入社して見つけた“カスタマーファースト”の醍醐味

国生 史子は、2008年にHondaに新卒で入社しました。学生時代に社会学の研究者を志望していた国生がHondaに就職したのは、フィールドワークで訪れたフィリピンでの出会いがきっかけでした。

国生 「フィリピンではバイクが人々の生活の一部として溶け込んでいる姿に圧倒されました。大人2人と子ども2人の家族全員の移動手段としてだけでなく、大きな貨物を荷台に乗せて絶妙なバランスで走っていく姿を目の当たりにしました。人々の生活の足として、街中でHondaをはじめとする日本製のバイクが走り、海外で日本製品が愛される光景を見てワクワクしたのを覚えています。

学生の頃からバイクに乗っていたこともあり、自動車メーカーに興味を持ち、本や論文を相手にするより“人”と関わる仕事をしてみたい、世界中の“人”に喜んで使ってもらえる“モノ“を提供してみたい、と気持ちが変わっていきました。

就職説明会や選考過程で、Hondaが夢や喜び、社会との調和を大切にしていることを知り、その一員としてグローバルに挑戦してみたいと強く思うようになりました」

入社前は、漠然と海外というフィールドでチャレンジしたいという思いから、海外営業を希望していましたが、入社後に複数の先輩社員から話を聞くうちに、お客様や現場に近い場所で働くことができるカスタマーファースト本部に興味を持ち、自ら希望して配属となりました。

国生 「“市場の代弁者“としてお客様により近いところで仕事ができるのはカスタマーファースト本部だと聞きました。まずは四輪の担当となり製品保証運用や海外の現地法人のサポートをするところからキャリアがスタートしました」

カスタマーファースト本部の活動は、商品の開発段階から始まり、市場で販売された後お客様が愛用される長い期間のサービスが対象となります。お客様に満足いただけるサービスを提供すべく、ソフト・ハードの両面から現場の活動をサポートしています。

“サービスはお客様の心も修理しなければいけない“という創業者の想いを大切に、実践する先輩方の活動を目の当たりにして、国生はカスタマーファースト本部の仕事の面白さにみるみるのめり込んでいったといいます。

国生 「 “1台目はセールスが売り、2台目はサービスが売る“という言葉がある通り、お客様との接点を増やし、満足のいくサービス経験をしていただくことで、その次の購入や長いお付き合いへとつなげていくということがアフターセールス部門の役割です。そういった意味で、サービスは奥が深く責任とやりがいの大きさを感じるとともに、一人前になるには計り知れないチャレンジが必要だとも感じました」

終わりなきチャレンジ

Hondaに入社してから4年が経過した頃、国生はイギリスのホンダモーターヨーロッパ(Honda Motor Europe Ltd. )への駐在が決まりました。入社してからずっと海外に行きたいと声を上げ続けた結果、海外トレーニー制度による2年間の駐在チケットを手にしたのです。

国生 「トレーニーのミッションは“欧州地域アフターセールス戦略を各国に展開するため、現地マネジメントと共に管理指標をもとにPDCAを実践すること“。欧州の販売店になかなか定着していなかったKPI※管理、指標に基づいた改善活動の文化を根付かせるため、システムを作りながら地道に導入していきました」

※Key Performance Indicatorの略。組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標。

ビジネス上の課題を明確にして、PDCAサイクルを回し「改善」し続ける、という日本では当たり前に行っていることも、海外の販売店の現場ではなかなか定着していませんでした。より良いビジネスのため、現地のスタッフに理解し、実践してもらうため、国生は現場に入り込んで活動していました。

国生 「最初は『自分たちのやり方でこれまでやってきて問題がなかったのに、何故そんなことを今から始めるんだ』と反発されたり、『若い奴になぜそんなことを言われなければいけないんだ』と思われていたりするような状況でした。そうしたなか、ローカルスタッフに納得して実践してもらうためにどうすればいいか、いろいろと考えました。

