スマートファクトリーを実現する、最新のトレーサビリティシステムの構築

article image 1

2021年に稼働したサントリー食品インターナショナル株式会社(以下、サントリー食品)の新工場「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」では、高度なトレーサビリティシステムを活用し、工場経営・働き方のデジタルトランスフォーメーションを実現するIoT基盤を構築しています。

この新工場の施策を実現するためのメインパートナーとして選ばれたのが日立です。音在はプロジェクトマネージャーとしてこの開発に参画しました。

音在 「昨今ものづくりの現場では、ニーズの多様化を背景にした品目数の増加や、その生産効率を上げるためのラインの高速化が進み、高度な管理が必要になっています。サントリー食品様では新工場の建設にともない、こうした複雑な生産体制に対応できるスマートファクトリー化が計画されたんです」

プロジェクトでは現場データの収集から蓄積、そして活用のためデータ基盤の構築など、一連の施策が進められました。その中で音在が携わったのが「1本トレース」と呼ばれるトレーサビリティシステムおよび「IoT基盤」の構築でした。

音在 「これまで商品ごとの製造・検査履歴のトレースには、作業に時間と経験、ノウハウが必要でした。今回のシステムでは、生成されるデータを高速に収集・統合し、それらのデータを紐づけ、管理、可視化しています」

デジタル技術を駆使した次世代ファクトリーモデルに資するテーマとして、高度なトレーサビリティと工場経営・働き方のDXを実現するIoT基盤の構築に取り組んだプロジェクトだったと話す音在。

音在 「私自身、過去にトヨタ自動車様とのIoTプラットフォームを活用した、高効率生産モデル構築に向けた協創案件に携わった経験があります。日立のIoTプラットフォーム『Lumada』を使った案件で、私がスマートファクトリーに関わった最初のプロジェクトですが、そのときにさまざまな知見やノウハウを得られたのは良かったですね」

今回のプロジェクトにアサインされたのも、当時のシステム構築の手腕を期待されてのことでした。

OTとITを的確につなぎ、未来のビジョンを加え、考える

article image 2

スマートファクトリーはIoT、いわゆる情報技術のITと制御・運用技術OTの融合が一つのポイントです。ただ両者は、それぞれの世界で発展してきた経緯があるため、つなげる難しさがあります。

音在 「一般的に、ITは情報システム部門の方が、OTは生産技術系の方がメインになり発展してきました。それぞれ違う文化の中で発展してきたため、その文化をつなぐところから始めなければなりません」

最初のステップで、人と人の間をうまくつなぎ、合意形成を図っていく必要がありますが、それがうまくつながらないと、例え完成しても「使えないシステム」になってしまうのです。

音在 「IT側としては、データを活用するシチュエーションや方法を考え、どんな仕組みをつくるかを考えますが、OT側では対応する必要データの種類や入手経路、方式を考えなければなりません。このデータのインターフェース、つなぎ方をすり合わせることが重要です。

非常に難しいところですが、両者のステークホルダーをうまくつなぎ、目的をそろえた上で、同じ言葉で議論することは常に意識しています」

議論の主体はもちろんお客さまですが、それに対して的確に支援できるところが、日立の強みだと言います。

音在 「日立はデータを可視化して分析・予測するITと制御・運用技術であるOT、そして現場データを生成するプロダクトをすべて有しています。ここが一番の強みであり、可能性だと思っています。

実際にIT、OT、プロダクトの知見を持つメンバーがプロジェクトに入って、支援するところは日立ならではですね。また『Lumada』として全社をあげてユースケースを蓄積しており、データ活用のノウハウを進化させているところも大きいですね」

こうした技術的な側面以外に、研究開発部門があるところも日立がIoTの分野で強みを発揮できる一因だと語ります。

音在 「日立にはテクノロジーの研究開発部門以外に、社会イノベーションの研究開発部門もあります。例えば、研究開発部門では2050年の社会課題、価値観の変化を見通していて、予測する部門では、お客さまとバックキャストで未来のビジョンを描きながら支援することができます。

