エキゾーストサウンドからアイデアが生まれ、大好きな二輪車の商品化につなげる

経験豊かなベテランライダーを中心としたお客様に、このバイクを届けたい──

バイク好きの強いこだわりや熱い想いが詰め込まれた新型ロードスポーツモデル「HAWK 11」は、2022年9月29日に発売を予定しています。

HAWK 11のアイデアを提案したのは、Hondaのデザインセンターでエンジニアを務める内田です。内田はHonda入社前から二輪車が好きで、入社後は二輪のカラーリングデザイナーとして経験を積んできました。

スキルを磨くために、自分のバイクだけでなくさまざまなバイクに可能な限り乗り、オンロードもオフロードも乗りこなせる内田の頭の中にはたくさんの「次の二輪車の種」が存在しています。そんな内田がHAWK 11を思いついたきっかけは、試作車のサウンドでした。

内田 「ある時、デザイン室にアフリカツインというバイクの試作車が入ってきました。そこでエンジン音を聞いたとき、こんなにいい音が出せるんだと衝撃を受けたんです。このエンジンを使ったマシンでワインディングロードを走ったら、とても気持ちいいだろうと思いましたね。

そのときから創作意欲が掻き立てられ、どのようなバイクにしようかと考えるようになりました。Hondaでは日々アイデアの提案が繰り返される環境が整っていますが、提案が通って自分のアイデアが商品化されるのは、今回がはじめてです」

大好きな二輪車を自ら構想し、商品化につなげる。その夢を叶えられる一大チャンスが巡ってきたことに興奮すると同時に、内田は責任感も覚えていました。

内田 「グローバルで活動するHondaのリソースを使い、まだ見たことのないプロダクトを考え出す。そのミッションは多くの人が熱望していますが、誰もがその機会を得ることができるわけではありません。今この瞬間、Hondaのこのプロダクトのこの領域について考えているのは地球上で私だけ。そう認識すると、自身の幸運を実感すると同時に、良いものを作りたいという大きなモチベーションが生まれましたね」

HAWK 11プロジェクトにおいて、内田は開発チームのメンバーではなく提案者として動いていました。「こんなバイクにしたい」というプランを立て、提案することで商品化に貢献しました。

こだわりが凝縮されたコンセプトにより、最後までブレずに開発が進んだ

HAWK 11の開発チームでデザイン領域の核となって動いたのが、デザイナーの田治でした。

田治 「提案を元にしたスケッチとコンセプトを量産につなげるのが、デザインプロジェクトリーダーの私の役割でした。最初にフレームやエンジンなどのおおまかな骨格を決めたら、そこからスケッチのイメージを量産車としていかに実現するか設計者と調整しながら進めました。またモデラ―・データモデラ―と一体になり、ありたいプロポーションの実現に尽力しました」

内田と田治は同じ二輪のスタジオに所属しているため、普段からともに仕事をする機会があります。しかし、普段は田治が描いたスケッチやカラーリングを内田が図面にすることが多く、今回のように内田が提案したものを田治が具現化するというHAWK 11のプロジェクトはいつもの進め方とは逆でした。

そんなHAWK 11プロジェクトは、内田が長年培ってきた想いがコンセプトに凝縮されており、軸がしっかりとしていたため、開発チーム全員が迷わず短期間で進められたと田治は振り返ります。

田治 「HAWK 11は“国内市場に向けて、ベテランライダーが楽しむ半日のために”、という具体的なターゲットが内田から発信されたので、即断即決で開発を進めることができました。商品作りを進める上で、明快なコンセプトが定まっていることは意思決定のスピードにつながります」

内田が自身の想いをのせて手探りで書き上げた提案資料には、バイク好きだからこそ溢れ出る言葉を取り入れた情緒的な想いが並んでいました。

内田 「これまで私は、たくさんのバイクに乗ってきました。そこから得られたことを新しいバイクに活かしたいと考え、バイクに対する自分の想いを文章にした結果、情緒的な言葉が並んだ提案書になったんです」

田治 「面の表現やカラーリングなどが言葉でも的確に表現されていてわかりやすかったです。そのおかげで全員がコンセプトを理解でき、プロジェクト進行中に根幹がブレることはありませんでした」

幾多の困難を乗り越え、ついに、想いと夢が詰まったHAWK 11お披露目発表のとき

HAWK 11プロジェクトで最も大変だったのは、提案のきっかけとなったモデルであるアフリカツインの骨格を使ってロードスポーツモデルを作ることでした。

田治 「アフリカツインは、かなりボリュームの大きいバイクです。それをいかにコンパクトな車体に見せるかという点には苦労しました。今回のプロジェクトでも大きな挑戦の一つだったと思います」

