東日本大震災直後、瓦礫の山と向き合っていく建設機械の活躍

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──中川さんは2011年の東日本大震災の時、コベルコ建機の救援チームの1人として東北に行かれたとお聞きしました。

はい。地震から1週間が経った3月18日~25日にかけて、救援チームの一員として、宮城県岩沼市にあるコベルコ建機グループの販売会社に派遣されました。当時は現地の情報が少なく、行ったところで何ができるかもわからない状態でしたが、救援物資と人手が足りないことは確かでした。「自分に何ができるかわからない」という不安と、「でも何か力になりたい」という2つの気持ちを抱いて、東北に向かう車に揺られていた記憶があります。

──現地ではどのようなことをされていたのですか。

私が行っていたのは、主に救援物資の仕分け、配達ですね。ありがたいことに全国各地のコベルコ建機グループ企業・各拠点から続々と支援物資が届いてきました。ボランティア経験がある人ならわかると思うのですが、段ボールに入れられて送られてくる物資の中に何が入っているのか、どれくらいの量があるのかがわかっていないと、困っている人たちに適切に配布することができないんです。そこで「仕分け・検品」という仕事が重要になります。

どんなことをするかというと、救援物資の箱を開けて、何がいくつ入っているかを確認。食料・飲料・衣服・衣料品といったカテゴリーごとに分けて管理・保管をしていました。こうしておくと、被災された従業員、お客様、近隣住民の方々に必要とされているものを届けやすくなるとともに、「今、ここには何が足りていないか」がわかりやすくなるんです。

──現地の様子はどうでしたか。

現地では想像を超える光景が広がっていました。街のいたるところに瓦礫が散乱しており、自衛隊の方々が必死に救助活動を行っている姿、必要最低限の道だけがなんとか作られている状態。あまりの状況を目の当たりにし、被害規模の甚大さ、自然の脅威に呆然としてしまいました。ただ、その中で唯一誇りに思えたのが、私たちの建設機械の存在でした。

──どういうことでしょうか。

コベルコ建機の建設機械=油圧ショベルが瓦礫の撤去作業で活躍していたのです。建設機械という名前のため、「建物を建てるための機械」という印象をお持ちの方が多いと思うのですが、油圧ショベルは建物の解体や瓦礫の撤去にも使われます。そのことは知識として知ってはいたのですが、毎日少しずつ、油圧ショベルによって瓦礫が片付けられ、道が広がったり、広場が生まれたり、本当に少しずつ復興が進んでいく様子を見て、「ああ、こういうことに役立つ製品だったんだ」と、自社製品に対する認識が変わりました。

──建設機械は広い意味で、「街の景色をつくっていく製品」といえるのかもしれませんね。

人生の大きな転機となった、バングラディッシュでのボランティア活動

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──中川さんが復興や再開発に役立つ建設機械を扱っていることにコミットしていることはこれまでの話で伝わってきました。そのような考えになるキッカケといえるような経験があるのでしょうか。

そうですね。あるとしたら、高校生の時に学校の生徒会行事でバングラディッシュにボランティアに行った経験がそれにあたると思います。あれはまさに、人生観が変わった体験でした。

──バングラディッシュで、何を見て、何を体験されたのですか。

バングラディッシュでは後発開発途上国の貧困を目の当たりしました。もちろん、日本を旅立つ前に情報収集をしていたので知識として知っていたのですが、飢えている子どもたち、整っていない社会インフラといったバングラディッシュの現実は、私が知っているものよりもずっと過酷で深刻なものでした。わかっているつもりだった自分が恥ずかしくなるような、衝撃的な体験の連続でした。

──ほかにも何かあったのですか。

私がボランティアに行った当時はイラク戦争が開戦した直後のタイミングだったこともあり、「なぜ日本はアメリカに肩入れをするんだ」という質問を数多くされました。そもそもバングラデシュを含むイスラム圏の方々は親日の方が多いので、当時、さまざまな事情、感情も交錯していました。日本の姿勢に疑問を持っている方々が多く、街頭ではデモ活動などもあり身の危険を感じることも。ただ、現地の報道では日本で報道されていないことも多く、それぞれの国で、複雑な事情があることにも気づくことができました。「答えは一つではなく、多角的に物事を考える必要がある」ということを学ばせてもらう機会となり、今の社会人生活でも役に立っています。

──ボランティアに行ったバングラディッシュで、中川さんはたくさんの学びを得てきたんですね。

そうですね。バングラディッシュの児童養護施設では子どもたちに折り紙を教えていたのですが、すごく興味を持ってくれて。うまく折れたら子どもたちみんな、最高の笑顔を見せてくれるんですよ。自分にもできることがある、ということを教えてもらった気がします。大学に行った後も海外ボランティアを続けた理由は、「もっと自分にできることがあるんじゃないか」「まだ知らない世界をもっと知りたい」という気持ちがあったからかもしれません。

また、バングラディッシュには大きな河川が複数あり、緑豊かな大地が広がっています。地方に行くと都市開発の真っ最中ということもあり、生活の中にたくさんの自然がありました。自分の生まれ育った田舎町と共通する部分もあり、自然の尊さ、インフラ設備の大切さを学び、またそれに関わる仕事に関心が向いたのも、このボランティア活動がキッカケだったと思います。

建設機械の営業とは、都市開発の未来と、人と、機械を結ぶ仕事

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──そんな中川さんがコベルコ建機に入社した理由を教えてください。

