大切なのは相手と本音で話すこと、自分の心を壊さないこと、そして心を込めた反応
「KOMEHYO GINZA」の出店に向け、プロジェクトリーダーを任されていた店長の塚原。
“これまでの中でも一番の店舗を作ろう”というミッションを掲げ、マーケティング・広報・店舗スタッフなど社内の各部署を代表する人材が集結する中、まとめ役として奮闘しています。
塚原 「全社的な視点を持ちつつ、新店の組織マネジメントを担当しています。一緒に店舗を作り上げるメンバーには、商品知識や接客力はもちろん、『従来の型にとらわれず、お客様視点で自由な発想ができるか』『お客様が奥深くに持っているニーズをしっかり引き出せているか』といったことを常に問いかけたいと思っています。パーフェクトである必要はありませんが、高い理想を掲げながら人材を育成していこうというスタンスです」
勤続24年という日々を経て塚原が最も大切にしているのは、本音で話すこと。また、我慢の連続で心を壊さないよう、自分や部下をケアすることも大切だと言います。
塚原 「私は物事と向き合う『対峙力』という強みを持っています。一方で裏を返せば1人で抱え込んでしまうという弱みもあるんです。そこで弱点を克服するために思い付いたのが『悩みを打ち明ける』こと。現在も続けていますが、誰かにピンチを知ってもらうことで多くの困難を乗り越えてきました」
また、塚原自身も相手からも悩みを打ち明けてもらうことができるように、話しやすい雰囲気を作るよう努めています。
塚原 「かつて『リアクション大王』というニックネームを持つ、お客様にもスタッフにも非常に人気のあるアルバイトの方と働いたことがあります。よく観察すると、相手のどんな話にも温かみのある態度で接し、いつも気分を『乗せて』くれていました。
私も見習って気持ちを込めたリアクションを大切にしています。そのほうが『あの人なら話を聞いてくれる』と思ってもらえますから」
目の前のことに精一杯取り組むこと。公私ともに学びを経てアップデート
メンバーを想い、本音を打ち明け、寄り添いながら働いている塚原。そんな彼女は、もともと本社がある愛知県内でブランドバッグの商品管理業務を担当していました。ほどなくして結婚しましたが、夫は東京勤務のため遠距離生活を継続。「配置変更を望むには自らのスキルが足りないのでは……」と悩んでいたものの、そのことを相談していた上司から「東京の店舗で買取業務に挑戦してみない?」と提案され、東京で勤務することになりました。
その後、第一子の産休・育休まで買取業務に従事し、復帰後は売り場を中心に勤務。役職もだんだんとステップアップしていきました。中でも成長できたのは、2015年から2020年にかけてのこと。シニアマネージャー兼、銀座5丁目で営業していたKOMEHYO銀座店(以下、「旧銀座店」)の副店長に昇進し、数々の研修を受けながら、主要プロジェクトに携わるなど会社の中核として台頭していったのです。
塚原 「当時は通常業務以外に次世代育成研修、顧客づくりプロジェクト、社内検定の上位者に無料で提供される3カ月にわたるグロービス講座という3案件が同時進行。しかも、ふたりの子どもの育児もありました。仕事と育児を両立できていたというよりは、目の前のことに精一杯で……。
とてもじゃないですがスーパーママにはなれていなかったです。本当に幸いなことに、当時は実家が近かったので、周りにサポートをしてもらいながら何とか乗り越えていました」
多忙な状況の中、周囲の協力を得ながら仕事でも挑戦を続けた塚原。各研修の中で優秀者として表彰を受けるなど、成長を形にしていきました。
塚原 「次世代育成研修は会社では、新規事業や既存事業の新たな展開についてのプレゼンを経験しました。アウトドアの新規事業について発表し、最優秀賞をもらったときは、本当に嬉しかったです。
また、組織や人を動かすために何が重要なのかをケーススタディで学んだ講座もとても印象に残っています。『人に最も伝わるのは小学6年生レベルの言葉』という教授が発したひと言のインパクトが強く、相手にすっと浸透していく、わかりやすいコミュニケーションが大切だと改めて学びました」
