地域を元気にするために、あらゆる角度からまちづくりに挑む

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JR九州では、“あるべき姿”として、「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」を掲げています。また、その“あるべき姿”を実現するための“おこない”として、「誠実」「成長と進化」「地域を元気に」という3つのキーワードを大事にしてきました。いまもこれからも、「地域を元気にして、地域とともに成長していく」ことが、私たちJR九州の一番の願いです。

九州は、全国平均よりも早いペースで人口減少が進み、過疎化や高齢化が深刻な町村も少なくありません。そうした課題を解決するために、各県の特色を活かしながら、地域の方とともにまちづくりに取り組んでいくことがJR九州の使命だと思っています。

まちづくりとひと口にいっても、さまざまな活動が含まれます。たとえば、駅ビルやマンションの開発もその一例。駅ビルをつくることで、駅周辺が賑わうだけでなく、新たに数千人の雇用を生むことができます。地元に住み続けてもらったり、九州へのUターンやIターンを検討してもらったりするためにも、働く場所があることはきわめて重要。こうしたハード面からの地域貢献は引き続き必要だと考えています。

一方で、D&S(デザイン&ストーリー)列車と呼ばれる観光列車の運行や、駅を起点として10キロほどのコースを歩く“JR九州ウォーキング”というイベントの実施なども、まちづくりの一環として進めてきました。こうした取り組みを通じて、地域の方が地元の良さを再発見したり、観光客が増えて観光産業が活気づいたり、地元の方が楽しんでおもてなししてくださったりすることも、地域貢献につながると考えているからです。

このようにJR九州では、地元の方々との関係性を大切にしながら、九州が元気になるための取り組みをあらゆる角度から進めています。九州の中でも、福岡はとくにアジアのゲートウェイとして韓国や中国へのアクセスが良好。地元を盛り上げた先に、日本やアジアにも元気を届けられたら……というビジョンを描いています。

私はこれまで、“明るく、優しく、真面目に”というモットーを掲げて日々の仕事に臨んできました。明るく前向きな姿勢を持っていれば、良い発想が自然に浮かんでくるものです。そこに地域の方々の気持ちを思いやる優しさ、学びを怠らずさまざまなことに誠実に挑戦する真面目さが加われば、事業の成長はおのずと促進されると考えています。

2004年の九州新幹線部分開業を先導。前例のないプロジェクトに挑み続けたキャリア

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▲交通新聞社提供

私は工学部機械科の出身です。もともと、ものづくりに興味があり、中でもとくに人類の進歩にともなって発展してきた“乗り物”に携わりたいという気持ちが強く、父親が働いていた影響もあって、当時の国鉄に入社しました。

入社後、1年ほど鉄道車両のメンテナンスを担当し、列車の運転士を経て、現場の管理者になりました。その後、運輸部長として車両製造やダイヤ整備の統括、乗務員のマネジメントまで幅広く担当するなど、さまざまな業務を経験。鉄道車両の設計など、ものづくりそのものを担当することこそありませんでしたが、充実したキャリアを歩んできたと思っています。

これまでのキャリアを振り返ってもっとも印象的だったのは、2004年3月に部分開業した九州新幹線のプロジェクトに開業準備室長として携わったときのこと。2002年7月から準備に取りかかりましたが、在来線とは仕様やルールがまったく違うため、ゼロから新幹線について勉強する必要がありました。知見不足を補うため、先に開業した長野新幹線や東北新幹線の経験談を参考にしようと、何度も出張を重ねて関係者にヒアリングを行いながら準備を進めていきました。

また、新幹線の構造物の建設を担当する当時の日本鉄道建設公団(現 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)とも打ち合わせを重ね、プロジェクトメンバー全員が同じ方向を向いてプロジェクトを進められるようリードしました。開業当日、始発駅となる鹿児島中央駅にメンバーを集め、皆で新幹線の車両を雑巾で磨いて出発を見送ったことは、いまでも鮮明に覚えていますね。

その後すぐに、新幹線鉄道事業部長として安全運行を担う責任者に任命されました。新幹線は日本で一番安全といわれる乗り物。開業の無事を喜ぶ間もなく責任あるポジションに就くことになりましたが、JR九州として初めての新幹線開業に携われたことは、とても光栄なことでした。

また一方で、2013年に運行開始したクルーズトレイン “ななつ星 in 九州”のプロジェクトの責任者も経験しています。当時、日本国内に前例がない列車をつくろうと、スペインに出張してモデルとなる列車を視察するなど、やはりゼロから出発し、勉強を重ねて運行開始へと導きました。こうしたさまざまな“社内初”や“日本初”のプロジェクトを経験させてもらい、試行錯誤を重ねてきたからこそいまの私があると思っています。

