コロナ禍の厳しい状況の下、ペーパーストックレスの推進に注力

出光興産の法務部に所属する石丸は、規程類の管理や株式事務を主に担当しています。また、各部室からの法務相談のほか、全社のペーパーレスプロジェクトにも関わっています。

石丸 「出光のペーパーレスプロジェクトがはじまったのは、2019年8月のことです。『いつでも・どこでも・誰とでも』働ける体制づくりの一環として、オフィスにある「紙」を減らす、すなわち紙文書に依存した働き方からの脱却を目指しています。

ペーパーレスの仕組みづくりを目的として、全社部室数の約20%を占めるパイロット部室にてトライアルを実施し、2020年の2月まで検討を重ねてきました。その後、残りの部室でも取り組む予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、ペーパーレス活動全般の進め方を見直さなければならない状況になってしまいました」

本来は、本社が移転する前に現存する紙文書の電子化や業務改革によるペーパーレス化を進めていく予定でしたが、スケジュールが合わなくなりました。そこで、まずは職場にある紙文書を80%減らすペーパーストックレスに注力してきました。

石丸 「ペーパーストックレスでは、『廃棄するもの』『外部倉庫に保管するもの』『スキャンセンターで電子化するもの』という3つのパターンがあり、ロードマップを引いて進めていきました。ペーパーレスで実績のある外部のアドバイザーにもプロジェクトに参画いただき、当社の業務の方法に合わせて都度見直しながら改善していった形です」

プロジェクトを進めていくうえで大きな課題となったのは、単に紙を「減らす」ことではなく、「文書を活用しやすくする」ための情報整理でした。石丸は経営統合の前から情報管理の規程を作るワーキンググループに入り、文書を含めた情報整理の方法を検討していましたが、統合後に実現できていないものもありました。

石丸 「文書整理の全社ルールはありましたが、運用は各部室に委ねられていたので、部室間での管理に濃淡がありました。しかし、内部統制の観点からも効率化の観点からも、全社でひとつのルールを設定したいという気持ちがありました。

ただ、統合直後は混乱している時期だったので、まずはビジネス優先としました。一気にあれもこれも実施すると、さらに現場を混乱させてしまう可能性があります。今はそのタイミングではないと判断し、統合して少し経ったところでルール設定を再開しようと合意していました」

そんなとき、ペーパーレスプロジェクトが立ち上がりました。現場の抵抗感も予想される大きい改革だからこそ、ただ紙を減らすのではなく「情報の整理・活用」という視点を持ち、意識改革のきっかけにしたい。石丸は、そう考えていたのです。

ペーパーレスプロジェクトのための文書管理ガイドラインを作成

文書管理のルール作りを担当するため、石丸はペーパーレスプロジェクトを推進するワーキンググループにアサインされました。しかし、会社にはそれ以前から、全社規程を作らなくてはならないという課題がありました。

石丸 「たとえば当時の法務部のファイルストレージ(Box)には、旧昭和シェルと旧出光、そして統合新社の3種類が乱立している状況であり、それはほかの部室でも同様であろうことが予測されました。また、紙文書もそれぞれの会社のものが別々に管理されているため、整理する必要がありました。そのため、統合新社として、ある程度ガイドになるようなマップや表の必要性を感じていました。

本プロジェクトを推進するために新たに文書管理ガイドラインを策定しました。既存の文書管理ルールに抵触する部分もありましたが、スピードを優先するために、既存ルールに抵触する場合は、文書管理ガイドラインを優先することとしました。文書管理ガイドラインは、時限立法的な位置づけとし、運用状況を見て、今後は既存ルールを改定していくこととしました」 

文書管理ガイドラインでは、文書を電子データで取り扱うことを基本とする、紙文書は電子化し速やかに廃棄するなど、これまでの紙文書ベースからペーパーレスに切り替えるためのルールを定めました。

また、文書の格納場所や社外秘情報の管理、文書の保存年数・廃棄ルールの明確化、契約書等の重要文書の扱い、電子化時の著作権など、あらゆるルールが定められています。文書ごとの保存年数や原本の保存要否も明確にし、できるだけ社員にとってわかりやすい内容となるよう、工夫して作ったのです。

2020年12月の本社移転までに紙文書を80%減らすという目標があったので、新型コロナの影響で紙文書の電子化が間に合わないものは、保存期限を設定して一時的に外部倉庫に送るという手段で対応しました。

石丸 「今回、全社で多くの紙書類を廃棄しましたが、過去の紙文書を削減すること自体はそこまでハードルが高くなかったと思います。これからは紙を生まない働き方に挑戦していくことになります。

今後は本来の目的である、電子化された文書が『いつでも・どこでも・誰とでも』利用できる環境を早急に作っていきたいと考えています」

別表の作成に苦戦したものの、最終的にはより出光に合った形に

ペーパーレスプロジェクトで石丸が一番苦労したのは、文書管理ガイドラインの作成でした。特にガイドライン本体よりも、文書種類ごとに保存年数を定めた別表の作成に苦労しました。 

