アルバイト時代に学んだ、リーダーとして意識すべきこと

出光興産の販売部には5つの課があり、それぞれ業務内容が異なります。販売部の主な業務内容は、支店管轄の特約販売店・サービスステーション(SS)・燃料油を販売する取引先に対する価格数量の管理や、燃料油販売に関する戦略決定、新規事業開発などです。

そのなかで、田中が所属する販売課はさらに3つのチームに分かれており、田中は政策チームに所属しています。政策チームは、主に関係子会社に関する経営・収支・投資の管理や、取引先関係の会合の事務局業務等を行なう課です。また、各支店の困り事に対する相談窓口も担い、リテールマーケティング部や支店とコミュニケーションを取りながら問題解決を進めています。

田中 「私は入社以来、ずっと燃料販売系の業務に従事しています。部署の希望はもともと強くありませんでしたが、学生時代にSSでアルバイトをしていたこともあり、リテール関連やSSに関わる仕事は性に合っていると感じています。現在の部署には、自ら志望して異動してきました」

田中が新卒で昭和シェル石油株式会社に入社したのは、1998年のことです。学生時代にSSでアルバイトをしていた影響もあり、石油業界に興味を持っていました。特にF1が大好きで、昭和シェルがフェラーリチームのスポンサーをしていたことも入社を決めた理由のひとつでした。

SSでのアルバイト時代の経験で特に印象に残っているのは、店長が代わったときに店の「空気」と「業績」が大きく変わったことです。

田中 「私がアルバイトをはじめたときの店長は、時間にも規律にも緩く、アルバイトが先に出社して『今日、店長は何分遅刻するかな』とみんなで予想して楽しんでいたくらいでした。

一方、後任の店長は規律に厳しい人で、着任後はお店の空気も変わり、業績も上がりました。リーダーによって店舗はこんなにも変わるのだと実感しました」

この経験から、田中はリーダーとして意識すべき点に気がつきました。

田中 「リーダーの行動や考え、思想は部下に丸見えなのです。口に出さなくても行動によって部下に考えが伝わってしまうので、リーダーが自分に厳しくきっちり行動しないと、部下に見透かされてしまいます。

また、リーダーが公明正大に動かなければ、組織の動きが悪くなるのです。その点に注意して、自分も行動したいと考えています」

販売部をまとめるため、一人ひとりとのコミュニケーションで想いを伝える

田中は販売部のDTKプロジェクトのサブリーダーとして、販売部内の実務を取りまとめる役割を担っています。

新たな決定には苦労を伴いますが、決定を後回しにすると周囲に混乱を招いてしまうものです。田中がDTK活動を進める際は、いつまでに何を決定しなくてはならないか「見える化」することを心がけています。そのときに重要なのが、マスタープラン管理表の作成です。

田中 「私が担当する販売課の政策チームでは、統合新社の業務一本化に際し、多くの階層の方と面談をして、何が一本化されるべき業務なのか『見える化』していきました。『管理表を埋めておいて!』と投げるだけでは主旨と熱意が十分に伝わらないので、一人ひとりと話をして、リーダーとしての考え・想いを伝えるようにしました。また、何が課題かを相互に確認しながら、見える化も進めていきました。

定期的に各担当者と話して、直近の動きを確認し合うこともありました。マスタープラン管理表では、一本化できる可能性が低いとされている案件もありましたが、安易に仕方ないとは考えず、代替案を協議しながら方向を修正していきましたね」

DTK活動を進めるなかで困ったのは、一部のDTKメンバーの動きが悪かったり困った顔をされたりしたことです。当初はその原因がわからず、苦労することもありました。

田中 「DTK活動で成果を出せていない原因を深く考えたところ、指示ルートの問題であると気づきました。DTK活動はDTK部室リーダーの直轄部隊として各課のプロジェクトメンバーが動く形式だったのですが、組織上の指揮命令系統とはルートが異なります。

組織論のひとつに“命令はひとりの上司から受ける”という原則があり、これを守らないと組織として動きがまとまらなくなるのです。この状況を打破するため、各課の役職者をDTKメンバーとして追加することをDTK販売部リーダーに提案し、実現してもらいました。その結果、DTK活動に関するコミュニケーションが非常にスムーズになったのです」

DTKメンバーだけで考えず、現場の意見を吸い上げて成果につなげる

DTK活動に対して課のメンバーが苦労している姿を見た田中は、自ら動くことでメンバーを鼓舞しようと考えました。それは、田中が日頃からリーダーの在るべき姿について考え、行動しているからこそできたことです。

