エンドユーザーとの深い付き合いがキャリアのターニングポイント

▲トレーニー先のHonda Dreamでバイクのメンテナンスをする今野(2014年6月撮影)

2009年にHondaへ入社した今野は、一貫して二輪サービス領域に携わっています。入社してから4年半携わったのは、二輪の新機種開発全般でした。

今野 「販売店でのバイクの整備性を確認し研究所とより整備しやすくするための調整を行ったり、新機能・新機構について分かりやすく市場に案内するための調整を行ったりしていました。実際の開発をするというよりは、市場に対してサービスを通じて良い価値を提供できるような提案をしていくという役割でしたね」

サービス領域の業務は、部品・工具・販売店指導などの世界のサービス活動のサポート、市場情報の収集を通じた品質向上への取り組み、お客様の声を企画・開発にフィードバックなど、多岐に渡ります。

今野 「サービス領域の業務は、部品販売を通じHondaの収益に貢献するビジネスですが、それは販売店があってこそです。そのため、お客様には販売店でのサービスにご満足いただき、通っていただくことが必要です。本田 宗一郎の『やっぱり修理屋というのは、心の修理までしてあげなければ、本当の修理屋じゃない』という言葉の通り、お客様の心も直すサービスを提供するための施策や戦略を考えていくこともサービスの大事な業務です」

そして2014年の1年間、今野はHondaDream(ホンダドリーム)*トレーニーとして派遣されました。その経験から、サービス領域の業務は、お客様からのダイレクトな反応を得やすく、おもしろいと感じたのです。

*ホンダバイクの新車販売、中古車販売、バイクのカスタマイズ、パーツおよびグッズの販売からバイクの整備・保証・点検・車検・保険のサービス&ケア を行う販売店

今野 「サービス領域では市場に軸足を置いて仕事をするので、フィードバックがダイレクトに返ってくるのがおもしろいですね。Honda Dreamでは、実際にエンドユーザーの方とお話ししてお客様のバイクを整備してお渡ししていました。

今の日本市場におけるバイクは趣味の側面が強いので、お客様の想いをどう汲み取って価値提供するかを考えていくのも興味深かったです。自分が提案したメンテナンスやカスタマイズの方向性がお客様に刺さり、気に入ってもらえると嬉しかったですね。

満足したお客様が、私を訪ねて相談に来てくださることもありました。お客様と深くお付き合いをさせていただけたことは、私のキャリアのターニングポイントでしたね」

その後今野は、二輪事業本部のサービス部で北米市場の品質不具合を扱いました。問題点を開発部門にフィードバックしたり、解析部門に情報を渡したりする業務を担当していたのです。

今野 「そのときに長期出張で1カ月半ほどアメリカに行き、現地の工場で新しいモデルを立ち上げて販売するところを確認し、初期品質に問題があれば素早く改善して品質を維持する役割を果たしていました。現地のスタッフとともに最前線でモニタリングをして、スピーディーな改善業務に取り組んだんです」

北米の担当として現地へ滞在することになった今野ですが、実は英語は得意でなく、コミュニケーションに苦労したと振り返ります。

今野 「アメリカ出張中は仕事が終わったあとにホテルで、そして帰国してからは会社の特別英語研修を受講しながら英語の勉強をするようになりました。特に英語を使う仕事を希望していたわけではありませんでしたが、担当業務によっては現地に行って英語でコミュニケーションをしなければならない可能性もあります。

英語力を身につけるための研修など、社内でバックアップを受けられるのは助かりましたね。私はその後駐在が決まりましたし、英語ができないから駐在の可能性はゼロ、というわけではないと感じます」

ベトナムの二輪シェアを磐石にするため、店舗サービス向上施策を実施

▲Hondaベトナムの販売店にてメンバーと(2017年8月頃撮影)

今野は2016年4月から、ベトナムに駐在することになりました。ベトナムでも日本と同様にサービス品質の向上をミッションとして、販売店のオペレーション改善施策に取り組んだのです。

今野 「Honda Dreamでお店がどういう動きをしているか知れたのが、ベトナムで仕事をする際に大きなアドバンテージとなりました。ただし、ベトナムは日本と文化が異なるので、経験に固執せず違いを知りながら、ベトナム人に合わせた改善をしていくことになりましたね。

