パートナーとして、組織戦略を推進することで変革を実現する
井上は、企業の人材育成・組織開発の支援を行うグロービスのコーポレート・ソリューション部門に所属しています。通信業、エンターティメント、素材メーカー、航空関連など多業種を担当しており、支援の範囲も多岐にわたります。
井上 「顧客の次期経営リーダーの育成に関わることは多いのですが、経営サイドに入り込むほど、依頼内容は幅広いテーマに及んでいきます。たとえば、新規事業開発やDXビジネス創出の伴走、サステナビリティ経営の全社浸透や、パーパス策定をご支援したり……。また、グロービスが経営会議のファシリテーションを担うこともあります」
グロービスというと、“研修を提供する企業”というイメージを持たれることもあります。ところが、実際は“組織開発のパートナー”として、人や組織に関連するあらゆる課題解決に伴走しています。
井上 「私たちの仕事は、研修を提供することではなく、クライアントの事業成功の支援です。だからこそ、お客様の組織状況をお聴かせいただいた上で、事業のサクセスにフォーカスし、“本当に取り組むべきことは何か”から議論し、プロジェクトを創っていきます」
ただし、支援範囲は広いものの、決して“何でも屋”ではないという井上。コーポレート・ソリューション部門では、コアとなるふたつの強みをベースにしています。
井上 「強みのひとつは、組織変革や人の成長をデザインする力です。たとえば、事業戦略の策定、それを浸透・実行させる仕掛け、能力開発デザイン、カルチャーづくりなど、顧客の置かれた文脈に合わせて、さまざまな形態をつくることができます。
2つ目は、1つ目を推進するためのファシリテーション能力です。デザインしたプロジェクトに関わる方々を巻き込み、納得感を醸成しながら実行していくには、単なる対話や説明では到達し得ない高度なファシリテーションの力が求められます。グロービスの講師陣は、その点にも長けています」
外部環境の変化のスピードが速く、グローバル化やDXなどの波を避けて通れなくなってしまった今、組織や人にまつわる課題は尽きません。コーポレート・ソリューション部門にも、日々多くの相談が寄せられるといいます。
井上 「多くの企業は、トップが新たなビジョンを打ち出したり、外部コンサルタントが新たな戦略を提示したりしても、すぐに実行に移せるものではありません。それは、これまでの体制や過去の経験等から得た慣習に引っ張られてしまうことが、一定以上存在するからです。
そのため、内部の中枢になりうる方々の問題意識を醸成し、本気になった方々が必要な関係者を巻き込み、戦略を描き、実行に移していくという流れを作っていくほうが、結果的なROIが高くなると考えています。ここを伴走するのがグロービスの強みであり、おもしろさでもあると思っています」
「組織を変えたい」──声を上げたキーパーソンの想いを、伝播させていく
グロービスが提供するプロジェクトは、いつも、あるキーパーソンとの出会いから始まります。
井上 「どの企業にも、組織を本気で変えようとしている方や、組織をより良くしようとしている方が必ずいらっしゃり、そんな方とグロービスが出会うことで化学反応が起こると思っています。
よほどのカリスマオーナーが率いる企業でもない限り、組織がすぐに劇的に変わることはありません。はじめは誰かの小さなリーダーシップや想いが起点になる。それは、経営層に限らず、人事部や経営企画部、事業部の責任者であることもあります。その方とグロービスで画策し、組織内の実態を把握しながら、プロジェクトを組成し、組織の好循環を一緒に作っていくイメージです」
これまでも、そうやってキーパーソンを巻き込みながら、さまざまな組織の変化に立ち会ってきました。特に印象に残っているのは、あるメーカーの事例だといいます。
井上 「私が担当させていただいた当時は、次の成長に向けて戦略や組織体制の改善を施さなければならないという状態で、モチベーションサーベイ結果も、グループ会社の中で、下から2番目と、組織の疲弊感もありました。そこに強い問題意識を持たれた社長が、全社の組織変革の舵を切り、取り組みがはじまりました。
そこにはさまざまな問題が複雑に絡み合っていたので、多様な角度から同時並行的にプロジェクトを走らせ、私自身も経営会議に参加したりしながら、トータル約4年の歳月をかけて、組織全体が変わっていきました。また、モチベーションサーベイの結果も、2022年7月現在、グループで1位になっています」
プロジェクトの伴走だけでなく、経営会議への同席の価値も大きいといいます。
井上 「経営会議は、同じメンバーと長く議論してきているため、議論や意思決定のパターンなどが固定的になっている場合も観られます」
だからこそ、グロービスが介在し、経営会議のファシリテーションを担う価値があると井上はいいます。
井上 「ホワイトボードでの議論の可視化や、講師のファシリテーションによって、経営陣の思考傾向や意思決定の偏りに皆さんが徐々に気づきはじめていきます。すると、『解決するために、もっとこういうテーマを議論しなければ』といった意見が出るようになったり、第三者がいることで、『実は……』という率直な意見が出てくることも増えます。結果的に、経営会議の中での意思決定の質が徐々に高まっていくんです。
経営会議は会社の中枢であり、さまざまな意思決定がなされる場。経営陣の意思決定や思考が少しずつ変わることで、社内から『最近、経営陣から発される言葉が変わってきた』、『以前と動きが変わってきて、自身も率直な相談ができるようになった』といった声が聞こえてくるようになります。組織文化を作るのは経営陣の言動ですから、そこが少しずつ変わっていくことで、変革の波が社内に伝播していくわけです」
経営陣が“自ら気づく”ためのきっかけを作るための介在価値。それこそが、組織開発パートナーとしてのグロービスの持ち味なのです。
