部品開発から統合戦略へ。10年後を見据えた挑戦

Hondaは「2030年ビジョン」の実現に向け、2020年に事業運営体制の変更を行いました。四輪事業の運営体制も変わり、本田技術研究所をはじめとするいくつかの組織の一部が本田技研工業の四輪事業本部に統合されたのです。

2019年まで本田技術研究所に在籍していた髙松も、2020年の組織変更で本田技研工業四輪事業本部所属になりました。事業統括部事業戦略部統合戦略課で、長期的な戦略を立てる役割を担っています。

髙松 「2009年に新卒で入社したあとは、電気自動車の電動部品を設計する部署に入りました。

数年後にジョブローテーションがあり、部品レベルの戦略を検討している部隊に異動しました。5~10年ほど先の中長期計画を立て、Hondaの環境ビジョンを達成するためにどのような開発をすべきか考えていましたね。

その後部品の開発に戻ったあと、商品技術戦略室に異動しました。ここはクルマ1台分の技術戦略を束ねる部署で、将来の技術に必要なコストを整理したり、将来の顧客価値を考えたりという役割を担っていました。おそらく、2020年に統合戦略課への異動が決まったのは、商品技術戦略室での経験があったからだと思います」

これまでの営業・生産・開発・購買の各領域による協調運営体制から、2020年以降は各領域が統合した一体運営体制に切り替わりました。本田技術研究所で研究開発の戦略を担っていた髙松も、四輪事業本部に異動してから仕事内容が変わったのです。

髙松 「事業戦略部では技術や生産、販売、財務なども含めて長期の戦略を定めています。それらを統合戦略課で束ねて四輪事業の方向性を決めていきます。国内外問わず、Hondaの四輪事業の将来を見据えています。

Hondaは四輪ものづくり改革の方向性として、“強い商品・強いものづくり・強い事業”の実現に向けたオペレーション体制の構築を掲げています。その中で事業戦略部は、たとえば10年後に各国でどのようなクルマを何台販売するか、そのための生産能力は足りているか、将来の自社ビジョンに適合するかなどの重要なポイントを押さえる役割ですね」

ミリ単位の調整から、10年先の検討へ。異なる経験を積むおもしろさ

髙松は学生時代、機械工学を専門としていました。大学院を卒業しHondaに入社することを決めたのは、自身のものづくりへの興味と考えるべき課題を考慮した結果です。

髙松 「ものづくりがしたいという想いがあったことに加え、環境系のテーマである燃料電池について研究していたので、環境系は今後取り組んでいかなくてはならない技術課題だと考えていました。

そこで、環境技術の開発を進めている自動車メーカーに入りたいと思ったんです。当時自動車の電動化開発に積極的なメーカーはHondaを含め3社ほどあり、その中でより自由な社風で技術的な議論ができると思い、Hondaに入社しました」

Honda入社後は学生時代に専門としていた燃料電池には携わっていませんが、環境系とものづくりに関わりたいという想いはこれまで歩んできたキャリアにも表れています。髙松は、車体やシートではなく、「動くもの」の技術開発に関わりたいと考え、クルマを動かす根幹となるパワートレインを設計する部署を志望しました。

入社から10年以上経った2021年現在、髙松は今後ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車がより増えていくと考えています。

髙松 「ガソリン車からハイブリッド車などの電動車への切り替えが進み、今までどおりにガソリン車を使うことはできなくなってくると思います。Hondaも、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、2040年までに電気自動車や燃料電池車のグローバル市場での販売比率を100%にするという目標を発表しています。

ただし、まだ技術的に解決しなければならない問題が多く、たとえば、明日からいきなり全てのクルマが電気自動車や燃料電池車に切り替わることはありません。今後の技術の動向を把握して、どの時期に何をするかをHondaとして見極める必要があります。

たとえば、今全てのクルマをいきなり電気自動車にしてしまうと、航続距離や充電インフラ不足などの大きな課題が発生するため、カーボンニュートラルの実現に向けて、技術や生産、販売、提供価値などの長期計画を定める必要があります。そのようなことを検討している状況ですね」

2020年から所属する統合戦略課での業務は、図面を描いて設計していた頃の業務とは性質が異なります。戦略課に配属される前のさまざまな仕事経験は、髙松の糧となっています。

髙松 「設計していた頃は、『ミリ単位で部品の形状を変更するとどうなるか』というような緻密な調整を行う場面も多々ありました。その後戦略に携わるようになり、10年先に対して導入していく技術について考えることになりました。どちらの業務も、それぞれ違ったおもしろさを感じていますね。

Hondaでは長年開発に携わる社員がいる一方で、いろいろな部署を経験して知見を広めていくキャリアを歩む場合もあります。統合戦略課では、それぞれの部門の検討内容を理解し事業全体としての最適化が求められるポジジョンなので、これまでのいろいろな経験が役に立っていると思います」