たとえば、日本などではお客様がお店にバイクのメンテナンスを依頼される際は、販売店にバイクを預けて後日取りにいらっしゃるという印象ですが、ベトナムの方にとってバイクは日常生活で使う財産のような存在なので、メンテナンスが終わるまでお店でずっと待っていらっしゃるんです。

待ち時間が長いとお客様満足度が下がってしまうので、待合スペースで快適に待ち時間を楽しんでいただけるようにするなど、よりHondaを好きになっていただくための施策を実施しました」

ベトナムでHondaの二輪シェアは非常に高いので、現状のままでも大きな問題にはなりません。しかし、シェアを磐石にするためには、製品そのものの品質だけでなく、買ったあとのサービスを向上してお客様が離れないようにする必要があったのです。

今野 「販売店のオペレーションを改善し、Hondaベトナムとしてお店をサポートできるところはしていきました。お客様との接点を増やして期待以上のサービスを提供するためのアプリ『My Honda+』*をリリースしたのも、その一環です。

私はもともとお客様とつながるサービスを提供したくて、同時期にいたITの駐在員はベトナムの四輪のマーケットシェアを増やすために、二輪のお客様を四輪のお客様に変換できるようなITプラットフォームを作ろうとしていました。ワイガヤ*を通じてそれらの想いを実現するための構想を練り上げ、最終的にITの方が形にしてくれました」

*Honda製品の情報や企業活動のPRだけでなく、点検整備の予約や履歴の確認、次回点検のご案内など、バイクライフに関わる全ての情報を提供するモバイルアプリ

*「夢」や「仕事のあるべき姿」などについて、年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論するHonda独自の文化。合意形成を図るための妥協・調整の場ではなく、新しい価値やコンセプトを創りだす場として、本気で本音で徹底的に意見をぶつけ合うことで、本質的な議論を深める

ベトナムの店舗でのお客様満足度向上に貢献した今野。一緒にベトナムへ渡った家族との暮らしも充実したものでした。

今野 「妻もベトナムでの生活をとても気に入って、帰国したくないと言っていたくらいです(笑)。会社のサポートもしっかりしていて、国もいいところだったのでQOLの高い生活をさせてもらいましたね。

私はもともと駐在を強く希望していたわけではありませんでしたが、ベトナムの駐在を経験して、もう一度チャンスがあればどこかに行きたいと考えるようになりました。サービス領域は現場に近いのが魅力ですが、駐在で海外に出るとさらに現場が近くなります。

お客様や販売店とのつながりが強くなるのはおもしろいし、自分のできる業務の幅が大きく広がるんです。その分責任も重くなるので適当なことはできませんが、やりたいことを実現していく土壌として駐在先はかなり懐が広いので、また行きたいと思っていましたね」

欧州で10年振りの二輪サービス領域専任の駐在員。販売店をトレーニングし自走化を目指す

今野が再び駐在の機会を得たのは、4年間のベトナム駐在が終了してから約1年半後でした。2021年8月からはイギリスに駐在し、二輪のアフターセールス領域全般を担当しています。

今野 「特に力を入れているのが、各国の販売店に3日ほど入り込んで、サービスにまつわるオペレーションの流れや人の動きなどを見て分析し、どのようにオペレーションを改善しどうビジネス向上につなげていくかを提案するコンサルティングのような仕事です。

現在見ているのはイタリアとスペインの2カ国ですが、2022年4月末からはベルギーやオランダ、その後はドイツ、フランス、イギリスの販売店を巡って業務改善を進めていく予定です」

今後の方向性として、今野は自身がいなくなっても現地スタッフが業務プロセスを回せるようにしたいと考えています。

今野 「私たちが販売店に入るときは、現地で働いているHondaスタッフと一緒に行きます。そこでスタッフに対してOJTを実施し、その後自己学習フェーズに移行するなどして、自走化へ向けた準備をしたいと考えています。

ただ、今はOJTベースでトレーニングを提供していますが、どうしても私たちが現場に入り込んで現地のスタッフに直接教えられない国もあります。そのため、現地スタッフを自立的に支えられるツールを作っていくのも今期の目標です」