苦しいときこそ、生まれ変わるチャンス。コロナ禍を機に会社を見つめ直し挑戦し続ける

▲西九州新幹線開業記念「かもめ楽団」SPECIAL MOVIE

新型コロナウイルス感染症が経済に与えた影響は甚大でしたが、JR九州も例外ではありませんでした。2020年3月、いつもは満員だった通勤電車がガラガラな様子を見て、会社存続の危機を感じたのを覚えています。不動産販売事業は順調でしたが、鉄道事業や駅ビル、ホテル、外食産業などは売上が大幅に落ち込み、将来を見据えどうするべきかを真剣に考える必要がありました。

そんな中で実施したことのひとつが、BPR施策によるコスト削減です。たとえば、列車が折り返すたびに行っていた車内の清掃作業は、現地を確認し、回数を減らしても十分きれいな状態を維持できると判断し、実施回数を見直すことに。

また、乗降者数が減少したことを受け、きっぷの販売窓口数の見直しを実施しました。これについては、人出が戻ってきたいまも、現場の調査を続けながら、どれだけの窓口を確保するのが適切か調査中です。そのほかにも一つひとつの業務を見直し、社員が知恵を絞って効率的な仕事の進め方へとシフトしたことで、140億円もの固定費削減を実現できました。 

最近の大きなトピックは、2022年9月に佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅を結ぶ西九州新幹線が開業し、「かもめ」が運行を開始したことですね。両県へのアクセスを便利にすることで、経済効果や地域の活性化をめざした、西九州エリアの新しい未来をつくるプロジェクトです。

西九州新幹線の開業にあたっては、地域を盛り上げる取り組みができないかと、“私たち、かもめ。”プロジェクトを展開し、一日限りの“かもめ楽団”を結成しました。これは、沿線に住む皆さまに参加を促し、歌ったり楽器を演奏したりしてもらおうというもの。地域の方に喜んでいただけただけでなく、ホームページやSNSを通じて全国に発信し、「JR九州は地元密着度がすごい」といった言葉もいただくことができました。

また、西九州新幹線の開業にあわせて新しいD&S列車“ふたつ星4047”も運行開始するなど、西九州エリアを盛り上げるさまざまな取り組みが進行中です。

コロナ禍では、社員たちがとても前向きに変化に対応してくれたことも印象深いですね。たとえば、駅業務が少なくなったことから、一部の社員は一時的に地元企業に出向してもらったのですが、出向先で得た経験を当社での仕事に活かし、さまざまな学びを持ち帰ってきてくれました。また、出向した社員から、「JR九州ほど挨拶をする会社はないですよ」といった声が多くあがり、自然と挨拶を交わす文化が根づいている当社の魅力について、あらためて認識できました。この文化をこれからも大切にして、明るく元気な会社にするしくみを作っていきたいとより強く思いました。

JR九州が“あるべき姿”を実現するために掲げる“おこない”のうちのひとつ、「成長と進化」には、「苦しいときこそ挑戦し、新しく生まれ変わろう」という想いが込められています。社員たちはまさにそうした姿勢を体現してくれましたし、当社には積極果敢に仕事と向き合う社風があると自負しています。

地域とのつながりを大切に、地域を元気にする取り組みをこれからも

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現在は、鉄道収入がコロナ禍前の9割ほどにまで回復してきました。私たちは2023年度を新しいスタートの年だと位置づけています。この数年間で停滞してしまったことを含めて、さまざまなことに挑戦していきますし、組織全体でより明るく元気に、地域と一緒に何ができるのかを模索していきたいと考えています。

JR九州では現在不動産事業が収入の多くを占めていますが、九州にお住まいの方々からは、いまもまだ「JR九州は鉄道の会社」と認識されていて、鉄道事業に大きな期待が寄せられています。

一方、地方に行けば行くほど人口減少は深刻ですし、車を1人1台所有するような車社会化も進んでいます。利便性の高い道路が開通していることもあり、一部線区の鉄道収入はピーク時の8~9割減という状況で、列車の本数を削減したり、駅の体制を見直したりといった措置を取らざるをえないのが現状です。

そうした状況に寂しさを感じる地域住民の方々も少なくありません。会社の経営状況を含め、地元の方たちに向けて丁寧に説明する義務が私たちにはあると思っていますし、同時に、鉄道を走らせることだけでなく、地域を盛り上げる取り組みに積極的に関わっていきたいと考えています。

たとえば現在、駅舎を地域の方に活用していただいたり、古民家を改修して旅館を開業したりといった取り組みも進行中です。これ以外にも、まだまだJR九州だからこそできることがあるはずなので、地域とのつながりを大事にしながら、九州を元気にしていきたいと思っています。

まだ動き出していない領域、私たちがまだ気づいていない領域も含めると、JR九州には挑戦のフィールドが無限にあります。そうした環境を楽しめる、明るく前向きで、挑戦意欲に満ちた人にぜひ入社し活躍していただきたいですね。

窮地にあるときこそ、新しいJR九州に生まれ変わるチャンスだと言いましたが、行動を起こさなければ、ピンチはいつまでもピンチのまま。危機的な局面でこそ挑戦を重ね、これからも新たな一歩を踏み出せる組織であり続けたいと思っています。

※ 記載内容は2023年4月時点のものです