どんな依頼にも対応したい──処方開発と基礎研究にかける想い

研究部門の役割は、一言でいうなら“アイデアを形にする”こと。開発部門から寄せられた色味と塗り心地のリクエストにもとづいて、処方を開発しています。依頼があるごとに、課員で分配して担当商品を決めることになっているといいます。

横田 「リップメイク担当として、リップ商品を中心とした化粧品の処方開発に携わっています。処方の安全性はもちろん、熱や光によって悪影響が出ないかを確認する、安定性の試験なども私の担当です」

依頼を受けてから発売に至るまでの期間は試行錯誤の連続です。試作品づくりからはじめ、開発部門からのフィードバックを参考に研究を繰り返していきます。

横田 「色味については、指定された色味のサンプルと並べても違いがわからないくらいになるまで調整します。塗り心地のポイントは、原材料の組み合わせを試行錯誤しながら最適な状態に仕上げること。試作品の開発が終わり、処方が確定したら、次は商品化に向けての準備を整えていきます。
試作は研究所で行いますが、製造は工場で行うので、スケールも勝手も違います。環境が変わっても、確実かつ安全に商品が作れるか、量産できるかをチェックするのも、私たちの役割です」

また処方開発と並行して、研究員は日々、基礎研究にも励んでいるといいます。

横田 「基礎研究を行う目的はふたつあります。開発部門からどんな依頼が来ても対応できるようにすることと、確実なデータを取得できる評価や分析の方法を確立させることです。個人でテーマを設定して研究を行い、私は機器分析を用いて唇の荒れのメカニズムを解析したり、荒れにくい唇を実現するリップ商品の研究を行ったりしています。
唇の荒れを研究テーマに選んだのは、大学時代に皮膚疾患に関わる研究をしていて、その経験を生かしたいと思ったからです。現在は同じテーマに興味を持つ先輩社員とふたりで、共同研究を進めています」

メイクの魅力に惹かれたきっかけは、ビジュアル系バンドとの出会い

横田が化粧品メーカーの研究員の道に進んだのには、ある原体験が強く影響しています。

横田 「ロックバンドが大好きで、中でもビジュアル系バンドにすごく惹かれたんです。男性がメイクをしていることに驚いたと同時に、その奇抜さや美しさ、オーラのようなものをかっこ良いなと感じました。高校生のころ、自分でもメイクしてみたこともありましたね」

ただ、大学に進学する時点で、化粧品メーカーへの就職を視野に入れていたわけではないといいます。転機は、後にその研究室に入ることになる教授との出会いでした。

横田 「教授が、肌に存在するセラミドという成分の研究をしていて、興味のあったメイクとも結びつき、これはおもしろそうだと思ったんです。セラミドは肌を守る有益なものですが、人によって、あるいは同じ人でも皮膚のパーツによってセラミドの量や種類は違います。ただ、その理由や生成過程など、まだ解明されていないことも多くあって、興味を惹かれたんです」

教授との出会いをきっかけに研究員の道に進んだ横田でしたが、伊勢半グループへ入社を決める上でもキーパーソンが登場します。それは、伊勢半グループの選考過程において出会った、ある研究員の先輩。じかに日々の業務内容や研究テーマについて話を聞く中で、仕事に取り組む姿勢に感銘を受けたといいます。

横田 「仕事に向き合う真剣さはもちろん、研究で得たデータや情報を応用して次につなげていく姿勢がとにかくかっこ良かったんです。当時、私は修士課程の1年生で研究に没頭していたこともあり、研究だけで終わらせない点が染み入りました。このような先輩のいる研究所で働いてみたいと思い入社を決めました。幸いにも、今はその先輩と同じ課で働くことができています」

入社後は、研修期間の中でリップ商品だけでなく、マスカラやファンデーションなどあらゆる化粧品の開発プロセスや商品の評価方法への理解をじっくりと深めたという横田。化粧品開発の基本を学んだ後、リップメイク担当として配属されます。