こうした積極的な姿勢はプライベートでも発揮。長男が通っていた中学校のPTA活動において、塚原は高校見学会の受付・集金などの各種手続きをペーパーレス化しました。従来は休日を利用して1カ月に4回も学校に行く必要があったため、それに疑問を持っていた塚原は保護者たちにアンケートを取り、同意を得て学校に提出、みごと改善したのです。
塚原 「PTA活動は面倒というイメージを持たれがちですが、先生と信頼関係を築ける上、子どもの件で相談したり、何かあれば原因を把握することもできます。親同士のつながりも生まれ、学校の情報が得られることも少なくありません。当時は会社も業務の効率化が進んでいたので、学校行事にも適用できるのではと思いきって実行しました」
スタッフの想いを受け止めるのは店長。魅力あるメンバーに頼れるから恐れることはない
塚原が旧銀座店の副店長を経て店長になったのは2021年のこと。前店長が「彼女ならできる」と会社に推薦をしたことがきっかけでした。
塚原 「店長になったことで『最終的にスタッフの想いを受け止めるのは自分だ』と実感しています。副店長時代は部下に何を言われても、何が起きても店長に相談できましたが、今は私がその立場。最後の砦として、どう行動すべきか常に考えながら働いています」
塚原が店長として大切にしているのは、メンバーそれぞれの想いを受け止めながら、個性を引き出すこと。
塚原 「店長だからといって自分が一番できる人じゃなくてもいいというか……。みんなの得意なことを引き出して、力を借りればいいという考えなんです。これを知っていれば、きっと誰でもできると思います。私よりお客様へのおもてなしが上手な人、数字に詳しい人、アイデアが豊富な人など、スタッフみんなの魅力を引き出し、まとめていくことが私の役割だと思っています」
店長になってからも、かつてと同じようにセミナーに通い、自己研鑽を続けていると言う塚原。どんなときにも精力的に活動を続ける原動力は、オフでの過ごし方なのだと明かします。
塚原 「オフの日にはキャンプ、ドライブ、釣り、浜辺の散歩など、アウトドアに出かけています。心を健やかに保つためにもプライベートを充実させることが大切ですね。中でも夢中なのは日帰り登山で、2022年は10月だけで3回も出かけました(笑)。
一番のご褒美は、大好きなアーティストのライブですね。最近は高校生になった長男が歌の良さに共感してくれるようになり、一緒にライブを楽しんでいます」
女性も挑戦を。「自信がなくても大丈夫だけど、自信を持っても大丈夫」と声をかけたい
オンとオフでメリハリを付けながら、長く勤めてきた塚原。今後、女性活躍に向けても力を注いでいきたいと話します。
塚原 「各店舗を中心に、意志決定の場にいる女性がまだまだ少ないように感じます。社内のオンラインミーティングを開いても、モニターに映るのはどうしても男性が多い。女性ならではの視点をさまざまなシーンに反映できるように、もっと仲間を増やしていきたいです」
塚原が女性社員に伝えたいのは、「多少の不安があってもチャレンジしてみる一歩が大切」ということ。
塚原 「コメ兵で働いている、あるいはこれから働く女性には『来るもの拒まずで何でもやってみたほうがいい』とアドバイスします。私もキャリアを振り返ると、自分で仕事を選べるようになったのは管理職になってから。
それまではとにかく一生懸命、会社に任された業務に取り組んでいました。ときには仕事を楽しめなかったり『なぜ自分だけ?』と思ったりもしましたが、振り返るとすべてプラスの経験です。いまの私を構成する良い要素になっているので、自信がなくてもまずはとにかくトライすることをおすすめしたいですね」
トライをして、弱音を吐きたくなったときは、相談をして欲しいと語る塚原。かつての自分がそうであったように、周囲の人に頼ることも生き生きとした社会人生活を送るために必要なことだと話します。
女性社員のロールモデルとして、後進を支えながら、彼女の活躍は今後も続いていくでしょう。