経営者との会話の端々からお客さまのニーズを顕在化する

お客さまとの対話で心掛けていることは“スピード感と丁寧さ”。およそ100にもおよぶ法人のお客さまを担当している木村は、迷わずそう答えました。

法人営業部でのメインとなる業務は、法人向け各種保険商品に関する相談、提案、販売、アフターサービスと多岐にわたります。

木村 「営業というと硬く聞こえがちですが、地域の経営者を訪問して、お悩みを解決する方法を一緒に考え、地域の情報交換をさせていただきながら、様々なお役立ち情報をお届けしております。その中でたとえばお客さまの会社が退職金の準備をされていないとお聞きすれば、退職金制度を含めた福利厚生につながる当社の商品のメリットをお伝えすることもあります。

様々な経営課題の解決策をお探しの経営者さまも多くいらっしゃいますので、お客さまのニーズをお客さまと一緒に確認していくためにも、日頃からの会話が大切だと思っています」

これまでも営業職として信頼を一番大切にして営業活動をしてきましたが、2019年に発覚した不適正募集の問題があったことで、より一層その気持ちは強くなったといいます。

木村 「不適正募集の問題の後も、多くのお客さまから厳しいお声をいただきましたが、そうした中で担当する法人企業のお客さまからねぎらいの声を掛けていただくこともありました。そんなときには、お客さまに信じていただけていることについて心から感謝しました。そんな風に思っていただけたという感謝を忘れずに、何かあったときにはすぐ駆け付けられるような心づもりをしています」

人に恵まれている、というのはお客さまのことだけではない、と木村はいいます。外に出れば一人で営業に向かう厳しい世界ですが、部のメンバーとはとても和気あいあいと過ごせているという職場環境。現在は、9名のメンバーのうち後輩3名を育成する立場にもあり、OJTで営業の仕事を教えています。

人見知りをアルバイトで克服。先輩と本から学び取った営業での会話術

高校生のころまでは、具体的な将来の夢がなかったという木村。祖父が税理士だったことから、自分も税理士を目指そうと、大学では経済学を学び始めます。しかしいざ勉強を始めると税理士に必要な会計学よりも経営学の方が面白いと感じ、税理士からは方向転換。経営や心理学をメインで学び、金融業界を目指して就職活動を始めました。

木村 「入った会社には長く勤めたかったので、信頼のある会社だと思えた郵政グループを選びました。法人営業コースで内定をいただいたのですが、そのときになって『え、私、営業するんだ』という心配が募ってきたのです」

今でこそお客さまにはつらつと話しかける木村ですが、子どものころは人と話すのが苦痛と感じるほど人見知りだったと打ち明けます。

木村 「大学3年生のときに、洋服好きが高じて憧れのファッションビルにあるショップでアルバイトを経験しました。そのビルの中でも価格設定が高めのブランドだったこともあり、お客さまにこちらからお声掛けしないとなかなか購入していただけないので、接客のテクニックを先輩から教えていただきました」

この時のアルバイトの経験を通して少しは人見知りが改善したというものの、当時の話しかける対象は同年代の女性がほとんど。一方、就職後に営業の仕事で話さなければいけないのは50~60代の経営者層がほとんど。営業職としてどうすれば会話が弾むのかを学ぶべく、本を読んだり、会社の先輩方が話す内容を積極的にメモするようにしたといいます。

木村 「結論としては、食べ物と旅行の話は年齢も性別も問わず盛り上がりますね。お客さまにランチが美味しいお店を教えていただくことも多く、これは仕事だけでなく実益も兼ねています(笑)。そうやって、まずは気軽な話をきっかけにしながら、少しずつコミュニケーションを広げ、深めています」

振り返ってみれば、大学で勉強した経営学や心理学は営業職にとても役立っている、と言う木村。今ではこの仕事以外考えられないと語ります。

成功体験の喜びとともに、心に深く刻んだ後悔の念。経験を成長の礎に

営業としての木村の座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。先輩から言われた「営業の神様とお天道様は、必ずあなたを見ています」という言葉も忘れないようにしています。

木村 「入社1年目の冬に、多くの先輩方が断られていた会社さまからアポイントをいただけました。たまたま、その会社の退職金制度に関するニーズが高まっていた時期だったのです。

