今後も存続を期待される会社であり続けるため、Hondaが提供すべき価値とは

2022入社フォーラムで行われた、「経営TOPとのパネルディスカッション」。ひとつめのテーマは、「Hondaに期待される提供価値」です。Hondaが今後も存続を期待される会社であり続けるために、どのような商品やサービス、価値を提供していくべきでしょうか。新入社員が考えるHondaの具体的な課題と、それに対する三部のコメントに迫ります。

新入社員A 「私が考える今のHondaの課題は、独自価値の提供です。現在世界的にEV化が進んでおり、他業種からの自動車業界への参入も増え、さまざまな企業が独自の価値を持ったサービスの展開を行っています。そこで私は四輪車だけでなく、二輪車や航空機などHondaのあらゆる事業領域を活用したMaaS*サービスを提供すべきだと考えています。

Hondaは自動車以外の事業分野も数多く展開しており、多くのモビリティ技術を所有しているのが強みです。そこで、これらを組み合わせることによって新たな価値を創造し、お客様に提供することができると考えております」

*Mobility as a Serviceの略。自動運転やAI、オープンデータ等を掛け合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリングサービスも統合して次世代の交通を生み出す動き

三部 「確かにEV会社は新規参入が増えていて、私は非常に脅威だと思っています。そうした企業はしがらみのないなかで事業をスタートするため、より新しいビジネスを作りやすい環境にあります。我々はそれを意識しながら戦っていかなければなりません。

Aさんの言うとおり、Hondaは車に限らずいろいろな商品を持っています。たとえば現在開発を進めている『Honda eVTOL(電動垂直離着陸機)』を利用してお客様が移動し、その後自動運転の車が迎えに来て、それらの予約をすべてスマホ上でできれば人がスムーズに移動できるでしょう。今後はデータをうまく活用してそのような新しいサービスを提供することが、我々がやるべきビジネスだと思っています。

今はサービスプラットフォームを作っている段階で、今後新しい組織でできるだけ早く事業化したいと考えています。いち早く形にして世の中に価値を出すのが重要だと思っているので、新入社員の皆さんとも一緒に頑張ってやっていきたいですね」

新入社員B 「Hondaに期待される提供価値は、お客様にワクワクしてもらうことだと考えています。この数年間で世界では急速に電動化や自動運転技術の進歩が進み、Hondaも世界初のレベル3自動運転を実現するなどさまざまな取り組みに力を入れています。

『世界初』という言葉や量産EV、他社との協業などにお客様はワクワクすると思いますが、一方で現在は『これこそHondaだ』と言われる象徴的な製品が少ないように感じるのです。そのため、今後Hondaは象徴的な製品やワクワクするサービスを提供していくべきだと考えます。

たとえば、モビリティに運転手と遠隔でコミュニケーションを取れるAIを搭載したり、四輪や二輪の概念を超えた新しいモビリティを開発したりして、Hondaと関わるすべてのお客様にワクワクしてもらうことが重要ではないかと思います」

三部 「お客様にワクワクしてもらうというのは、非常に重要ですね。自動車会社は他にもあるので、極端なことを言えば、もし明日Hondaがなくなったとしても、お客様は他社のクルマを買えばいいので移動には困りません。だからこそ、自動車を買いにくるのではなくHondaを買いにくるお客様を作らないと我々は勝ち残れないと常に意識する必要があります。

今までもHondaは、お客様にワクワクしてもらうことで勝ってきました。ただし、これからも過去と同じ価値が求められ続けるとは思っていません。やはり変革期のなかでワクワクとは何かを徹底的に議論したうえで、商品を作っていく必要があります。

今も水面下で計画は進んでいます。二輪や四輪などの枠に収まらない新たなモビリティなど、お客様にワクワクしていただける商品を作るという想いは私も持っています」

新たな組織の形を模索するなか、Hondaが若者に期待することは何か

パネルディスカッションふたつめのテーマは、「若者に期待すること」です。Hondaで若者に期待されていることは何か、そして自身がそのために今後何に取り組んでいくか。新入社員の考えと三部が語るHondaの未来が交わります。

新入社員C 「私は、Hondaで若者に期待されているのは専門の壁を取り払っていくことだと考えています。
先日発表されたHondaとSONYの戦略的な提携に向けた協議・検討の合意に見られるように、今後はこれまでまったくモビリティに携わってこなかった企業もモビリティ分野に参入するのが当たり前になってくると考えられます。そのために、私はまず社内の部署の壁を超えて仕事に取り組み、専門の壁を取り払いたいと考えています。

また、モビリティとは異なる分野を扱ってきた企業に対しても、業種を超えて積極的にコミュニケーションを取りたいです。新入社員ゆえに、社内のことやモビリティ業界については詳しくありません。だからこそそれを強みに変えて、先入観のない状態で謙虚な姿勢と新鮮な観点を持ち、専門を乗り越えて仕事に取り組みたいと考えています」

