DTK活動がはじまる前から、”めんどうごと”の改善に取り組んできた

出光興産の化学事業部総括課に所属する竹内は、システム関連全般を担当しています。

竹内が出光に入社したのは、1988年のこと。入社してから10年ほどは、石油化学事業でプラスチック製品の成形や構造に関するコンピュータシミュレーション、その後、エンジニアリングプラスチックの用途開発・商品開発に携わっていました。2005年に一度営業を経験し、2008年から3年ほどエンジニアリングプラスチックの商品開発業務に戻り、その後は石油化学事業の共通部門で働いています。

竹内は、出光の全社員で取り組む業務フロー・働き方改革であるDTK(だったらこうしよう)プロジェクトを積極的に推進しています。DTK活動は業務効率化をひとつのテーマとしていますが、竹内は「なぜこんなめんどうな事を続けているのだろう。もっと良い手があるはずだ」と感じたことに日頃から取り組むようにしています。

竹内 「何かを成し遂げようと意気込むより、自分が少しでもめんどうだと感じるものを改善すれば、他の人も便利だと共感してくれるはずだと考えています。また、逆に他の人が便利に感じるものを取り入れれば自分も便利になるはずだと、みんなが感じられる取り組みができればと考えて動くようにしています」

竹内は、めんどうなことや手間がかかることの改善に、DTK活動がはじまる前から取り組んでいました。

竹内 「以前研究所に勤務していた頃、特許管理の業務を担当しました。当時はパソコンのスペックも今ほど高くなく、またひとつのExcelファイルに所員何人もがアクセスしてデータ作成している状況であり、非効率そのものでした。Excelでの管理に限界を感じた私は自ら知的財産部と協働し、知的財産管理の既存システムの機能を有効活用したシステム構築を行なったのです。

他にも、営業部隊と研究所のあいだで取引先のニーズに合わせたテクニカルサービスを依頼するフローがあります。現場が依頼書と管理番号を作り、研究所がそれを受けて受信番号をつけ、Excelファイルに受信票を転記するフローです。

この一連のフローを紙ベースで行なっていましたが非効率であると感じたので、フローのオンライン化と依頼情報管理の一元化を進めました。このシステム化も関係者から非常に評判が良く、自分自身にとっても非常に有意義な経験となりましたね」

コロナ禍でのFAX事情を劇的に改善したFAX to Boxプロジェクト

DTKの取り組みは、自分が目指してきた方向性にズレが生じていないと感じられたため、これまで竹内が自主的に行なっていた取り組みの追い風になっています。

竹内 「業務改善の進め方ですが、周囲のみなさんのことだけを考えて推進しているかというと、そうではありません。ただ、自分だけにメリットがあるような進め方をすれば、反発が出るのは当然です。

そのため、相手にも自分にもメリットがある方法を検討しています。そういう考えのベースがあるからこそ、周囲も受け入れてくれているのかなと思いますね」

DTKプロジェクトがはじまってから竹内が実施した活動として、FAX to Boxプロジェクトが挙げられます。これは、受信Faxを紙で出力せずにデータ化し、クラウドストレージ(Box)に自動格納する方法です。

竹内 「DTK活動の一環でリモート環境での業務遂行が推奨された際、全部員にモバイルパソコンを支給しました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの社員が在宅勤務へ移行しました。そんななかでも化学の物流部門などは、紙ベースでのFAXを受発注に使用していました。

コロナ禍でFaxを電子メールに変更されたお客様もいますが、まだFAXを利用されているお客様もいます。FAXを利用するためだけに出社する当社社員の話を聞くにつれ、何とかならないかという気持ちが湧いてきました」

当時はあるメーカーの複合機を使用していましたが、他メーカーにFAXの自動転送が可能か確認したところ、その会社の複合機にFAX回線を接続すれば問題ないとの回答がありました。これを受け、竹内は転送の設定をして、FAXの自動データ化およびクラウドストレージ格納を実現しました。

竹内 「この1件をDTK活動に関するTeams上の全社情報交換コミュニティに書き込んだところ、『良いですね!』と全社に拡散していきました。FAX対応で困っている部室からは、やって良かったと感謝されましたが、現状の組み合わせを変えただけなので、自分としては大したことをしたつもりはありません。

