“このままだと生き残れない”――リクルーティングビジネスの未来シナリオ

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▲通っていたビジネススクールでは「リクルーティングビジネスの未来シナリオ」という論文を書き上げた

理想のエージェントを模索するために、独立1年目はエージェントビジネスを封印した佐藤がチャレンジしたのは、リクルーティングビジネスの“未来シナリオ”を描くことでした。

リクルートがトップに立ち、歴史をつくってきた「リクルーティングビジネス」。昨今はSNSを使った「ソーシャルリクルーティング」、企業が自ら優れた人材にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」という新しいビジネスモデルで、WantedlyやIndeedなどが台頭してきました。そもそも企業側のニーズは「いい人材を、負荷なく、安く採用したい」ということに尽きます。

ですから、いい人材の採用を前提とすると、当然「採用単価低い × 負荷小さい」というサービスが求められることになります。そうなると、近い将来、企業側のファーストチョイスは、インターネット上すべての求人情報を集約し提供する、アグリゲーション型検索エンジンのIndeedになるでしょう。

近い将来、求人広告はかなり淘汰され、エージェントビジネスも提供価値の低いものは、かなりの部分でIndeedに代替されるだろう。既存のリクルーティングビジネスの業界地図はガラッと書き換わるーーそう佐藤は結論付けたのです。

そんなリクルーティングビジネスの“未来シナリオ”を自分で描きつつも、ミライフではどんなエージェントビジネスをやるのか。この業界の変化に対応して、生き残ることはもちろん、ベンチャーであっても存在感のある、圧倒的に価値あるビジネスモデルをつくりたい。

そう感じた佐藤は、理想のエージェントビジネスを模索し続けます。

理想のエージェントとは何かーー佐藤自身のジレンマから見つけた答え

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▲リクルートエグゼクティブエージェント時代の写真。この時の経験が理想のエージェントづくりにつながった

佐藤が理想のエージェントづくりに向き合う背景には、古巣であるリクルートで感じたジレンマがありました。

人材紹介業界のトッププレイヤーであるリクルートの特徴は、“生産性の高いビジネス”を徹底していること。RA(リクルーティングアドバイザー=企業担当)とCA(キャリアアドバイザー=求職者担当)に分業し、「過去のFACTから業務プロセスにKPIを置いて、徹底的にプロセスの管理していく」というアプローチによって、業績を堅調に伸ばしてきました。

佐藤もマネージャー、支社長としてプロセス管理をしてきたわけですが、リーマンショックを経験して以降、「シンプルに求職者や企業にまっすぐ向き合い、リクルートだからできる質の高いサービスがしたい」と志向が変化していきます。ただ、会社が大きくなり、上場もして、より短期での結果が求められるように。徐々に自分の理想のエージェントは、ここではできないのではないかと思うようになりました。

リクルートは“全体最適”で、生産性の高いビジネスを追求している。一方で自分たちは、生産性ではなく、圧倒的クオリティを起点にした“職人エージェント”をつくろう――これが、前職での経験をもとに、佐藤の出した結論でした。

企業の新規開拓営業は、求職者起点に立つと、応募したい企業ラインナップをそろえる“仕入れ”のようなもの。つまり、センスのいいセレクトショップをつくるというのが最初のコンセプトでした。色々な会社があり、膨大な情報がある中で、プロである佐藤が自分の目利きで、お勧めしたい会社だけをそろえる。そこに価値があると考えました。

また、求職者個人との面談も、社長の佐藤自ら担当します。企業起点で求人紹介をメインに行なうエージェントが多い中、100%求職者起点に立って、未来志向で「将来どうなりたいか、なりたくないか」という理想未来を引き出しながら、今の延長線上にはない非連続のチャレンジを支援するというスタイルの面談です。面談の内容は、キャリアの話はもちろん、家族、お金、趣味などライフスタイルも絡めていきます。

佐藤 「リクルートで事業も人事も責任者もやらせてもらって、育休取って、MBAを持っていて、起業している。こんな経験をしている人は私だけかもしれませんね(笑)。この自分のキャリア自体が強みであり、提供価値。だからこそ、あえて型にはまらず、自分だからこそできる未来志向型のキャリアデザインを職人としてやっていきたい。求人が飽和している今の時代、求人紹介自体に価値はなくて、求職者のキャリアデザインにフィットした求人をセレクトしていくことが求められていると思うんです」