足元だけを見ていると、施策も限定的で直近のものになってしまいますが、今回は研究開発部門と連携して未来像を描き、サントリー食品様と一緒に議論することができました」

工場内のみならず、サプライチェーンや製品ライフサイクルとの連携も

article image 3

このようにIoTに強みを持つ日立。音在が統括する、インダストリアルデジタルビジネスユニットエンタープライズソリューション事業部 産業システム本部 第一システム部でも、サントリー食品様でのプロジェクトを機に、スマートファクトリーに関わる案件が増えています。その中で音在自身は、今後の課題やめざすべき姿をこう語ります。

音在 「労働人口がどんどん減っていく中、データを活用した生産性の向上で、労働力の問題を解決するのが一つ。また安心安全への要求がより高まる中で、さらなる品質の向上や不良ゼロなど、今以上に安心安全な商品の提供に貢献していくことが一つ。さらには商品へのニーズが多様化に対応した高効率な生産を実現することが一つ。製造業の一般的な話で言えば、この三つの目標があります」

その目標を認識した上で、これらの活動をさらに発展させた未来にも目を向けています。

音在 「将来的にスマートファクトリーは、製造の領域だけの話ではなくて、サプライチェーン・マネジメント(SCM)や製品ライフサイクルマネジメント(PLM)領域などとの連携もポイントになってくると考えています。

各分野とも専門的に取り組んでいる社員がたくさんいるので、SCMやPLM、そしてエンジニアリングチェーンマネジメント(ECM)も含めた製造の三者をつなぎ、より大きな社会課題を解決するようなサービスにも挑戦したいと思っています」

デジタルと人が融合した最適な製造業の姿を探求していきたいと語る音在。さらに新しいサービスを生み出したいと意気込みます。

音在 「お客さまの最終目標はデータ基盤を作ることではなく、得られたデータを経営に生かすこと。皆さんそこをめざされています。だから我々も、社会課題、経営課題の解決をめざし、それに寄与するサービスを考えていかなければなりません。

その新たなサービスの創生や展開を、当部門の事業の柱として取り組んでいきたいと思っています」

日立にはこれまで培ってきた土台のもと現場で研鑽を重ねる、ボトムアップの文化がある

article image 4

日立が持つ技術力と創造性を駆使し、未来の製造業の実現に向けて尽力する音在。技術の最先端で活躍する彼は、日立の魅力をこう語ります。

音在 「日立の魅力はよくも悪くも不器用なところです(笑)。すごいカリスマがいて、その人がビジョンを描いて、みんなを引っ張っていくようなスマートな感じではないんです。

でもそこが良いところだと思っています。ボトムアップ型の文化というか、現場でみんなが喧々諤々やっている。自分たちで事業をつくって、自分たちでサービスをつくって、自分たちでそれを運営していく。それを試行錯誤しながらやっていく文化があるんです。右往左往しながらも、粘り強くやりぬく姿が健気だなと思っています」

その文化に加え、個々の技術力や品質に対する考え方といったしっかりした土台がある。そしてその根底に流れているのが、企業理念だと言います。

音在 「私の中では、日立の創業者 小平浪平氏の『優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する』という理念はやはり根底にあります。日立の社員は少なからずこの御旗のもとで、自分が成すべきことを考えている。すごく良いところだと思っています」

日立が持つ確固たるアイデンティティ。これを今の時代につなぎ、いかにサービスとして提供するのかが問われており、それを実現するための環境は整っていると音在は語ります。

音在 「だから自分でその環境を生かし、事業をつくっていきたいという夢を持っている人には、ぜひ日立に入って欲しいですね。日本の製造業の発展に貢献したいという志を持った人なら、大いに羽を広げて仕事ができると思います。

また一方では、人財育成にも力を入れている会社で、一人ひとりのキャリアプランにしっかり目を向けてくれる良さがあります。私自身も後輩を育てる立場であり、また育ってほしいと思っているので、今後もメンバー一人ひとりのキャリア、さらに言えば人生と向き合っていければと思っています」

エンジニアとして、また組織の長として、お客さまはもちろん、後輩たちや大きな社会課題に対しても、それぞれに深く考えより良い未来を築いていこうとしている音在。クールな口調の裏側には、日立のアイデンティティを受け継いだ、熱い想いが流れています。