役職ではなく、人と人で向き合う。すべては日本を良くするために
20代後半や30代前半の若手でも、経営陣と対話する機会があることがグロービスの特徴のひとつ。とはいえ、井上は、今も決してスムーズに経営陣と対話できているわけではないといいます。
井上 「毎回緊張しますし、私自身、大企業での経営リーダー経験もなく、本当にそこで働く人々の心情を理解できているか悩まない日はないです。ただ、私が少なくとも感じることは、経営陣というのは、こちらの肩書や年齢、表層的な力だけで観ていない。“仕事へどう向き合っているか”や、“自社の実態をどれだけ観ているか”などに、関心を寄せている方が多い印象です。
ある企業のプロジェクト報告に伺ったときの話です。『この企業をより良くしたい』という想いで、私なりに必死に伴走したプロジェクトでした。なんとか成果につなげ、それらを報告に伺った際、私がまとめたレポートに、ある役員が強く興味を示され、直接コメントくださったんです。その対話で、その方がご自身の立場や評価を気にせず、本当にこの組織を変えようとされているということを確信し、想いがシンクロできた気がしました。
そんな出来事があると、私自身も、立場を超えて、この組織のために、この役員のために何ができるか、という気持ちに、さらに火がついてしまいます。そんな想いも、経営陣と信頼関係を築くことの1つになっているかもしれません」
こうして多くの顧客と対話する井上は、自身の専門領域に加え、最新のテーマを広くアップデートしていく重要性を感じています。
井上 「私自身は、組織心理学などのサイコロジー分野の応用に関心は高いのですが、あえて多様な領域に触れることを心掛けています。それは、専門領域にこだわりはじめた瞬間にクライアントの課題を適切に観る視力が曇りはじめると感じているからです。自分が詳しい切り口からだけでは組織のことを正しく捉えることはできません。物事をさまざまな観点からニュートラルに見ることができるよう、幅広い国内外の知見や現場の実際の声を得るようにしています。
そういったこともグロービスの諸先輩方の実践を通じて、肌で感じることができました。そして、何より重要なのは、得た知見や情報を学びで終わらせず、クライアントの価値提供につなげることです」
多くのリーダーと向き合ってきた井上は今、1つの使命を心に抱いています。
井上 「少しでも日本の産業全体がより良く変わっていくことに貢献したいですし、このグロービスという組織体には、それが可能である気がしています」
日本への貢献を強く考えるきっかけとなったのは、イギリス大学院への留学だったと語ります。
井上 「留学中、世界中の方々と議論し、プライベートでも仲良くしてきた中で思ったことは、日本人の真面目さ、粘り強さ、改善思考など、ポジティブな側面が顕著にあるということ。これは他国と比べても負けない。しかし、これだけ必死に頑張って働く日本人がいるにも関わらず、30年近くブレイクスルーできず、全体として衰退に向かい、幸福度も上がっていない状態に、歯がゆさを改めて感じました。
そのアプローチの一つとして、現在も日本の産業に大きな影響を与える大企業をはじめとするさまざまな組織の『創造と変革』をご支援することで、日本がより良くなることにつながると考え、私はグロービスにいます」
“個の爆発”と呼べるような、個性や各自の興味関心が尊重される環境がここにはある
各自が実践を通じて、培った能力を生かしてクライアントの組織変革を支援するグロービス。そんなプロ集団の一員であることに誇りを持っているという井上。
井上 「グロービスは、“個の爆発”と表現されるほど、一人ひとりが関心のある領域を追求できる場所です。わたしのイギリス留学もその一例です。グロービスに入社して2年頃、海外留学への関心が高まり、悩んだ末に、退職覚悟で部門長に相談したところ、『いいじゃん』と、軽く返ってきたことは驚きでした。そこから1年半ほど休職して留学させてもらえたことは今でも本当に感謝しています」
個を磨ける環境に加えて、クライアントに提供できるソリューションが多岐に創造できるのも、グロービスの大きな魅力。単なる研修会社ではないからこそ、組織変革を実現するための、幅広い提案が行えるといいます。
そんな井上がいちばんやりがいを感じるのは、「クライアントに価値を提供できた」と実感する瞬間です。
井上 「『グロービスと一緒に取り組んだことで、徐々に、組織の状態が変わってきている』といったお声をいただいたときは、うれしいですね。一緒に伴走して作ったプランが事業化に移されることや、クライアント自身で変革を自走できるようになっていること、以前のプロジェクトメンバーがご活躍され、新たなポジションとして昇進されたときにも、自然とガッツポーズが出ますね」
組織開発パートナーとしてクライアントを支援できることに、おもしろさと手ごたえを感じている井上。自身と同じようなマインドを持つ仲間との出会いを楽しみにしていると話します。
井上 「グロービスには、個々の知見や経験を実践できるフィールドが広がっています。もちろんクライアントへの価値提供に結びつくことが大前提ですが、どんな切り口であれ、人や組織、経営に興味があって学び続ける意欲を持っている方にとっては、“フィールドワーク”や“実践研究”ができるような環境でもある気がします。実際、多彩なバックグラウンドの方々が所属しています。
所属するさまざまな方々の実践知の社内共有を通じて、1人では蓄積できない『集団知』でお客様と向き合っていくことが可能になっています」
経営層はじめ多くのクライアントとの関わりの中で、成功も失敗もエネルギーに変換しながら、コンサルタントとして成長を遂げてきた井上。これからも、“人と組織への好奇心”を心に灯し、組織変革のうねりを起こしていきます。