人事にこだわったキャリアの転機。女性活躍推進の牽引役としてのスタート
コベルコ建機に入社するまでに複数社を経験していますが、ずっと人事の仕事をしてきました。その間、労務、制度企画、採用、ダイバーシティなどのさまざまな仕事に携わりましたが、労務の経験が長かったと思います。
また、当社に来る直前はKOBELCOグループの会社の関西の事業所で働いていました。でも、家庭の事情で東京に転居することになったんです。そのとき、その会社の東京支社への転勤を勧められましたが、東京には人事の部隊がありません。
キャリアの転機にあたってあらためて自分を振り返ってみると、そのときには、自分のやりたいことはやはり人事の仕事だと思いました。人の役に立ち、貢献することに対するやりがいを感じていました。一生懸命学んだことや経験からの知識を伝えることで「ありがとう」と言われて、とても嬉しく感じていました。
今思えばそのときは「スペシャリストになりたい、ならなければ」という意識が強かったのだと思います。自分にとっての仕事の軸を確かなものにするためには、人事としての専門性をさらに磨いていきたいと思っていました。
当時の上司に自分の想いを打ち明け、会社を辞めてでも東京で人事の仕事を探したいと相談したところ、グループ内での移籍先を探してくださいました。なんと、推薦状まで書いていただいたんです。
2015年にコベルコ建機へ入社して、人事労政部に配属となりました。KOBELCOグループ全体では女性管理職の登用は積極的でした。でも、コベルコ建機の人事労政部に限っては私が初めての女性管理職ということでした。しかも、自ら人事をやりたいと言って乗り込んできた会社です。会社からの期待は大きく、同時に私の不安もとても大きなものでした。
さらには、同じグループ会社とはいえ、私にとっては右も左もわからない完全にアウェイの環境です。上司もその状況を気にかけてくださっていて、入社してしばらくは、会議等さまざまな場で、私が情報発信する機会を多く作ってくださいました。でも、実は人前に出るのがあまり得意ではありません。とにかく無我夢中であったことを思い出します。
このときの私の上司は、女性躍進の旗振り役として前に出ることの意義や、個々の活動についてきめ細かく相談にのってくれました。また、自分の活躍が周囲の仲間から期待してもらえること、そして期待を伝えてくれる人がいることをとても嬉しいと感じました。この会社に入社して最初に出会った人たちが私を助けてくれ、大きく伸ばしてくれたことにとても感謝しています。
女性ライン長としての苦労、メンバーへの想い
コベルコ建機の人事労政部では当初は採用、人材育成、ダイバーシティを担当しましたが、2017年からは採用研修グループ長となりました。会社としての公式なライン長です。
私にとって初めてのことでしたので、メンバーへの指導の仕方、接し方等試行錯誤の連続で、毎日仕事を離れても頭から離れることがありませんでした。
しかし、女性である自分にとってライン長が初めてということだけでなく、メンバーにとっても初めて一緒に仕事をする女性ライン長です。戸惑っていたのは自分だけでなく、メンバーにも戸惑いはあったんだろうと思います。メンバーにとってやりにくい存在になっているのではないかということが気になっていました。
しかし、そうした苦労が報われたと思える時が意外に早く、しかも突然やってきました。それは翌年のことです。私は人事を離れ企画管理部広報秘書グループに異動することになりました。
そのときに採用研修グループのメンバーが全員で私に寄せ書きを書いてくれました。その中に「女性のライン長が私たちの自慢でした」という言葉があったのです。たくさん悩み、反省の日々でしたが、そのように思ってくれていたことを知り、とても嬉しかったです。そして、この貴重な経験は今でも私の大きな励みとなっています。
あれほどまでにこだわっていた人事の仕事でしたが、女性ライン長としての経験は私を大きく変えたと思います。スペシャリストとして人の役に立つ、貢献できる、ありがとうと言われる仕事をすることを目指すには、必ずしも人事の仕事にこだわる必要はないと思う自分がいました。
