メック・ヒューマンリソースの育休制度が産声を上げるまで

▲育児休業を取得をした布施 英邦(写真左)、坂田 啓典(写真中央)、平等 崇暁(写真右)

厚生労働省の調査によると、平成30年度における男性の育児休業取得率の割合は6.16%。一方でMHRにおける取得率は、2019年12月時点で50%となっています。

当社ではじめて育児休業制度が活用されたのは、2007年のこと。社内制度は法律に則って整備されていたものの、当時の法律に基づく男性の育児休業は、女性の産後休暇の期間で取得できることしか定められていませんでした。

男性として社内ではじめてこの制度を活用した人事サービスグループ チームリーダーの布施 英邦は、社内の雰囲気をふり返ります。

布施 「弊社では法律に基づく育児休業が取得できることは社員にも浸透していました。ただ男女ともに自身や配偶者が出産を控えた社員がおらず、私も自分が取ることは想像していませんでした」

そうして迎えた男性によるはじめての育児休業。偶然にも同じタイミングで別の女性が育児休業を取得することになり、MHR初めての育児休業取得は性別を問わず足並みをそろえてスタートすることになりました。

全社をあげたあたたかく力強いサポートは、わずかな戸惑いと不安を飲み込み、まだまだ一般的とは言えなかった男性社員による育児休業取得の大きな流れをつくっていきました。

「育休、取れるよね?」第一号は妻のひと言がきっかけだった

男性育休取得のパイオニアである布施は、子どもが誕生することを自覚はしていても、育休にまで考えは及ばなかったといいます。

布施 「2007年当時は、女性社員でもまだ育休を取得した前例がない状況でした。私も異動したばかりのチームで、リーダーとして7,8人の部下をまとめていて。育休自体、取れるとはまったく思っていなかったんです」

その考えを、ひと言で変えたのが妻でした。

布施 「妻から、『育休、取れるよね?』と言われたんです。出産する女性ならまだしも、男性である私が育休を取るなんてと思って、『いや取れないよ』と返したら、『人事担当なのに、産後に育休が取れることも知らないのか』と。慌てました(笑)」

調べてみると、法律的にも社内制度的にも、男性が産後の育児休業を取ることは可能であることが判明しました。

一方で布施はまだ、育休の取得を現実的なこととして捉えられていませんでした。

布施 「法的には取れるといっても現場は忙しく、取りたいなんて言っていいのか不安で。時間的にはまだ十分余裕があったのですが、すぐに当時の上司に相談したんです」

上司の反応は、布施の予想をはるかに超えるものでした。

布施 「上司からは、『男性社員が育休を取得することは会社にとっても意義があることだから、ぜひ取るように』と言ってもらえて。そこで一気に現実味が出てきましたね」

周囲から多少驚きの反応があったものの、チームの前任者によるフォロー体制が整い、布施は2カ月の休業期間に入りました。

布施 「休業中の2カ月間は会社からまったく連絡がなくて、『このまま解雇されるのではないだろうか、キャリアがストップしてしまうのではないだろうか』と、不安になったこともありました。けれどふり返ってみると、今ある息子とのゆるぎない信頼関係は、当時の経験があったから得られたものだと思いますね」

これから育休を取得する社員には、男女問わず「仕事を忘れて育児に没頭してほしい」と話す布施。先駆者となって、男性による育児休業取得への理解の礎を築きました。

どんな状況であっても、会社は育休の取得を後押ししてくれた

布施の休業取得から10年、人事サービスグループのチームリーダー補佐を務める坂田 啓典は、2017年に1カ月間の育児休業を取得しました。

坂田 「布施以降、何人もの先輩が前例をつくってくださったおかげで、私に子どもが誕生したときは、上司を始めみんなが育休を取得するように背中を押してくれる雰囲気が社内にできていました。

ただ私も当時部署異動の直後でふたつのユニットの責任者を担当していたため、閑散期まで取得をのばしたんです。妻も実家に里帰りできたので、運よく仕事の区切りに育休スタートのタイミングを合わせられました。メンバーからも祝ってもらい、前向きに育休に入りました」

