薬機法改正、薬局・薬剤師に関わるポイントは?

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今回の薬機法改正によって、薬剤師・薬局にはさまざまな変化が起こると考えれられています。

赤羽根先生 「今回の改正は多岐にわたりますが、その中で『薬剤師・薬局の在り方の見直し』に関わる3つと『法令遵守体制の整備』(下図参照)が、薬局実務に関連するポイントでしょう。

最も注目しておかなければならないのは、服用期間中のフォローの義務化です。薬機法では薬局開設者の義務として、また、薬剤師法でも薬剤師の義務として、今回明記されました。義務を怠った場合は、法的責任を問われる場合もあります。そういう意味で、重たい改正でしょう。

ただ、薬を渡すときの服薬指導は全患者を対象としているのに対し、服用期間中のフォローに関しては『適正な使用のため必要があると認める場合』のみです。どんなケースが『必要があると認める場合』にあたるかは、薬剤師の専門性で判断されることとなります。状況に応じて、医師や他の医療提供施設と連携することも、薬剤師の努力義務として課されます」

服用期間中のフォローのガイドラインを求める声もあるようですが、今後どのような対応が想定されるのでしょうか──

赤羽根先生 「厚労省は、具体的な要件などを示す予定はないとのことです。実施例の共有はあるかもしれませんが、基本的には個々の薬剤師の判断に委ねられるでしょう。薬剤師に限らず医師などの専門職も、実務はプロフェッショナルである個人の裁量に任されています。

法律で個別の中身まで決めてしまうのは、見方を変えれば、変な話でもあります。また、医師の診療ガイドラインのように、業界団体がガイドラインを出すことは考えられますが、これも運用の柔軟性が失われる可能性があるため一長一短です」

服用期間中のフォローは薬剤師に対して、一人ひとりの患者に合わせた臨機応変な対応が求められているのです。

なお、服用期間中のフォローの施行は、2020年9月1日と決まりました。

赤羽根先生 「ただ、薬学的管理の観点からは、規定が明確になる前から取り組むべきでしょう。電話でのフォローなど、患者の理解を得なければできないことでもあるので、早めの準備に越したことはありません」

服用期間中のフォローの体制、今から準備を

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今回、服用期間中のフォローが義務化されたのには、どんなわけがあるのでしょうか。これまでの経緯についても赤羽根先生はこう語ります。

赤羽根先生 「そもそもの話からすると、旧薬事法では『薬を渡す際は副作用や注意点の情報を一緒に提供しなければいけない』という情報提供義務が薬剤師に課されていました。それが2014年の法改正によって、“情報提供”だけでなく、薬学的な知見に基づいた“指導”を求めるよう変わり、より指導に重きを置くようになりました。

加えて、ふたつのことが影響があったと思います。第一に、服薬前の指導だけでは効果や副作用の有無はわからないため、『服薬後のモニタリングが重要なのではないか』という議論。第二に、薬局業務が『対物から対人へ』シフトしている流れ。その結果、服用期間中のフォローは義務化されることになりました」

この変化によって患者のフォローが徹底され、思わぬトラブルも減らすことができます。服用期間中のフォローを怠った場合のペナルティの有無はあるのでしょうか──

赤羽根先生 「直接の罰則規定はありません。ただ、守れていない場合には、指導の対象になり得ます。仮の話ですが、しなければならないフォローを怠ってそれが原因で患者に健康被害が起こったという場合、薬局や薬剤師の過失があったとして損害賠償の対象になることもあります。

ただ、いきなり法律で決まったからといって、薬剤師にただ『やれ』といったところでできるわけでもないでしょう。薬剤師のやらなければならない業務は増えているので。ですから、調剤業務のあり方をまとめた厚労省の通知(いわゆる0402通知)なども踏まえながら、薬剤師が服用期間中のフォローにあたれるような体制を整えることが、まずは重要だと思います」

体制整備の観点からは、電子薬歴「GooCo」を導入するといったことも検討の余地がありそうです。一方、赤羽根先生は、業務効率化の観点だけでなく、記録の観点からも、電子薬歴がポイントになると説明します。

