想いを汲み取り、適切なリソースマネジメントを

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2018年にアメリカへ渡り、オハイオ州にあるHonda of America Mfg., Inc.(以下、HAM) で働く立山。生産部門の経理担当として、費用・投資・人員といったリソースのマネジメント業務を中心に行っています。事業環境の変化に適応しながらコスト管理を行い、経営陣に対して自らのアイデアを提案することも立山の役割です。

立山 「日々のリソースのモニタリングをしながら当初定めた目標や予算に実績が追いついているかを定点管理しながら、会社全体のリソースを適切な方向に持っていくためのサポートをしています」

月次の実績管理をルーティンとしつつ、毎月実績の数字を見て、計画から大きく逸脱しているようであれば提言するほか、年に数回ある定例的な予算イベントで、どのような予算を組んでいくか数字を作り込んで提案することもルーティンとなっています。

また、このようなルーティン業務とは別に、駐在員として複数のプロジェクトを同時並行。そんなHAM駐在員・立山の1日は、とても早くはじまります。

立山 「朝は大体7時半前後に出社します。7時半には、出社するアソシエイトのほぼ全員が揃っているんです。コロナ禍でローカルアソシエイトは基本在宅ですが、出社しているメンバーの中には6時にくる方もいます。生産は6時半からはじまるので、生産現場のアソシエイトはとくに早いですね。

日によりますが、午前中に会議が2,3個入り、お昼を食べてまた会議が2個入り、合間に作業系の仕事をするというのが1日の流れ。基本的には部署内で仕事をしていますが、現場の工場長のところに行き議論を交わすこともあります」

質も量も大きく異なる、日米の社内コミュニケーション事情

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マネージャーとして、月次の実績をはじめ、さまざまな報告を受ける立山。

会議では中長期的な会社の方向性について経理を代表して提言し、予算目標を設計しています。トップから直接リクエストがくることも多く、複数の会議をこなしながらも具体的な提案をするための報告資料づくりや、現状を知るための現場アソシエイトへのヒアリングも欠かせない業務のひとつです。

立山 「コロナウイルス感染拡大の影響で、生産現場は大きな打撃を受けています。そのような中、安定生産に必要なリソースと体質強化のために効率向上すべきリソースを見極めるために、現場とのコミュニケーションは欠かせません。

『もっとコストを下げて欲しい』など厳しいことを言わなければならない立場なので、現場の肌感覚に基づいた提案をするためにも、こうした現場とのコミュニケーションは重要なんです」

アメリカでの働き方は、すべてが日本と異なります。中でもとくに立山が違いを感じているのは、アソシエイトどうしのコミュニケーションにありました。アメリカでは日本よりも質の高いコミュニケーションが求められるのです。

立山 「あくまでローカルアソシエイトが主役なので、何かを進めるためにはまずは彼ら彼女らに納得してもらわなければなりません。巻き込む人数は増えますし、言語も文化も違うことを考えると、日本でやっていた以上に丁寧かつ根気強いコミュニケーションが求められます。

我々駐在員は、あくまでサポート役です。今後自分がいなくなっても、ローカルアソシエイトが納得したうえで同じ業務を継続し発展していけるようにしないといけません。

彼らの意見を尊重しながらプロジェクトを進めていかなければ『日本人だけで仕事をしている』と思われて仕事が頓挫してしまいます。ローカルアソシエイトを主役としつつ、ときに粘り強い説得も織り交ぜながら、根気強くコミュニケーションすることが大切ですね」

ときに時間や工数のかかるローカルアソシエイトとのコミュニケーションは、避けたいと思うこともあります。それでも、どう説明したら伝わるかを真剣に考え、多少時間をかけてでも青写真やロードマップが共有できれば、それは最終的に信頼関係の構築や組織の基盤強化にもつながります。

立山 「日本にいたときからコミュニケーションに気を遣うほうだと自負していましたが、それでもアメリカでは足りません。今まで以上にささいなことでもしっかり共有し、しつこいくらいにコミュニケーションを取って、一緒にやっていこうという風土づくりを常にしていますね」

2020年から続くコロナ禍で、アソシエイト全員が疲弊しています。そこで立て続けに仕事の話をすると、ストレスが増えてしまう。立山はそう考え、インフォーマルなコミュニケーションも積極的に取り入れています。

立山 「昼間空き時間があるときに、駐在員とローカルアソシエイトを集めてちょっとしたピザパーティをして、場を和ませるようにしています。お互いとっつきにくくなると仕事もうまく進まなくなるので、息抜きになるコミュニケーションも大事ですね」

