事業開発本部で、ITソリューション・アーキテクトセクションのリーダーを務める榎本

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2022年4月に新設された事業開発本部。榎本は、創設と同時に同本部に異動してきました。

榎本 「事業開発本部は、その名の通り、新しい事業の開発を手がける部署です。日立ハイテクがこれまで手掛けてきたハードなどの領域とは異なる、デジタルソリューションの事業をイチから立ち上げるにあたって、必要な機能や社内に足りない機能を整備していく役割を担っています」

日立ハイテクにはもともと、顧客と向き合って新しい事業を考案する「イノベーション推進本部」がありました。事業開発本部はそれを前身として、ほかの各部署で新たなソリューションの開発業務にあたっていた部隊が集合し、構成されています。

榎本 「事業開発のプロセスやノウハウ、事業開発スキルを持った人財、デジタルソリューションの開発手法など、当社にはまだ発展途上の部分が多くあります。それらを部署ごとに整備しようとするとコストも人も余計にかかってしまうため、一点に集約することで効率よく新規事業を開発していこうという意図があります。

2022年11月現在は、開発ツールやプログラム管理ツール、クラウド環境に必要なソフトウェアなど、全社共通で整えるべき部分を抽出して準備し、社内に展開しているところです」

事業開発本部を構成するのは、ビジネスデザイン、ITソリューション・アーキテクト、ビジネスインハウス、戦略企画の4つのセクション。

榎本 「ビジネスデザインは、お客様と議論しながら課題を引き出し、仮説を立てて必要なソリューションを考えるチームです。ITソリューション・アーキテクトでは、そこで立案されたソフトウェアを実際に開発していきます。そして、ビジネスインハウスがそこでできあがったソリューションの運用や事業拡大の方法を検討します。戦略企画は、事業開発本部の全体運営を行っています。

4つの中で最も人数が多いのが、約100人が所属するITソリューション・アーキテクト。私はそのリーダーとして、何を開発すべきか、開発のために何を準備すべきかなど、チームが手がけるべき方向性の検討を行っています」

新事業の立ち上げに携わる部署が一体となり、取り組み方が大きく進化

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1989年、榎本は日立製作所の子会社だった日立計測エンジニアリングに入社しました。

榎本 「日立計測エンジニアリングは、日立製作所の那珂工場にあり、那珂工場のエンジニアリング部分を請け負う会社でした。

入社時からソフトウェア開発に関わり、医療機器のMRIに6年ほど携わった後、半導体の測長SEMを担当しました。所属していた会社が2007年に日立ハイテクに吸収されたのにともなって転属となりましたが、携わる仕事内容は大きく変わっていません」

転機となったのは、2018年。新事業を企画する部署に異動し、そこで新たな事業の探索に携わることに。

榎本 「新規事業を探索する中で最も可能性を感じたのが、われわれが提供している半導体の計測検査装置のデータを活用し、お客様に新しい価値を提供することでした。まさにそれがデジタルソリューションと呼ばれる事業。私はその事業開発を2年間マネジメントしていました」

そして今回、経営の意向により、各部署でデジタルソリューションの開発に携わるチームが事業開発本部として集結。新規事業の考案を専門的に担っていたイノベーション推進本部と一緒になったことで、事業開発への取り組み方が大きく変わったと言います。

榎本 「われわれはものづくりの会社としての歴史があるので、プロダクトを中心にして、それをどう売るか、どう使ってもらうかという考え方をしてきました。それに加えて、前の部署では、マーケットのニーズから事業機会を探すことも必要と考え、外部コンサルなどに依頼しながら調査を行ってきました。

現在の事業開発本部に移ってからは、そうした取り組み方がさらに進化し、よりお客様を中心に物事を考えるようになっています。それまではお客様の状況を観察しながら、『こうすれば使いやすいのではないか』などと提案するレベルでしたが、今は課題を徹底的に深堀りして議論し、お客様の要望のコアな部分にまで入り込むかたちに。事業として競争優位性が高まってきていると思います」

