学ぶ意欲のある人をサポートしたい。道半ばで出会ったグロービス精神

川崎美保は、株式会社グロービス(以下、グロービス)で法人カスタマイズ部門のコンサルタント業務をメインに、コンテンツ開発や講師を輩出・管理するFG(ファカルティグループ)でも幅広く活動しています。

川崎 「コンサル業務では、将来の経営者候補の選抜研修がコアになっており、そのプログラムをより良いものにするべく、お客様と伴走しています。また、2021年から組織の戦略人事を担ったり、FGではコンテンツの見直しや講師のサポートのほか、リモート環境下のマネジメントやアセスメントのプロジェクトも担当しています」

グロービスで活躍するに至るまで、川崎は総合建設会社で人事や人材育成の企画・管理・運営を10年間担当。こうした、育成や教育への関心の始まりは幼少期に遡ります。

川崎 「小学生の頃に、みんなに慕われていた先生に出会ったんです。そこで漠然と教師になりたいと思い、大学時代は国語科教師を希望していました。しかし当時は採用がかなり厳しい状況であったこと、またひよっこの私が”教える”ことをしていいのかに迷いがありました。そこで最終的にはゼネコン企業に就職する道を選んだのです。入社してしばらく経った頃、総合職に転換して『業界内で経験を積みたい』と望んだものの、バブル崩壊で業界が苦境に立ち、結果的にはかないませんでした」

自身のキャリアに行き詰まりを感じた川崎。改めて自身を見つめ直した結果、「学ぶ意欲のある人をサポートしたい」という思いを抱き、退職して日本語教師を目指すことにしました。

グロービスで仕事をするようになったのは、そんな時でした。

川崎 「前職時代にグロービスに通っていたという縁があり、勉強をしながらアルバイトとして働けないか聞いてみたんです。そして晴れてグロービスで働けることになりました。アルバイトであるものの『コンサルの現場に行きたい』といったら同行させてもらえたり、アイデアをお話しすると背中を押してもらえたりと、いろいろな機会をいただきました。

その機会の一つに、代表の堀が学生向けに行う講演を聞ける機会がありました。そのときの『失敗はないと思っている。失敗と捉えるか、それで良かったと捉えるかの問題だ』という発言に非常に共感したのです」

同じ出来事でもどう捉えるか次第で、意味合いは変わってくる。グロービスの魅力に惹かれつつあった川崎は、この講演がきっかけとなり、2001年にグロービスへ入社しました。

教育や育成関連の業務に携わり続けることになった理由について、川崎はこのように語ります。

川崎 「自分が前に出るよりも人の役に立つのが嬉しいという私の性格が、教育や育成に関心を持つベースとしてあるのです。また、アーティストをサポートする職業に就いていた父が、イキイキとやりたい仕事に取り組む姿を見て育った体験も、大きく影響していると思います。

働く中で、受け身な姿勢になったり、愚痴ばかりいってしまう状態というのは、すごくもったいないことです。せっかくやるのであれば、自分のやりたいことで、意義を見出しながらやったほうが楽しいし、結果も出すことができる。そうした想いが、私の中の原体験としてあるんです」

理想的に能力が発揮できる環境へ──関係者みんなで演出する育成の舞台

コンサルタントの業務を進める上で川崎が大切にしているのは、「組織や人の理想的な状態を追求すること」。人が成長・変化する場と仕掛けをデザインすることが重要だと語ります。

川崎 「人それぞれが持っている才能や能力は違います。それらが思う存分発揮される状態に向かうためには、マインドをそこに向かわせる必要があります。

しかし、われわれの方から『人を変えよう』と考えるのはおこがましい話かもしれません。本人にしか『変わろう、変えよう』という選択はできないのではないでしょうか。ではどうすればそういったきっかけを提供できるのか。それを考えることこそが、われわれの役割であり、存在意義です」

そして、講師陣やクライアントも巻き込んだチームワークも重要だと考えています。

川崎 「舞台にたとえると、すばらしい役者にあたる講師が社内外にはたくさんいます。クライアントと話しあった成し遂げたい目的や求める育成方法などをもとに、目的を達成できる舞台やストーリーをつくる。そしてそれぞれの講師の特性を生かして刺激を与え、より良い変化につなげるプロデュースをすることがコンサルの仕事です。

当然ながら、私ひとりだけの力では研修受講者の方たちの成長を促すことはできません。だからこそ、関わっているメンバーのみんながひとつのチームになって動かしているのだ、と心得ています」

半分はクライアント企業の社員になったつもりで「どうしたらより良い状況になるか」と考えつつ、半分は第三者としての客観性を持って「こちらの方がベター」とアドバイスできる立ち位置を最大限に活かし、案件に臨む川崎。一つひとつの案件に対して、このような思いを抱いています。

