介護職の原点、一日も忘れたことのない祖母への罪悪感

▲可愛がってくれた祖母(左)との家族写真

"介護は天職です″と遠藤は語ります。

高齢者介護は食事や入浴、排泄などの介助、ときには死と向き合うことのある、決して楽な仕事ではありません。しかし、介護に携わって約10年、遠藤は介護という仕事に対して楽しさを感じています。

遠藤 「ご入居者様とのコミュニケーションは本当に楽しいですし、喜んでもらえると嬉しいです。介護は天職だと思いますね」

今でこそ、天職といえる介護職ですが、介護の世界に導かれたのは、一生忘れられない高校時代のできごとがきっかけでした。

遠藤 「私が小さいころから、たったひとりの祖母が共働きの両親に代わって私を育ててくれました。しかし私が高校生のとき、ケガでの入院をきっかけに認知症になった祖母は、突然私が誰なのかも認識できなくなってしまったんです。

一度だけお見舞いに行ったのですが、奇声を発したり、徘徊を繰り返したりする姿を目にして恐怖感を覚え、その日以来お見舞いに行けなくなりました。認知症について無知だったことも、怖さを感じた理由です」

それから二週間後、一度も顔を合わせることなく、祖母は亡くなってしまったのです。

遠藤 「祖母のことは今日まで一日も忘れたことはありません。すべては祖母のため、介護をしてきましたし、これからもその想いが変わることはありません」

小さいころから可愛がってくれた、たったひとりの祖母に何も返すことができなかったという罪悪感が、遠藤を突き動かしました。

高校卒業後、迷うことなく介護を学べる福祉系の大学に進学した遠藤。

授業の中で認知症を学び、実習を通してその実態も知ることができ、認知症に対する恐怖心は次第になくなっていきました。

しかし、その後若気の至りで堕落した生活を送ります。

最初の就職先は介護とはまったく別の業界でした。

遠藤 「意気込んで福祉の大学に入ったものの、大学生というブランドやさまざまな誘惑に魅了され、堕落した生活を送っていました(笑)。

就職活動も面倒に感じ、アルバイト先の偉い人に誘われるがまま、飲食業界に飛び込みました。朝から深夜まで休みもほとんどありませんでしたが、限界まで働くことの喜び、強靭なメンタルを学びましたね(笑)」

その後、家庭の事情で帰郷すると同時に飲食業を退職し、介護の道へ進むことになりました。

埼玉県初、平成生まれの施設長に

▲サンライズ・ヴィラ西葛西で施設長と打ち合わせ中

遠藤が入社したのは、日中に高齢者の方が訪れるデイサービス事業を行う会社でした。

遠藤 「いざやってみると、入居者の方やそのご家族の方とのコミュニケーションは楽しかったですし、喜ばせることもできていたので、意外に天職かもしれないと気付かされました」

しかし、デイサービスで働きながら感じたのは“元気なときだけでなく、人生の最期に寄り添いたい“という想いでした。

遠藤 「認知症の方は、昼間は症状が落ち着いていても、夕方から夜にかけて人が変わる傾向があるんです。

私がデイサービスに入職時から通ってくれていたおばあちゃんがいましたが、認知症が一気に進行し、デイサービスを辞めることになったんですね。その後の様子を気になってはいたのですが、それ以来どうなったのかは今もわかりません」

介護の一部しか知らないことにもどかしさを感じた遠藤は、デイサービスの施設職員を辞め最期の瞬間まで寄り添い、介護全般に関わることのできる、老人ホームで働くことを決めました。

老人ホームでは、介護職員をしながらデイサービスとの大きな違いなどを勉強し、次第にシフトや書類の管理、マネジメント関係も任せられるように。

そして、一介護職員として働きながら、気付いたことがありました。

遠藤 「職員として、私が関わるご入居者様を幸せにできる自信はありましたが、それだと、私が関わらない人のことは幸せにできません。そこで施設長になれば、施設に入居されているすべてのご入居者様、ご家族様、そして介護職員を幸せにできるのではないかと思いました」

遠藤は、当時の施設長の背中を見ながら施設長になるために勉強に励み、無事社内昇格試験に合格。晴れて施設長になります。

一般的に、介護業界内外でさまざまな経験を積んできた50代や60代の職員が施設長を務めることが多い中、施設長になった当時、遠藤は若干25歳。不覚にもある歴史をつくります。

遠藤 「埼玉県で施設長の届け出を出したのですが、その人曰く平成生まれの前例がなく、急遽「H」の入った書類を作成していただきました(笑)」

圧倒的に経験が少ない中で、施設長として成長できたのは、人に恵まれていたからという自覚がありました。聞けば熱心に教えてくれる、力を貸してくれる職員が周りにたくさんいたのです。

