南米での留学経験がきっかけでHondaへ入社。経理財務のキャリアを歩む

2021年8月現在、石川が携わっているのはビジネスユニットオフィサー(以下BUO)付業務です。BUOとは5〜10年先のクルマの事業や企画、開発、量産立ち上げまでを一貫して統括する責任者のこと。四輪事業本部事業統括部事業管理部事業企画課に所属する石川は、BUO付の事業管理プロジェクトのリーダーを務めています。 

石川 「2021年から、四輪の新機種に関わる業務に携わっています。購買や原価計算を熟知している担当が算出した、機種コストをベースに将来の事業性を検証することが私たちの仕事です。将来利益を確保するためにどのようなモデルでどれくらいの利益を稼いでいかなければならないのかを、経営の視点を持って考えます」

たとえばHondaでは、2040年までに世界で販売する新車をすべて電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に転換するという目標を掲げています。目標達成のためには2040年までにどんな商品でどのくらい売上げるか、また、対象以外の機種でもどう利益を確保していくかが重要になります。その検証をすることがBUO付事業管理プロジェクトの仕事内容です。

石川 「事業企画だけに特化するのではなく、数字の整合性の検証や管理もします。ある技術を新機種に搭載する場合にかかるコストと、それを踏まえた事業性について、チームメンバーと共にコストと商品性、搭載技術がマッチしているかを機種単位でも検証し、四輪事業全体として適切かどうかを検討していきます」

チーム内には営業や生産、開発、購買、管理のメンバーが揃っていて、連携しながらプロジェクトを進めています。専門分野に特化したメンバーを中心に細部まで深堀りしてコスト・売価を決め、それをもとに事業性の検証を行っています。

石川はHondaに入社する前から、やりたいことが明確にありました。

石川 「私は学生時代ペルーに留学していたのですが、Hondaの四輪車はペルーであまり見かけず、二輪車を目にすることが多かったです。ペルーでは運転が荒い傾向にあると感じていたので、なぜもっと安全な四輪を販売しないんだろうと疑問に思ったんです。南米で働きたいと思っていましたし、自分自身が四輪の販売に貢献したいと思い、Hondaに入社しました」

2007年にHondaへ新卒入社した石川は、まず財務部へ配属されました。

石川 「海外で仕事をしたいと考えていたので、配属当時は営業に異動したい気持ちもありましたが、経理財務の業務のなかで海外営業の方と仕事をする機会に恵まれました。次第に、経理財務でも海外に行ける可能性があるならと、経理財務のキャリアを歩もうと考えるようになりました。そのためには製作所のような現場で経験を積む必要があるという周囲のアドバイスを受けて、2012年に熊本製作所へ異動しました」

海外へ行きたいという気持ちを周りに発信し続け、確実にキャリアを積み重ねていった石川。そんな彼女は、2016年に海外駐在の切符を手にすることになります。

タイ駐在での経験が現在につながる

入社前から一貫して南米での仕事を希望していた石川ですが、打診を受けた駐在先はタイでした。海外で働けるならば挑戦したいという想いで決意し、四輪の生産と販売を担うホンダオートモービル(タイランド)カンパニー・リミテッド(Honda Automobile Thailand Co.,Ltd.)で働くことになったのです。

石川 「駐在中の仕事は経理財務より営業に近く、2〜3年後に発売される新機種企画の収益性の取りまとめサポートを主な業務としていました。駐在前に在籍していた熊本製作所は二輪の事業本部だったこともあり、四輪には詳しくありませんでしたが、現地のスタッフや生産のエキスパートの方々に教えてもらいながら知識を身につけていきましたね。

知識がついてくると、現地の営業担当者が商品コンセプトをどのように捉え、購買層や営業戦略をどのように考えて商品を販売しようとしているのか、それに対する生産側の難しさや想いなども理解でき、お客様に商品を届けるまでの難しさを現場に近いところで感じられるようになりました」

駐在中に成し遂げたこととして、石川は現場を巻き込んだ中長期予算の作成を振り返ります。

石川 「当時駐在先では部門による予算作成と実績管理は短期のみで、中長期の予算は会計で作成していました。しかし、やはり各部門がどのような施策に基づいて仕事を進めているのか、どのような意図で投資を行っているのかといった現場の観点がないと、精緻な予算の作成は難しく、部門主体で積んでいる新機種の企画コストとの整合も取れないと感じていました。

そこで、現場を巻き込んだ中長期の予算作成を工場長や事業企画部門に提案しました。結果的にはじめて現場を巻き込んだ中長期の予算を組むことができ、この取り組みは、今も現地のスタッフに続けてもらっています」

プロジェクト達成に向けては、苦労も多くありました。

石川 「プロジェクトを進めるためには、まず現場の合意を得ることが必要不可欠でした。各部門のジェネラルマネージャーからは現場の業務負荷の増加を懸念し、人手が足りなくなるなどの反対意見が挙がりました。

しかし、工場長に施策の必要性を説明し納得していただき、ジェネラルマネージャーが集まる会議で議題として提案し、議論していただきました。実務面では事業企画部門や現地スタッフと実施時期や方法を何度も会議をしながら探り、周囲の理解を得ながらプロジェクトを進めることができました。

実際に、現場の考えを反映させて中長期の予算組みをするなかで、現場の意識が変わっていくのを感じました。たとえば、タイは賃率がどんどん上がっているため、『去年の成績がよかったから賃率をあげよう』というように短期的に動いてしまうと、後に大きく影響してしまいます。それが新機種のコストにも影響してくる。そこに気づいてもらえるようになったので、取り組んでよかったと思いましたね。

