山の状態に合わせて工法を変えていく。安全に工事を導いていくのが指揮官の務め

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平が籍を置くのは中部支店の設楽4号トンネル作業所。そこで現在、主任として施工管理を行っています。

「発注者と打ち合わせをした上で全体工程を策定したり、施工方法を決定したり、安全管理や品質管理を行ったりしながら、現場全体を監督しています。当社の職員と協力会社の職人さんを含めると、現場で働くのは常に30人ほど。安全に作業できるよう気を配っています」

トンネル現場が手がける工事は、トンネル工事と土工事に分かれており、朝7時のトンネル工事の朝礼、8時の土工事の朝礼に立ち会うところから平の1日はスタートします。

「メインの業務は発注者との打ち合わせですが、品質管理や測量にも携わっているので、現場作業がある日は優先して取り組んでいます。現場に出ない日は、発注者との打ち合わせ用資料をつくっていることが多いですね。

発注者以外に、協力会社が打ち合わせに来ることもあります。17〜18時に現場作業を終えた後は、品質管理を行ったデータをまとめたり、打ち合わせ資料をつくったり。けっこう忙しいですね」

忙しく仕事をこなすなかで、帰宅後には資格取得のための学習時間も設けていると言う平。これまでに1級土木施工管理技士やコンクリート技士、甲種火薬類取扱保安責任者など、積極的に資格を取得してきました。

「『テキスト数ページだけ』、『1時間だけ』という気持ちで取り掛かって、毎日コツコツと。先輩からもらった参考書の分量を見て、いつごろからどれくらいのペースで勉強すれば間に合うかを考え、計画的に試験に臨んでいます」

そんな平がトンネル工事の指揮をとる上で何よりも大切にしているのが、安全管理です。

「事前調査で地質のデータは把握しているものの、自然相手のため、実際に掘ってみると山の断面の硬さはさまざま。山の変位が大きく出た場合は 、すぐに発注者と協議して掘削方法を替えるなど、トンネル掘削による地表面沈下を抑えるため、『この掘削方法で大丈夫か』と確認しながら慎重に進めています」

山の状態を見ながら常に柔軟に対応すると同時に、決められた工期通りに仕上げることも平にとって重要な任務。

「工事が大きく遅れないためにも、想定と違うことが起こった際には代替施工法を素早く決めて、すぐに発注者と打ち合わせし、万全の準備をした上で取りかかるようにしています」

何が起こるかわからない状況の中、臨機応変に対応しながら工事を進める上で問われるのは、年上の職人さんとのコミュニケーション。

「工事を担当する職人さんはほとんどが年上です。監理技術者として指示を出す立場ではありますが、掘削についての知識が豊富な職人さんから教わることは少なくありません。

心がけているのは、こちらから一方的に伝えるのではなく、『どのような方法を選べば、現場がうまく回るのか』をお互いに意見を出し合いながら決めること。話し合う姿勢を示すことで、協力的に応じてもらうことができ、助かっています」

先輩から学んだ指揮官としてあるべき姿。トンネル貫通で味わった喜びと達成感

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▲平底トンネル貫通式。一番右が平

大学では工学部の土木コースに所属していた平が学生時代に熱中していたのがアメリカンフットボール。アメフトと同じくらい熱量を注げる仕事を探していて出会ったのが、前田建設工業でした。

「業界を絞らずに就職活動をしていて、建設業やゼネコンで受けたのも前田建設工業だけでした。全国規模の仕事ができるゼネコンである点と、『脱請負』を掲げて勢い良く事業を拡大している点に惹かれたことが入社の決め手です」

入社1年目は、研修で本社の設計部とふたつの現場をローテーションで経験。2年目には九州支店の平底トンネル作業所に配属され、「宮崎218号平底トンネル」新設工事の土木施工担当として、現場での品質管理を主に担いました。

平底トンネルは全長1,665mの長さを誇り、およそ4年間の工期を経て開通に至りました。工期の途中から参画した平は、この工事に携わる中でいまも師と仰ぐ人物に出会います。

「当時の平底トンネル作業所の所長は、いつも誰よりも明るく前向きで、指揮官としての立ち振る舞いを教えてもらいましたね。現場に気の抜けた雰囲気が漂えば、たちまち事故やケガにつながってしまうもの。みんなの士気は安全に関わってきます。私が元気のない顔をしていたら「もっと元気出して朝礼やろうよ」と声をかけ、士気を高めてくれました。

また、現場での大変な作業を率先して行い、背中で教えてくれるような所長でした。部下が過重労働にならないよう適切に仕事を割り振ってくれたほか、発注者や地域住民の方とも良好な関係性を築いているなど、見習うことがたくさんありましたね」

所長から多くを学んだ平。その平底トンネルの工事には竣工まで立ち会い、言葉にできない感動を味わったと言います。

「トンネルが貫通し、外からの光りが一斉にトンネル内に差し込んできたときの気持ちはたとえようがありません。『完成したぞ!』と声をかけあって、喜びを分かち合いました。所定の位置に無事に貫通することができた達成感、張り詰めた緊張がいっきに解けるような安堵感。