横田 「配属後は、まず既存商品をイチから作ることにチャレンジしました。ひとつの商品はさまざまな原材料の配合によってできているので、『なぜ、この原材料を選んだのか』『なぜこの手順で作るのか』など、学びを深めました。基礎を身に付けてからは、経験と情報を増やして新しい試作に挑戦しながら、自分なりにゼロから商品を生み出す力を養っている最中です」

新卒2年目で、社内に前例のない処方開発に挑戦

2021年、横田は新商品開発のミッションを託されます。原材料の選定や製造工程の考案などイチから担うという試みであり、かつ社内には事例のないものでした。

横田 「本来、口紅はひとつのバルク*を溶かして流し固めることで商品を作ります。ところが、今回私が携わった新商品は、ふたつのバルクから商品を作るというもので、マーブル状に仕立て上げる必要がありました。完全に混ざりきらない、“半混ざり”の状態をどう実現するかが難題でした。社内には事例がなかったので、とにかく試作を重ねたり、他社の商品を購入して研究したりしました」

*容器に充填する前の化粧品の中身のこと 

初挑戦の事例ということもあり、これまで通りの仕事の進め方では通用しない部分もあったという横田。

横田 「普段はデータをもとに、案を練りに練った上で初めて試作に取り掛かり、試作の回数を最小限に抑えるタイプなんですが、今回はとにかく試作を繰り返しました。実際に手を動かしてみないとわからないことがたくさんあったからです。
特に難しかったのは、通常の口紅と形態の違うマーブル状の商品を、形を崩さずに量産するにはどうすればいいかという点。社内で相談して、助言をいただきながら検討していきました。自分にない知識やアイデアをたくさん教えていただけたので、人とのつながりが大切だとあらためて気づかされましたね」

試行錯誤を繰り返して、ようやく処方開発に成功したからこそ、完成品を見たときのうれしさと達成感はひとしおだったといいます。

この商品は、研究開発を務める横田以外に、商品企画やPRのメンバーも参画して、アイデア出しからPRまでを担いました。今回は、全員が2年目の若いメンバーで構成され、若手社員が早くから活躍できる伊勢半グループらしい取り組みでした。

横田 「若手だからといって、あれこれ指示をされることはありません。そのため、試作品の完成までひとりでやって、試作チェックのタイミングで初めて先輩に見ていただくケースもあります。ただ、自分の経験や知識で太刀打ちできないと思ったときには、早い段階で先輩に相談をしてアドバイスをもらうようにしています」

社員の自主性を尊重し、年齢を問わずに裁量権を持つことができる伊勢半グループでは、自ら課題を見つけ、能動的に行動していく横田のようなスタイルの若手社員が、のびのびと活躍しています。

自分が手掛けた商品で、 “理想の自分になる”お手伝いがしたい

横田が手掛けるのは、商品を“つくる”部分です。お客様とじかに接する機会はほとんどありませんが、自身がメイクに惹かれて化粧品メーカーに入社した経緯があるからこそ、商品が市場に流れて店頭に並び、手に取ってもらえるシーンを想像することが、日々の原動力になっているといいます。

横田 「メイクをするときって、皆さん理想のメイクや憧れのメイクがあると思うんです。きれいになりたいのか、かわいくなりたいのかなどいろんな方向性がありますが、“なりたい姿になる”ためにメイクをされていますよね。私が担当する商品で、そのお手伝いができたらいいなと思いますし、『出会えてよかった』と喜んでいただけるものを作りたいと思っています」

今後は、化粧品メーカーの研究員として、基礎研究で行っている内容を処方開発の業務に結びつけていくことが目標です。

横田 「いい商品を生み出すことも、メイクの基礎となる人の肌の研究も両立させなければならないと思っています。基礎研究で得られたデータや情報をどのように商品に落とし込むか、また実用性につなげていくかを、徹底して意識していきたいですね。信頼性を証明できるデータとともに、『この商品を使っても、肌や体を傷つけませんよ』と自信をもって言える商品を開発できたらと思います」

入社2年目で大きなプロジェクトを経験しながら、また一歩先の未来を見据えて、仕事に向き合う横田。

「なりたい自分になるためのスイッチのような役割を果たせたら」と願いながら、これからも研究を続けていきます。