目指していた教師を断念して選んだ道──初めて見る貸借対照表に苦戦

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▲教師の道を目指し、取り組んだ教育実習

2023年1月現在 、総務人事課に所属する石村。大学時代は教育学を専攻し、教師を目指していました。

石村 「中学・高校の国語と書道が専門で、教育実習を経て中学・高校の教員の免許は取得できるカリキュラムでした。でも、せっかく教育学部で学んだからには、取れるだけの免許は取っておきたいと思い、かなりムリをして小学校、幼稚園の教員免許まで取ったのです」

それだけの免許取得を目指すために、授業や実習を目一杯詰め込んでいた石村。ところが、2002年当時の就職氷河期の波は、教員採用にも大きく影響しました。

石村 「当時は採用枠がほぼゼロ。非常勤講師では安定的な収入が見込めませんし、結果として教師の職を諦めざるを得ませんでした。これまで目指してきたゴールがなくなってしまったようで、茫然としたことを覚えています。そのときに助け舟を出してくれたのが、京王電鉄に勤めていた父の上司でした」

その上司が、ちょうど京王電鉄から京王建設に出向してきていた社員で、「うちの会社受けてみたら?」と、石村に採用試験の道を開いたのです。

石村 「実家が京王線沿いなので、京王グループにはとても親しみがありました。また、父親が土木の仕事をしていたので、小さいころに現場事務所へ連れて行ってもらうこともありました。そんな経験から、建設業に対して良いイメージを持っていたことが、教師の道を諦めて民間企業への就職に舵を切らせてくれたのかもしれません」

無事に入社を果たした石村が、最初に配属されたのは総務人事課。大学では教育学を主に勉強してきたため、苦労も多かったと振り返ります。

石村 「企業の決算で必要な『貸借対照表』の存在さえ知らない状態なので、もちろん内容を理解できるはずもありません。『とにかく手で書いて覚えた方がいい』と先輩に教えられ、過去の伝票をまねしながら覚えていきました。

少しでも早く慣れようと必死に取り組む中、先輩の異動で私が業務を引き継ぐことになったときは大変でしたね。何千万円という額の伝票を一手に扱わなければならず、かなりのプレッシャーでした」

「メンバーの自由な発想を大切に」 京王建設で育んだマネジメントの姿勢

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▲まずはメンバーの意見を聞くことから始まる

総務、経理部署で10年間の勤務を経て、再び総務人事課へ異動となった石村。2016年には、課長補佐に昇進し、現在も管理職として業務を続けています。

石村 「総務人事課は、現場の社員の勤務を支えることがミッション。採用、社員の教育、人事制度の構築、給与計算、社会保険、福利厚生、広報など、多岐にわたる業務を担います。その中で私は主にマネジメントの立場として、4人いるメンバーがそれぞれ進める業務の進捗状況の確認やフォローなどを行っています。

ここ数年は採用を強化しているので、新卒・中途ともにどうやったら良い人材が集まってくれるか検討し、イベントなどに参加することも少なくありません。そこで出会い入社してくれた社員に、長く働いてもらえる制度作りも大きなミッションの一つです」

石村がチームマネジメントで大切にしているのは、部下が自由な発想を出せるよう、自分の考えをあまり押しつけないことです。

石村 「まず『どういうふうに進めたいの?』と聞きます。そこで、その人なりのやり方を引き出すようにしているんです。もちろん、そもそもが違っているときには、意見を挟むこともありますし、できてなくて大変だったら一緒に手伝うこともあります。ですが、基本的には、それぞれが持つ考え方に沿って仕事を進められるようなサポートを意識しています」

こうした石村の姿勢もあり、以前総務人事課にいた入社1年目の社員が採用活動で配布する販促グッズを発案することもありました。

石村 「京王建設には、そもそも優しくて穏やかな人が多いですし、考えが言いやすく、年齢に関係なく意見が通りやすい風土があると思っています。若手だろうと、『これをやってみたい』と言えば、『それをやるためにはこう考えたら?』とか、『この業者さんに声かけてみよう!』とか、そういう挑戦を支えてくれる人たちがいるのです。

私がマネジメントとして大切にしている姿勢は、もともと自分が持っていたアイデアというよりは、上司や仲間に私自身がそう接してもらったからこそ、身についたものだと思いますね」

母としての経験を活かした、子育てと両立しやすい社内制度改革

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▲会社の協力があれば、家族も仕事も大切にできる

石村は、2016年に育児休暇を取得し、2018年に復帰しました。

石村 「復帰するころはちょうど子どもの夜泣きがひどくて、寝不足気味な状態が続いていました。そのため、復帰には不安もありましたが、面談で上司に相談すると、『みんなで協力してやっていくから大丈夫』と言ってもらえて、とてもありがたかったですね」

