日本の病院経営の現実と課題──経営層から現場まで同じ方向へ進むための支援
──はじめに、日本の病院経営の課題について教えてください。
北島:あまり知られていませんが、日本の病院の約7割が赤字経営です。医師が経営も担うことも多いのですが、医師はあくまで医療のプロであって経営もプロである方はそう多くいません。経営する側が経営を知らないことが課題の1つです。
また、病院は患者さんにどのような医療を提供したかによって報酬があらかじめ決められているので、その構造を理解した上で適切な診療を行う必要があります。しかし、そのような方針を現場に伝えても、患者さんよりも収益のことばかり考えていると誤解されることも少なくありません。たとえ経営を理解している人がいたとしても、全員で同じ方向に進むことは難しいという点が課題として挙げられます。
青山:病院は医師がいないと売り上げが立たない構造なので、医師不足が経営難に直結することがあります。ほかにも、地域によっては過疎化で患者さんが集まらず、診察・治療をすればするほど赤字になるなど必要な医療を届けることで経営が難しくなる場合もあるんです。
当社が支援対象としているうち、小規模の病院は、事務長が1人で経営から採用、現場の管理まで担っている状態がほとんどで、経営改善の計画から実行までの旗振り役を務めることは誰がやっても難しい。だからこそ、私たち経営のプロが介在する価値があると思っています。
──病院経営を支援している企業がほかにもある中で、エムスリーキャリアならではの特徴を教えてください。
北島:最も大きな特徴は、成功報酬型の料金体系であることです。一般的にコンサルティング会社は顧問料として固定料金を請求することが多く、解決策を提案した先の結果がどうなるかはわかりづらいと言われています。その点、エムスリーキャリアの経営支援はプランを練る段階では料金は発生せず、実行して病院の収入が伸びて初めて成り立つ成功報酬型を採用しています。
病院経営の課題の1つである現場を含めた全員が同じ方向に進むことが難しい中で、改善に向けた共通認識を持てていない職員を残したままだと増収につながりません。描いた戦略に対して、実際に診療を行う現場を巻き込んで実行するところまで支援するのも特徴です。
──現場を巻き込むために、どのような支援を行っているのですか。
北島:最初は理解してもらえないことがほとんどです。ただ、私たちの支援は実際に行った診療行為を正しく請求できずに損をしてしまっている部分の改善や、地域が求めている医療機能と実際の病院の機能とがマッチしていない点を改善するものです。患者さんに還元でき、結果として収益改善につながる背景を理解してもらえるように、現場の方と話をする機会を設けています。
青山:病院は役割分担が明確な組織です。たとえば、看護部は患者さんのケアや看護をプロとして全うすることが使命と捉えており、収益改善の取り組みは自分たちの役割ではないと思われている方もいます。同じ目標に向かって進むために、現場まで入り込み各部署の方たちとディスカッションを重ね、やり抜くことが私たちの役割です。
現場の一員となり、支援する。そこで生まれる信頼と介在価値
──病院経営コンサルタントの業務内容について教えてください。
青山:私たちの業務は、主に2つ。経営に関する困りごとや課題を抱える病院から事前に診療情報を得て、収益改善の具体的な道筋を提案して契約に合意してもらう「セールス」。そして、契約時に描いたプランを実現するため、各部署の方たちと目線を合わせ、同じ方向を向いて改善を進め、打ち合わせを重ねていく「実行支援」です。
改善活動はうまく推進できていない病院が多く、コンサルティングに入る前は各部署の方針がバラバラだったり協力体制が整っていなかったりするので、私たちの介在価値が発揮される場面でもあります。
北島:専門的なデータを扱う難しさはありますが、商談準備の段階で周囲からアドバイスをもらえますし、分析の型はある程度決まっています。分析結果から解決策を導き出して提案するには経験が必要ですが、最初は先輩がサポートしてくれます。自分で立てた仮説に納得いただき、「それだったらできそう!」という反応があると嬉しいです。
──病院経営コンサルタントとして、どんなところにやりがいを感じますか?
