キャリアの軸は、経営×人事×グローバル
2019年にグロービスに入社した田所のキャリアの軸は、“経営×人事×グローバル”。その背景には、実体験を通して得た、さまざまな気づきがありました。
田所 「中学2年から高校3年までアメリカに住んでいました。海外に住んでいると、自分がマイノリティだと自覚せざるを得ないことも多く、そこで得た経験や身につけた国際的な感覚を仕事に活かしたいと思ったんです。
また、人の人生にポジティブな影響を与えたいという想いもありました。きっかけは、企業の働き方改革を導いてきたコンサルティング会社でのインターン経験です。その企業では“ワークライフバランス”という言葉や男性育休が世の中に浸透するずっと前から啓蒙活動をしていました。その活動を間近で見る中で、いずれ自分も、人がより良いキャリアを描くためにプラスの影響を与える仕事がしたいと思うようになりました」
大学卒業後は、外資系の日用品メーカーや人材開発コンサルティング会社で経験を積む田所。1年間の育児休業を経験し、その期間も活用しながらMBAを取得しました。
田所 「前職でも企業の育成支援をしましたが、対象は課長職または非管理職の方がメインでした。その時の手ごたえや、MBAの学びから、経営の本質的な課題解決の鍵は、やはり役員層への働きかけだとあらためて感じたんです」
経営課題の解決し、組織に大きなインパクトを与える仕事がしたい──“経営×人事×グローバル”の軸に一番フィットした環境。それが、グロービスでした。
一人ひとりをモチベートし、変革の土壌を築く
田所が担当するクライアントの多くは、海外での売上比率が4割を超える大手日系企業。
経営人材の育成支援として、日本を含むアジア・オセアニア、欧州、中東、アフリカ、北南米と世界各地から集う受講者に対して、経営リテラシーやリーダーシップを養成するプログラムを実施しています。
プログラムを提供する上で、田所が特に力を注いでいるのが、受講者のモチベーションコントロールです。
田所 「実際の経営課題の解決策を考えてもらうプロセスを通して、経営視点や実践知を身につけることを目的としています。ただ、初めて顔を合わせるメンバーと腹を割って議論し、協力しながら難しいテーマに取り組むことは、多様なメンバーであればあるほど、簡単ではありません。だからこそ、受講生のモチベーションに火を点けることを自分の役割として大切にしています。
たとえば、クライアントの経営層から直々に受講者への期待について話してもらったり、本気で取り組めていない受講者には、講師と相談して、率直な言葉を使って叱咤激励したりしながら経営人材としての自覚を促しています。また、国籍や学習歴、言語レベルが異なる多様な受講者を、巻き込みながら、誰ひとり取りこぼすことなく支援することを大切にしています」
こうした努力の末に、プログラムを通した成功事例も生まれてきています。
たとえば、ある専門商社のケース。環境変化にともない成長の鈍化が懸念される事業に対する危機感から、新規事業が生まれる組織風土へ変革していきたいというご要望をいただきました。
田所 「管理職向けに、経営課題を踏まえた新規事業をデザインしてもらう育成プログラムを提供しました。特徴的なのは、ただ研修として終わるのではなく、実行可能性がある点です。研修成果を取締役に発表した結果、2021年は5事業案のうち3事業が、実際の新規事業企画として実現できるかの検討フェーズに進んでいます。
自分が関わったプログラムをきっかけに、今後会社の柱となる事業が生まれるかもしれないと思うと、とてもワクワクします」
また別会社では、長年にわたりプログラムを提供しているため、2022年12月現在現在は執行役員の大半がグロービスの学びを受けている状態にあります。
田所 「変革は一朝一夕になるものではないので、成果が出るのはこれからです。将来的に会社の変革が成功した暁には、『振り返れば、グロービスのプログラムが役に立った』といっていただけるかもしれませんね」
受講者が数年後に経営幹部となり、直接ご相談をいただく機会も多くあると言います。
田所 「単発的なお付き合いではなく、クライアントのパートナーとして組織変革に携わるという、確かな手ごたえを感じています」
活動は国内にとどまらず、海外出張時にはクライアントの海外拠点に足を運ぶこともあり、入社前に描いたとおり、グローバルに支援を行っています。
