経営者としての理念、考え方の継承。自身の苦労があったからこその想い

▲蒲田 善明社長(左)と蒲田 善太郎専務(右)

後継者の育成方法に課題を抱えていた蒲田工業株式会社(以下、蒲田工業)。蒲田 善明社長と蒲田 善太郎専務が現在の担当コンサルタントの野間 健太郎と出会ったのも、このことがきっかけでした。

2019年、小宮コンサルタンツが開催していた後継者セミナーに蒲田社長の勧めで蒲田専務が参加し、野間も運営側として参加していたことが出会いの始まりです。蒲田専務は野間と同年代だったことから、徐々に親しくなっていったといいます。

蒲田社長 「2020年の5月に小宮コンサルタンツさんのオンラインセミナーが開かれ、そこで野間さんが講演をされていました。そのときのテーマが『事業承継』。まさにわが社にとってタイムリーなものだったんです。そこで『株の承継は税理士に頼めばできるが、考え方や人脈の引継ぎは難しい。社長と後継者の事業承継に対しての認識のギャップをどうすり合わせていくかが大事』という野間さんの言葉を聞きました。

経営者としての実務の承継という観点もおもしろく、理念・考え方の承継については野間さんにより具体的にお願いしたいと考えるようになりました」

3代目として蒲田工業を継承した蒲田社長は、経営が軌道にのるまでにさまざまな苦労をしたことから、息子に承継する際にはその経験を活かしたいという想いがありました。

蒲田社長 「私は3代目で、当時の年上の幹部はなかなか言うことを聞いてくれませんでした。また、先代が会長という立場にいたため、自分がやりたいと思っていることをやらせてもらえない時期も決して短くなかったんです」

そういった苦労があった蒲田社長だからこそ、承継をうまく進めたいという想いが強くありました。遺言書などで株の対策についてはすでに行動していましたが、理念や考え方についての承継は重要であること認識しながらも具体策が思いつかず、模索していました。

事業承継カレンダーが固まることで強くなる経営者としての覚悟

▲小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部 野間

事業承継を進めていくにあたり、野間は蒲田社長、蒲田専務、そして常務に対して個別ヒアリングを実施しました。その過程の中でも、いくつかの問題が表面化したのです。

野間 「このヒアリングでわかったのが、蒲田社長は『経営者として大切な考え方はある程度教えてきた』と考えているのに対し、蒲田専務は『まだ自分が社長になったらどのように判断したら良いかわからない』と考えている、という認識のズレでした。

その後、引継ぎ事項の整理に関して、権限の継承・考え方の継承・人脈の継承・資産の継承というテーマを設定し、おのおののすり合わせを行いながら、事業承継カレンダーへアウトプットしていったんです。このすり合わせを行っていく中でわかってきたのが、蒲田社長が蒲田専務にできると思っていたことが、蒲田専務自身はまだ難しいと考えていたというギャップでした」

蒲田専務「それまでは社長の話などを通して理念も身についていると考えていましたが、野間さんはアウトプット資料として『考え方の承継』というものを作成してくれました。これが教科書のようになっていて、判断に迷ったときなどにすごく役立っています」

対話を重ねていきながら、2026年に設定した事業承継ロードマップが少しずつ形になっていきました。

蒲田専務 「自分では覚悟をしていたつもりでしたが、具体的にスケジュールを立てていく中で、自分が今後任されていく時期が明確になりました。5年後から逆算して何をしていかなければいけないのか、そういったことを繰り返し考える中で、やっと腑に落ちた部分もありました。今振り返ると、より一層、覚悟が強くなったのを感じます」

蒲田社長 「まずは何よりお客様を大事にする、お客様を幸せにしなかったら自分たちの幸せは長続きしないという考え方にこれまで社員は共鳴してくれたと考えています。その社員のフォローがあったからこそ、今回の事業承継も順調に進められたと思っています」

事業承継が目的ではない。さらに良い会社にするためにそれぞれが抱く想い

▲第1回のセッション後の懇親会にて

社長・常務・野間と対話を重ねる中で全員のベクトルが同じ方向に向かっていることを実感したと蒲田専務は言います。

蒲田専務 「話し合いに野間さんが加わってくれたことで、蒲田工業の将来のビジョンや課題を明確にできたと感じています。今後についてみんなで共通認識を持てたことが、野間さんが来て大きく変わった点ではないでしょうか」

野間 「ただ会社を承継するだけであれば、株を移すといった決まったことをすればバトンタッチは可能だと思います。しかし、次の世代に引き継ぐにあたっては、今よりももっと良い蒲田工業さんにするための準備や手順を踏まなくてはなりませんし、課題も解決しなければなりません。

引き継いで体制が一時的に弱くなって、そこからまた伸びていくというよりも、今まで社長が伸ばしてきたところをさらに加速させていくためにどうしたらいいのかという点を意識してやってきました」

一方、事業の承継を本格的に進めていくにしたがって、蒲田社長は会社の過去と未来について考える機会がより多くなりました。

蒲田社長 「私の父が承継したときは、初代にあたる祖父が突然倒れて亡くなったことが背景にありました。父は当時専務として頑張っていたのですが、いきなり社長になることが決まって、大変だったと思います。

しかし、私の場合は後継者がすでに決まっています。あと5年間はやるべきことを頑張って、その後はパッと引くということに憧れています。今後に関しては、少なくとも継承については専務がやりたいようにやってほしいです。最近は『このままじゃ渡せない』が自分の口癖になっていて、今のうちに会社のためにできることをやっておきたいという想いも強くなってきました。昔に比べたら良い会社になったという自負はありますからね」

信頼を増幅させ蒲田工業のビジョンを具体化させる

▲第2回のセッション後の懇親会にて

社長と専務は蒲田工業の将来に関して、ビジョンの策定を進めています。

蒲田専務 「今後は、社としての将来の理想像を具体的に表現できるようにしていかないといけません。10~20年後にどうなっていくか、そこがまだ表現しきれていないかなと感じています。

野間さんには、蒲田工業の未来をつくる部分を引き出してほしいですね。私だけではどうしても蒲田工業の視点になってしまうので、社会全体を見ながら、時代に合っているのかどうかといった視点での意見をいただきたいです。あとは、幹部候補の素質などの体制を作る上での相談もしたいですね」

蒲田社長 「私も調査段階までは行ったのですが、海外進出については考えていく必要があると思います。製造業であることを考えるとこのまま日本だけで良いかというと、そういう時代ではないかなと。ただ人材面や金銭面などのことを考えると経営者としては難しい判断が出てくることになります」

変化に強い会社作りを目指す蒲田社長は、今後もさらに良い会社にするために余念がありません。

蒲田社長 「野間さんとは今後も専務を含めて3人で話をする機会をもっと設けて、いろいろな話を聞かせてもらえたらいいなと考えています。5年後に良い話を聞いても意味がないので、まさに今、これからさらに勉強をして、良いものはすぐに経営に活かしたいですね」

事業承継の取り組みを進めながら強固なものになっていった信頼関係は、蒲田工業の未来に向けて活かされています。会社にとって重要な期間となる2026年までの5年間においては、社員を巻き込みながらこの信頼を増幅させ、ビジョンの具現化を目指します。