坂田は育休を取ったことで、子育てを実体験として捉えられるようになったと話します。

坂田 「妻とふたりでの育児だったのですが、2週間目か3週間目くらいに私自身が心身ともに疲れ果ててしまったんです。こんなハードなことを多くの女性はひとりでしているのかと、愕然としましたね。育児は本当に、夫が休業してふたりがかりで取り組んでも大変なことなんです。この経験以来、子育ては夫婦でするのが当たり前だと考えるようになりました」

想像以上の厳しさに直面しながら、それでも自身の育児休業は家族にとって不可欠だったと振り返る坂田。布施同様、会社と離れている期間あることに不安はあったものの、「仕事は復帰のがんばりで取り戻せるけれど、子育ての時間は取り戻せない」と明言します。

計画的に育児休業を取得した坂田とは対照的に、予定外の育児休業を2週間取ることになったのが、人事サービスグループの平等 崇暁でした。

すでに第一子を出産した妻は育児にも慣れ、第二子で夫が育休を取ることは不要だと考えていた平等夫妻。ところが新型コロナウイルスの影響により、第一子の保育園が閉園となったことで事態が変わりました。

平等 「2人目が生まれたあと、しばらくは私も在宅ワークと並行して子育てをしていました。ただ非常事態宣言が解除されて出社のめどが立ってきたとき、妻が『保育園がまだ再開されない状態で、子どもふたりをひとりでは見きれない』と言ったんです。それまで一緒に子育てをしてきた私も同感だったので、すぐに上司に相談しました。そのときに、『申請期日の直前ではあるけれど、育児休業を取得してはどうか』と提案されたんです」

慌ただしい引継ぎにもかかわらず、好意的に休業に向けて尽力してくれた上司や同僚に、先人が積み重ねてきた育児休業の歴史を感じたと平等は言います。

平等 「育休を選択することによって家族とだけに向き合うことができました。逆に言うと自分から選択しなければ、この時間を得ることはできなかったでしょう。仕事にも通ずる話ですが、しっかり向き合うことの大切さを実感しました」

働き方や家族との時間は、もっと選べるようになる

2020年現在は法律に基づいて、最長2年まで育児休業を取得することが可能なMHR。一方で当社は、休みを多く取る制度だけを定着させようとしてきたわけではありません。

布施 「私はこの中でも最長の2ヶ月間の育児休業を取得しましたが、やはり仕事から離れることへの不安はぬぐえませんでした。会社も戦力ダウンなど、ある程度のリスクを負うことになります。だからこそ当社では、育児休業制度と並行して、育児と仕事を両立できる環境をつくることに努めてきました。短時間勤務制度などの活用もその一例ですね。

今後さらに、柔軟な働き方ができ、必要なときに休暇を取得しやすい制度を国や企業が整えられれば、育児でも仕事でも男女の共同参画はもっと進むと思うんです」

一定期間とはいえ、コロナの影響で在宅勤務やテレワークなど柔軟な働き方が認められたことも、今後について考えるきっかけになったと坂田。

坂田 「今の非日常な状況が、そのまま会社の制度として本格的に運用されることは難しいと思います。ただ休暇の取得が好意的に受け入れられるといったこれまでの社風だけでなく、個々の事情に応じて柔軟な働き方が選べるよう、議論が進めばいいと思いますね」

現在子育てと仕事を両立する平等も、働き方については同様の思いを抱いています。

平等 「イレギュラーな働き方が認められたことで、現在私は子育てをしながら、集中できる時間を選んで仕事を続けることができています。労働時間や賃金のバランスをどう取るかという問題は簡単に解決するものではありませんが、アフターコロナの時代にこそ、仕事と子育て両方を謳歌できるライフスタイルを選べるようになればと思います」

取得した時期や期間にちがいはあっても、「全力で家族と向き合ったことは、何にも代えがたい経験になった」と話す3人。言葉の通じない新生児を前に、産後の妻を支えた経験は、家族だけでなく仕事にも生かされたといいます。

3人は「現状でもこれだけの土壌が整った会社だからこそ、積極的に育児休業を取得し、仕事や人生の充実につなげてほしい」と、後に続く人たちにエールを送りました。