことから、自動車のデザインに携わりたいと思いました。カーデザインであれば、外観も内装も、大きな部分も細かい部分も、硬い箇所も柔らかい箇所も、あらゆるモノのデザインができますしね。

数ある自動車メーカーの中で、とくに三菱自動車に魅力を感じたのは、小さいころからキャンプやアウトドアが好きだったことが大きいですね。自分のやりたいことや好きなことに近い車を作れると思ったんです」

入社から約30年間、デザインに関わる部署を経験した岡本。マーク(ロゴなど)のデザインからはじまり、エクステリアのデザイン、モーターショー用の先行デザイン、量産用のプロダクションデザイン、プロジェクトの取り纏めを経験し、現在のマネジメントのポジションに至ります。

岡本 「たとえば、コンペに勝って自分のデザインが通ったときの喜びとか、うまくいかない歯がゆさとか、その瞬間ごとの喜怒哀楽はありますが、総じてどのグループでも『今の仕事が一番楽しい』と感じながら取り組んできたように思います。

もともとはデザイナーとしてモノを作り、世に送り出すことが楽しいと思っていましたが、いざマネジメントをしてみると、チームを作るというミッションにもこれまでとは違った楽しさがあります。

僕のチームにはいろんな仕事を経験してきたメンバーがいて、プライベートの趣味もさまざま。彼らから、自分では思いも寄らないような考えが出てくることもあって、日々刺激を受けています。そんなメンバーと一緒に、ひとつのプロジェクトを乗り越えていくのはとても楽しいし、やりがいを感じますね」

多くを学んだロサンゼルス駐在時代。衝突を恐れず、自分の役割を果たす

▲海外駐在時

三菱自動車に入社してからの30年を振り返り、アメリカ駐在やイタリアで仕事をした時のことが印象深いと語る岡本。なかでも、2005年から3年間駐在していたロサンゼルスでの経験は、大きなターニングポイントになりました。

岡本「当時はエクステリアデザインを担当していて、現地のデザインコンペに参加したりもしました。

エクステリアデザインやカラーの好みって、トレンドももちろんありますが、国によってもまったく違うんですよ。カラーで言えば、人気のある色もありますが、嫌われる色の方が国によってハッキリしてる。そうすると、その国の文化や風習を知っているかいないかで、アウトプットにも大きな差が出てしまうんです。

現地で生活し、地元の人や文化に直に触れることで、マーケットによりフィットした商品が生み出せるようになります。また、今でいうダイバーシティ、海外だといろんな国や違う環境で育った人がいるので、そのなかで自分の役割をどう果たすかという部分も勉強になりました。

日本人だけならスムーズに進む話も、外国人相手だとうまく進められないという苦労もありましたが、それを経験したことで、よりグローバルな視点が身についたのだと感じます」

自分とは違う考え・バックボーンを持つ人が集まったなかで、自分の役割を果たし、プロジェクトを推進させる──岡本が海外経験で身につけたこのスキルは、現在のPQグループでも大いに活かされています。

岡本 「PQグループもカラーグループもデザイン部門に属してはいますが、デザイン部門と設計部門、生産部門のちょうど中間のような立ち位置。モノを作るためには、生産チームにも設計チームにも、ほかのデザインチームにも意見を言う必要があり、チーム間で衝突が起きることも多々あります。

どのチームも良い車を作りたいという想いは同じなので、相手の意見を理解したうえで折衝し、より良い車を作るようにうまく進めていかなければなりません。そのために、チームのメンバーをサポートし、調整していくのが今の僕の役割ですね」

プレイヤーとして、マネージャーとして、長年カーデザインに携わってきた岡本。この仕事の魅力について、こう語ります。

岡本 「カーデザインにおいては、デザイナーが描いた絵がそのままデータになってモデルになるわけではないんですよ。我々が描いた絵は、データにする工程でデジタルモデラーと一緒にブラッシュアップしていきます。そこからクレイモデルを作る工程ではクレイモデラーのアイデアが加わり、さらに良いものになっていく。

いろんな人と一緒に段階を踏んでいくほど、自分が想像していた以上にレベルの高いデザインになる。それぞれのスキルの足し算ではなく、まさに掛け算のようなおもしろさがありますね」

「掛け算」のアウトプットが生まれるチームで目指す、ASEANトップブランド

▲チーム会議の風景

カーデザインは、デザイナー1人の力だけでなく、さまざまな人との「掛け算」で作り上げるもの──プレイヤー時代にそう実感した岡本は、チーム作りでも「掛け算」効果を生み出すことを目指しています。

岡本 「とにかくみんなが楽しく仕事をし、質の高いアウトプットができるチームにしたいと思っています。もちろんただの仲良しグループではなく、メンバーがお互いに切磋琢磨し、掛け算的なアウトプットができるチームでありたい。

僕自身は、チームをオーガナイズするデザイナーとして、みんなが100%以上のパフォーマンスを発揮できるよう、サポートしていきたいですね」

さらに岡本は、長く勤めてきた三菱自動車という会社の魅力について、こう語ります。

岡本 「三菱自動車には、やりたいことや疑問に思ったことに対して声を上げやすく、さまざまなことに挑戦できる環境があります。僕自身も、若手時代からいろいろなコンペに参画させてもらいましたし、海外勤務も経験させてもらいました。

だからこそ、なにに対しても楽しもうと思える人、失敗を恐れずに挑戦できる人は、すごく向いているんじゃないかな。そんな方と一緒に働きたいですし、仕事以外でも、何か楽しいことをして遊びたいですね。

今後僕たちは、ASEANにおけるトップブランドを目指したいと思っています。日本車のデザインとクォリティ、三菱自動車のデザインとクォリティをASEANのなかに根付かせ、認めてもらいたい。そのためにも、お客様の心を掴むような、魅力的な車を作り続けたいと思います」