社会課題を伝えるために、仲間とモノづくりに打ち込んだ原体験

ひとしずくでは、クリエイティブ制作における進行担当者は、一般的な「クリエイティブディレクター」ではなく、「クリエイティブコンダクター」と名乗っています。この肩書には、「指揮者を意味するコンダクターがオーケストラと息をあわせて演奏を魅せるように、クライアントであるパートナーさんたちと一丸となってプロジェクトを推し進めたい」という想いが込められているんです。

そんな目標を掲げ、現在ひとしずくのクリエイティブコンダクターとして働く私が、モノをつくる楽しさに目覚めたのは、子どものころ。設計士だった父親の影響もあり、子ども向けテレビ番組で紹介する工作を見てはまねをするように。大好きな図工の授業がある前日は、ワクワクして寝つけなかったことを覚えています。

実は、ひとしずく代表のこくぼ ひろしとは小学校、中学校、高校が同じ同級生。共に文化祭などで燃えるタイプだったことから、実行委員として同じ活動をする機会が多く、熱い青春時代を送っていました。クラスの展示空間や屋台のお店など、アイデアをカタチにするプロセスが楽しくて、夏休みに自主的に登校して準備を進めたこともありましたね。

大学生になると、こくぼが主催した社会課題を伝えるイベントに、装飾担当として呼ばれるように。あるとき、グローバルな貧困撲滅プロジェクトのツールだった「ホワイトバンド」を若者に向けて広めることになりました。そのために選んだ会場は、渋谷のクラブ。私はクラブ内に飾る大きな絵を描き、物販コーナーのレイアウトや装飾を担当。社会課題を伝えるために、仲間とモノづくりに打ち込む日々を送りました。この経験がおのずと今の仕事につながった原点だと思います。

玩具会社でプロモーション業務に全力投球の日々から一転、専業主婦に

大学卒業後は、インターンを経験しておもしろい会社だと感じた大手玩具メーカーに入社。若手にも裁量権を与え、男女問わず活躍できる社風で、活気に満ちあふれた職場でした。

私は、女児向け商品を扱う事業部へ配属され、店舗販売や展示会の企画運営、メディアキャラバン、CM制作など、幅広いプロモーション業務を担当することに。

四半期ごとに次々と新商品が発売される中、先輩たちの背中を見て学ぶ日々。大変なことも多かったけれど、もともと自分が決めたことは絶対にやり抜きたいタイプの私は、「とにかく3年間はとことん働こう!」と、仕事にまい進していました。

その中でも特に印象に残っているのが、子ども向けテレビ番組の出演です。当時、玩具メーカーの社員が人気商品を紹介するコーナーがあり、担当を任された私は毎回夜中の3時にスタジオ入り。朝7時からの生放送後は、そのまま出社して業務をこなしていました。また、土日のイベント対応など、新人ならではの体力勝負の仕事も多く、おかげで根性がついたと思います。

そんながむしゃらな新人時代が過ぎ、入社から6年がたったころ、「自分なりにやりきった」と、燃え尽きたような気持ちを感じるように。時を同じくして、家庭や子どもを持ちたいという想いが強くなり、結婚・妊娠を機に退社。産育休を取得してキャリアを突き進むよりも、「集中して子育てをしてみたい」という気持ちが強かったので、後悔はありませんでした。

その後、息子を授かり、専業主婦に。3年後には娘も誕生。会社員としてバリバリ働く生活から一転、穏やかに流れる日々の中、子どもたちの成長を隣で見守れることに幸せを感じていましたね。さらに、育児中の息抜きとして、昔から続けていた書道を再開したり、陶芸を習ったりと、モノづくりの楽しさも味わっていました。

アートで社会課題の扉を開く「chart project®」を広めたい

▲「chart project®」は、子どもたちが社会課題に触れるきっかけに

ひとしずくで働くようになったのは、創業から1年経った2017年。代表のこくぼから、「手伝ってもらえないか?」と連絡をもらったことがきっかけでした。

私自身、ちょうど子どもたちの手がかからなくなってきて、何か仕事を始めようかと考えていたため、快諾。最初はアルバイトとして、新しいオフィスの内装を整え、その後は社員として、ひとしずくの自主事業のプロジェクトを担当することに。そのプロジェクトとは、社会課題を表すグラフ(チャート)の形を生かし、アート作品として表現する「chart project®」です。

2017年10月にクラウドファンディングを募って立ち上げた「chart project®」は、その3カ月後には渋谷区と組んで、渋谷駅前に環境問題を啓発する大型広告を掲出。スピードとインパクトを備えたスタートを切ることができました。

プロジェクトが軌道に乗ってきた2018年夏以降は、おかげさまで次々と、全国各地のイベントや展覧会などからお声がけいただき、ブース出展やコラボレーション作品を制作するように。SGDsに関連するグラフデータを活用する「chart project® for SDGs」も新たに始動し、石川県内の自治体などとパートナーシップを組んで事業を展開しています。2019年には、サスティナブル先進国であるスウェーデンで展示会を開催することもできました。

最近では、東京都国分寺市、国分寺市にある商業施設「ミーツ国分寺」と三位一体となり、「chart project® for SDGs in KOKUBUNJI」の取り組みをしました。国分寺市の小学生を始め、ゆかりのあるアーティストや来館するお客様に作品をつくってもらい、当時改装中だった施設の仮囲い壁面に展示。地域の方々に作品づくりを楽しみながらSDGsについて理解していただき、念願だった学校教育への参入を実現することができました。

大変なプロジェクトではあったけれど、大変になればなるほど、タッグを組むパートナーの方々、チームメンバーとの絆が強くなることが仕事の醍醐味だと感じています。立場の違いを超えて、プロジェクトに関わる全員が心をひとつにしながら、モノをつくっていく過程が好きですね。

現在は、2021年に金沢21世紀美術館で開催予定の展覧会に向けて準備中。ぜひ成功させたいと思っています。

持続可能な働き方をかなえ、育児を仕事に生かし、仕事を育児に生かす

▲定期的に行っているメンバーとのフィーカタイム。他愛のない会話が楽しい

私がひとしずくで働くうえで意識しているのは、「貢献」というキーワード。それは、社会課題の解決に尽力するパートナーさんを後方支援する一員としての姿勢にもつながります。私自身は、パートナーさんやチームメンバーの要望をくみとり、実現に向けて進行していく役割。関わる全員がスムーズに意思疎通できるように、いつも心がけていますね。

また、ひとしずくは、テレワーク勤務を早くから導入し、持続可能な働き方を推進する会社。メンバー一人ひとりが希望する働き方を尊重してくれる環境だからこそ、仕事と育児の両立ができることに感謝しています。

それに、ひとしずくが支援するPR案件には子育て世代や母親を対象にした内容も多いんです。私自身の育児経験を反映した提案ができるので嬉しいですね。一方、仕事で培った集中力や段取りのスキルを育児や家事に生かすなど、家庭を持ったことで仕事に費やせる時間が限られた分、メリハリをつけた働き方ができていると感じています。

専業主婦を経て再就職後、私が実感したのは、「やっぱり働くことが好きなんだな」という想い。日々の業務において、社内外の人たちと関わりながら刺激を受け、社会や会社に対して貢献できることが、純粋に楽しいと感じるんです。これから私自身が歳を重ねたり、子どもたちが大きくなったり、さまざまな変化もあると思いますが、なんらかの形でずっと働き続けていきたいと考えています。