貫通式は、皆と一緒に温泉に入ったり、お酒を酌み交わしたり。現場全体で喜びを味わうことができて、この仕事の醍醐味を最初の現場で味わうことができました」

自分にまかされた役割を全力でやり切ってきたからこそ、いまがある

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▲左:家族でお花見にお出かけ 右:アメフトに打ち込んだ学生時代

最初の配属先で、工事に携わる醍醐味に魅了された平。その後は、関西支店の新幹線足羽川作業所で北陸新幹線の足羽川橋りょうなどを、また北陸支店の今庄・武生高架橋作業所で北陸自動車道の土木施工を担当するなど、現在に至るまで全国各地の現場で汗を流してきました。

同じトンネル工事とはいえ、まったく同様の作業を繰り返すことはありません。大きなプレッシャーのともなう、危険と隣り合わせの仕事と向き合う上で、平が意識していることはいたってシンプルです。

「自分にまかされた役割を全力でやり切ろうという気持ちを大切にしてきました。最年少で監理技術者に選んでもらったのは、そうやって積み重ねてきたものを評価してもらえたからだと思いますし、『もっと頑張れ』という期待も込められているはず。これからも同じ姿勢を貫いていくつもりです」

これまでを振り返ると、成功体験だけでなく「数え切れないほどの失敗をしてきた」と平は言います。いま携わる工事でも、悔やまれることがありました。

「トンネル工事では、発破をかけて掘削することがあります。騒音には十分に配慮したつもりでしたが、周辺住民の方からの苦情を受けて工事をいったん中止せざるを得なくなってしまったんです。

平底トンネル作業所時代にお世話になった所長に相談したら、『2個先、3個先を読んで対策を打つんだ』と教えられました。自分に考えが足りなかったのだと。工事の影響が及ぶ範囲を精査して、住民の方に対して適切に事前説明を行うべきだったと反省しました」

たくさんの失敗も糧にしながら急成長を遂げてきた平。現在の仕事のやりがいについてこう話します。

「苦労してつくり上げたものができ上がったときは、大きな達成感が得られます。最後に現場の皆で喜びを分かち合えるのは、そこに至るまでの過程で共に頭を悩ませ、苦しんだ経験を共有しているからこそ。そこに建設業の魅力があると思っています」

仕事に情熱を傾ける一方、平はオフの時間も大事にしてきました。休日にはサーフィンやゴルフ、筋トレなどに汗を流しながら、家族との時間も大切にしていると言います。

「私が小さいころ、祖父や父親とスポーツをして遊ぶのが楽しかった記憶があるので、いまは2歳になる息子と一緒に体を動かすようにしています。平底トンネル作業所時代に結婚した妻は、関西支店や中部支店に転勤したときもずっといっしょについてきてくれました。感謝しかないですね」

変革に前向きで、若手にチャンスを与える社風のなか、努力を惜しまず、挑戦を続ける

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土木の施工管理を続けながら、より信頼される指揮官をめざしていきたいと話す平。自身の将来をこう展望します。

「ゆくゆくは所長となって、現場の仕事はもちろん予算や原価などの管理もすべてまかされるようになりたいですね。そのためには、工事で経験を積むだけでは足りません。発注者や地元住民の方、工事関係者の方とコミュニケーションする力に磨きをかけていかなければと考えているところです」

そんな平が新たな仲間に期待するのは、積極性。それは、アグレッシブに挑戦できる人材こそが、若手でも挑戦のチャンスがある前田建設工業の環境にフィットするからにほかなりません。

「上司から、『ひとつ上のことをやってみなさい』と背中を押され、少し難易度の高い業務に挑戦したことがありました。また、別の現場で監理技術者を務めている方は私の3歳上。前田建設は監理技術者が若いのが特長です。そうやって若手が現場の指揮官として登用されることは建設業の中では稀で、普通はもっと年数を重ねないとなれないポジションです。

自分の役割をきちんと果たしてさえいれば、それを認めてくれる人がいて、どんどん新しいチャンスを与えてくれる会社です。高い壁に自ら立ち向かおうとする気概のある方には向いていると思いますね」

若手に挑戦の機会を与える前田建設工業のなかでも、入社7年目にして監理技術者として現場をまかされることはめずらしく、まさに大抜擢と言えます。それは平の素直さや謙虚さ、地道な努力を重ねる姿勢を、多くの先輩が認め、惜しみなくノウハウを教え、チャンスを与えてきたからこそ実現したこと。

変革に前向きな社風の中で、若い情熱やフットワークの軽さを活かしながら、平はこれからも現場を安全に率いながら挑戦を続けます。喜びを分かち合える瞬間にひとつでも多く立ち会うために。

※ 記載内容は2023年6月時点のものです