結局、地道にローカルスタッフの元へ通って距離を縮めて、何がどう大切なのかを伝え続けるしかなかったですね。協力してくれる販売店のスタッフにやって見せて、やらせてみせて、大きな会議の場で販売店スタッフの言葉で自ら話してもらいました。そうすることで、最終的に多くの販売店や現地法人のマネジメント層から賛同を得ることができました。

Hondaには、職場の仲間が自主的に集まり、身近な問題を継続的に改善していく取り組みとして“NHサークル※“という活動があるのですが、この活動を欧州の販売店にも取り入れることに繋げることができました」

※思考ツール(QC手法)を活用し、仕事の質の向上と明るく働きがいのある職場づくりをめざすHondaの小集団活動。

2年間の駐在で、現地スタッフとともに仕事をやり切って帰国した国生。

帰国後は、自身に足りないと感じた技術面の知識を身につけるために勉強を始めました。

国生 「それまでは販売店の管理や、お客様満足を高めるための活動に携わっていましたが、当たり前のことですが、サービス領域には製品に関わる技術的な知識が必須です。もともと文系出身で技術的な知識は足りないと感じていたので、平日会社が終わってから外部のスクールに通い、3級自動車整備士の資格を取得しました」

カスタマーサービスという業務を一通り知るためには、品質部門の知識も身につける必要がある。足りない知識を補い、また次の国に駐在したい。カスタマーファースト本部で働くなかで、国生は一歩一歩キャリアプランを明確にしていきました。

国生 「入社当初から、日本のメーカーに勤める者としていつかは海外で勝負したいと思っていました。それでもいつまでに何をすればという具体的なものではありませんでしたが、上司からアドバイスをもらいプランを決め、実際のキャリアにつなげることができました」

南アフリカ駐在で地道に積み重ねていった信頼

技術的な知識を習得し自信をつけた国生は、2018年に2度目の駐在の機会を得ます。

次の赴任先は、南アフリカのホンダモーターサザンアフリカ(HONDA MOTOR SOUTHERN AFRICA (PTY) Ltd)でした。

国生 「アフリカに駐在するまで、四輪事業のサービス領域しか担当したことがありませんでした。Hondaには二輪やパワープロダクツもあります。南アフリカでは南部アフリカ地域における全ての事業のアフターセールス領域を担当することが任務でした。未経験の事業を担当することは、私にとってとても大きなチャレンジでした。

それに加え、部品販売領域も兼任することとなり、それまで経験したことのない幅広い領域に携わることになったのです。こうした経験を通して、“リアルな現場“を肌で知り、多くのことを学ぶことができました」

南アフリカでは、気軽にひとりで外を歩けなかったり、街中では時に凶悪事件が発生したりするなど、イギリス駐在中とは環境が大きく異なっていました。しかし、アフリカ地域では車やバイク、パワープロダクツ製品が人々の生活を支えるインフラとしても使われており、しかも市場のポテンシャルが大きく将来の成長が見込まれる地域の拠点だったのです。

国生 「駐在中は南アフリカだけでなく、南部アフリカの周辺国も担当していました。アフリカ市場でお客様に喜んでもらい、アフリカでのHondaのプレゼンス向上のためにはアフターセールスとしても責任は大きく、チャレンジングな日々を送っていました」

また国生はエアバッグの品質不具合によるリコール発生を受け、お客様へ迷惑をかけないための修理活動や啓蒙活動にも精力的に取り組みました。

国生 「周辺国のボツワナ、ナミビア、レソト、エスワティニでは日本から中古車で輸入されたFitが個人タクシーとして使われていました。その一部にリコール対象のエアバックが搭載されている可能性がある、という情報を耳にしました。

そこで、南アフリカのスタッフに『直接行くしかない!』と訴え、数時間かけて車で各国に足を運び、街中で直接、重要性を訴えるという地道な啓蒙活動をすることもありました」

現場では、日本本社から他国での好事例や活動のアドバイスをもらい、南アフリカのスタッフと各国の販売店スタッフと一体となり、その国に合う効果的な活動を模索していった国生。Hondaの四輪販売店がない国では核となる組織と交渉し、スキームの土台作りなどを実施しました。Hondaとして一丸となって現地で伸びゆく市場をどう支えるか、厳しい市場環境のなかでどうすればHondaが伸びていけるかを常に考えていました。