川崎 「社会にもっともっと貢献できる、そして会社としてアウトプットできるような組織づくりをサポートする。それに加えて、働く社員みんながイキイキと仕事ができる場をつくり出していきたいです」

入社2年目でプレジデントアワードを受賞した大阪時代。しかし転機が訪れた

これまでに2回、社内プレジデントアワードを受賞した川崎。最初に受賞したのは、グロービスに入社してわずか2年目のときでした。当時プロジェクトマネジメントを担当していた企業のコーポレートユニバーシティー構築の全体設計を手がけるチームの働きが認められての受賞となりました。

川崎 「グロービスではプランニング自体も事例が少ない中で、当然私も経験ゼロ。半年ほど毎週クライアント役員の方と育成のコンセプトやしくみ、選抜の基準、最終的にどういうプログラムにするか、そういったことを徹底的に議論し、当時の法人リーダーなど3人体制でプロジェクトをつくりあげていきました。研修参加者の方たちに良い形の変化が見られたのも、大きな収穫でした。

たとえば、非常に優秀なのにずっと社内で頑張ってきたプロジェクトがストップして、やる気を失った経験のある方がいたのです。そのケースでは、ご本人とクライアントの人事部長、私の3者でしっかり話し合える場を設けました。そのことが引き金になり、ご本人は見事意識転換に成功。結果的に研修では素晴らしいプレゼンをしていただけました。

そうした経験もあり、必要に応じて面談の場を設けるなどして各参加者がなかなか言えないけれど抱えている『モヤモヤ』を打ち明け、腑に落ちる機会をつくることにも力を入れました」

その後、地方の大手企業や金融機関を回って大阪・名古屋市場を開拓し、コンサルチームのリーダーやマーケティングも担うなど実績を重ねた川崎。しかし、突如起こったリーマンショックによって大阪市場が厳しい状況に陥ります。

迫られる転換期の中、川崎は講師業務を務めることをすすめられました。そのすすめに対して、川崎の答えは── 

川崎 「教師になる道を諦めたことと通ずるのですが、たくさんのすばらしい講師の方たちと同じ費用をいただいて、質がともなわない状態で自分が教えることには納得できなかった。そこで、『講師はやらない』という選択をしたのです。

でも、講師を務めることがマネージャーを目指す必須条件でもあったため、当時はとても悩みました。一時は退社したほうがいいのではと考えたこともあります。そこで、尊敬する外部の講師の方に相談したところ、私の気持ちを認めてくださった上で『辞めるのは今じゃなくてもいいんじゃないか』とアドバイスしていただき、踏みとどまろうと決意したのです」

輝かしい実績の陰で苦しい思いを抱いていた川崎に、市場の大きい東京への転勤話が持ち上がりました。東京はグロービス社員も多く、チャレンジをするための協力者も多い。そう考えた川崎は、2011年東京に異動したのです。

キャリア・働き方・マインドがバリアブルに──グロービスで広がる可能性

東京異動後、経営幹部養成プログラム「グロービス・エグゼクティブ・スクール(GES)」の担当やグローバルチームを経て、コーポレート・ソリューションチームでシニアコンサルタントとして活躍するようになった川崎。

2012年には「理論的裏付けを身につけたい」と、青山学院大学大学院ヒューマンイノベーションコース課程に入学し、心理学のほか教育学、社会学、社会心理学など学際的な学びを自身も経験しました。

川崎 「広い社会の構図をしっかりと学び、『世の中ってこういうものか』と、良い意味での気づきがありました。それまでは、組織の中で自分の求めるマネジメントスタイルと違うことが行われると違和感を抱いたり、自身の考えと相反する意見をもらい、自信を失うこともありました。世の中を俯瞰してみることで、自分か囚われていたしがらみから昇華されたのは大きかったです」

紆余曲折の末、自身の生きる道を見出した川崎は、社内メンバーに対して心がけていることがあると言います。

川崎 「私は誰にでも良さというものがあると思っています。ですから、部下や一緒にプロジェクトを進めるメンバー自身が持つ良さを伸ばしてあげたい。そして、できるだけ早く成功体験をしてもらい、仕事のおもしろさを早い段階で感じてもらいたいんです。そんな風に、自信につながる場面をプロデュースするのが、リーダーの役割だと思います」

クライアントだけでなく、一緒に働く仲間にも能力が発揮できるシチュエーションを演出するように心を尽くす川崎。クライアント、コンサルタント、講師ら関係者を巻き込んだチームで人や組織を成長・活性化させる空間づくりを、ビジネスの現場で仕掛け続けます。