欧州駐在における今野のミッションは、Hondaのマーケットシェアのさらなる拡大をサービスで下支えをすることです。そのために、日本の部署とも連携しながら仕事を進めています。

今野 「同じ駐在員や現地のスタッフだけでなく、日本にいる社員も助けてくれるので、Hondaには自分からきちんと発信すれば助けてくれる土壌があると思います」

今野は10年振りに欧州で二輪のサービス領域専任の駐在員として派遣されましたが、今後のために駐在員としての自分自身のミッションを掲げています。

今野 「駐在員がいるとプラスアルファの成果が出るから次も送ろうと判断されれば、今後若手にも駐在のチャンスが訪れます。それを絶対に忘れないようにしたいですね。一方で、今後、もし駐在員がいなくなる場合は、しっかりと成果を残し、私の取り組みによって現地のスタッフが育ち、オペレーションがきちんとできるようになったからいなくても安心だという方向で行われてほしいと思います」

今野はベトナム駐在でベトナム人の持つ文化や考え方に合わせた業務改善を行ったように、イギリスでも現地に合わせつつ認識をすり合わせながら業務を進めることを心がけています。

今野 「私は英語がネイティブではないので、言いたいことがうまく伝わらないときは紙に絵や図を書くなどして、“わかったつもり、わかってもらったつもり“で仕事をしないようにしています。

すべての業務を進めるためには現地の方が納得する必要があるんです。最終的に業務を進めるのは現地の方なので、現地の方がきちんと腹落ちするまで議論をするというのは、日々心がけていますね」

「サービスが良かったからHondaを選ぼう」と思ってもらえる世界を実現したい

▲アジア大洋州テクニシャンコンテスト*ベトナムメンバー総合優勝時の写真(2016年12月)

*アジア大洋州地域各国のテクニシャンの中で、地域で一番のテクニシャンを決める大会

サービス領域で経験を積んできた今野には、Hondaで叶えたい大きな夢があります。

今野 「Hondaのバイクを選んでくれるお客様は、見た目や品質・性能に惹かれて販売店に来てくださる方が多いと思います。そこで、次のバイクを買ってくださるときには『サービスが良かったからHondaを買っておけば安心』と思ってもらえる世界を実現したいんです。

サービスそのものをHondaが持つひとつのブランドとしてお客様に訴求して、サービスがHondaを選ぶ決め手になれば、お客様にロイヤルカスタマーであってもらえる。それはサービス領域にいることでしか実現できないので、今後のサービスで理想の世界を作っていきたいと思います」

ベトナムでMy Honda+を作ったときも、今野はお客様にHondaのさまざまな製品を選んでほしいという想いを持っていました。

今野 「たとえば、家の芝刈り機やクルマがHonda製品で、小さい頃からHonda製品に慣れ親しみ、その後自身でHondaのバイクを買い、サービスが良かったらそのままHondaに乗り続ける。Hondaが良いとわかっているから、クルマを買うときも家を建てて芝刈り機を買うときもHondaを選ぶ。

そのように次世代までつないでいけるさまざまなプロダクトを持っているのは、Hondaだけです。だからこそ、Hondaのファンになって選んで欲しくてMy Honda+を作りました。二輪だけでなく、サービスを通じてHondaのロイヤルカスタマーを作っていければいいですね」

入社以来一貫して二輪サービスに携わっている今野は、サービス領域の仕事の魅力は幅広く業務に関われることだと感じています。

今野 「サービスだから販売店の整備しかしないというわけでも、品質管理だけやっていればいいわけでもありません。お客様や販売店のために、サービスの範囲を超えて他部門の業務について勉強しなければならない場面も出てきます。私もサービス領域で販売店のサービス収益性を分析する経理的な業務や、物流に関する調整をすることもあります。多岐に渡って仕事ができ、現場や他領域についてさまざまなことを学ぶ機会を得られるというのは、サービス領域に携わる魅力ですね。

また、お客様に製品をお買い求めいただいてから始まる、Hondaがある生活をより充実したものにするお手伝いができる、というのもサービスの大きな魅力だと思います」

Hondaへの熱い想いを自身の夢として、二輪サービスで理想の世界の実現に向け確実に歩みを進めている今野。

幅広い仕事に携われるのが魅力のサービス領域で、これからもお客様の満足度向上のために尽力します。