復帰後は、保育園の送迎に合わせて、朝と夕方1時間ずつの時短勤務をしている石村。総務人事課長の、「今は仕事よりも子育ての方が重要なんだよ」という言葉があったからこそ、時短勤務にも移行しやすかったと振り返ります。

石村 「子どもの急な発熱でやむなく早退する際には、周囲のメンバーにフォローしてもらえていて、育児をしながらでも働きやすい体制になってきていると実感します。

こういった形でお互い仕事をフォローし合うためには、業務に関する報告や相談を日ごろから密にしておくことが大切です。そうすれば急に誰かが休んだとしても、他のメンバーがスムーズに引き継げますから。また、短い時間で質の高い仕事ができるよう、効率性も個人として意識しているポイントですね」

社内制度を活用し、子育てと仕事を両立してきた一方、会社としてまだ十分に制度が整備されていない部分もありました。そこで石村はより両立しやすい環境を整えるべく、2021年に制度の改正を行いました。

石村 「子どもが小学生になる前に、現状の制度では時短勤務が使えないことに気づいたのです。当時、京王建設で時短勤務制度を利用可能だったのは、子どもが小学校に入るまで。利用できず通常勤務となれば、学童保育へのお迎えに間に合いません。そこで2021年、子どもが小学校を卒業するまでは時短勤務が認められるよう制度を改正しました」 

改正のきっかけは、自らの体験。自己都合ではないか、という葛藤が石村にはありました。それでも変革に踏み切ったのは、自分の行動が間違っていないという、確信があったからでした。

石村 「育児休暇から総務人事課に戻ったとき、当時の社長から言われたのです。『総務人事課という、改善したいことに対して意見が言える部署にいるのだから、石村さんが自身の実体験にもとづいた改革を行うことも必要だと思う』と。その言葉があったから、葛藤を払いのけられました」

現在は会社全体では男女合わせて、10人ほどが時短勤務制度を活用中。子育てと仕事の両立を目指す社員が増えてきました。

石村 「私は37歳で子どもを産んだので、現在は子育てと管理職をかけ持ちしている状況です。以前、後輩から『私のような管理職が時短勤務をしたり育児の看護休暇を取ったりしていると、部下も申請しやすくなります』と言われたことがあります。内心、管理職なのにいつも申し訳ない気持ちもあったのですが、そんな効果もあったんだな、とホッとしました。

京王建設には、転勤の可能性がないため、ライフプランをしっかりと立てて、若いうちに計画的に家を買うような社員もたくさんいます。現場の社員なども含め、全社員が子育てしやすい制度がより充実すれば、さらに長く勤めたいと思える会社になっていくのではないかと信じています」

心がけているのは、一人ひとりの採用候補者が自分らしさを出せるようなフォロー

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▲面接ではたくさん自分のことを話してほしい

石村は人事業務として、採用面接の際の司会などの事務方の仕事も担当しています。これまでも面接会場への案内や、終了後の見送りを通して、さまざまな候補者と接してきました。だからこそ、面接の印象から自分が推して入社した社員が活躍し、他の社員から褒められていると、自分のことのように嬉しくなると石村は笑います。 

石村 「事務系の採用の際に、絶対にうちにきてほしいと思った候補者を、専務や常務に猛プッシュして入社が決まったことがありました。配属されたのが私の夫がいる部署だったので、活躍の様子を毎日聞かせてもらって。その社員は、今は総務人事課で私と一緒にがんばってくれているんですよ」

“自分が推した人材が会社で活き活きと活躍し続けてほしい”という想いも、労働環境の改善に向けた石村の原動力の1つです。そんな石村が、面接時に候補者に対して心がけているのは、緊張して思うように話せないということがないように、リラックスしてもらうこと。

石村 「たくさん話してもらうことで、面接する側は初めて適切な判断ができます。学生時代のアルバイトやサークルでの活動など話しやすい話題をしてもらい、少しでも緊張を緩めてもらうようにしています。せっかく面接に足を運んでくれたのにうまく喋れないまま帰ってしまうのは、本当にもったいないですから」

他にも石村は、控え室から面接会場に案内する際、緊張している学生には声をかけて、一緒に深呼吸して寄り添うなど、面接でその人らしさを出せるようなフォローをしています。終わってからお見送りする際には、「どうだった?喋れた?」と声をかけることも。石村から見て、京王建設に向いている人とはどんな人なのでしょうか。

石村 「自分から周囲に声掛け、あいさつができる人、また京王建設でやりたいことを具体的に言葉に出して言ってくれる人です。京王建設は、若い社員の意見も積極的に取り入れるような社風があるので、そういう人の方がマッチすると思います」

今ともに働く社員に対しても、将来の社員になりうる候補者に対しても、温かく接する石村。これからも仕事を通じて、京王建設で働く仲間が活き活きと活躍できる舞台をそっと支えていきます。