“人生そのものを売る”重みを胸に──自分が介在する意味を創り出す

多くの企業がトップの高齢化や後継者不在で代替わりできない課題を抱えています。

北國銀行で事業承継を担当する湖東 俊裕は、後継者への物的・人的承継のほか、後継者不在企業と成長企業とのM&A(企業・事業の合併や買収の総称)にも従事しています。

湖東 「私たちが関わっている会社様は業歴が長く歴史のある会社様が多いんです。社長様が半世紀もの間、必死に経営してきた会社をお譲りすることも多く、人生そのものを売る感覚と同じ重みがあります。

だからこそ、企業のライフステージやオーナー様にとっての大きなライフイベントに携わることができることは大きな喜びです。地域経済の永続と発展の一助となっていることも実感しますね」

M&Aの局面では、生々しい企業情報をやり取りすることも多く、伝え方によってはネガティブな印象を与えてしまうことも少なくありません。湖東は、自身が仲介する両社が納得できるよう、相手に応じてうまく噛み砕いて伝えることを心がけていると語ります。

湖東 「M&Aでは、私たちが間に入ることによって案件がスムーズに進み、ブレイクしないようにすることが大前提です。咀嚼せずにそのまま伝えると、両社にとって良くない影響を及ぼすことも少なくありません。

相手の考えをじっくりと聞き、自分自身で噛み砕いた上で、伝え方を考える。自分が介在する意味を創り出せるよう意識しています」

湖東は、業務のほかに従業員組合の執行委員も兼任。 

最近の組合では、従業員の成長や気づきを促す取り組みが増えてきました。従来の組合の中心的な活動は賃金交渉や働き方の改善に取組むことでしたが、時代に合わせて変化してきているといいます。

湖東 「今はどちらかというと、従業員が自発的に学び、キャリア自律していけるような流れを作ることに重点を置いています。セミナーや勉強会、レクリエーションなどを企画・開催し、いろいろな学びから一人ひとりの人生そのものが豊かになるような取り組みを常に考えているんです」 

組合での活動は、湖東自身の成長にもつながっているといいます。

湖東 「以前は自分の業務のことだけで頭がいっぱいで、周りのことまで考えている余裕は正直ありませんでした。ですが、組合に入ってからは私自身にもいろいろな気づきや学びがあり、俯瞰的に物事を考えられるようになってきていると感じています」

初めてのM&A──お客様が流した喜びの涙が今の自分の原動力に

湖東は入社後、いくつかの支店で個人営業や法人営業に従事していました。

融資や新規開拓などの経験を積んだあと、現在のコンサルティング部に異動し、事業継承やM&Aを専担するに至ったといいます。

異動後は、真新しいことばかりで戸惑いながら業務にあたっていたという湖東。初めて担当したM&A案件は、忘れられないエピソードだったと語ります。

実はその案件は、以前に湖東自身が営業店で法人担当していたお客様からの会社売却の相談だったのです。

湖東 「営業店時代に担当していた運送会社のお客様で、強いご縁を感じましたね。社長様が病気で入院してしまったため、娘様が昼夜問わずトラックを運転し、経理業務もこなしながら切り盛りしていたんです。娘様の気持ちと体力が続く間にお相手を見つけ、しっかり引き継がなければいけない。そんな思いで業務にあたりました」

どの案件にもそれぞれにドラマがあると湖東は感じていますが、とくにこの案件に携わったときの気持ちや経験は、現在の原動力となっているといいます。

湖東 「無事お相手が見つかり、最終契約の調印式の最中に、娘様がぼろぼろと涙を流しながら喜んでくださったんです。その光景は今も脳裏に鮮明に焼き付いています。そのときに、この仕事のやりがいを強く感じました。もちろん楽しいことばかりではなく、つらい思いをすることも多いのですが、無事終わったときにこうした達成感があると考えると、たまらないんですよね」

地域に企業を残していくことは、地域経済の活性化につながっていくと考えている湖東。何よりも企業の重大なライフイベントに携わることができる、人の役に立っているという実感は、今の仕事の大きなやりがいになっていると語ります。

湖東 「単純かもしれませんが、お客様に喜んでもらえることこそが最大のモチベーションです。私のポリシーは『自分ができることを最大限やってみる』こと。実は組合への参加も、まずはやってみようという気持ちでした」

失敗もたくさん経験しながらも、自分のできる限りの力を尽くすことに信念を持っている湖東。さまざまな機会との巡り会わせや、人との出会い、それぞれにしっかりと向き合い、最善を尽くす姿勢こそ、人を巻き込む力につながっているのでしょう。