自分のできる限りを積み重ねることで得られる信用、チームのメンバーとともに作り上げる信頼関係こそが大事だと気づくことができたのだと思います。
人事から広報へ。会社を大きく動かすチャレンジ
今は企画管理部コーポレートコミュニケーショングループ(旧・広報秘書グループ)で広報関係の仕事をしています。異動を打診されたときには正直なところ驚きました。しかし、このときには、もはや人事の仕事にこだわるだけでなく、仕事の幅を拡げたいという想いも持つことができていました。
広報で仕事をするようになって、私が最も大きく時間を割いて注力してきたのは“ワークスタイル変革活動”という取り組みです。この活動では、「社員の幸せ度アップ」と「企業力の向上」を実現し、魅力ある会社であり続けることを目指しています。そして、それらの実現のため、「社員一人ひとりの業務効率化」と「働きやすい職場環境の整備」を徹底して推進することを“明文化”して取り組んでいます。
この活動は私たちの職場の空気を大きく変えました。時間や効率化の意識が定着し、「この業務は効率化できるのでは?」「会議やメールは短く端的に」といったような問いかけや会話が当たり前に交わされるようになりました。それにより有給休暇の取得率は上がり、定時に帰る、フレックスを利用することに抵抗がなくなった等、その成果は今では目に見える形で実感できています。
私は、この活動の中心メンバーの一人として、取り組んできました。
一番苦労したのは、業務の効率化とその意識の定着です。全従業員に今の自分の業務を全て出してもらい、一つひとつ廃止できないか、改善できないか等を考えてもらいました。もはや業務改善ではなく、業務を改革するという意識で取り組んでいただきました。私は各部門へのサポートをしつつ、会社全体での取り組み施策についても対応をしてきました。
代表的なもので言うと、退社時間宣言カードの導入を行いました。これは、その日の退社予定時間を書いたカードを一人ひとりが毎日自分の机に掲示するというものです。個人は気兼ねなく宣言した時間に帰宅ができ、上司や周りのメンバーとしっかりとコミュニケーションしながら計画的かつ効率的に仕事を進める習慣が身につきました。幸せ度アップと企業力向上の両立です。
その他、会議やメー作成のルール、社内イントラにポータルサイトを設置し情報発信を行ってきました。
このように広報での仕事は、会社全体を動かす経験ができました。
ユーザー現場主義。社内をひとつに
私のもう一つの大きな仕事は企業理念浸透とブランディング活動です。私たちの企業理念である「ユーザー現場主義」をいかにして社内に浸透させるか、建設機械におけるKOBELCOブランドの認知をどうやって確立するか。世界中の誰もが知っているKOBELCOにしたい。従業員が会社に誇り、愛着を持ってほしい。そういった想いで日々奮闘しています。
企業理念浸透の活動の一つとして、“語り合う場”というものを実施しています。企業理念への理解、共感を深め、実践につなげるために何をすべきかを部門ごと、メンバーみんなで話し合う時間を設けています。
ここで大切なことは、企業理念を各職場の目標に沿った具体的な行動に落とし込むことです。私たちの企業理念である“ユーザー現場主義”を追求するため、本音で意見を出し合うこと、また、メンバーがブレなく共通の目標に向かうためにも非常に重要な時間だと思っています。
さらに、 理念に則した行動をした人をほめる・オープンにする・横展開するといった活動も始めています。まだまだ道半ばで課題もありますが、会社にとって重要なことなのでやりがいを感じながら取り組んでいます。
今までを振り返ると、とても多くの人たちに出会い、助けてもらってきました。より大きな仕事に挑戦する機会にも恵まれました。それは何よりも大切な私の財産です。
私は女性活躍推進の担い手として仕事をしてきました。近いうちに女性の役員も管理職も当たり前の時代がくるでしょう。まだまだ自分が挑戦し走り続けるのはもちろんですが、私の財産も引き継いでいきたい。これからは私に続く人を創ることも私の仕事です。後輩を温かく見守り、そっと手を差し伸べたい。それが今の私の願いです。