血液を分析する“生化学自動分析装置”の複数ユニットの設計をマネジメント
アナリティカルソリューション事業統括本部 ライフ&メディカルシステム製品本部 医用システム第一設計部に所属する高橋。2023年2月現在は、メカ・システム設計に従事しています。
高橋 「医用システム第一設計部では、臨床検査用の生化学自動分析装置を開発しています。同装置は、採血した血液から糖や脂質などの成分を自動で測定する装置。国内向けと海外向け製品のさまざまな処理能力の製品を約200人体制で開発しています」
開発装置ごとにプロジェクトチームが分かれており、高橋は海外向け大形製品のメカ・システム関連の設計開発およびマネジメント業務を担っています。
高橋 「同装置に搭載されている主なユニットとしては、患者様の検体(血清)や試薬を吸引・吐出する分注ユニット、試薬と血清を反応セル内で混ぜて反応液を作る超音波撹ユニット、反応液に光を当てて測定する吸光度ユニット、反応セルを洗浄する洗浄ユニットなどが挙げられます。私の担当は、メカ設計として洗浄ユニット、吸光度ユニットに搭載される新規光源開発、システム設計として装置の自動メンテナンス機能や予兆検知機能の開発に携わっています。ユニットやシステムの仕様を決めたり、開発項目についてチーム内の工程管理を行ったりしています。
また、担当製品はドイツのメーカーとの共同開発のため、週1回、英語でオンラインミーティング、数か月に一度のFace to Faceでの打ち合わせを実施し、プロジェクトの進捗や仕様のディスカッション、装置レビューを実施しています。最も重要なのはこちらで抱えている課題を先方に正しく理解してもらい、解決に向けたアクションを決定していくことです」
高橋にとって本開発は2製品目。これまでの経験を踏まえ、大切にしていることがあります。それは、“絶対的顧客主義の設計者”であること。
高橋 「入社5年目のとき、初めて開発した装置をお客様にお届けする経験をしました。目の前でお客様が装置を使用している姿や、直接、装置に対するご意見を伺うことができ、“実際に装置を使うお客様にとって何が必要か”を軸において開発することが一番大切だと強く感じました。
ですから、今回の開発においても、『この機能はこういうシーンで使われるから、ここまでケアしないといけない』『こういう設計ではお客様が怪我をするリスクがあるし、使いにくい』などと、常に顧客視点に立ったものづくりを意識することを心がけ、メンバーにもそう声かけしています」
2023年3月現在、出荷までに残された期間はあとわずか。開発は大詰めを迎えています。
高橋 「医療機器として認可を受けるために、約300項目に及ぶ性能試験の真っ最中です。日々、起きるトラブルに対して、最短で原因を突き止め、チーム一丸となって課題解決に取り組んでいます」
人の役に立ちたい──日立グループ社員の想いに心を動かされて入社
学生時代は、機械工学を専攻したものの、工学とヒトとつながりが深いバイオメカニクスに興味が移っていった高橋。研究室選びがターニングポイントになったと言います。
高橋 「とにかく思い立ったらまず行動が信念です。私は幼いころから“人”が好きで、大学時代には幼稚園の先生にも興味を持ち専門学校とのダブルスクールで幼児教育の免許を取得しました。また、機械を人助けに応用できるバイオメカニクスの存在を知り、力を入れている研究室に入ることを選択しました。そこでなら人に役立つ研究ができるはずだと考えたのです」
就職活動でも「人の役に立ちたい」という想いから、業界を医療機器メーカーに絞った高橋。“人”を軸に会社選びをするべく、自ら足を運んでOB訪問を積極的に行いました。その中で最も印象的だったのが、日立グループの研究所に勤める先輩社員との出会いだったと言います。
高橋 「ちょうど今の私と同じ入社10年目くらいで、とても熱い想いを持っている方でした。一介の学生である私が生意気にも、『こんな医療機器をつくりたい』と話すと、その方は、『僕がいまやっている基礎研究はまだ製品になっていないけれど、ぜひ君のような人に商品化してほしい!』と、熱く語ってくれたんです。日立グループには入社から10年経ってもこんなに熱い気持ちを持ち続けられる組織なんだと感動し、入社を志望しました」
入社後は現在の部署に配属され、いまと同じ生化学自動分析装置の国内向け製品を6年間担当。その後、またとない成長のチャンスに恵まれました。
高橋 「新しいプロジェクトと並行して、東京女子医大バイオメディカル・カリキュラム(以後、BMC)に、会社負担で週2回1年間通わせてもらえることになったんです。BMCは東京女子医大で開講しているビジネスマンスクールで、私のような医療機器メーカーや製薬メーカーのエンジニアなどが医学を学び、それぞれの分野に活かすことを目的としています。25~54歳の約50人くらいのクラスで、座学のほか、豚の解剖実習を行ったり、ご献体の臓器や実際の手術を見学したり、未来医学に関するゼミがあったりと、会社ではできない経験を積むことができました」
