常識や枠組みからはずれた場所にあるポテンシャルを求めて

イノベーションは、常識や既成概念の枠組みをはずれた部分にあるもの。だからこそ、生み出すのが困難で、その代わりに革新的な可能性を秘めている。だとすれば、イノベーションを起こす人も“そんな人”ではないでしょうか。「はずれ値人材Meet Up!」の発端は、素朴な意見から生まれました。

郡司 「私と安井の所属する先進技術研究所は、10年先を見据えた提供価値を創造し、それを具現化する技術の研究開発に特化した組織です。ある時のワイガヤ※で『技術要素を長期的に研究することが大切で、革新的な技術を生み出していくためにはこうした基礎研究を担う人材が必要』と発言したところ『じゃ、提案企画書をつくって持ってきて』と言われたことがきっかけですね(笑)」

※「ワイガヤ」とは、「夢」や「仕事のあるべき姿」などについて、年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論するHonda独自の文化です。

合意形成を図るための妥協・調整の場ではなく、新しい価値やコンセプトを創りだす場として、本気で本音で徹底的に意見をぶつけ合う。

「業界初」「世界初」といった、Hondaがこれまで世に送り出してきた数々のイノべーションも、ワイガヤで本質的な議論を深めるところから生まれています。

思いがけず始まったワーキンググループの議論ですが、実は最初からキーワードは明確にありました。それは、「変人(Henjin)」です。

郡司 「いわゆる商品開発とは異なり、未来を見据えた研究は、見えない答えを求め、成功するか失敗するかわからないなか、手探りで進んでいかなければなりません。今、既に存在する枠組みや発想からでは、求めるものは得られません。

価値のあるアウトプットに必要なもの──まず思いついたのは、発想力、挑戦力、集中力、発信力……などです。でも、どれも求めている概念にふさわしい言葉ではありません。そこで、あっと驚く技術を手掛けてきた先輩方を思い出して、共通するものを考えてみることにしました。

そこから出てきたキーワードは、普通の枠組みからはずれて発想する人、あらゆる物事を人とは違った考え方で深く掘り下げる人、本質を追求することに没頭できる人、自ら楽しみ仕事をする人、アウトプットをしていく中で成長し変わっていく人、そうしたポテンシャルを持った人。つまり『それって、変人(Henjin)だよね』となったのです」

少しショッキングなキーワードですが、それは要するに、平均からはずれた部分にいるということ。

今、Hondaの先進技術研究所が求めているのは、顕在化していないポテンシャルを秘め、とんでもなくはずれた部分で革新的な可能性を見つけ出せる人。本田宗一郎や先人たちも、そういった人材を「変人」と呼び、それが脈々と受け継がれ、現在のHondaを創り上げてきたひとつの要素だったのです。

安井「社会には主流となる標準的な価値観があります。それは、社会が動いていくなかで大切なもの。ただ、それを知ったうえで『ちがう可能性もあるんじゃないか?』と考え、行動する人がほしいと思いました。そういった理由もあり、ゼロから始める新卒採用ではなく、中途採用で探していくことになったんです」

安井がそう語った背景には、先進技術研究所に集っているとんでもないHonda社員たちの存在がありました。

ソウルに共鳴する逸材こそ、Hondaの求める「はずれ値人材」

先進技術研究所の中でも、安井はモビリティの知能化技術研究を担うグループに所属しています。たとえば、人とモビリティが一体となってコミュニケーションするためのAIの活用、自動運転支援システムの開発や、移動ロボットの研究などです。

安井 「約30名が集うグループですが、Hondaのなかでも個性的なメンバーが多いのが特徴だと思っています。今やAIを活用したエンジニアリングはさまざまな企業で求められるスキルであり、正直給与だけで言えばHondaより条件の良い会社はたくさんあるでしょう。

でも、私たちのグループにいるメンバーは『人の命を救いたい』『高齢の方が一日でも長く、思いのままに安全に移動できる技術をつくりたい』『多くの人に自由に移動してもらい、五感で感じながら世界をもっと楽しんでほしい』といった大義を原動力に働いています。

ソウルを感じられない仕事はしない、という熱い想いがある。30名で300名分くらいの働きを見せる彼らにとって重要なのは、給与でもステータスでもなく“何のためにやるのか”という理由。だからこそ、一般的な価値観とは異なる“はずれ値”にいる人材が必要なんです」

一般性とは一線を画する人材を求め、採用の観点でも通常以上に考え抜く必要があった、と人事の竹内も振り返ります。

竹内 「今回の採用でのターゲットは、ちょうど入社3年目くらいの自分と同じ年齢層を想定しています。より具体的なペルソナを設計するために、近しい人物像の同期にヒアリングをしました。彼は『俺は変人じゃない』と主張していましたが(笑)。

ターゲット人材の細かな要件定義から、今回のMeet Upのようなイベント設計に至るまで、ゼロベースからの構築は私にとっても初めてのチャレンジとなりました」

コンセプトを洗練し、解像度を高めていく中で生まれた言葉。“変人”に代わってたどりついたのが、及第点よりも0点か120点を取ってしまうような「はずれ値人材」だったのです。