今は5〜10年後に生産、販売する機種を担当していますが、駐在中は2〜3年後に出す新機種のためにどういう投資やコスト、施策が必要なのかを考えていました。当時の経験は現在の業務にもつながっています」

駐在を終えて帰任した石川は異動や組織変更を経て、現在の所属へ異動となりました。

経理の立場から将来のクルマづくりをサポート

BUO付の事業管理プロジェクトに携わり、5〜10年先のクルマについて考えるようになった石川。現在の仕事のおもしろさは、商品企画に携わるメンバーが何を見てどのように考えながら企画を進めているのか目の当たりにできることです。

石川 「5〜10年後に新機種を販売するため、BUOが客層や商品の立ち位置、装備、金額などを幅広い範囲で考えています。それを定例会などを通して間近で聞くことができるのは、この業務に携わる醍醐味です。BUO付の業務でなければ包括的にクルマやHondaの将来像を見ながら事業を組み立てていく様子を目にする機会はなかなかないので、おもしろいですね」

入社してから経理の経験を積んできた石川は、BUOが適切な判断を下せるよう数字の情報を正しく伝えることを心がけています。

石川 「経理の立場からは、こうすればより良くなりますという提言だけでなく、このままではだめですという注意喚起もできるんです。アドバイスと言うとおこがましいですが、Hondaの将来のためにより良い判断の一助になるよう、情報の伝え方には気をつけていますね。

チームメンバーも購買や商品技術、開発などの各分野のプロフェッショナルなので、それぞれに対して適切な提案をしようと心がけています。専門知識が豊富なメンバーと連携できることも、貴重な経験ですね」

BUO付の業務は、まだはじまったばかりです。そのため業務フローが確立されておらず、進め方が手探り状態になっていることが課題だと石川は感じています。

石川 「BUOは同一のプラットフォームをベースに機種群での検討をします。そのためには、台数やラインナップは重要なファクターであり、効率的な開発や生産のアロケーション検討も必要になってきます。

一方で台数やラインナップは地域や戦略部隊が決めているため、双方の内容をすり合わせるフローがないと正しい検討ができないんですよね。

そこで、BUO付きの立場として最新情報を細かくチェックし、該当部門とのすり合わせや逆提案ができるようBUOと一緒になって業務を進めていますが、業務フローに反映されるようにするためにどうすればいいかは、まだまだ未確定の部分も多いです。

それ以外にもこれまでのフローをどう変えていかなければいけないのか、試行錯誤しながら進めている状況ですね。チームとして業務を行い、トップにBUOがいて主導権を持って進めてくださるので、きちんと情報を渡しながら進めていければと思っています」

“自分のために働け”の言葉を受け、思い描いた道を突き進む

石川が仕事を頑張れるのは、「まず自分のために働け」というHonda創業者の本田宗一郎が残した言葉が原動力となっているからです。

石川 「会社のためじゃなく“自分のために働け”というのが、1番好きな言葉です。自分のために働くうちに自分の望む南米にも行けるだろうと考えていて、それが原動力になっています。やりたいことをやった結果それが会社のためになっていれば、Win-Winですよね。

Hondaには、やりたいと言ったら挑戦させてもらえる環境が整っています。私自身も希望を言い続けたことで工場にも駐在にも行くことができて、新機種にも関わることができました。自分が思い描いた道を進める安心感があると思います」

石川が自身の進むべき道を信じて歩んでこられたのは、周りが背中を押してくれたことも影響しています。

石川 「業務中のちょっとした雑談などでコミュニケーションを取るなかでも、やりたいことを言いやすい雰囲気を上司が作ってくれます。私が南米に行きたいと言ったとき『難しいかもしれないが、本当に行きたいなら言い続けろ』とアドバイスしてくださるなど、基本的に否定する方はいません。

タイに駐在に行くときも、私は経理の知識が少なく新機種もわからないのに大丈夫かと心配していたんですが『行けばなんとかなるし大丈夫だ』と上司が背中を押してくれました。入社してからの環境にはとても恵まれていると思います」

BUO付の業務は、5〜10年先の未来を作る様子を間近で見られることが楽しく、同時にインパクトが大きいためやりがいのある仕事だと石川は感じています。

石川 「タイ駐在中に関わった新機種が2〜3年後に発表されて販売に至るところを見ていたので、今もそのワクワクを感じながら仕事をしています。5〜10年先の会社やクルマ社会を作ることに携わり、今後その結果が見られるのはすごく楽しみです。

一方、いくつかの機種を包括的に管理しているため、事業に対するインパクトは大きく責任は重大です。だからこそ、やりがいのある業務だと思いますね」

現在関わっている5〜10年先の未来を作るプロジェクトの結果を楽しみにしながら、石川は自身の今後のキャリアについて考えています。

石川 「5〜10年先に現在関わっている新機種がどうなっていくのかをきちんと見届けたいので、四輪事業本部で何か業務に携わっていられたらいいなと思います。もしくは、今関わっている機種を南米で展開していくところに携わることができたらおもしろいだろうなとも考えています。

これまでもやりたいことを言い続けて叶えられてきたので、南米で仕事をするという入社当初からの夢も叶えていければすごく嬉しいですね」

入社してから自身のやりたいことを明確にして、発信し行動し続けたことで道を切り拓いてきた石川。南米で仕事をするという長年の夢を叶えるために、これからも一つひとつ着実に乗り越えていきます。