佐藤が1年考えていきついた理想のエージェントは、「非連続なチャレンジをする人を応援して、自らが選んだお勧めの会社だけを紹介する。そして佐藤自らも好きなことをやって、刺激的な毎日が過ごせる」という三方良しのビジネスモデルです。

誰もやらないところ、やれないところに理想はある

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▲コンセプトは「佐藤がお勧めする“性格のいい会社”のみを紹介するセレクトショップ」

通常、エージェントビジネスをはじめる場合、人脈をたどって、企業を開拓するところからスタートし、そこで依頼を受けた求人に対して、候補者を探していきます。つまり、“企業を起点にしたやり方”が一般的です。

ただ、ミライフの場合は「非連続なチャレンジをしようとしている優秀な方」が想定ターゲット。求職者の視点から、彼らが入りたいと思う会社を見つけることが何より重要でした。そのため、リクルート時代の人脈やクライアントなどは一切頼らず、求職者から見た理想の企業ラインナップをイチから考えて、お勧めできる企業をリスト化していきました。リクルートグループなど人脈が活かせる企業もありましたが、多くは完全なる新規開拓です。

佐藤 「リクルート時代の仲間にも、エージェントビジネスで独立している人はたくさんいたので、話を聞きに行きました。その多くが企業起点でビジネスをすればうまくいくというもの。深いリレーションの企業を数社に絞って、選択と集中をしたほうがいいというアドバイスだったので、その逆を行って求職者起点でビジネスをやろうって決めました(笑)」

イチから新規開拓するわけですので、とにかく時間がかかります。また、誰でも入りたいような人気企業は求める人物像のハードルも高くなかなか決まりません。でも、理想のエージェントをつくるためには、理想の企業ラインナップが不可欠。とにかく時間がかかっても、売上にならなくても、自信を持ってご紹介できるお勧め企業を集めようと決めました。

一方で、求職者に対する対応も、一般的なエージェントと真逆です。

佐藤 「たとえば、通常のエージェントは企業起点で1人決めるために10人と会うんですが、ミライフの場合は求職者起点で10人と会って、キャリアデザイン面談すること自体が目的です。結果として、その中から1人決まったらいいなと思ってやっています」

すぐには儲からないと知りながらこのやり方を選んだ佐藤。だからこそ、そこにミライフらしさがあると言います。

佐藤 「おそらく、最初はビジネスとしては全然儲からない(笑)でも、価値あることを、誰にもできないレベルで続けていけば、あるタイミングを超えたところから、突き抜けられると信じています。見えないものを信じられるからこそ、誰にもできないことができるはず」

企業選びの当たり前を変える――“未来志向型キャリアデザイン”のみらい

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▲ ミライフが考える未来志向型キャリアデザイン

2018年で3年目を迎え、“セレクトショップ”としての企業ラインナップもそろってきたミライフ。いよいよエージェントとしても本格稼働します。

コンセプトは「次世代リーダー・事業責任者を目指す方向けの“未来志向型キャリアデザインエージェント”」。

理想未来は今の延長線上にないことも多く、非連続なチャレンジをしていくことになります。構造的に、これまで経験したことのある仕事は、前職と同じかそれ以上の年収で転職ができますが、経験したことのない仕事は、年収が下がる可能性があります。「即戦力ではないので同じ額は出せない」というのが企業の本音なのです。

そのため、佐藤は以下のようにアドバイスしています。

佐藤 「正直、転職で年収を上げないほうがいい。たとえ年収が下がってでも、自身の理想未来に向かう、非連続なチャレンジができる環境を手に入れることが大事。そして年収は自分で結果出して上げるものである、と。多くの人は目先の年収にこだわるけど、私からしたら生涯年収の方が大事ですし、そのためには変化対応力を付けて、どこにいっても通用する人材になることが先決です」

佐藤が目指すところには、「従来の企業選びの“当たり前”を変えていきたい」という想いがあります。

日本における企業選びは、売上や従業員数といった企業規模や歴史、有名な企業かどうか、お給料や福利厚生といった“外見”で選ぶ人があまりにも多いのですが、それだけではHAPPYなキャリアは築けません。だからこそ、ミライフでは求職者の志向性とビジョンフィット、カルチャーフィットで企業の“中身”とマッチングします。

ミライフのビジョンは「働く、生きるを、HAPPYに」というものです。理想未来に向かう、Work in Lifeな働き方、生き方を応援していきたいと思っています。