石丸 「外部のアドバイザーが提案してくれた文書管理ツールは、当社では機能しないと感じました。特に別表は、業種の違いもあり、分類項目が当社にマッチしないという印象でした。

文書管理は、別表の分類項目にそって、会社の公式文書(正版)を全社共有するという仕組みだったのですが、部室の立場で考えてみると、電子ファイルの格納先として会社共通フォルダと部室フォルダの二つを持たなくてはならならないこと、アクセス権の設定が多岐に亘ることから、管理が煩雑になりそうという印象を受けました。

決算資料や中期計画等、会社の公式文書はすでにイントラや会社ホームページで開示されていますし、各種会議体の議事録など守秘性のある公式文書は、事務局の部室で適切に管理されているので、全社での共有は不要だと私は考えたのです」

さらにもうひとつの問題として、文書の検索方法がありました。

石丸 「当初は、必要なファイルを探す場合、Boxの検索機能を活かし、キーワード入力して検索することを前提としていました。もちろんそれも効率的で良いと思うのですが、検索結果が大量に出てきてしまい逆に非効率になる懸念もありました。

それよりは、ある程度Boxでカテゴリーごとにフォルダ管理され、かつ検索機能も使えるほうが、使い勝手が良いと考えました」

アドバイザー提案の文書管理ツールをより出光に合うものに改善すべく、石丸は別表を全面的に作り変えました。現在は、経営企画や人事、全社の中でもコーポレート系のどこにでもあるような項目は共通で、その他は部室で任意に設定する形で自由度をもたせています。

この別表は、統合時からの課題であった全社統一のルール作りにつなげられるよう、当初思い描いていたものを土台にしています。こだわりを持ち、法務でも議論を重ね、ワーキンググループにも提案して、最後は合意を得たうえで作り変えることができました。

石丸 「アドバイザーが提案したツールに対してNOと言うときには、結構勇気がいりました。アドバイザーも、それなりの実績を持って提案してくれたと思うからです。ワーキンググループに提案するときも、やはり勇気がいりましたね。

私自身は違うと思ったらはっきり言ってしまうタイプですが、『こうじゃなきゃダメ』というよりも、『こういう理由だから、こうした方がいいのではないか』と提案していきたいと考えています」

社員の自発的な行動を促すお願いをしながら、さらに改革を進めたい

無事に本社移転を終え、ペーパーレスプロジェクトも一山越えました。しかし、本当の意味での取り組みはこれからだと石丸は考えています。

石丸 「文書管理ガイドラインは、プロジェクト用に定めた時限立法的なルールです。次は既存ルールを変えていくのですが、さらにひとつ進めて、今回ペーパーレスの対象となっていない部門にも適用される全社ルールにつなげていきたいと思っています。

また、作ったルールを改善していくことも必要です。本当は別表ももっと作り込みたかったのですが、まずは最小限ということで現状のものにしました。今後は各部門にも広くヒアリングして、改善につなげていきたいですね」

ペーパーレスプロジェクトを進めるなかで、嬉しいこともありました。法務部では別表を使ってBox整理をしていましたが、ほかの部室でも自発的に別表を活用し、Boxを整理してもらえたのです。

今までもこれからも、社員に対しお願いする仕事は多くあります。石丸は社員の自発的な行動を促せるよう、先を見据えた運用につながるシンプルでわかりやすいアクションをお願いすることを心がけています。 

石丸 「例えば規程や情報の管理など面倒な作業は、手間がかかってつい後回しになってしまいますが、会社として取り組んでいかなければ、コンプライアンス上の問題を引き起こす可能性もあります。でも、日々管理して予防していくだけではつまらない。せっかくなら、一歩進んでこれらの作業のアウトプットが、業務効率の向上や、ビジネスチャンスに繋がるよう、各職場でも考えてみて欲しいと思います」

ペーパーレスプロジェクトの成果は数字に現れ、DTKプロジェクト全体では、IT・デジタル化などのハード面も整ってきました。しかし、成果を次につなげるためには、新たに創出された時間を一人ひとりが自分の成長につなげるために使うことが必要だと石丸は考えています。

石丸 「どんどん便利になって仕事が効率化され、多くの人が通勤時間もなくなっている中、空いた時間で勉強やチャレンジをして人間として成長することが大事になってくると思います。ただ、これは自分自身がやる気にならないと難しいものです。

最近私自身、苦手なことや新しいことにチャレンジしていこうと思ったり、気づきを得る出来事がありました。これは上司からの助言がきっかけでしたが、自分に影響を与えてくれる人との出会いや、人から気づきを得る機会は、大事だと改めて思いました。

今は在宅勤務のため、人と会ったり話を聞いたりする機会が減っていますが、オンラインも活用し、仕事上に限らずたくさんの人と交流しながら、自らも成長し続けたいと考えています」

未来を見据え、会社をより良くするためにペーパーレスプロジェクトを進める石丸。

今後さらに取り組みを発展させるため、行動を続けていきます。