家庭の影響もあり、迷うことなく建設業界へ
住居に始まり、マンション、ビル、ホテルなどの大型建築まで、さまざまな建築物の完成には実に多くの人々の関わり合いがあります。職人技を繰り出す職人さんはそのひとりですが、なによりも、現場の指揮官の存在はなくてはならないもの。
古木宏和は建築現場の施工管理者として、現場を統率する人物です。全体のスケジュールを引き、管理し、職人さんに施工スケジュールを共有しながら業務を進めていく。まっさらな土地に建築物が立つまでの一連の流れを担っています。
京王建設には2007年に中途入社。入社13年目の今となっては、大きな現場を任されたり、新卒向けの会社説明会に現場社員の代表として参加したりと、注目の中堅社員としてのポジションを確立しています。そんな古木と建築との出会いは、大変身近な場所にありました。
古木 「実家が造作大工だったんです。なので、建築には幼いころからずっと触れていて。建築以外のことを知らない子どもでした。ただ、社会に出てすぐ家族と一緒に同じ会社で働くのもなんだか違和感があったんですよね。そこで、他の会社を知ろうと考え、建築の学校を卒業後ゼネコンに就職しました」
新卒で入社したゼネコンでも建築現場の施工管理業務に従事しました。2年ほど働いた後、京王建設に転職。前職の経営方針と自身の考えに相違を感じての転職だったと語ります。
古木 「前の会社で2年ほど働いていて、建築の基本となることは学べたのかなと思います。施工管理の仕事そのものはおもしろいなと感じていたので、同じ業界で転職しようと。そこで見つけたのが京王建設でした。
学生時代から名前を知っている企業だったので、なんとなく興味があるなと思い受けたら採用され、気付いたらあっという間に丸12年働いていました(笑)」
大型案件でも貫いたのは「いつも通り」
京王建設入社後、古木が配属されたのはマンションに代表される、共同住宅の新築工事の施工管理。その他、有料老人ホームやグループ会社のホテル新築工事の現場にも携わるなど、幅広く経験を積んできました。
古木 「建設会社には、日々さまざまな現場の仕事があり、その中で着工や竣工のタイミングなどを見計らって僕たちには仕事が割り振られていきます。『こんな仕事がしたい』と思って業務に携わってきたというよりも、やるべき仕事をひとつずつ、確実にこなしてきた感覚のほうが近いですね」
仕事に向かう姿勢からは古木の真っすぐな性格が伺えます。13年目の今、これまでを振り返る中で一番印象に残っている仕事は北海道での施工に従事したことだと語る古木。
古木 「北海道の札幌で建設した『京王プレリアホテル札幌』の施工管理を担当しました。まさか北海道の現場に行くことになるとは、という衝撃を受けましたが(笑)。とはいえ、仕事自体はもちろん東京でも北海道でも変わらず、いつも通りやる、という感じでしたね。
ただ、印象的だったのは雪国ならではの管理があること。大雪が降ると現場で作業を進めることは困難ですし、もともと冬は気温も低いので、いつも通りとはいきません。そうした、現場に合わせた管理を知る面で学びになりました」
大型ホテルの建設ではありましたが「京王プレリアホテル札幌」は大きなトラブルもなく竣工を迎えます。古木自身、淡々と仕事をこなしたのみと語りますが、まさにそのかいあって滞りなく現場も進んでいました。
古木 「僕自身が何かする、というよりも現場で一緒に働く職人さんが働きやすいと感じてくれることのほうが重要です。無理のないスケジュールを引いたり、適度にコミュニケーションを取ったり、現場ではそういったことを意識して立ち回るようにしていますね」
正しいコミュニケーションを武器に、チームで仕事を回していく
古木が建設業界に足を踏み入れて約15年が経過します。そんな古木にとっての仕事のやりがいは、今や当たり前のことを当たり前にこなせることへと変化してきています。それは、施工現場を統率するプロとしての心がたしかに座った証なのかもしれません。
古木 「初めて施工管理に関わったときは、建物がどんどん完成していく様子がすごくおもしろくて、嬉しいなと感じていたんです。今は、嬉しくないわけではもちろんありませんが、良い意味でそれが“当たり前“になったのかなと。
多くの方と一緒に働いているので、できる限りトラブルは避けたいですし、スムーズに竣工を迎えたい。そういう意味では、何もないほうが僕にとっては嬉しいことなんですよね。無事に、スムーズに、つくれたぞという」
何ごともなく現場を回すために古木が日々意識していること、それは適材適所に業務を割り当てること。先輩や後輩に関係なく、向いていると思えば仕事を任せる。それは古木の別け隔てなく人と接することができる性格だからこその強みです。
古木 「上司だからとか部下だからという忖度をすることはなくて、自分の手元にある仕事はどんどん人に渡していこうと思っています。自分自身が抱え込みすぎても仕事が滞るだけですし、ひとりですべてをこなすことはできないので。
その代わり、部下に仕事を頼むときには『やれるところまでで良いから。きつかったら言ってね』とフォローはするようにしています。まあ、僕自身が余裕を持って仕事をしたいという思いもありますが(笑)」
また、古木が仕事を進める上では、適切なコミュニケーションを取ることを意識しているといいます。それは、仕事を任せるならば相手の仕事の様子や心理状態には注意を払うことで、仕事が円滑に進むと考えているからです。
古木 「過度にコミュニケーションを取るというわけではありません。ただ、言いたいことをきちんと伝えられるような関係性は、築いておくべきだろうなと思っているので相応の対話は意識していますね。
そのためにもできる限り、和やかな雰囲気づくりをしたいなと。働く上では、お互いに言葉のキャッチボールができたほうが絶対に良いですからね」
そこにある仕事を着実にこなすこと。それは今も未来も変わらない
着実に経験を積み重ねてきた古木が今目指しているのは、現場所長として多くの仕事をこなすこと。キャリアアップに強い関心があるわけではないものの、幅広い視野を身に着けてよりスムーズに仕事をこなせる人材になれるようにとまい進しています。
古木 「本音を言えば基本的に現場に出ることが好きなので、管理やマネジメントばかりの仕事はしたくないと思っています。ただ、建設業界にいる以上、現場所長は遅かれ早かれ経験することになりますから、それならば早いうちにその立場を知っておきたいなとは思いますね」
多くのステークホルダーが関わり合いながらひとつの建物を建てていく建設業界の中の人間だからこそ、今後、古木は全方位的に利益を上げられる体制をつくりたいと考えています。
古木 「京王建設として利益を上げることももちろん大事ですが、そればかりを追いかけるのはなんだか違うような気がするんです。自分たちだけでなく、僕たちと一緒に働いてくれている周囲の企業、現場の職人さん含めてみんなで良い仕事がしたいなと思うんです」
「これから先もやるべき仕事を、淡々とこなすだけです」と一貫して語る実直さこそ、彼が多くの人の信頼を獲得し、仕事を進められる理由なのでしょう。小さなことに一喜一憂することなく仕事に取り組むその姿勢は、京王建設を支える強い柱のようです。