国生 「南アフリカ駐在期間中には、すぐには結果が出せなかったことも多くあったのですが、今自分たちがやっている地道な活動もお客様のため、将来のHondaの発展のため、と信じて一つひとつレンガを積むような活動を現地のスタッフと一緒に考えながら、そして楽しみながらやることができました」

新型コロナウイルス感染症の影響で2020年3月に日本に帰国したものの、国生はその後もリモートで南アフリカの業務をサポートし続けました。そして2021年4月に、カスタマーファースト本部へ異動し、現在はアジア地域を担当しています。

国生 「ヨーロッパとアフリカという異なる地域への駐在を経験し、国や文化は異なるものの、どこのHonda拠点でもHondaフィロソフィーは息づいていることを実感しました。

個や地域を尊重しつつ、世界のお客様のためにできることを日本からサポートしたいと考えています」

海外拠点では予期せぬハプニングが起こることも多々あり、予定通りにものごとが進むことはあまりありませんでした。

国生 「いつも関連部門の方には迷惑をかけてばかりだったのですが、あらゆる場面で多くの先輩や同僚にいつも温かいサポートや叱咤激励をいただき、どうにか駐在期間を全うすることができました。

周囲の人に恵まれ、育ててもらったからこそ今の自分があるのと同時に、人の繋がりが私の原動力にもなっています」

コミュニケーションを原動力とし、次なるチャレンジへ

▲マン島の販売店にて(左)南アフリカ駐在時には従業員で駅伝イベントを実施(右)

2度の駐在を経験したことで、国生は仕事以外のイベントにも全力で取り組むHondaの文化の大切さを学べたと振り返ります。

国生 「『アイデアを出して大いに遊ぶ』と創業者の本田 宗一郎が語っていますが、イギリスでも南アフリカでも仕事以外のイベントが全力で行なわれていました。

Hondaは、イギリスのマン島で開催されるオートバイ競技である“マン島TTレース“で優勝したことがあります。マン島TTレースは私がHondaに興味を持ったきっかけのひとつでした。とても思い入れのある場所でしたので、イギリス駐在中に実際に訪問することにしたのです。

現地のHondaスタッフはレースのサポートをしていましたが、ただサポートをするだけではなく、会場に来ているお客様とHondaとの接点を増やすため、イベントにも全力で取り組んでいたのが印象的でした」

マン島ではHondaの二輪販売店のスタッフにも会いに行きました。初対面だったのですが、よく来てくれた、と温かく迎え入れてくれて、レースの話やマン島でのHondaの歴史を教えてくれました。いい思い出で、今でも忘れられません。

自身もバイク好きの国生はマン島のコースをHondaのバイクで走りました。

国生 「バイクで風を切りながら走るのも好きですが、旅先で偶然のように出会った人との交流をすることが楽しいと感じます。私の原動力はコミュニケーションだと感じる瞬間ですね(笑)。

仕事においても同僚や先輩、上司のほか、海外のスタッフと何気ない情報交換の瞬間を大切に、良いこだわりは盗みながら勉強させてもらって、それもまた私の原動力になっています」

そんな国生は、サービスから生まれる“喜び“の実践を今後の目標として掲げています。

国生 「未知の世界に飛び込むワクワク感って楽しい。様々な場所で仕事をさせていただき、多くの方との出会いから新たに夢が生まれ、前へ前へと歩くことが今の私をつくっています。製品魅力だけではなく、あらゆる魅力的なサービスの提供により、Hondaのお客様やファンを増やす活動にもチャレンジしていきたいです。
また、Hondaには四輪だけでなく二輪やライフクリエーション製品もあるので、自身のサービスの専門性を高めつつ、領域も広げてチャレンジしていきたいです」

2度の海外駐在を経験し知識を身につけながら、カスタマーファースト本部というお客様と近い場所での仕事を楽しむ国生。これからもコミュニケーションを原動力としながら、世界を舞台にお客様の満足とHondaのブランド価値の向上に貢献していけるよう、日々邁進していきます。