事業開発の取り組み方の変化に柔軟に対応する一方、榎本はITソリューション・アーキテクトのリーダーとして、変わらず心がけていることがあります。

榎本 「自分ができないことは、人に強制しないようにしています。スキルがある人をアサインするのが基本なので、依頼すればやってくれることが多いものの、自分に経験や知識のないことをお願いするときは、一方的な押し付けにならないよう、自分も一緒に考えるスタンスでいるよう心掛けています。

また、本人の希望に沿う仕事をなるべく割り振るようにするなど、メンバーの一人ひとりが120%の力を出せるような環境づくりにも力を入れています。いやいやながらに取り組むと、本来の力が発揮しにくいもの。やりたいと思える仕事を任せることで、自然とパフォーマンスが向上すると考えています」

エンジニア歴30年超でも、新たな分野に触れられる──それこそ事業開発の醍醐味

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事業開発本部が発足して約半年が経ち、現在は事業開発のプロセス化・ルールづくりを進めている段階だという榎本。

榎本 「前身のイノベーション推進本部には、メンバーがなんとなく共通認識として持っている考え方や手法があったのですが、これを明確に定義することで、効率化・最適化が図れると考えています。

事業開発本部としての成果が得られるのはこれからですが、これまで各部署で取り組んでいたプロジェクトの成果が少しずつあらわれ始めていますね。

たとえば、測長SEMにAIを搭載し、画像の精度を向上させたことで競合に負けていたシェアをいくらか取り返すことができています。また、部の中に少しずつ事業開発の新しい考え方が定着し、それを実行しようとする人間が増えてきたので、これからが楽しみだなと期待しているところです」

今の仕事の醍醐味は、やはりゼロから事業を立ち上げるおもしろさにあるという榎本。

榎本 「今までの日立ハイテクの製品開発は、既存製品の後継機であったり、なんらかの製品をベースにして考案されたりすることが多く、まったく何もないところから開発することはほとんどありませんでした。でも、われわれの部署はゼロからの開発に挑戦できます。

私自身はソフトウェア開発に30年以上携わってきましたが、この部署に異動になってからはこれまで体験したことのない分野に触れることができています。それがとても新鮮で、仕事をしていて楽しいですね」

会社に、そして社会や環境課題に貢献できることをめざして

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▲オフィスからの景色。東京湾や都心を一望できる

言わずもがな、事業開発本部がめざすのは、新しい事業の立ち上げを通して会社の利益に貢献すること。さらにその先、榎本は社会への貢献も見据えます。

榎本 「事業を通して、カーボンニュートラルなどの環境課題にアプローチすることも目指しています。必要とされるデジタルソリューションやデジタル技術について考えを深めながら、会社にも社会にも貢献していければいいですね」

そのためにも、今必要としているのは、前向きに物事を考えられる人財だという榎本。

榎本 「まったく新しい分野を切り拓いていくのには、やはりエネルギーが必要です。われわれの部署では、人に言われたことをやるだけでなく、自分たちで考えて行動していくべき場面が少なくありません。積極性があり、前向きに物事を考えて取り組んでいける人財に活躍してほしいと思っています」

重要なのは、技術面より、姿勢。次のように続けます。

榎本 「日立ハイテクでは、半導体の計測装置や医療の分析装置、電子顕微鏡などのプロダクトを古くから手掛けてきました。そういった強いプロダクトを持ちながら、そこから得られるデータなどを活用したデジタルソリューションを開発していけるところに、他社にはない強みがあります。

技術を持っていて損はありませんが、技術面は入社してからでも勉強することが可能です。技術はないけれど興味があるという方でも、迷わず飛び込んできてほしいと思います。

ちなみに、私がリーダーを務めるITソリューション・アーキテクトセクションの活動拠点があるのは、東京湾や都心を一望できる晴海トリトンスクエアの31階。現在はリモート勤務がベースではありますが、出勤時には爽快な眺めの中で仕事ができますよ(笑)」

これから新しいキャリアを築こうとする若手も、積み上げてきたキャリアを新しい分野でさらに昇華させようとする中堅も一丸となり、いきいきと活躍する日立ハイテクの事業開発本部。その未来への展望は、窓から見渡す景色と同様、大きく開けています。