最初にコミュニティに書き込んだ際には、他のみなさんがインパクトのある事象を検討しているのに、この程度のことを書いていいのか考えてしまいました。しかし、みなさんの反応を振り返ると、良いことをしたのかなとも感じています」

FAX to Boxプロジェクトにより、FAX対応が必要な部室に大きなメリットをもたらした竹内。とはいえ、いまだにFAXをなくせない部室もあります。メールに切り替える流れを作りつつ、紙ベースでのFAXのやりとりをどこまで減らせるかが、今後の課題のひとつです。

当たり前と当たり前の組み合わせが、大きなイノベーションにつながることも

Fax to Boxプロジェクトでは「こんなことでいいのかな?」という迷いに対し、周囲から「“こんなこと”ではなく、組み合わせの新たな発見です!」と言ってもらえた竹内。それからは、少しの気づきや不便解決の積み重ねが、大きな改革につながる可能性もあると自信を持つようになりました。

竹内 「実行に際しては周りを少し巻き込むかもしれませんが、一人ひとりの取り組む姿勢や姿とともに、ちょっとした気付きを実行する大切さを多くの人に伝えられたらいいなと考えています。

『当たり前と当たり前の組み合わせ』が大きなことになり得るし、目の前に見えていることがイノベーションにつながる可能性もある。それを伝えていきたいですね」

竹内は、「私がこうしたい」ではなく「お互いが少し工夫したら、もっと便利になる」を着眼点として、自身の仕事や仕事間のインターフェースを工夫することで、また違った観点での改善が出てくるのではないかと考えています。

竹内 「とにかく、これはめんどうだ、もっといい方法があるんじゃないかと疑問を持つのが大切だと思います。たとえば新人が入ってくると、なぜこんなにめんどうなことしているのだろうとギャップを感じる場面もあると思います。そのとき、ギャップを埋めるために何ができるかを考えるのが大切です。

ただ、新人がすぐに何かできるわけではありません。だからこそ、周りがそれを汲み取り具現化して、改善できるように持っていく方法を模索していかなければならないと考えています。せっかくの新鮮な考え方を既存の考えに溶け込ませてしまうのはもったいないので、そこをどう活かすかは常に考えていますね」

竹内は、Fax to Boxのような事例を多くの人に見てもらい、「自分にもできるのではないか?」と感じてもらえる仕組み作りが重要だと感じています。

竹内 「従業員一人ひとりが自分にもできると考えて行動していけば、大きなパワーになります。DTKの取り組みにおいては、他の人を巻き込んでうまくやっている人も、ひとりで考えて地道にやっている人もいます。

そういう取り組みをうまくピックアップしたり、評価したりする仕組みを作れればいいなと思っています。一人ひとりのちょっとめんどうだなという気持ちが、DTK(だったらこうしよう)につながっていきますから」

改善事例を社内に広く共有し、DTKを社内文化にしたい

化学事業部の業務と並行して、DTK活動を推進している竹内。化学事業部の業務としては、2018年頃からロボット(RPA)による自動化を手掛けています。

竹内 「事業部として取り組んでいることですが、働き方改革にうまくつなげていきたいと考えています。定型業務は、デジタルやロボット(RPA)に置き換えられます。デジタル化を進めることにより、人間にしかできない本来あるべき『考え、創造する時間』を生み出していきたいですね。

ロボット化に際しては、情報をアナログからデジタルに変える手間が発生しますが、ロボット(RPA)化さえすればすべての工程を一気通貫で自動化できます。これまでDTKで取り組んできたBPR手法を活用しながら、ロボット(RPA)化をどんどん進めていけたらと考えています。こうした取り組みがあってこそ、業績につながっていきますからね」

さらに竹内は、DTK活動によって生まれた改善事例を社内に広く共有したいと考えています。

竹内 「日本の“改善”という言葉が“kaizen”という世界共通語となって世界に広がっていったように、出光のなかでももっと改善事例などを共有して、DTKという言葉を文化にしていっても良いのではと思います。

出光には人を育てる風土があり、そのために改善は必要なので、会社をあげて改善に取り組む文化は大切にしていきたいですね」

もともと自主的に取り組んでいた働き方改革を、DTKプロジェクトがはじまってからも推進している竹内。

自分が面倒だと感じることを改善しながら周りの人の利便性向上につなげるべく、これからも改善すべき点がないか目を光らせ、取り組みを進めていきます。