UX/UIの観点で、最高の体験をデザインする──楽しみながら挑む毎日

▲東京本社ショールームでの一枚

車のデザインを手がけるデザイン集団──上田は、自身が所属する三菱自動車工業デザイン本部について、そう語ります。

上田 「デザイン本部は、東京と岡崎そしてフランクフルトの3カ所の拠点を持っており、私は東京で仕事をしています。ポジションは、UX/UI担当。車に搭載しているメーターや液晶ディスプレイ、ユーザーエクスペリエンスのデザインなどを手掛けています」

UX/UI担当は、ユーザーの体験を左右する重要なポジションです。仕事はまず、上役から新しい車に関する基本情報を受け取るところからスタート。

液晶のスペック情報やデザインの目的など詳細情報が伝えられ、それをもとに何人かの部員がそれぞれアイデアをスケッチします。そのデザインアイデアをコンペティションで競い、デザインの担当者が決まっていくのです。

上田 「自動車は、長い開発期間を経て完成するものです。そのため、私たちがデザインを手掛けてから実際に車が世に出るまでには、4年くらいかかります。発売されたときに『そういえば……』と思うくらい昔の話になっていることが多いですね(笑)。

個人的には、こうした世の中に出る自動車だけでなく、モーターショーなどへの展示目的で作られる『コンセプトカー』にも携われることが、UX/UIデザインという仕事の醍醐味だと思っています。

普段作っているプロダクトデザインとは違って、ドリーミーなものを作ることができるのはおもしろいですよ。コンセプトカーに携われる部署は限られていますが、私の部署では、プロダクトもコンセプトカーも両方に関われるので、やりがいを感じますね」

ユーザーに最高の体験を提供できるよう、試行錯誤を重ねる日々。上田は、デザインをすることそのものを楽しみながら、日々の業務に挑んでいます。

専門知識の習得に苦労。待っていたのは、UX/UI担当ならではのやりがい

▲入社初期、同期とのラフティング

上田は学生時代、美術大学で工業デザインを学んでいました。カーデザインの仕事に興味を持つようになったのは、「車の絵を描くことが楽しかったから」と言います。

上田 「車自体が好きというより、自分の手で車を描くことが好きなんです。そこで、就活では自動車メーカーをいくつか受けました。

受ける企業を選ぶ際に重視したことは、想いが伝わってくるデザインをしている会社かどうか。私が好きなのは、デザインを見て『こういうことがやりたいんだ』というコンセプトが感じられるようなデザインなのです。その観点で志望してご縁があったのが、三菱自動車でした」

上田は、車の外装の部分であるエクステリアデザインを担当したいと希望。入社後の2年間はエクステリアデザイナーとして活躍しました。

その後、幅広い経験を積むために、内装を担当するインテリアデザインへと異動。ドアトリムというドアの内側のデザインなどを手掛け、2018年からは、現在の部署でUX/UI担当を務めています。

上田 「UX/UI担当になったときは、初めてのことだらけでとても苦労しました。というのも、専門的なやりとりが多く、会議でもアルファベット3文字の聞き慣れない略語が飛び交っていたのです。UX/UIというのは、デザイナーでありながらも、車の性能に直結してくる領域。デザインする液晶やメーターなどの電子機器には、車の持ついろいろな機能が表示されるんですよね。

知識がまったくなかった私は、最初は会議でも発言ができなくて、参加している意味が見出せないくらいでした。とにかく必死にメモを取ったり、開発部署の人に質問したりして、勉強していきました。知識を身につけてやっと舞台に上がれるレベルになったという印象ですね」

新しい領域に足を踏み入れたことで、苦労を経験した上田。しかし大変な想いをした分、キャリアの幅が広がったとも感じています。

上田 「UX/UI担当になり、普通のカーデザイナーには経験できないような仕事に取り組めているという実感があります。ワークショップ形式でアイデアを出しあう場があったり、商品企画やブランドに関連する部署と連携する場があったり。エクステリアやインテリアのデザイナーのままだったら経験できなかったようなことをやらせてもらえているので、UX/UI担当っておもしろいなと思っています」