高校時代、大学時代に海外でのボランティア経験を通じて、「人の役に立つ仕事がしたい」「日本の誇れるモノづくり企業で働いてみたい」と考えていました。コベルコ建機の企業説明会で、先輩社員の方からコベルコ建機が得意とする自動車解体機を通じて鉄リサイクルに貢献していることを初めてお聞きし、世界一の高さを誇る建物解体機や燃料消費の少ない油圧ショベルを販売しているとのことに注目。環境に優しいメーカーであり、さらにはグローバルに活躍できるというところに惹かれてエントリーしました。

──今はどんなお仕事をされているのですか。

コベルコ建機製の建設機械の営業職です。提案先は、日本国内の土木業者、解体業者、リサイクル業者、レンタル会社(地場・上場企業)、官公庁、販売代理店と多岐にわたります。訪問活動だけではなく、展示会や販促ツアー、生産工場見学といった販売していくためのイベントの企画もできる仕事です。また、設計サイドとユーザー訪問をしてヒアリングや現場見学から商品開発にも携わっています。

──入社時の志望とはちょっと離れた部署での仕事に思えるのですが。

たしかにそう見えるかもしれません。でも、そうでもないんです。油圧ショベルは、土木、建築、建物解体、金属リサイクル、産廃リサイクル、林業分野など多くのお客様にご愛用いただいております。今の日本は高度成長期とは異なり、環境のことを考えずに建物をどんどん建てていく時代ではありません。限りある資源をリサイクルし、住空間を意識して文明と自然が共存する空間を再開発していく時代です。そのため、私の仕事は建設機械を売ることですが、循環型社会への貢献にもつながっている仕事でもあります。

──それは盲点でした。今の営業という仕事は、中川さんが海外ボランティアの時に湧いた関心事につながっていく仕事でもあったわけですね。働きがいもこのあたりに感じていらっしゃるのですか。

そうですね。でも、それだけではありません。営業という仕事をしていて一番嬉しいのは、建設機械の購入契約をいただくときなのですが、それは「売れた」からというよりも、「お客様に認めてもらえた、信頼してもらえた」という喜びなんです。

──どういうことか教えていただけますか。

建設機械は安い買い物ではありません。一台あたり乗用車やマイホームが一軒建てられるような値段です。超大型機や複数購入契約によっては億を超えることも。だからこそ、お客様は大きな決断を強いられます。営業は、ただ建設機械を売ればいいというものではありません。購入していただいた後も付き合いが続いていくからこそ、営業の役割は「お客様の伴走者であること」だと私は考えています。

お客様にできるかぎり寄り添って、お客様の不安を取り除くお手伝いをしていく。営業手法にマニュアルなんてありません。自分で考え、自分で動いていく。ただ自分だけでできることは限られているので、さまざまな部署の仲間との連携や協力がとても大切です。だから購入の契約は、お客様からの「あなたたちと一緒に仕事をしていきたい」という意思表示でもあると思いますので、とても嬉しく感じます。

──これぞ営業の醍醐味といえるお話ですね。

人と環境を大切に考える営業が、これからコベルコ建機で目指すこと

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──中川さんにお聞きしたいのですが、コベルコ建機において営業職とは、どんなことを任されている仕事だと思いますか。

「コベルコ建機の建設機械を使う人たちとコベルコ建機を結ぶ存在」だと認識しています。コベルコ建機には「ユーザー現場主義」という経営理念があります。これは、常に建設機械を使うユーザーのこと、建設機械が使われる現場のことを第一に考え、真に価値ある商品、サービス、情報を提供していくという考えと姿勢です。

ユーザーと現場の声を汲み上げるのは私たち営業の仕事です。そして、汲み上げられた要望を形にしたサービスや製品の魅力を伝えていくのも私たち営業の仕事です。販売台数、収益確保を担うユーザーに最も近い部署であると同時に、新たな商品開発、事業化を検討していく上で非常に重要な部門だと認識しています。

──そんな中川さんのこれからの抱負を教えてください。

まずは、現在の営業所のマネジメント業務を完遂したいと考えています。人材育成、業務効率の見直し、誰もが活躍、やりがいを持てるような職場環境をめざしていきます。またユーザーの満足度は維持しながらも、所員のワークライフバランスも重要であり、過去の「キツイ」「大変」といった営業職のイメージも変えていきたいです。

将来的には今まで所属した部署で経験してきた「環境リサイクル機械のマーケティング」「建機レンタル事業」「最前線でのユーザー対応」といった仕事経験を活かして、海外での拡販活動などにも挑戦してみたいと考えています。もちろん、各国へのアプローチの仕方は異なると思うのですが、基本的には人対人であることは変わりません。どこまで通用するか、自分の力を試してみたいという気持ちがあります。環境リサイクル機械をさらに拡販していくことで、入社当時に抱いていた「世界をより良くすることに貢献したい、世界を舞台に働きたい」という想いを叶えられたらいいですね。

世界は今、激動の時代を迎えています。社内環境も、外部環境も、これから大きく変化していくでしょう。しっかりと変化や会社方針に柔軟に対応していき、コベルコ建機が進めているコトビジネス(遠隔操作システム K-DIVE®)の普及にも積極的に取り組んでいきたいです。でも、変わることもあれば守っていくべきこともあります。「人(顧客と仲間)を思いやる」というこれまで大切にしてきた思いはそのままに、社会人生活を豊かで濃いものにしていきたいと考えています。

※ 記載内容は2023年7月時点のものです