マイノリティの声に耳を傾け、小さなイノベーションを起こす
田所が所属するグローバルチームは、5国籍12名のメンバーで構成されています。共通語は英語。
異なる文化・バックグラウンドをもつメンバーと関わるうえで、さまざまな工夫を凝らしていると言います。
田所 「たとえば、日本人と違ってマニュアルを読むことが苦手な外国人メンバーに対して、シンプルなイラストや図で必要事項を伝えるようにしています。また、日本ではメールに関係者全員をCcに入れますが、海外出身の人にはそれが理解できません。
そうやって、“当たり前”の違いに気づくたびに、このメンバーならではのあり方を模索し、チームづくりに活かしています」
多様な国籍のメンバーが活躍するグロービスでは、誰もがより良い働き方ができるために、外国籍メンバーの働きやすさを支える制度があります。
田所 「帰省に時間がかかる社員が家族との時間をしっかり持てるようにと、最大1カ月間、海外でリモートワークができる制度があります。また、ある社員がベルギーに移住したのですが、グロービスで働き続けたいという意向があったため、今はかたちを変えて引き続き働いてもらっています。
(※)欧州拠点設立に伴い、2022年12月現地正社員として再採用
グロービスは、既存の制度を頑なに押し付けるのではなく、ユースケースによって柔軟につくり変えていける企業だと思います」
そんな多様性あるチームで、田所が何よりも大切にしているのは、“マイノリティが見ている景色をないがしろにしない”こと。
田所 「たとえば社内のメール配信。日本人が大半の部門内では、日本語でしか流れないことがほとんどですが、日本語を勉強中のメンバーもいるため、内容を理解するだけでも通常よりも時間を要することもあります。だからこそ、2言語配信を提案しました。
しかし、実際に困っているのは、約120名のうち5名ほど。はじめの頃は、『気持ちはわかるけど、5人のためにやるの?』、『効率的にどうなの?』といった意見もありましたが、賛同してくれる方が徐々にあらわれ、いまでは2言語でメールを流してくれる方が増えてきました」
マイノリティは、国籍や言語の問題に限りません。田所は、産休等の長期休暇から復帰したメンバーのサポートにも積極的です。
田所 「長期休業から復帰後のメンバーが困っているシーンを目にすることがあったんです。復職者がよりスムーズに立ち上がるためのサポートはもっとできると感じ、部門内で声をあげました。すると、部門長もすぐに反応してくれて、改善のための取り組みが決まりました」
イノベーターに賛同する人の数は、最初は数%でも、アクションを続けるうちに追随者が増え、やがてどこかのタイミングで大きな波が訪れます。組織をより良くしていくために、アーリーアダプターを獲得することが、田所のミッションだと言います。
田所 「グローバルチームに所属しているからこそ気づけることがあると思っています。常にマイノリティの目線に立ち、小さな声に耳を傾ける。そして必要があれば仕組みや制度を柔軟に変えていくことが、働く満足度につながっていると思っています」
国籍に関係なく誰もが自分らしく働ける組織を目指して
田所にはいま、大きなふたつのビジョンがあります。ひとつは、日本人がグローバルで活躍できる支援を行うこと。そしてもうひとつが、日本企業で働く他国籍の社員が、日本企業で活躍できる環境を整えることです。
田所 「外国籍社員が役員に昇進するルートが整備されておらず、日本企業での活躍に限界を感じるケースは少なくありません。ノンジャパニーズの方が、日本企業でも自身のポテンシャルを発揮できる組織を増やしていきたいですね」
そうした展望も踏まえながら、田所が新しくジョインするメンバーに期待するのは、第一に「人や組織の成長をサポートしたい」という想いをもっていること。加えて、「母国で何かを成し遂げたい」と考えている人ともグローバルチームは相性が良いと言います。
田所 「日本は、世界的に見ても人材育成に熱心な国です。日本流の人材育成を母国に広めていきたいという想いがある人なら、将来的にグロービスが海外展開を行い、世界各国の企業様をサポートしていく中で大いに活躍できるだろうと思います」
多様な人の目線に立って最善策を選び、誰もが気持ち良く働き、活躍できる組織づくりに注力してきた田所。その一つひとつの行動が、追随者を呼び、大きなイノベーションへとつながっていくことでしょう。