内田 「構想段階では、エンジンはアフリカツインのものを使うと決めていましたが、フレームやその他の部品のイメージはそこまで具体的ではありませんでした。目的は、“ベテランがワインディングを楽しむ”ことなので、走りの面でもそれを実現することが大切で、実現手法は開発チームのノウハウで判断するのが正解です。

アフリカツインとHAWK 11を並べると、背の高いものがこんなに低くなるんだという驚きがあります。人が乗るところなど全体の形が大きく異なり、よくぞこんなに軽量コンパクトにしてくれたと思いましたね」

内田はHAWK 11について関係各所にプレゼンするとき、相手に合わせた情報を伝えられるように準備をしていたと振り返ります。

内田 「開発チームには、想いや熱意を盛り込みながらこんなバイクを開発したいと提案しました。また、経営陣にはビジネス的に何台売ってどのくらい売上を立てられるかなど、数字も取り入れて提案しましたね。

そしてセールスのメンバーには、これだけの熱量を持った人が開発したバイクなので売ってもらえないだろうかと、心を動かすように意識してプレゼンをしたんです。そのように想いを込めていたので、実際に製品ができ上がり、エンジンをかけて動く姿を見たときは感慨もひとしおでしたね。そのサウンドを聞き、『間違っていなかった』と思いました」

内田と田治が想いを込めたHAWK 11は、2022年9月に発売されます。提案者の内田には想いがお客様に届くかという不安もありますが、開発に携わった田治は3月に開催されたモーターサイクルショーで手応えを感じていました。

田治 「HAWK 11を世界初公開したモーターサイクルショーに私は説明員として参加しましたが、メディアの方と話すと手応えを感じられましたね。第一印象で『これは要するに、ベテランライダーの夢が詰まったバイクですよね』と言ってくださった方もいて。コンセプトがしっかりとしているからこそ、一目で魅力が伝わったのかなと思います」

HAWK 11がもたらす驚きや感動で“だれかを、うれしくできる”のが理想

HAWK 11提案者の内田と、そのデザインチームを率いた田治。ふたりは、お互いに尊敬の念を抱きながら仕事をしています。

田治 「チームメンバー皆で話していたことですが、内田はとても紳士的な仕事の進めをします。今回もらった資料は、どの切り口で質問されても答えられるような、完成度の高いものでした。隅々まで裏付けのある資料を作ることができるのは、お客様と真剣に向き合っている証拠です。その気配りの姿勢はすごいと思います」

内田 「私は田治のコミュニケーション能力がすごいと思います。デザインチームにはカラーリングやスタイリングを考えるデザイナーがいて、さらに立体化を担うモデラーやデータモデラ―もいます。HAWK 11のデザインチームは田治が核となってまとめてくれたので、心から感謝しています。

私は文章で伝えるのはまだしも、直接しゃべって伝えることはあまり得意ではありません。だからこそ、コミュニケーション能力の高い田治がいてくれて本当によかったですね」

HAWK 11のプロジェクトを進めるなかで、田治はコンセプトの重要性を改めて実感しました。

田治 「ボトムアップ提案を実現するために動いたのは、今回がはじめてです。私はスタイリングスケッチを日々の業務としていますが、常にお客様から求められる商品コンセプト探求することで、より魅力的なデザインを作り上げていきたいと思います。コンセプトの軸がしっかりしていれば、製品の形にも合理性が生まれ、それを初めて見た人にも理解してもらえると今回のプロジェクトで学びました」

望んだ全員ができるわけではない、アイデアが商品化される貴重な経験。内田は今回のHAWK 11プロジェクトを通して、自分が大切にしていきたい想いを深く感じました。

内田 「Hondaのデザインセンターのキーワードである“驚き“や”感動“を形にして、お客様に『またHondaがやってくれた!』と思っていただけるような提案を、いつでもできる自分であり続けたい。

今、Hondaハートというプロジェクト*で『きょう、だれかを、うれしくできた?』というフレーズが使われていますが、誰かを嬉しくするには自分自身にも驚きや感動がなければならないですよね。そういった意味でも、今回商品化が決まったHAWK 11が、誰かの心に響いて嬉しくなっていただければと願っています」

提案者の熱い想いを受け取り、開発チームメンバーが形にするため奮闘した本プロジェクト。

HAWK 11の発売を、提案者も開発メンバーも皆楽しみにしています。

*クルマやバイクをはじめ、航空機のHondaJetや船外機、発電機、耕うん機など、これまで数々の製品・サービスを生み出してきた「Hondaが持つユニークな多面性・多様性」を、若い世代をはじめとした多くの人々に伝えていくことを目的としたプロジェクト