青山:第三者としてサービス提供する立場ですが、気持ちは病院の一員になれるところです。毎月の売り上げを管理し、病院の方針を浸透させて組織をまとめるための施策を日々考えては実績を作っていくという経営者に近い経験ができます。
現場のみなさんの頑張りのおかげで、どのくらい収益改善できたのかは数字ですぐ見えてくるので、それを共有できたときは達成感がありますね。逆に、うまくいかないときは職員と一緒に頭を抱えて悩むこともあり大変ですが、そういう部分も含めて本当におもしろいです。
北島:私は当初、自分の働きで数千万円の規模で大きな影響を与えられることにやりがいがありました。そこから、徐々に金額の大小よりも当事者意識をもって病院で起こっている問題を発見し、解決へと導く過程におもしろみを感じるようになりました。
2年ほどの長期のお付き合いになるので信頼関係もできますし、支援後も何か困ったことがあったときに真っ先に相談できる存在として見てもらえるのも嬉しいですね。
──難しさを感じることはありますか。
青山:最初は、「外部の人間が病院を荒らしにきたぞ!」という印象を持たれることもしばしば。また、「本当にそんなに売り上げが上がるの?」と半信半疑な方もいらっしゃるので、はじめの信頼を得ることが難しいです。
無難なことを言うだけではコンサルタントが介在する意味はありません。最初は意見がぶつかって衝突したとしても、そこに向き合って病院存続のため、地域の患者さんのために取り組むんだという共通認識を持ってもらうことが私たちの使命だと考えています。
北島:私たちの商品はモノではなく、話をして理解してもらうことでしか価値提供ができません。医師や看護師など、同じ職種でも一人ひとりに合ったコミュニケーションは異なり、こうすれば必ず伝わるというマニュアルはありません。考えを誰にどう伝えるのか、どうすれば価値を感じてもらえるかを工夫することは今でも難しい。
ですが、経営支援を通して当初は心を開いてくれなかった方にわれわれのことを信頼してもらえるようになると、難しさもやりがいに変わりますね。
20代で圧倒的な成長がかなう、それを支えてくれる仲間がいる
──なぜエムスリーキャリアを転職先として選んだのですか。
青山:前職は大手銀行で法人営業を担当していました。いろいろな業界と関われて、企業がめざす方向を知ることができるという想いで入社しましたが、財務状況が安定していないと銀行は融資ができません。そのとき、本当に困っている人たちこそ助けたいと思いました。お金を借りるのは手段の一つ。その他の手段も考えた上で、抜本的な経営課題の解決をしたいと思ったことが転職のきっかけです。
また、大きな組織ということもあり、若いうちから裁量を持たせてもらえることが少なかった中で、エムスリーキャリアの選考で社員の考えや会社のカルチャーを知り、若い方の活躍や部署の風通しの良さを感じました。複数社受ける中で一番自由度が高いと思って、面接中に「ここだ!」と気持ちを決めました。
北島:就活では自分の介在価値を顧客に直接届けられることを軸とし、新卒で入社した会社は、インテリアを扱う小売業界でした。仕事をする中で、もっと規模が大きく顧客の人生に影響を与えられるような仕事にチャレンジしてみたいと思い立ち、転職を決意しました。
前職で役職につくまでの道のりは長かったですが、エムスリーキャリアは20代中心のチームで、自分の頑張り次第では早期にマネジメントにも挑戦できるというスピード感に惹かれました。
──実際に入社してみて、会社やグループメンバーにどのような雰囲気を感じられていますか。
青山:立場に関係なくいいことはいい、違うことは違うと言える雰囲気です。新入社員の意見も積極的に取り入れています。そして、プライベートと仕事の切り替えがみんな上手。仕事中はキリッとし、終われば和気あいあいと仲のよい感じです!
北島:思っていた以上にスピード感があり、意欲があれば役職の有無に関わらずチャレンジできる機会があるので成長実感も大きいです。
また、会議や議論の場で、出た意見と異なる意見は言いづらいと思うのですが、むしろそれを求められているように感じます。率直にフィードバックし合い、お互いが真摯に向き合う風土があります。そして、全員がいい人。これは言葉で伝えにくいので、選考の中でみなさんにも感じてほしいところです。
組織の変革期を、新しい仲間と創りたい
──経営支援グループとして今後実現していきたいことはありますか。
北島:病院経営の課題で挙げたように、医師不足が経営難に直結することがあります。エムスリーキャリアは医師の人材紹介において業界トップクラスという強みがあり、経営に加えて医師の人材供給にも対応できることが他社にはない特徴です。その強みを活かし、経営と採用とを一気通貫して支援ができるサービスを実現させたいと考えています。
──存在意義のあるサービスですが、思いついたきっかけは何だったのでしょうか。
北島:数年前に、理想のグループの将来の姿を想像する“未来会議”を行いました。理想の姿の実現には、どのようなサービスが必要なのかを考えたときに出た一案がベースとなっています。そこから、具体的にどういったものがあればよいかディスカッションし、テスト販売を行って……。走り出しはとても早かったですね。
青山:私も、サービスの設計やブラッシュアップに関わっているのですが、このような新しいサービス開発に関われるチャンスはなかなかないと思います。そういった意味で、今すごくおもしろい時期だと思います。
──これからのおもしろい時期を、どんな方と一緒に仕事をしていきたいですか。
青山:未知のことにも挑戦させてもらえるので、とにかく新しいことにも楽しんで取り組める人です。先ほどお伝えした「経営×採用」のサービスも、顧客によりよいものを提供していくためにものすごいスピードで実現に向けて進んでいます。今とても楽しいので、一緒に楽しめる人がいいですね。
北島:私は、自分の失敗に向き合える方と働きたいと思います。経験のないことへのチャレンジは失敗の繰り返しです。失敗から学び、次はどうやったらうまくいくのか考える。自らのフィードバックに向き合える方は、成長が早い印象があります。
──最後に、チームマネージャーとして大切にしていることはありますか。
北島:課題の発見から解決策の模索、答えを導き出すまでメンバー自身に考えてもらうことを意識しています。私が先に答えを出してしまうと、メンバー自身が持つ新しい発想にも気づけないですし、メンバーは私の出す正解を探すようになってしまいます。自分で答えにたどりついたときに楽しさがあると思うので、一番近くでサポートすることを大切にしています。
私自身、同じような方法でサポートをしてもらっていたのですが、答えにたどりつくまではすごく時間がかかるし、正直きついです。ですが、ここに課題がありそうとか、こういう話をしてみようとか、仮説が立てられるようになり、徐々に自分の中の武器が増えていく実感がありました。もし、これまでお話した内容に何か共感してもらえるのであれば、今後の変革期をぜひ一緒に創りたいですね。