映像制作の現場を目の当たりにし “つくる側”に行きたいと思った

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▲ディレクター(2012年入社)小城尚也(写真左) ディレクター(2012年入社) 新田元樹(写真右)

創業から約1年後の2012年3月に、社員3人目、4人目のメンバーとして入社した新田と小城。入社時はふたりとも26歳。未経験から映像制作の世界に入った経緯とは何だったのでしょうか。

新田 「もともと映画やミュージックビデオを見るのが好きでした。20代前半は『出る側になりたい』と俳優養成所で演劇の勉強をしていた時期もありました」

ターニングポイントは、もっと本格的に演劇の世界を見てみたいと、20代半ばに数カ月間生活したニューヨークにありました。

新田 「現地で通った語学学校でドラマの助監督をしている日本人に出会い、『ミュージックビデオの撮影があるから見に来るか?』と誘っていただいたんです」

はじめて映画の舞台裏を見学し、プロたちが集結したものづくりの現場に心引かれます。

帰国後、自分も“つくる側”になろうと決意し、就職活動をスタート。採用してくれたのが、ロントラでした。

一方で20代前半、やりたいことがわからずにアルバイト生活を送っていた小城。

元々映像が好きで、なんとなく「自主映画をつくれるようになりたいな」と思ったのがきっかけで、編集ソフト「ファイナルカット・プロ(Final Cut Pro)」を学べる環境を探そうと思い立ちます。

小城 「そこで見つけたのが、『未経験から教えます』というロントラでした。働きながら学べるなんてラッキーと、軽い気持ちで入社したら、仕事が次から次へとやってきて、どんどん現場の経験を積むことに。
編集ソフトの使い方は学べたので目的を果たせたのですが、気がつけばディレクターになっている自分がいます(笑)」

入社初日から現場へ。お互いがいたからこそ繁忙期を乗り越えられた

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▲入社当時のふたり。ともにゼロからスタートし、多忙な日々を乗り越えていった

映像制作の右も左もわからないところからAD(アシスタントディレクター)として現場経験を積み仕事を覚えていったふたり。

余裕はなかったと当時を振り返ります。そこにはどんなおもしろさや苦労があったのでしょう。

新田 「入社した日の午前中に映像制作の簡単な流れを説明され、午後にはもう撮影の現場にいました(笑)」

以降、飛び交う言葉の一切もわからないなか、ディレクターの斎藤俊介に、やるべき業務を一つひとつ聞いて覚えていく日々。

新田 「本当に、よく未経験者を採用したなと思います(笑)。でも、わからないというのは、目にするもの耳にするもの、すべてが新鮮ということでもあります。
たとえば、映像制作には必ず『音響効果さん』がいますが、そんなことすら知りませんでした。
音響効果さんが番組のシーンに合わせて音楽をつける作業にはじめて立ち会ったとき、楽しい場面はより楽しく、緊迫感のある場面はよりドキドキするような、映像がイキイキと動き出すような感覚を得られて、大きく心を揺さぶられたのを覚えています」

そんな裏側をどんどん知っていけることが、とてもおもしろかったと新田は語ります。

小城「なんせ 4人しかいないので、未経験だろうが稼働せざるを得ないんですよ。しかも、入社とほぼ同じタイミングで新番組が 2本立ち上がり、毎日バタバタ。
本当に忙しくて、何が大変とか、おもしろいとか考える暇もなく仕事をしていましたね」

新田とはADとして同じ番組に携わることも多かった小城。それぞれ別の放送回を制作しているので、現場で一緒になることはほとんどありません。

小城 「現場ではかぶることは少ないですが、僕が編集作業で手いっぱいになっていると新田がサポートに入ってくれたり、逆に僕が手伝ったりと助け合っていました」

さらに、同じようにゼロから頑張っている新田がいなければ、あの多忙な日々を乗り越えられなかったと当時を振り返ります。

いい作品をつくるために、現場では前向きなコミュニケーションを意識する

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▲ロケで指揮をとる新田ディレクター(写真中央)。関係者とのコミュニケーションには、特に気をつけている

3年目にはお互いにディレクターとなり、BS朝日「スポーツクロス」や「With」、テレビ朝日「GET SPORTS」や「野球が僕にくれたもの」など、スポーツやドキュメンタリー番組を中心に多くのディレクションを担当。

ADのときは、ディレクターの制作意図を読み取り、撮影がスムーズに進むよう、交通手段や宿泊施設の手配、撮影の許可取りなどを先回りして済ませるというアシスタント業務が中心でした。

