外商部を統括する部長として自身の強みを見極め、磨き上げる
百貨店では特定のお得意さまに対して個別に担当社員が付き、お客さまの嗜好やご要望に合わせてご提案を行う「外商部」という部署があります。私は外商部の担当部長として、組織のマネジメントを行っています。
お客さまから信頼を得るためには、私たち自身が「特別な強み」をお客さまに提供する必要があります。私の場合はそれがファッションについての知識や経験になるのですが、常に自分の強みを意識するよう部下にも伝えています。
ファッションの知識と経験を武器に成果を出す
自分が大好きなファッションを仕事にしたいと、昔から思っていました。本当に自分自身が興味を持っているものでなければ、情熱を傾けられないと考えていたからです。
ファッション業界に大きな影響力を持つ企業の一つである三越伊勢丹を就職先に選び、入社後は伊勢丹新宿本店の編集ショップの販売からスタートしました。その後、アシスタントバイヤーや伊勢丹立川店のフロア責任者などさまざまな仕事を歴任。昇格した翌年の2014年に伊勢丹新宿本店に戻ってセールスマネージャーを担当しました。
当時を振り返ってみて、このときまでの私は、幅広く経験を積みながら、会社から与えられた役割に応えることで仕事への手応えを感じていたと思います。
2015年、三越伊勢丹が中小型店「イセタンサローネ」を東京ミッドタウン(東京都港区)に開業することが決まり、社内公募に応募して店長として赴任。私自身も店頭に立ち、接客を担当しました。
お客さまの多くは、近くにお住まいのファッション好きの方々。新宿にはほとんど出向かないという方も少なくなく、イセタンサローネの出店によってファッション感度の高い新しいお客さまと数多く出会えたのは、私たちにとって本当に大きな収穫だったと思います。
伊勢丹の豊富な品揃えや私からのファッションのご提案にとても喜んでいただき、いつしか私はマネージャーでありながら全社でも個人でトップクラスの売上成績を誇るまでになっていました。
三越伊勢丹の「次の一手」を担うため──百貨店外商の新しい形を構築中
「イセタンサローネ」は、私にとって、そして会社にとって大きな転機となりました。社員一人ひとりが強みを磨き上げれば、その提案力が事業の有意性に繋がること。そして、まだわれわれがお会いしていない優良なお客さまにリーチできれば、三越伊勢丹のビジネスはもっと膨らんでいくだろうと確信できたからです。
もともと、顧客起点で行動するカルチャーが根付いている当社ですが、それをもっと戦略的に事業運営に落とし込んでいく仕組みをつくるとともに、新たなお客さまの開拓をめざさねばならないと実感しました。
2021年、私は組織を俯瞰的に見る立場になるために部長職の昇進試験を受験。無事に合格して次のステップに進むことになりました。
「お客さまとの深いつながりは、より価値を増す」──百貨店の未来へ
私が外商部に赴任してからは、外商部の仕事スタイルは大きく変化しています。30~40代以下の若い富裕層のお客さまはお忙しく、お好みも多様です。これまで対面での一対一の接客が中心でしたが、バイヤーと協業した多面的なご提案や、デジタルツールをメインにした接客へと転換を進めました。
ご提案内容も、たとえばパリのヴァンドーム広場でお客さまと待ち合わせや、素晴らしい環境のブランドのショールーム、業界関係者とブランド顧客しか知らない非公開の施設へのご案内といったように、われわれしか企画し得ない特別な体験のご提供をめざしています。
お客さまを深く理解できれば、三越伊勢丹からご提案できるコンテンツは無限にある。それが外商部の魅力であり、私たち外商部員のやりがいにも繋がっています。
デジタル時代のビジネスにおいて、今もっとも難しいのは「お客さまと深く、継続的なつながりを持つこと」だと言われます。三越伊勢丹が持つお客さま志向のビジネスの在り方は、今後より価値を発揮するのではないかと考えています。
※ 組織、役割に関する記載は、2023年2月現在の情報です