赤羽根先生 「なぜなら、服用期間中のフォローを含めた指導内容の記録を残すことが、今回の改定で義務化されるからです。これまでも、診療報酬算定の根拠として薬歴は用いられてきましたが、今後は、調剤報酬の有無に関わらず、指導内容の記録が必要になります。

対人業務への比重が高まる中、適切な薬学的管理のためのもちろんですが、患者さんとのトラブルが発生することも想定し、リスク管理の観点からも記録を残すのは有効です」

調剤から対人重視の流れ、薬局の定義に反映

薬局の定義が変わったということも、業界全体の動向を占うトピックといえそうです。

赤羽根先生 「今回の改正によって、薬局の定義が『調剤の業務を行う場所』から『調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所』に変わりました。すなわち、“調剤”だけでなく、情報提供や服薬前後の指導など、“対人業務”にも配慮した定義へと変更したわけです」

さらに、一般用医薬品などのOTC薬の取り扱いに関連して文言が変わりました。

赤羽根先生 「薬局の定義のカッコ書きの『その開設者が販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む』の箇所が、今回の改定で『その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所も含む』に変わりました。

ここで言っている“販売業”とはいわゆるOTC薬など販売のことを指すのですが、従来の文言では、OTC薬を扱うのが例外のように読めてしまいました。しかし、健康サポート薬局の例もあり、OTC薬を置くことが前提となるように改正がされたと考えられます。

そういう意味では、OTC薬の販売や服薬管理が求められる、ということも今回の改定から読み取れることです」

そして、これまで国家戦略特区のみで行うことが認められていた、テレビ電話などによるオンライン服薬指導も全国でスタートすることになります。

赤羽根先生 「対面のみに限られていた服薬指導が、条件つきではありますが、オンラインでも行えるようになりました。3月27日の官報に厚労省令が告示されています。処方箋の提供対象を、調剤した際に対面での服薬指導をした患者に限ることや、指導計画の策定などが必要になります。また、オンライン服薬指導のための機器があることも要件のひとつです。

施行は本来2020年9月1日でしたが、新型コロナウィルスの影響で厚労省から臨時の通知が出たため、前倒しでオンラインでの服薬指導が行われていますが、これは時限的・特例的な取扱いですので注意を要します」

新たな認定制度や法令順守の整備にも注目を!

これまで以上に、薬局を機能・役割ごとに可視化しようという動きもあります。2016年に始まった「健康サポート薬局」に加え、今回の改正により「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」が加わりました。

赤羽根先生 「患者が自分にあった薬局を選べるように、ということで『地域連携薬局』と『専門医療機関連携薬局』のふたつの認定制度が始まります。

『地域連携薬局』は、入退院時や在宅の際、他の医療機関と連携して対応できる薬局です。認定要件は既存の『健康サポート薬局』よりも、一段ハードルが高くなります。『専門医療機関連携薬局』は、がんなどの特定の疾患について、医療機関と連携して専門的な管理を行う薬局です。

ふたつの認定制度は両方とも1年ごとの更新制で、都道府県知事からの認定を受ける必要があります。施行は2021年8月1日とされています」

最後に、「法令遵守体制の整備」の義務化についても要点があります。

赤羽根先生 「薬局・薬剤師に限らず医療業界で不祥事が散見されたことから、そもそも法令遵守がなっていないのではという声があがり、今回の改定で、法令遵守のための体制整備が加わりました。

具体的な施策は2点。まず、薬事に関する業務に責任を有する役員を置くことが法律上求められます。また、管理者である薬剤師の開設者への意見具申は書面で行うこととされ、その際、開設者である法人は、措置を講じて記録すること。意見申述に対して措置が必要ないと判断した場合は、その旨や理由を記録し保存する義務が設けられます」

こちらの施行も薬局認定制度と同じく、2021年8月1日となっていますが、とくに経営層を中心に、議論の動向を見守る必要がありそうです。