システムを活用し、デジタル化による業務効率化を進める

統合戦略課では、事業戦略を立てる先導役を担うことに加え、事業をさらにスムーズに検討するためデジタル化による業務効率化も進めています。長期戦略を“大きく軽く早く”検討するために戦略検討用のデータ管理システムを構築し、多くの部門と連携しながら業務効率化を推進しているのです。

髙松 「もともと戦略検討に使用するデータは、各部署が個別に収集したりフォーマットが異なっていたりして業務効率化の余地があると感じていました。そこで、戦略検討業務を一つのシステム内で連鎖させ、効率化を進めています。

たとえば同じクルマや技術のことを指していても部門ごとに表記が違うとシステムで処理をする際に別のデータとして扱われてしまいます。そうすると、データの読み替え処理に時間がかかってしまいますよね。このシステムでは各部門の検討に使用しているデータの相互関係や定義を明確化したうえで、戦略検討に必要な業務内容をシステム化することで戦略業務の効率向上を行っています。

さらに、データを一元管理することで、情報の伝達漏れ防止や最新検討状況の見える化を行っていますこれらによって戦略を大きく軽く早く検討できるようなシステムにしていく予定です」

小さく生んで大きく育てることを意識して作られているこのシステムにより、少しずつ業務のデジタル化を進めています。最終的には、人手がかかっていた作業量を半減させることを目的としています。

そのため、髙松はデジタル化できる業務の拡大を目指して取り組んでいます。一方で、業務のデジタル化を統合戦略課だけで達成できるわけではないので、システム開発者など他部門との連携が非常に重要だと感じています。

髙松 「たとえば実際に戦略検討業務をこのシステムで行うことで、見落としていた項目や新たな課題がでてきています。それらを関連部門と協力して解決しながら日々の業務を進めています。

また、戦略検討の業務の中には属人的な部分もあり、ノウハウが人に紐づいてしまっていることもあります。戦略の検討にあたって各メンバーの持っているスキルやロジックを見える化し、それをシステムに落とし込んでいく作業は大変ですね。

それでもデータの定義明確化やメンバーの持っていたスキルやロジックの見える化を進めていけば、業務検討の効率化や精度アップにつながると信じています。これからもシステムをより良くしていくことに注力していきたいと考えています」

意見を言い合えるHondaだからこそ他部署と協力し長期戦略を立てられる

▲当時の職場のメンバーと(2019年12月に撮影)

統合戦略課で働くうえで、髙松は自由に意見交換ができるHondaの土壌が役立っていると感じています。

髙松 「私は設計として働いていたので部品に関しては詳しいですが、生産現場では勤務をしたことがないため生産については明るくありません。しかし、生産に詳しい方は私以外にいます。

統合戦略課はいろいろなバックグラウンドを持つ方が議論をして戦略を立てることが目標ですが、そのなかで他部門の方に質問したり意見を言ったりする必要性が出てきます。そのため、Hondaの自由に意見を言い合える環境は本当に必要だと思いますね」

高松が、自由に言い合える環境が必要と感じている理由は、言い合わなければ、より良い戦略を導くことができないと考えているからです。

高松 「Hondaの2030年ビジョン実現のために、会社として戦略を定め大きく変わっていかなければいけないと思います。ただし、戦略とは将来を決めることなので、その決定の結果として必ずメリットとデメリットが発生します。そのためさまざまな部門の観点から戦略を議論し、よりよいHondaの将来を描く必要があると思っています。

その一方で、それぞれの部門の検討結果を一つの戦略にまとめていく際には、意見を整合していくことが重要になります」

入社以来さまざまな部署での経験を経て、統合戦略課に配属された髙松。職場が何度変わっても、変わらないことがありました。

髙松 「『新しいことに挑戦させてほしい』と、常に上司に言ってきました。世界初というわけではなく、私が経験したことがない仕事にチャレンジしたいということですね。

事業戦略の業務も経験がありませんでしたが、新しい業務に取り組むと勉強になりますし、視野も広がると思っています。今後のキャリアでも新しい業務に挑戦し続けていきたいですね」

このようなキャリアプランを描けるのは、挑戦を後押しするHondaの風土も関係しています。

髙松 「新しいことに挑戦するためには、やはり飛び込んでみるしかありません。

新しい仕事では完璧なアウトプットをすぐに出すことはできず、その時の仕事の理解度に応じたものになってしまいます。そのようなときに上司やエキスパートの方と内容を共有しながらアドバイスや指示をもらうことで、新たな気づきがあったり課題が見えてきたりします。皆さん真剣にアドバイスしてくれるので、安心して挑戦できますね」

これまでの経験を活かしながら統合戦略課で戦略を取りまとめ、Honda四輪事業の方向性決定に貢献している髙松。

経験を常に自身の糧としながら今後もHondaでキャリアを重ね、まだ見ぬ世界に向かって力強く踏み出していきます。