また、経験はなくても、施設長として工夫していたことがあります。

それは職員面談を頻度高く実施し、対話の機会を設けることです。

遠藤 「面談では、自分の介護に対する想いや施設の方針を伝えていましたね。信頼関係を築くために、まずは自分のことを知ってもらうことが大事だと考えていたので。普段から、職員の小さな変化にも気付けるように意識していました」

そうして施設長として職員との信頼関係を築きながら、近隣施設や新任施設長の補助も行うまでに成長し、少しずつ幸せの輪を広げていった遠藤。

入社当初は施設長がゴールだと考えていましたが、次第に視野が広がっていくことを実感します。

遠藤 「施設長は、自分の施設のことしか解決できないということがわかりました。

よりたくさんの人々を幸せにしたいという想いから、複数の施設に横断的に関わる方法を探していたところ、当時施設長の仕事を教えてくれた恩師の方々と連絡を取る機会があり、ライクケアのことを聞き、ライクケアに転職を決意しました」

ライクケアの魅力、そしてぶつかる「最大のミッション」

▲ともに採用活動を行うメンバーと

2016年にライクケアへ入社し、最初の1年はある施設の副施設長として勤務しました。

会社が変わればルールが変わるのも当然。さまざまな運営方法を学べる機会と捉え、積極的に吸収していきました。2020年現在は、ライクケアの本社で人材の採用と定着に関する業務を行っています。

遠藤 「人材に関わるのは初めてのこと。施設長の立場で施設の運営を行ってきたため、人材関係の仕事をすると知ったときには驚きましたが、上司にいろいろ教えてもらいながら、トライ&エラーを繰り返していきました」

日々奮闘する遠藤が語るライクケアの魅力とは。

遠藤 「介護業界全体の中で比較すると、中規模の会社です。新しいことを取り入れるのは得意で、施設の抵抗もあまりありません。

良くも悪くもマニュアルが固定化されているわけではないので、それぞれの施設の色が出るのも特色です。施設でも本社でも、決められたことを守って働くというよりは、多くのチャレンジをしていきたい人に向いているかもしれません」

遠藤の所属する施設事業部の最大のミッションのひとつとなるのが、「人材の定着」です。

職員との面談の際に気を付けていることがあります。

遠藤 「とにかくその方の意見は否定しないように、意識を変えていけるようにすることです。“本社の人“として見られていて、構える方が多いので、アイスブレイクで話しやすい雰囲気をつくることを意識しています」

そんな人材定着の中で、とくに大変な仕事がありました。それは、退職を決めた職員との面談です。

遠藤 「退職が決まった報告を受けて、その後確認の面談をするんですが、もともと退職を決めている方なので、そこから退職を辞めるということはなく……。無力さを感じ、つらい時期もありましたね」

しかし、そのような状況下でも、退職抑止につなげるために最大限できることを探しました。

遠藤 「辞め方には2通りあります。嫌な想いをして辞める場合と、嫌な想いをしたわけではないが、ご家庭の事情などで辞める場合です。途中から気をつけていたのは、前者の例が減るように面談の内容を社内共有し、再発防止に努めることです」

施設長や採用チームに詳細を共有することで、周りを巻き込みながら解決していけるように進んでいます。

ステップアップに限度はない、何事も自分を成長させる

今でこそ本社社員からも信頼されている遠藤ですが、施設から離れて本社で仕事をすることに最初は寂しさがあったと言います。

遠藤 「本社に来て1年目は、直接入居者様の対応をできないことにもどかしさがありましたが、2年目以降は自分が関わる施設の職員を信頼できるようになりました。今は自分が信頼している職員が対応しているので安心しています。職員を幸せにすることで、間接的には入居者様や幸せにできるということに気付いたんです」

それでも、職員に直接的に関わる機会が減っていることを課題に感じているといいます。

遠藤 「担当施設が20以上あるので、一度あいさつしてそれっきりという職員も多いです。コロナ禍ということもあり、物理的にコミュニケーションを取りにくく、回り切れなくて申しわけないなという気持ちがあります」

前向きに取り組む遠藤は自身のキャリアについて、まだステップアップの途中だと考えています。

遠藤 「施設長の経験も今の仕事も、ゴールではなくステップアップのひとつだと考えているので、もっと上を目指していきたいです。今は、自分に与えられた、職員の定着率向上というミッションに対し、目に見える成果を出して貢献していきたいです」

また、遠藤の視野は介護事業のみならずグループ全体まで広がっています。

遠藤 「介護職員は、会社に雇われているという感覚よりも施設で働いているという意識が強く、ライクケアが運営していること、さらにはライクグループの一員であることを知らない方もいます。まずは、そういった方々にグループの事業を説明し、会社が行っている事業をより理解していただくようにしていきたいですね」

“認知症の祖母に何もしてあげられなかった……”

そんな後悔が遠藤を突き動かしてきました。

介護の力でより多くの人たちを幸せにするため、

今向き合っている課題を見据え、これからもステップアップを続けていきます。