自分の役割は潤滑油──いかにみんなを巻き込んでいけるかがカギ

従業員組合に参加してみて、今まで話したことのない部署や価値観をもった従業員とのコミュニケーション量が圧倒的に増えたと語る湖東。

いろいろな方と話し、多様な考え方や価値観に触れることで、自身の考え方も変化していったといいます。そのきっかけはどこにあったのでしょうか。

湖東 「他人事を自分事として本気で考え、議論する機会は僕にとって大きなターニングポイントになりましたね。それぞれがイキイキと働ける職場とはどういうものか、急速に変化する時代の中で従業員がどう変わっていくべきなのか、組織全体のことを考える機会が増えました」

また、湖東自身の責任感が一層醸成されることにも繋がったといいます。

湖東 「組合での議論は、私にとってとても良い刺激になっています。さまざまな考え方や価値観に触れながら、いろいろな人と議論を重ねていくにつれて、自分に求められていることに応えたい、という想いも芽生えてきました」

組合におけるさまざまな活動は、湖東の興味の幅も確実に広げています。実際に、社内副業参加のきっかけにもなったといいます。

湖東「社内副業(コラボ採用 )に参加して、人事部門に所属はしていないのですが就活生から人事制度について質問を受け付けたり、説明会に参加する貴重な機会にもなりました。私自身『企業は人なり』だと思っているので、採用活動に関われているのは大きなやりがいに繋がっていますね」

来春の人事制度改訂に向けて、組合と共に議論を重ねている北國銀行。その新しい取り組みに、湖東は胸を躍らせています。

湖東 「以前は、銀行が決めたものに対して、組合が『こうした方が良いのではないか』と提案をするものだと思っていました。しかし実際は、銀行と組合が人事制度を一緒に議論していく、という取り組みをしていて、それが新鮮で強く惹かれました。

この仕事をしていると『会社の価値は人である』と感じることが多いです。人の力こそ会社をいい方向にシフトさせることができる原動力だと考え始め、人、組織に興味を持つようになったんです」

また、組合での活動は視野を広げるだけでなく、湖東の強みである共感力、巻き込み力、コミュニケーション力をさらに高めてくれているといいます。自身の強みや役割について、湖東はどのように考えているのでしょうか。

湖東 「私の役割は、いわば潤滑油のようなものだと思っています。執行委員会等会議において、意見の調整を行い会議体がスムーズに運営されるような発言を心掛けています。また、Teamsでの発信や会議での発言など、自分の発言や行動によってどんな影響があるのか、与えられるのか、ということを考えながら行動、発信するようにしています。

従業員組合の執行委員となってみて、ほかの人の気持ちを考えたり、共感したりする力が着実に育っていると感じることも多いですね」

家族との時間も充実させることができる──組合活動がもたらす人生への影響

組合活動に携わると、業務外の仕事が増えてプライベートの時間がなくなる、と敬遠する人も少なくありません。湖東も当初は同じようなイメージを抱いていたといいます。

実際のところ、業務と組合活動とプライベート、それぞれの時間をうまく調整する必要があるときもありますが、それ以上に組合活動には気づきも多く、自分を成長させるフィールドがあると湖東は語ります。

湖東 「組合の活動があるからこそ、逆に家族との時間を大切にしよう、と考えるように意識が変わってきました。業務、組合活動、プライベート、それらのすべてに、人生を豊かにする価値があると日々実感しています」

現在はコロナ禍で難しいですが、組合ではいろいろなレクリエーションも開催しており、家族を連れて行くこともあるといいます。

湖東 「イチゴ狩りやジップラインのあるところに遊びに行ったり、北國銀行ハンドボール部の応援など、組合のイベントに家族を連れて行ったりすることも少なくありません。子どもは結構喜んでいますね。良い刺激になるようです。組合の活動は、想像以上にプライベートでも生きていると思います」

今後は、自分の強みであるコミュニケーション力を活かしながら、組合の活動を起点として会社が動くような業務に携わってみたいと語ります。

湖東 「一人ひとりの課題や悩みを解決することも大事ですが、仕組みという視点から、より多くの人に変化をもたらしたい。それができたらおもしろいんじゃないかと思っています。

そこではいろいろな人との対話が必要になるでしょうが、自分の強みであるコミュニケーション力や巻き込み力を活かしていきたいですね」

組合の活動に携わると、会社経営に似た楽しさを知ることができると語る湖東。

広く物事を考えたい人にはぴったりだといいます。組合の活動によって、自分の成長や視野が広がる経験を、若手にも伝えたいと語ります。

湖東 「組合の活動を通していろいろな学びがあります。組合活動は、自分自身を成長させることができる場所でもあります。みんなで会社を作っていく、経営に参画するイメージですね。

そう考えると、非常におもしろいですよ。組合からの発信によって企業風土が変わる一助になると思うので、もっと組合に参加する人が増えればいいな、と考えています」

「豊かな明日へ信頼の架け橋を」という北國銀行の企業理念の下、地域経済の永続と発展の一助として活躍する湖東。

一方で、従業員のために、という大義の下従業員組合の活動にも参加し、従業員一人一人の成長とキャリア自律を考えながら日々前進しています。