しかし、ディレクターになると、どこで何を取材し、どんな点を切り取って作品に反映させるのかを決める側になります。

新田 「たとえば、アスリートを題材としたドキュメンタリー番組をつくる際、そのアスリートの魅力をどう捉えるかで、撮るべき画が変わってきます」

同じ人物を取材しても「笑顔が素敵だな」と思うディレクターと、「ストイックな姿勢がいいな」と感じるディレクターとでは、まったく違う番組になる。

「このアスリートのこういう面を伝えていきたい」という軸を持ち、1本の筋が通った作品になるように撮影、編集していかなければいけません。

そのためには自分の感性を信じることも大事になっていきます。

新田 「自分のこだわりにかたくなになりすぎると、視野の狭い番組ができてしまうし、周りの意見を取り入れすぎると、何を伝えたいのかわからない番組ができてしまう。
正解がないからこそ、おもしろい仕事だと思いますが、実際は放送された番組を見ては『あのシーンをもっとこうしていれば』『インタビュー時にこういう内容を引き出しておけば』といつも悔やんでいます。100%満足できたことは一度もありませんね」

番組制作は個人の作品ではないので、自由に好きなものだけをつくることができるわけではないと語る小城。

小城 「さまざまな意見が出るので、そことバランスを取るのが難しい。

ディレクターは現場に行って、自分の目で見て、この画が必要だと思ったものを撮影してくるので思い入れも強くなります。

でも客観的な立場の人からは『こういう画があった方がいい』『このインタビューより、別のインタビューの方がいい』と指摘されることもあります。
その意見をどこまで取り入れるか、いつも悩みますね」

自分の軸を貫くことと、柔軟に意見を取り入れることのちょうどいい間を見つけることも、ディレクターに求められる力のひとつなのです。

新田 「僕は、性格的に、すぐ周りの意見を取り入れようとして迷走しちゃう。バランスを取ろうとして回りくどくなり、『で、何が言いたいの?』と指摘されます(笑)。
小城は自分の芯がしっかりあり、『それは違うと思います』などと嫌みなく、さらりと言えるんです」

「わが道を突き進める強さは、ものづくりをするうえで必要なもの」と新田は言います。

これに対し、新田のことを「現場の雰囲気を明るくするのが上手で、年上にも年下にも好かれている」と語る小城。

新田には、現場を支えるうえで心がけていることがあります。

新田 「関係者とのコミュニケーションは、AD時代から一番気をつけています。
タレントさんがのびのびと動けるように、『今のコメントすごくよかったです』など、フィードバックをするようにしていますね。
そのうえで『今のは OKなので、次はこういうコメントもいただけますか』と提案すると、タレントさんも気持ちが乗ったまま撮影を続けられると思います。
ほかにも、『少し寒いので車の中で待機していてください』などと声をかけるだけでも、気を遣ってもらっていると感じてくれるはずです」

そういった小さな積み重ねを大事にしている新田。スタッフに対しても同様です。

新田 「カメラマンさんには、『すごくいい画ですね。この画を生かしたいので、こういう角度からの画も撮っていただいてもいいですか?』などとこまめにコミュニケーションをとります。
すると、カメラマンさんの方から『それなら、こういう画もあるといいですよね』『この画も撮っておきましたよ』などと前のめりになってもらえて、映像のクオリティが上がっていくんです」

目的は、いい番組をつくること。そのために、出演者、スタッフ全員が自分の力を発揮できるような、雰囲気のいい現場であることが大切だと考えています。

自分の軸を貫き納得できる作品ができて、ようやく一人前に

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▲編集中の小城ディレクター。これからは、自分でゼロから企画してつくれるほどの実力をつけていきたい

ディレクターとして2018年で5年目を迎え、ロントラをけん引する存在となったふたり。そんなふたりの映像制作に携わるおもしろさとは?今後挑戦していきたいこととは。

新田 「『いい画が撮れた』と思える瞬間が、この仕事を続ける原動力です。
たとえば、ずっと密着していた方が、普段メディアでは見せない姿をふっと見せたり言わない言葉を発したり。
そんな貴重な瞬間を撮れたときにはとてもうれしくなります。
また、制作を通していろんな世界を見られるのも楽しいですね」

日頃からスポーツの番組に携わることが多い新田。パラアスリートなど、普段なかなか接することのないプロフェッショナルたちのすごみを間近で見られるのは、この仕事ならではです。

新田 「世の中には、こんなチャレンジをしている人がいるんだ、こういうふうに頑張っている人がいるんだ、という事実に勇気づけられます」
小城 「僕は正直に言うと、自分がつくった作品に対して良い評価をいただけたときが一番うれしいですね。
今はまだ、誰かが企画したものをつくっているだけなので、自分でゼロから企画をしてつくれるほどの実力をつけたいと思います」

そのためにも、まだまだインプットが足りないというふたり。

新田 「僕は人物にフォーカスしたドキュメンタリーの制作が好きなので、同じドキュメンタリー系の番組や映画などをもっと見て勉強したいです。
本を読むことも、感性を磨くうえで大切だと思っています。
『自分がこういうのをやりたい』という想いを通し、周りを納得させられるくらい筋道の通った説明ができて、自分がつくりたいものを完成させられる。
それができたら、ディレクターとしてようやく一人前になったと言えるかなと思います」

未経験入社でゼロからスタートし、苦しい時期も乗り越えられたのは、お互いの存在と映像制作に携わるおもしろさ。

今後もさらに自身の納得できる番組を追求しながら、ロントラをけん引していくふたりの活躍に期待です。