医療機器や医学の知見が広がった高橋。喜ばれる製品をつくりたいとの想いが強くなり、やりがいも増していると話します。
高橋 「最近は、重要なユニットの仕様を決めるところから任されるようになったことで、自分の考えをダイレクトに製品に反映できるようになりました。開発はチーム単位の仕事なので、海外の共同開発先との会議で新しい機能を積極的に提案したり、先方の提案をもとに改善策を用意したりする中で、自分の考えを反映させるようにしています。
この姿勢を共同開発社の担当者が評価してくれていて、『いつも生産的な会議をしてくれるし、一緒に装置を良くしていこうという姿勢で、とても信頼できるエンジニアだと思っています』と言われたことも。こうしたことが仕事をする上で大きなモチベーションになっています」
バドミントンの実業団チームとリモートワークでライフワークバランスが充実
開発に没頭する高橋ですが、実はバドミントンの全国大会常連選手という一面も。
高橋 「学生時代からバドミントンをやっていて、現在は日立ハイテクの実業団チームに所属しています。チーム全員、仕事が忙しい中でも仕事終わりや休日に週2~3回ほど練習していて、実は全国大会の常連なんです」
2年前には第1子が誕生。家庭とのバランスをとるため、バドミントンの練習回数を週1回にし、リモートワークを増やしていると言います。
高橋 「子どもが生まれてから、週1~2日ほど在宅勤務をしています。妻もフルタイムで仕事をしているので、私が在宅勤務の日は、私が保育園の送迎と夕食を担当。休日は思いっきり子どもと遊び、旅行にもたくさん出かけています」
家庭と仕事のバランスがとれた働き方ができているという高橋。働き方について相談がしやすい環境が同社にはあると話します。
高橋 「在宅勤務を週1~2日としているのは、部下と実機を見ながら試験を行うことが多いフェーズだからです。業務への支障がなく、自分でタスク管理ができさえすれば、週4回でも在宅勤務が可能な雰囲気ですし、働き方の相談はしやすいですね」
日立ハイテクの強みは、品質へのこだわり──人にも、開発環境にも、惜しみなく投資
高橋には、今後挑戦したいことが3つあります。
高橋 「今の開発が終わったら次のステップとしてさまざまな“修行”をしたいですね。一つめは、海外出向。当社には、数年に一度、当部署からドイツへの出向の機会があります。ドイツでは、共同開発社と一緒に仕事をしながら、当社の製品開発をサポートしたり、次期製品のマーケティングに挑戦したりできると聞いています。
二つめに、設計部以外の部署でも修行をしてみたいですね。マーケティング部や事業戦略部などで市場のニーズを本質的に理解し、今後どのような製品をつくるべきかを検討する仕事にも携わってみたい気持ちがあります。
三つめに、いずれはプロジェクト全体のまとめ役であるプロジェクトリーダーもぜひやってみたいと考えています。
どの挑戦も、日立ハイテクなら実現できるはず──なぜなら、当社は“人に投資する会社”だと感じているからです。希望を受け入れてBMCに通わせてくれたほか、同期の半数以上がアメリカなどに1年間の海外研修に行っています。社員に投資してくれるのは、当社の大きな魅力です」
また、同社には設計者にとっても格好の環境があると話す高橋。次のように続けます。
高橋 「当社の強みは、要素技術の研究を専門とした研究所がグループ内にあること。現在の私の担当でいえば、新規開発中の光源に研究所の光学設計の専門家によるシミュレーションを活用しています。各分野のプロフェッショナルと連携しながら高品質な製品をつくりあげることができているのは、設計者として大きな喜びです」
人に投資し、万全の開発基盤を構える日立ハイテク。その根源にあるものは、“品質へのこだわり”だと高橋は強調します。
高橋 「昨今、メーカーによるデータ偽装の発覚が続いていますが、『絶対に偽装はない』と言い切れるくらい品質に対して厳しい態度を当社では貫いています。偽装するどころか、予算度外視でデータを取り直そうという社風があるんです。
たとえば、標高2000mのところにある病院でも正確な分析ができる装置を開発するために、標高2000m環境を再現して性能試験を行うための減圧室を導入しています。数十億円もの予算をかけてこのような設備を導入するなんて、他社ではなかなかないように思います。そのかいあって、品質に対するお客様からの信頼は厚く、『製品寿命まで実際に使えるのは日立の装置だけ』と言われたこともあります。そんな当社に対して、私はとても誇りを持っています」
高橋は、これからの開発にも夢をふくらませています。
高橋 「当社のエンジニアに一番向いている人は、『こういう医療機器をつくりたい』という強い想いを持った人だと思います。私としても、そういう人と働きたいですし、実は学生のリクルーター活動にも参画して同志を増やす活動をしています。将来、私がプロジェクトを持った暁には、熱い志を持った人たちで“社内アベンジャーズ”を編成し、人のためになる製品開発ができたらと思っています」
高橋が率いる“日立ハイテクアベンジャーズ”が開発した医療機器に、私たちが助けられる日は、そう遠くないかもしれません。