次第に身についた、管理者目線。困難を乗り越える嬉しさを知った

▲スケッチワークのようす

UX/UI担当としてこれまで手がけた仕事の中で、上田が特に印象に残っているのは、新型アウトランダーです。

上田 「UX/UI担当になってすぐのタイミングで、新型アウトランダーの液晶メーターのデザインを担当しました。作成するべき画面数が実に400画面ほどあるという大きな仕事でした。とても自分だけでは作れない量ですので、内部・外部のデザイナーに協力してもらいながら進めていったんです。多くの方と協働することで、大きなプロジェクトを統括するスキルや、課題を論理的に解決するスキルが身についたように思っています。

UX/UI担当になるまでは『下積み』という意識を持って働いてきました。先輩がたくさんいる環境だったため、アドバイスを請いながら業務に取り組んでいたんです。しかし、UX/UIに来たら部署の環境がガラリと変わりました。異動当初から徐々にメンバー数が増えていったこともあり、経験年数的には私が古株のような立ち位置になったんですよ。だからこそ管理者的な目線が一気に強くなりましたね」

新型アウトランダーの業務を通して上田の目線は高くなります。出てきた問題にどう対処するか、新しいフェーズの考えを持つようになったといいます。

上田 「たとえば、やりたいと思ったデザインが、テクニカル上実現できないと言われてしまうこともあるんです。そんなときに、じゃあそれをどうやって乗り越えようかということを、率先して考える。技術的にできないと言われたとしても、諦めずに方法を模索します。

どんな工夫をしたらいいのか、技術的な話をするためには誰と交渉すればいいのか。考え抜いて進めていくことで、最終的にやりたいことを実現できたケースもあります。そんなときは、やっぱり嬉しいものですね」

管理者の目線に立ちはじめたことで、物事を実現させるために工夫を重ねるという経験を積んできた上田。しぶとく困難にぶつかっていく姿勢や、困難を乗り越えられたときの喜びを、徐々に知っていったのです。

楽しみながらも、ユーザーが使いやすいデザインを手掛けていきたい

▲ワークショップディスカッション

管理者として成長を続ける上田。今、UX/UIの将来像について、ある課題意識を持っています。

上田 「私たちの部署は『UX/UI』と言いながらも、現状ではUIの要素を強く持っています。UXについて考えるためにワークショップを通した研究などもしているので、今後は一部署での取り組みではなく、会社としてもっと力を入れていきたいと思っています」

部署の課題を管理者的目線で意識している一方で、彼には、現場のプレイヤーとしてこれからも最高のデザインを実現したいという想いがあります。

上田 「プレイヤーとしてもデザインに取り組みたいという気持ちがあるので、できれば両方こなせる立場でやっていくことができたらいいなと思っています。とにかく絵を描くことが好きですし、自分が手がけたデザインについて、周囲の方々からお褒めの言葉をもらえる瞬間は嬉しいので。

実は先に挙げた新型アウトランダーの仕事では、エンジンをかけたときの起動画面に出るオープニングムービーを作ったのですが、その評判がよかったのも嬉しかったんです。サプライヤーや取引先のデザイン会社の方からも『かっこいいですね』と言ってもらえたりして。一緒に設計をした人たちとも信頼関係が深まり、やりがいも感じたので、これからも現場で手を動かし続けたいです」

管理者として成長を重ねながらも、プレイヤーとして働く楽しさを常に持ち続ける上田。そんな彼が目指すデザインとは──。

上田 「よく『三菱らしさを大事に』と言われるのですが、私としては『三菱らしさ』だけでなく、お客さんにとってよりメリットのあるものを作っていきたくて。私たちが良いと思ったものを生み出したとしても、ユーザーから使われることが少なければ意味がありません。ユーザーの皆さんが普通に受け入れてたくさん使ってくれるような、有意義なものを作りたいです」

自身が楽しみながらも、実際の使いやすさに寄り添ったデザインをしたい──そんなこだわりを胸に、ユーザー目線に立ちながらデザインを提案し続ける上田。

その想いは、三菱自動車の車作りをこれからも支えていきます。