お話をさせていただいたときに手応えのようなものを感じ、周囲の方に何度もアドバイスをもらいながら通い続け、最終的に翌年の9月にその会社さまから直接『木村さんのところに決めたからよろしくね』とお電話をいただけました。電話を受けた車の中で、嬉しくて一人で泣いてしまったことは、今でも忘れられない思い出です」

入社1年目で知識はまだ浅く、伝え方も上手ではなかったと振り返りますが、お客さまに聞かれた宿題に対して、精いっぱいの答えを持っていくようにしていた努力が、お客さまの気持ちを動かしたことは確かでした。

木村 「その後、私は一旦青森を離れましたが、現在は再びその会社を担当させていただいています。途中、岩手県の盛岡支店を経験していますが、青森に戻ったときにご挨拶に行ったら、『成長されましたね』とお褒めの言葉をいただいたことも嬉しかったですね」

しかし、木村の胸にあるのは成功の体験だけではありません。後悔の念も深く心に刻んでいます。法人営業部に入社して2年目のとき、営業のために個人宅を訪問する機会がありました。そのときなかなか契約のとれない木村を見かねて、加入してくれた女性のお客さまがいました。1年ほど経ったころ、その方が亡くなられたことが知らされます。

木村 「息子さんからご請求手続きのご依頼をいただいていましたが、死亡保険金のお支払いに関するお手続きが初めてだったことや、ほかの案件で自分が追われていたこともあり、お手続きに時間がかかってしまいました。その様子に息子さんが気付き、『亡くなった事実も受け入れ難いのに、手続きも進めてくれないのか』と怒られてしまったのです」

生命保険というものの重さを痛感したという木村。入社してからずっと携わってきた法人契約は個人契約に比べ死亡保険金をお支払いする機会が少ないため、「お客さまがお亡くなりになる」ということの重大性に「我が事」として気づけなかった自分自身を木村は省みました。

生命保険は、本来は残された遺族の不安を解消するためにあるもの。遺族が一番不安なときに、スピーディに対応できなかったことを、今でも悔やみ、反省しています。

木村 「お線香を上げさせていただいたときに泣いてしまいました。もう二度とこのようなことは起こしません。それまでは、とにかくまず契約をいただきたいという気持ちでいっぱいでしたが、それ以来、ご契約いただいた後のアフターフォローのこともしっかりと考えるようになりました」

この経験をして以来、どんな手続きでも一人で完璧にできるように、一度経験した手続きはスクラップを作ってメモし、それまではギリギリだった提出物も早めに出すように心掛けるようになりました。今ではすぐにでも出さないと気持ちが悪いと思うまでに、意識が変わったといいます。

信頼される先輩になることが、今まで支えてくれた存在への恩返しに

気持ちが落ち込むことも悩むこともありながら営業を続けてこられたのは、困ったときに支えてくれる人たちが周りにいたからと話す木村。今は、後輩を支える側に立つようにもなりました。

木村 「親しみやすい先輩より、信頼される先輩になりたいです。私自身、信頼できる先輩に悩みを話しますから。私がいずれ信頼されるようになることがこれまで育ててくださった先輩たちへの恩返しにもなりますし、若手の人たちの育成や指導になると思います」

OJTでの指導は自分の勉強にもなっているといいます。今までは勢いだけで営業活動につき進んできましたが、若手の育成のためには、自分の知識を改めて見直して整理する必要があり、それ自体が自身の営業活動につながることもありました。

木村 「後輩に伝えられていないことは、当然お客さまにも伝えられていないわけです。人に物事を伝えることの難しさを改めて感じ、お客さまとの会話自体を見直すきっかけになっています」

現在は青森支店の課長代理として、法人営業部の中心的な役割を担っている木村。上司からは、さらに上のステップを見て仕事をするように言われています。

木村 「昇進すること自体が目標ではありませんが、役職が上がることで動ける範囲も変わってきます。若手の意見を取り入れ、皆が仕事をしやすい環境を整えられる立場になるのが現在の目標です」

一方で、法人営業に携わる仕事はこの先もずっとしていきたいという木村。入社以来、成功体験だけでなく、失敗も真摯に受け止め、ポジティブに意識を高めて成長を果たしてきました。後輩の育成では、努力を続ければその姿を見て応援してくれる人が現れるという実感とともに、先輩から受け継いだ「営業の神様とお天道様は、必ずあなたを見ています」という言葉を伝えようと心に決め、これからも営業の道を進んでいきます。