プロジェクトメンバーの試行錯誤と想いが詰まったオンラインイベント「はずれ値人材Meet Up!」は、いよいよ1月30日に開催されます。

登壇者の顔ぶれ、内容からも、非常に尖った斬新さがあふれ出ています。

AI×〇〇の未来を描く、えりすぐりの「はずれ値人材」が集う

Hondaは、モビリティにAIを掛け合わせて、未来を変える。社会に貢献する。でも、そこには「常に人々に寄り添いたい」という想いが息づいています。

安井 「どんなに優れた、未来的な提案だとしても、人の心や日常生活から離れてしまっては意味がありません。社会課題を解決する意義はもちろん大切ですが、やっぱり移動の楽しさを五感で感じてほしい。変化を楽しんでいこう、といった想いがHondaにはあるんです」

今回のMeet Upに登壇される皆さんも、AIを活用して誰かの役に立ちたい、世の中を楽しくしたいといった想いをお持ちの方ばかりです。思いがけず掛け合わせたその発想には、「はずれ値人材」ならではのひらめきとおもしろさが感じられます。

安井「日本酒の酒造りにおける匠の技をAIでサポートしながら技術継承に寄与する『AI-sake』や、AIによるアートの創造『AI-Mural』などを展開されてきた三浦 亜美さん。架空のアイドルを自動生成するAIを開発された岡田 侑貴さんや、AIにマンガ家の巨匠の作品を学習させて、新キャラクターやストーリーを生成させる技術を担当した栗原 聡さん。

日常生活とAIの距離を縮め、身近なシーンでイノベーションを起こそうとするスタンスに共感したのが、皆さんに依頼した理由でした。ちなみに私は、自動運転/運転支援システムのためのAIと制御技術の研究に日々挑戦しています」


Meet Upへの登壇を快く引き受けてくださっただけでなく、このつながりをきっかけに、さらに新しい研究開発の芽が出る予感があります。

「はずれ値人材」が、AIで社会をいかにアップデートさせようとしているのか。
新しく、限りない広がりを秘めた分野だからこそ、挑戦の可能性を一般的な枠組みにはめ込む必要はどこにもありません。

挑戦して、大失敗して0点を取ってしまっても、ときにミラクルな120点を叩き出す。多様な「はずれ値人材」に共感し、共鳴する感性こそ、今、Hondaが求めているもの。Meet Upはそんな人材と出会い、Hondaに新たな風を吹き込ませるため画期的なチャンスなのです。 

窮地を乗り越え前進する“人の力”に、Hondaらしさを再認識

「はずれ値人材」を採ろう。Meet Upを開催しよう。言葉にすればシンプルなことも、実現するまでの道のりは山あり谷ありでした。

郡司 「組織変更やコロナ禍の影響もあって、もうダメかもしれないという窮地に追い込まれたときもありました。ひとりだったら、あきらめていたでしょう。でも、安井さん然り、竹内さんのいる他部署然り、社内外を問わず想いをぶつけて巻き込みながら、ようやく開催にこぎつけることができました。

改めて、Hondaらしい人の強さを感じる経験となりましたね。個々人の考える想いや目的を共感できたら、その達成のためにはさまざまな視点で、自ら考え、行動し、楽しみながらも死に物狂いでやりきる馬力を出せる。Hondaらしさを実感するプロジェクトでした」

竹内も、「真の意味でボトムアップが根づいているHondaの社風を感じた」と今回のプロジェクトを振り返ります。

竹内 「そもそも郡司さんから現場発信で生まれたアイディアが、これだけのプロジェクトになるところがすごいな、と。私も年次を理由に発言できないなんて全然なく、むしろどんどん発信していくことを求められるのがHondaなんだと、あらためて感じました」

安井は、ワイガヤの文化が「はずれ値人材」の想いを束ね、力を発揮させる重要なカギだと考えています。

安井 「ただ、変わっているだけじゃダメなんです。Hondaには個性の強さをぶつけ合わせ、やるべきこと、進むべき道がしっかりと腹落ちしたら、爆発的な能力を発揮してくれる人たちが集まっています。マネジメントがやるべきこと、つまりビジョンを示し、適正な役割分担を行い、環境を整えること、最後に大義を共有してソウルを同期させることまでをしっかりと行うことが必要なんです。

Hondaのワイガヤは、喧々諤々と議論を重ねます。誰かひとりがたたき台となるようなアイディアを出し、そこから様々な分野の人が知恵を出し合う。すると、知恵が知恵を呼び、ひとりでは思いつかないようなアイディアへと昇華していきます。

それぞれの想いをしっかりと伝え合うことは、『はずれ値人材』にとっても重要なプロセス。互いに納得し、手を結べた瞬間にこそ、Hondaらしい強さが生まれるはずです」

普通の尺度では測りきれないポテンシャルを秘めた「はずれ値人材」の活躍により、モビリティの可能性を創造していきたい。常識はずれの能力と感性を、Hondaで爆発させてほしい。

「Hondaって、変わった人ばっかりだよね」は、誉め言葉。イノベーティブな未来を「はずれ値人材」とともに拓いていくための一歩を、Meet Upから踏み出していきます。