スタートアップと共にイノベーションを生み出す「明治アクセラレータープログラム」

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私の仕事は、肌を構成する成分について研究したり、またそれらを増やすような素材を探索したりすることです。セラミドやコラーゲンという成分の名前だと聞いたことがある方も多いのかもしれません。入社2年目で研究所配属になり、それからはずっと、肌や美容成分の研究に携わってきました。

こうした通常業務に加え、2021年には「明治アクセラレーター」というオープンイノベーションプログラムに参加しました。これは、株式会社ゼロワンブースターとの共同運営というかたちで、スタートアップや起業家の皆さまと当社がコラボレーションして、新たな事業を創発することを目的としたプログラムです。

いまの時代、私たちの生活には物もサービスもあふれています。その中で生き残っていくためには、新しい物をどんどん生み出していかなければなりませんが、ひとつの企業だけでそれを行っていくのはとても難しい。それは明治という大きな企業でも同じことです。

まったく違う価値観を持ったスタートアップの方々と一緒に仕事をすることで、良い刺激を受けられますし、コラボレーションの中で生まれた新たなイノベーションが、次世代のヒットにつながる新商品の開発にもつながるかもしれない。そんな想いから、このプログラムへの取り組みをはじめました。

この明治アクセラレータープログラムの中で、私は社内公募を経て「カタリスト」という役割を担いました。これはスタートアップと、当社とをつなげるポジションです。本プログラムに参加してくださったスタートアップは、技術力やコネクションなど、当社の持つさまざまなアセットを借りて新しいことをしたいという想いで応募しています。そうしたニーズに対して、社内の担当部門に働きかけ、協力を仰ぐ。そうしてプロジェクトが円滑に進むようにしていくのが、カタリストの主なミッションでした。

自分のキャリアに必要だと思えたことが、プログラムへの参加のきっかけに

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私には、2022年7月現在6歳と4歳になる娘がいて、2016年と2018年に、育休を1年間ずつ取得しました。2019年に復職して、フルタイム勤務に戻ったのが2020年。私のキャリアは、2020年に再スタートしたといえるかもしれません。明治アクセラレータープログラムのことを知ったのは、まさにそのころ。以前に研修でお世話になった人が教えてくれました。 

それまでは妊娠・出産・子育てで手一杯でしたし、職種柄、部署を超えたコミュニケーションを取る機会も少なく、社内ネットワークのようなものを持っていませんでした。当時を振り返ると、とても狭い世界の中で生きていたと思います。

加えて、私が取り組んでいた基礎研究は、商品が開発される前の段階の仕事です。会社に籍をおきながら、商品ができていく流れを、恥ずかしながらしっかり把握できていなかったんです。キャリアアップを目指す上で、それではいけないなと思いました。

本プログラムの公募内容には、社員にとってのメリットとして、「社内ネットワークが広がること」「スタートアップと関わることで、自分の視野が広がること」が示されていました。まさに当時の私に必要なものだと思えたことが、このプログラムに応募しようと決めた理由です。

「小さい子どもがいる中で、新たなチャレンジをすることに不安はなかった?」と聞かれることもありますが、子どもを持つこととキャリアアップすることは、どちらも自分自身が望んでいたこと。少し珍しいタイプかもしれませんが、「子どもがいるからチャレンジしづらい」と思ったことはありませんでした。

プログラムに参加したことで視野が広がり、研究者として大きく成長

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本プログラムではカタリストとして12名の社員が選ばれました。経験豊富な中堅社員が選ばれ、私はこれでも最年少で、しかも育休のブランクもあったので、楽しみでもあり不安でもありました。

プログラムに参画して、最初に取り組んだのは、スタートアップがどういうものなのかを学んでいくこと。ゼロワンブースターの担当者さんから「スタートアップはスピード感も価値観もまったく違う」とうかがっていましたが、本当にその通りでした。

今回ご一緒したスタートアップの代表の方は、シリアルアントレプレナー(連続起業家)でした。食品開発のご経験はなく、「こういう商品が作りたい」という構想はあったものの、コンセプトがまだ固まっていない段階からの協業でした。

市場分析、コンセプト設計、消費者の方に対するヒアリング、試作品の反応、生産委託先となる工場の選定……。何もないところから実際に商品をかたちにするところまで、5カ月弱で行いました。これは、普段の当社では考えられないようなスピード感です。

アクセラレーターの仕事はすごく楽しかったのですが、このスピード感についていくのは大変でしたね。本業の研究と両立できたかというと、正直なところなんとも言えません(笑)。だからこそ、当時見守ってくれていた周囲の方々はもちろん、支えてくれた家族にも本当に感謝しています。

プログラムに参加することで最も大きな気づきとなったのは、「自分ひとりで全てのことをできなくてもいい」ということです。普段、私がしている研究の仕事は、他部署との関わりがとても少ないのが特徴です。部署の中でも、チームを組んで皆でやるというよりは、それぞれがテーマを持って単独で作業しています。ですから、ほかの人が何をやっているのかわからないときもありますし、互いに頼り合うようなコミュニケーションも少ないんです。

プログラムを終えてみて、可能性が広がったような感覚があります。何かやりたいことを思いついたときに、「自分ではできないから」とあきらめなくていい。まわりの人がアイデアを持ってきてくれることも増え、実際に、他部署と協力して研究を進める場面も生まれています。

以前までの私は、すごく視野が狭かったと気づかされました。研究するにしても、「こういう市場があって、こういう考えのお客様がいて、こういう商品が必要だと思っている。だからいま私はこの研究をしているんです」としっかり語れるような研究者にならなきゃいけない。こうした気づきが、非常に大きな財産になったと思っています。

カタリストを通して再認識した生きがい。自分のためのキャリアを描く

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明治アクセラレータープログラムに参加して、あらためて明治の強みを知ることができました。それは、人財力。そして歴史に裏打ちされた知識と技術の蓄積です。スタートアップと比べるとスピード感は劣るかもしれませんが、こうした地盤があるおかげで、実現できることが多いことを実感しました。

また、明治にはやさしい人が多いことも知りました。「こういうプロジェクトをしていて、助けてほしいんです」とお願いをすると、渋るどころか、誰もが協力的で「どんどんやろう」といってくれたんです。こちらから働きかければ、助けてくれる人がたくさんいることに気づくことができました。

これからは、本プログラムを通して得たネットワークや広い視野を活かして、商品化を視野に入れた基礎研究を行っていきたいと思っています。ただ、研究に携わるのではなく、人と人をつなぐ仕事にもチャレンジしたいですね。

カタリストの仕事を通して、私にとって生きがいややりがいは、「誰かのために何かをすること」だと再認識しました。研究職の経験を活かして誰かと誰かをつないだり、誰かの研究をバックアップしたり、そういうお仕事もできたらいいなと思っています。

女性はライフステージの変化が激しいので、キャリアを描くのはなかなか難しいですよね。考えたくない方もいると思います。でも、できれば自分のキャリアプランとライフプランをしっかり考えて、望んだ通りの人生を歩んでほしい。

育児をしながらキャリアを積んでいくことに、不安を感じるときもあると思います。でも周囲からの協力は、自らの働きかけがなければ、なかなか得られません。自分の夢やなりたい姿を具体的に描いて、しっかりとプレゼンできれば、きっと力を貸してくれる人が現れるはずです。

女性だからといって、何かを諦める必要はありません。自分のやりたいことを見据えて、仕事、育児、趣味、いろんなことにチャレンジしてほしいと思っています。