田中 「リーダーシップ論はリーダーに焦点が当たることが多いのですが、フォロワーが動かなければ意味がないと考えています。フォロワーがどうしたら動くのかを、リーダーがきちんと考えることによって、組織が良い方向に向かっていくのだと思います」

また、DTK活動を進めても、田中が所属する課全体の成果が上がらなかったことがありました。そのときは、対策を課長とも相談したうえで、DTKプロジェクトメンバー以外の課員全員からも意見を募ることにしました。

DTK活動を推進するためのアイデアを、最低ひとり1個提出するよう課員全員に頼んだ田中。その結果、非常に多くのアイデアが提出されたうえに、DTKメンバーだけでは思いつかなかったアイデアも出てきたのです。

田中 「たとえばですが、請求書や支払い関係の業務において、従来は手作業で進めていたものをExcelで共有することにより、メンバーが1人休んでも他のメンバーが代行できるよう標準化しようという意見が出ました。 

また、繰り返しの業務に関しても、RPA化することで業務効率化するというアイデアが出ました。請求・支払い業務の内容がわからない自分や、他のDTKメンバーでも思いつかなかったようなアイデアを、多くの方が出してくれたのです。

DTKメンバーだけで活動を進めていては、他のメンバーが自主的に動きませんが、他のメンバーも含めて改善策を考えたことが成果につながったのだと思います。あるチームは自主的に改善プランを立てるなど、自律的な行動が増えてきてありがたいですね」

答えは現場にあり、現場を確認しないとわからないこともある。DTK活動を通して、田中はそれを学びました。

メンバーを褒めて前向きに進む空気をつくるのが、リーダーの役割

▲キャプテンを務めていた社内のサッカーチームの仲間と。この時の大会で優勝

田中はリーダーを務めるうえで、メンバーを称えることを大切にしています。それは、昭和シェル時代に支店で販売促進担当をしていたときに、リーダーはノウハウの素晴らしさよりも、メンバーをいかに見て、褒めてくれてるかが、部下にとって大事だと学んだからです。

田中 「毎月1回マスタープラン管理表の進捗状況を販売部内で共有しているのですが、そのときに『どの課が計画積み上げを実行してくれました』などとコメントを入れると、役職者からの返信コメントで称えてもらえることがあります。

褒められた課はうれしいですし、それを見ている他の課も頑張ろうと良い刺激を受けます。良いところを共有して、みんなで前向きに計画していく空気をつくるのが大事だと思いますね。

『数字が足りていないからどうするのか』と詰めるのは、短期的な成果にはつながるかもしれません。しかし、メンバーが自主的に動き、長期的な成果を出し続けるには、怒ったり詰めたりするのではなく、褒めるなどのフィードバックが大事だと思います」

また、誰かから指示を受ける際に「なぜそのように決まったのか」が不明確であったり、納得できなかったりすると、人は本気で動かないと田中は考えています。

田中 「無理に動いたとしても、組織として健全な状態ではなくなってしまいます。組織を取りまとめるときには、決定プロセスに筋が通っていて、決定内容にみんなが大凡納得できる必要があると考えます。

決断するときの思考方法や判断材料は、今でも勉強するようにしています。大前提が崩れることは意外とあり、もともと考えていたプランではうまくいかないこともあります。こういった状況に備えて、常に違う方法も考えるようにしています」

DTKプロジェクトを進めていると、統合前のやり方と違うことに不満を感じているメンバーがいるのもわかります。それでも田中は、統合新社をこれからも発展させ続けるために、意識改革を促していきたいと考えているのです。

田中 「固定観念にとらわれない発想は大事だと思っていますし、その考えが浸透していない方にも浸透させていきたいと考えています。旧社それぞれの良いやり方があるので、それらを踏まえたうえで最善の方法を模索していきたいですね。

それに加えて、販売部内で更に中長期の戦略を深く議論していきたいと考えています。アメリカ大統領の交代など社会の変化もあり、今後ますます業界環境が厳しくなるはずなので、会社がさらに収益を上げていくための方法を販売部としても考えていきたいと思います」

サブリーダーとして現場をまとめるために、メンバーが自主的に動いてくれるような働きかけを心がけている田中。 

販売部としてもDTKプロジェクトのメンバーとしても、会社の将来を明るくできるようこれからも行動を続けます。