三部 「若者の最大の武器は、既存のルールに縛られないことだと私は考えています。今は第二の創業期だと言っているように、これからHondaのビジネスを変えていかなければなりません。我々が70余年にわたって作ってきたルールや組織は今の事業に最適なものであり、ビジネスを変えていくためには既存の組織を作り変える必要があります。

我々の目指すビジネスにどのような組織の形が適切なのか、社内のリソースはどのように配分すればいいのかなどは、現在議論しているところです。変革は一瞬ではできないので、どのように組織を移行していくのかが重要です。変化に応じて、徐々に新しいビジネスに最適な組織に成長させていくことになります。そのなかで、従来の壁を壊すイメージをしていますね。

ただし、今日時点でも今の組織でビジネスをして収益を上げているため、どのように移行していくかは難しい経営課題です。私自身も風通しが良く新しい世界にうまく移っていけるような組織を目指しています」

まだ何にも染まっていないこと、それが若者の武器

Hondaで若者に期待されることは何か、そして自身がそのために取り組んでいくことは何か。新入社員からは、次のような意見も挙がりました。

新入社員D 「私は、Hondaフィロソフィー*を理解しつつも社内に新たな視点を持ち込むことが若者に期待されていると考えます。新たに入社する人間は良くも悪くもモビリティ業界に精通しておらず、常識にとらわれない思考ができるからです。

モビリティ業界は現在変革期とされ、電動化や自動化、新規企業の参入などで従来の常識が通用しなくなっていると推察できます。また、Hondaの文化であるワイガヤ*においても、人と異なる視点の存在が議論を活性化させると考えられます。

だからこそ私たちは、自分の専門分野以外の領域にも目を向け、広い視点を持つことが大切です。そのために新聞やニュースなどを通じて情報収集をして、興味を持った領域について自分で調べることを心がけます。また、議論に臨むときは他人の考えに同調するだけでなく、事前に自分独自の考えを形成することを意識します」

*Hondaの企業理念。「人間尊重」「三つの喜び」から成る“基本理念“と、“社是”“運営方針”で構成されている。詳しくはこちら

*「夢」や「仕事のあるべき姿」などについて、年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論するHonda独自の文化。合意形成を図るための妥協・調整の場ではなく、新しい価値やコンセプトを創りだす場として、本気で本音で徹底的に意見をぶつけ合うことで、本質的な議論を深める

三部 「会社に新しい視点を持ち込むことが若者に期待されているというのは、そのとおりだと思います。新しいビジネスを考えるにあたり、これまで我々が作ってきたルールがふさわしくない場合もあるので、必要に応じて変えていかなければなりません。

皆さんの先輩たちは何十年も既存のルールで生きてきたので、今までのルールを捨てなければならないと頭ではわかっていても、どうすればいいのかがわからないこともあります。企業文化や風土といった目に見えない習慣化したものは、そう簡単には変わりません。

だからこそ、起爆剤として新入社員の皆さんに期待しています。まだ何にも染まっていないことを武器として、新しい将来のために戦えるHondaを作りたいという想いをそれぞれの現場で先輩たちに言ってみてください」

Hondaにとって「変えてはいけないもの」「大切な価値」とは

パネルディスカッションのあとには、新入社員から三部に質問が寄せられました。変わりゆく世の中に対応して組織も変わらなければならないと考えているHondaについて、鋭い質問が挙がります。

新入社員F 「モビリティ業界は変革期にあり、Hondaも組織を変えていかなければならないと社長はおっしゃっていました。一方で、変えないことの価値というのもあるかと思います。Hondaに残していかなければならない、変えてはいけないものは何だと思われますか?」

三部 「Hondaフィロソフィーは、これからも変えることはありません。たとえば私はエンジン開発に携わってきましたが、もうエンジン開発はやめようと言って社内でも物議を醸し出しました。

研究対象は、時代とともに変わっていけばいいのです。エンジンが得意だから最後まで守るんだとこだわり続けると、エンジンを抱えたまま死んでいくことになります。

本当に守らなければならない財産は、エンジンではなくエンジンを開発してきた人たちです。開発者はエンジンの世界でトップになれという命題をもらって一生懸命やってきましたが、それができる人たちは研究対象が変わっても同じように能力を発揮できます。

Hondaフィロソフィーに“人間尊重“が含まれているように、Hondaの最大の財産は新入社員の皆さんを含めた“人”です。商品は時代とともに変わっていきますが、人を大切にするHondaフィロソフィーは変わりません。さまざまなチャレンジをするなかでも、絶対に変えてはいけないと思っています」

同期のメンバーからの本質を捉えた意見や三部社長の熱い想いを直接聴くことができ、多くの気づきや学びを得た新入社員たち。Hondaの一員となったこの日、会場は活気にあふれていました。

第二の創業期とも言える変革の時期を迎えているHonda、その変革の起爆剤として特に若者たちの活躍が期待されます。