第一線で活躍するプロフェッショナルから刺激をもらえる仕事
グリーンピース・ジャパンでリレーションシップマネジャーの仕事をしています。社会的に影響力のある著名な方々とともに、グリーンピース・ジャパンのビジョンやキャンペーンメッセージを多くの方に届けていく、そのための団体の窓口のような役割です。著名人の方には、たとえば環境問題を伝える動画やイベントへの出演や、アクションや署名提出の場にお越しいただくことなど、さまざまな形で関わっていただいています。
このような活動をグリーンピース・ジャパンが本格的に始めたのは数年前からですが、グリーンピースの海外オフィスではすでに活動をしていました。世界中で知られているような方がグリーンピースの船に乗って北極やアマゾンの森など、環境破壊の現場を目の当たりにしたり、バナーアクションをしたりと、それぞれの想いで支援してくださっているのです。私は日本でのゼロからの立ち上げを経験することとなりましたが、海外オフィスに話を聞いたりしながらトライ&エラーを繰り返していきました。
この仕事でおもしろいのは、多様な現場の第一線で活躍している方とお話できることです。それぞれの道のプロフェッショナルな方ばかりですので、インスピレーションをもらったり、励まされたりしています。
3.11を機に環境問題に関心。留学を経てグリーンピース・ジャパンへ
私が環境問題に関心を持ったのは、東京電力福島第一原発事故がきっかけでした。土や水が汚染されたら、食べ物を作っても安心して食べられない。環境が安全でなければ生きていくことはできないんだと気づいて、衝撃を受けたのです。ただ、当時はなにか行動するわけではなく、卒業後は大学事務の仕事に就きました。その後、英語力をアカデミックレベルに引き上げることを目的に、イギリスに留学。すると課外のアクティビティに環境系のイベント、たとえば映画上映会などがあったのです。参加して学びを深めれば深めるほど、環境分野で仕事をしたいな、と思うように。帰国後、環境分野での就職を目指しました。
グリーンピース・ジャパンについてはメールマガジンを読んでいたので、活動は知っていました。アシスタントの募集だったので、気持ちだけあっても環境系の実務経験がない私でも受け入れてもらえるかもしれない、と。そうしてグリーンピース・ジャパンに就職したのが、2016年のことでした。
入ってみて、毎日が楽しかったです。一方で、気持ちが暗くなる面もありました。というのは、日々触れる環境問題の現実があまりに暗すぎて、落ち込んでしまうのです。ただ、自分が果たすべき役割が見えてきてからは、良い意味で現実と距離を取れるようになったと思います。職場としてのグリーンピース・ジャパンの好きな点の一つは、関心の近い同僚が集まっていることです。政治的なことや社会的なことをタブーなくオープンに話せるので、信頼できる仲間や友達がいる貴重な場ですね。
現場の葛藤を団体内にも伝え、より良いコミュニケーションにつなげる
入職後はファンドレイジング部とエネルギーチームを経験しました。次第に、キャンペーナーとして政治家や企業とエンゲージするより、市民のみなさんとのコミュニケーションの機会を作ることへの関心が強まって、現在のエンゲージメントチームに異動することに。強みを活かせてやりがいも感じられるポジションを任せてもらえたと思っています。
ただ、この仕事の大変さがあることも確かです。協力をお願いする方は環境問題に関心の高い方たちですが、グリーンピースが特定の企業や政党との結びつきをもたないなどの厳しいポリシーを持っているため、お互いの活動にとってより良いコラボレーションの形を実現することを最も大切にしています。協力してくださるお気持ちを尊重しつつ、グリーンピースのメッセージが伝わるアウトプットを作れるよう著名人の方とも団体内とも話し合いを続けていくようにしています。
海外のオフィスから学んだのは、リレーションシップマネジャーは団体の代弁者であるだけでなく、協力してくださる方の立場やブランドを理解して守ることでもあるということです。
つまり私たちの伝えたいことをその方に知ってもらうだけではなく、その方の意図や立場を団体内に伝えるのも大切な役割。NGOとしては、たとえば「化石燃料はやめてください」と主張する立場ですが、協力してくださる方の中には本業やビジネスと環境保護活動との両立に悩む中でいる方もいます。現場で葛藤しながらも、より良い方向へ進められるようグリーンピースに力を貸してくださっているのです。私たちNGOがその葛藤を知ってコミュニケーションをするのと、そうでないのとでは、言葉の使い方が変わってくるはず。団体外の方と話す機会の多い私としては、得た気づきを団体内に持ち帰るように心がけています。
グリーンピース・ジャパンの知名度を上げ、ファンを増やしていきたい
リレーションシップマネジャーの仕事を3年ほどやってきて、影響力のある方々と一緒に活動をしていくのは効果的だと実感しています。「レスミート(肉食を減らす)」とか「脱使い捨てプラスチック」といったメッセージをグリーンピース・ジャパンが伝えるより、共感してくれた方とともに伝えることで、多くの方に伝わるのです。
初めのうちは「同じことを言っているのに、私たちの言葉はうまく伝わらないんだな」と悲しい想いもしましたが、親しみを感じている相手から伝えられる言葉のほうが響くのは当たり前ですよね。そう気づいてからは、たとえグリーンピースの名前がを知られなかったとしても、協力してくださった方を通して伝えたいメッセージが伝わったり、アクションをする人が増えたりすることだけでも大成功だと思えるようになりました。
これからも、協力してくださる皆さんとのコミュニケーションを重ね、その方が抱く地球環境や未来への想いをグリーンピースとともに実現できる機会を作るなどしていきたいと思います。ゆくゆくは、まるでスタッフのように団体の価値観を共有してくださる関係を結べたらと思いますし、グリーンピース・ジャパンへの関わり方のバリエーションも増やしていきたいです。即効性のある取り組みではありませんが、結果的にグリーンピース・ジャパンのことを知ってファンになってくださる方や、環境問題に取り組む人を増やしていくことにつながっていくはずです。
石川 せり
リレーションシップマネジャー パブリックエンゲージメント所属
東日本大震災の経験を通して、人と環境を犠牲にしていたこれまでの生き方に気がつき、命の源である「環境」を守ることをライフワークにすると決心。人と人がつながることで大きなムーブメントをつくり、社会を少しずつ変えていけると信じています。