メリハリを意識し、真面目に取り組むローカルアソシエイトたちとともに働く

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慣れないアメリカの生活で奮闘する立山を支えているのは、ともに暮らす家族の存在でした。

立山 「家族3人、はじめてのアメリカ生活ですが、オフには今まで写真でしか見たことがなかった場所を訪れたりすることが楽しみのひとつです。車でどこにでも行けますし、夏休みは1週間ほどかけてグランドキャニオンを見に行ったり、カナダを訪れたりしました」

駐在生活のなかで、立山は家族との絆が深まったと実感しています。

立山 「アメリカでは昼にピザパーティーなどをしますが、日本のように夜飲み会をすることはありません。だからこそ、プライベートでのアソシエイトとの交友関係は日本にいるときより狭いと感じます。その一方で家族と一緒に過ごす時間は増え、異国で生活する苦労も共有できるため、家族とともに駐在して良かったと心から思いますね」

駐在前、立山は周囲から「アメリカ人は仕事より家庭を優先させて帰ってしまう」という声を聞くことがありました。しかし駐在を経験した今、そういった意見に疑問を持つようになったのです。

立山 「みんな真面目に働きますし、帰宅時間が早いのは朝早くから働いているからなので、仕事を怠っているわけではないんですよね。今では、一生懸命に日々の仕事をこなしながら家族との時間も大切にし、上手にワークライフバランスを体現しているローカルスタッフの働き方に、尊敬の気持ちをもっています」

もうひとつ立山が感じているのは、アメリカ人と日本人、あるいはローカルスタッフと駐在員の「違い」をしっかり認識し、それを尊重しあうことの大切さです。

立山 「アメリカのカルチャーや仕事に対する考え方の中には、日本人として理解しきれない部分もありますが、それは全体的に見ると大きな問題ではありません。違いは違いとしてお互いに尊重し合いながら、共有できるものを通じて信頼関係を築いていくことが大事です。

実際に自分が身を投じてコミュニケーションをたくさん取りながら仕事をしていくと、みんなそれぞれ想いを持って仕事をしているとわかります。そういった事実に思いを馳せることで、より良い仕事の進め方も見えてくるんです」

目指すは“T型人材”──日本とアメリカで培った経験を活かして挑戦したい

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アメリカ駐在中に自分が背負うべき役割として、立山は日本の本社とアメリカのHAMのすり合わせを挙げています。

立山 「HAMはHAMで一生懸命やっているので、本社が勝手を言っていると感じることもあります。とはいえ私は本社にいたので、本社の考えもわかるんです。本社の意向を汲み取りながら、今自分がいる地域で行なっていることとのすり合わせをする。これが、自分に求められている役割のひとつだと思っています」

そもそも、なぜアメリカに駐在することになったのか。立山は、入社当初から海外駐在を希望していたと振り返ります。

立山 「絶対アメリカに行きたいと考えていたわけではありませんが、入社当初から、グローバル企業に就職したからには普段自分が入れないような世界を見てみたいと考えていました。それを叶えるためにはやはり世界で働くのが1番だと思い、海外駐在を強く希望していましたね。

そして今、日本人以外の方とコミュニケーションしながら、自分自身を深めることができています。達成感を味わいながら仕事をさせてもらっていますし、当初目指していたことは叶えられたと思いますね」

海外駐在という大きな目標を達成できた立山は、今後のキャリアビジョンとして、専門分野とグローバルな視点を併せ持った“T型人材”になることを掲げているのです。

立山 「専門性だけにこだわるのではなく、幅広い視点で物事を見られるようになりたいですね。T型人材は今後マネジメント業務に求められますし、自分もそんな人材になりたいと思っています。

自分の専門はこれだと自信を持ちながら、いろいろな人と仕事をしてさまざまな目線で物事を俯瞰できる視野の広い人材になりたいです」

本社の財務部に5年間所属し資格も取っていた立山は、2021年現在ファイナンスと生産系のリソースマネジメントを専門としています。今後日本に戻ることになったら、アメリカで培ったマネジメント経験を活かしつつ、異なる分野に飛びこんでスキルを広げたいと考えています。

立山 「今私が担当しているリソースのマネジメントをする管理会計や、以前いた資金調達をするファイナンスのほかにも、経理の仕事は多岐に渡ります。私は今生産領域にいますが、販売などあらゆる領域に経理の機能があるため、今後は今と全然違う分野に飛び込んでみたいです」

日本とは大きく異なる環境のアメリカで、コミュニケーションを大切にしながら仕事を進めている立山。

T型人材として専門性とグローバルな視点の両方を磨きながら、日本やアメリカという国にとらわれず、Hondaという会社全体を成長させるために力を注ぎます。