売る側から、作る側へ。豊富なビジネス経験を引っ提げCDOに着任
大手SIer、外資系メーカー、ベンチャーと、複数の企業で研鑽を積んだのち、ジオテクノージズという新しい舞台に立った榎本。渡り歩いてきた企業だけでなく、手掛けてきた業務もまた、多彩なものでした。
榎本 「学生時代はプログラムの勉強をしていたのですが、最初に入社した企業ではなぜか営業職を任されました。もっとも、当時はシステムの要件定義までを営業が行っていた時代。身につけた知識が無駄になることはありませんでしたが。
その後、事業開発に関わるようになり、会社を変えるごとにインフラ技術、マーケティング、プリセールス、新規のパートナー開拓、ソリューション開発など、実にさまざまな業務を経験しました。その過程で、組織的な営業や、政治力を駆使したビジネスの手法、組織の仕組み作りなど、いろいろな学びを得ることができたと思っています」
サービスを「売る側」としてひと通りの業務をこなしてきた榎本。ジオテクノロジーズへの転職を決めた理由を、次のように話します。
榎本 「事業会社で社内システムや開発系に関わるという『作る側』に携わるつもりはあまりなかったのですが、CDOとして誘われたことで興味を持ちました。
ジオテクノロジーズはデジタル地図の領域の先駆者であり、それがビジネスの主体でもある。いわゆるIT関連ではありますが、一般的なITのイメージからは少し遠いところにいます。そこにも、おもしろみがあるように思いました。
また、ジオテクノロジーズは、パイオニアから独立してできた会社です。伝統的な日本企業と違って、私が得意とする外資的なシステムを社内に取り入れてDX推進に役立てたり、これまでの経験を活かしてマインドチェンジを起こしたりできるのはないかと考えたのです」
そして2021年11月、榎本は、技術部門の統括を担うCDOとして同社に迎えられます。
榎本 「入社してみると、競争意識が非常に強い外資などとはまったく違う雰囲気がありました。決して業務に対する熱意が低いという意味ではありません。社員全員の人柄が驚くほど良く、それでいて自らに課せられた役割にとても真面目に取り組んでいる。よそ者の私をすんなりと受け入れてくれて、自然体で溶け込むことができました」
歴史と技術力で培った盤石の基盤が強み。地図をベースとした新しいビジネスの可能性
長い歴史と高い技術力を持つジオテクノロジーズ。入社してすぐに、榎本は新しいビジネスのチャンスを感じたといいます。
榎本 「ジオテクノロジーズには、ナビゲーション用のデジタル地図を販売している会社というイメージがあるかもしれません。実際その通りなのですが、メタバースやデジタルツイン、NFT、ブロックチェーンといった、さまざまな新技術が登場する中、デジタル地図をベースに技術と関連するソリューションを組み合わせていくことで、多様なビジネスを派生させられると考えています。
たとえば、デジタル地図データに人流データを載せたり、ドローンにセンサーを付けてCO2量を地図上にマッピングしたり……。可能性を大いに感じています」
ITの変革期といわれる90年代のように、新サービスがどんどん生まれる時代が到来しようとする中、ジオテクノロジーズには新しいことを立ち上げていく環境が整っているという榎本。次のように続けます。
榎本 「2000年くらいから、IT業界では、お決まりのものを売るようになっていました。新しいものを作ろうという流れがしばらく起きていませんでしたが、今後、ブロックチェーンやNFTといった技術を使って、新しいことにチャレンジする時代になるような気がしています。
そんな中、当社の社員規模は450人程度。ビジネス基盤や地図データの基盤がしっかりしている一方、社内の階層が少ないのでビジネスディシジョンにスピード感があります。これだけチャンスが整っている環境は、そうないと思うのです。多くの可能性を秘めた、すごくおもしろい企業に出会ったという感覚がありますね」
2022年4月現在、榎本は、技術部門と総称される4部門を統括。各部門にはそれぞれアプリケーションの開発、人流データの解析・販売、地図データのオリジナル化、社内の情報システム管理といった役割が与えられ、総勢100名ほどが在籍しています。
榎本 「技術部門は新技術に対応できるスキルと、新たな市場に挑戦していく熱意を持った30代が中心です。そんな彼らと共にビジネスに貢献すること、つまりはツールの導入などによって、部門全体の効率化や品質の向上を実現することが、私に課せられたミッション。また、企画部門から提案された新サービスを、可能な限り早期に立ち上げることも目指しています。社内のことでいえば、外資風のシステムを取り入れながら、考え方や運用のあり方を進化させていくことにも取り組む予定です」
開発者にも、ビジネスマインドを。オーナーシップが市場価値向上のための鍵
B to C向けのスマホアプリ、“トリマ”が間もなく1000万ダウンロードを達成するなど、地図以外の領域も好調なジオテクノロジーズ。技術者たちは、刺激的な環境で仕事ができていると榎本はいいます。
榎本 「移動するだけでかんたんにポイントを貯めることができるアプリの“トリマ”は、アジャイルで開発してきました。現在も日々、チームが一丸となって、小改良や新サービス、新企画の実現などに取り組んでいて、変更を加えるたびにユーザー数が増加していくのを実感できます。
また、スマホアプリはどんどん新しい技術を取り込んでいく必要があり、開発の仕方もモダナイズされている。そんなところが技術者にとっては魅力的だと思います」
新しい技術を身につけるだけでなく、技術者には、ビジネスマインドも備えていってほしいという榎本。
榎本 「営業からいわれて行動を起こすのではなく、営業と連携しながら、積極的に前に出て、いろいろな提案をしてほしいと思います。また、担当するビジネス数字を目標に組み込んだり、開発の成果を数値化したりすることで、数字を意識しながら開発に取り組む姿勢を育み、ビジネスマインドを植え付けていく必要もあるでしょう。
かつて、子会社であったころは、自由が許されないこともあったかもしれませんが、時代は変わりました。アプリや、収集した人流データを分析して新サービスとしてアイテム化したもの、マップファン関連のソリューションなどについても、開発側が主体となって動かしていけるといいですね」
現在、社内にはプロパー社員が多いという榎本。今後はダイバーシティを意識しつつ、中途採用も増やし、職場に刺激を与えていきたいと話します。
榎本 「プロパーと中途、どちらが良い悪いというのではなく、たとえば、これまでと違う血が入ることで、もともといた人の働きが改めて評価されたり、より力を発揮するきっかけになったりすることがあると思うのです。私自身、何千という社員がいる外資系メーカーで、そうやって差別化し、自分の市場価値を高めてきました。実績を積んでスキルを高めたいと思う人が、自分の理想とするキャリアを描けるような環境作りをしていけたらと考えています」
失敗も許容するチャレンジしやすい風土を作り、技術部門の発展を目指す
CDOとしてDXの推進を加速させるため、自らに多くのミッションを課す榎本。
榎本 「ひとつは、社内システムの改善に取り組みたいと思っています。たとえば、日本ではシステムが停止すると情シスが責任を問われますが、外資の会社では必ずしもそうじゃない。そんな減点主義から成果主義へと、社内のシステムをシフトしていきたいと考えているのです。
何かにチャレンジして失敗したら、次は失敗しないように手段を考えればいいだけのこと。『当たらず触らず』とならないよう、失敗が許容されるような風土を作っていきたいですね」
また、技術部門における社内の取り組みを、積極的に社外にアピールしていくことも大切だと語ります。
榎本 「たとえば、ソリューションの活用による業務の効率化や、効果的なセキュリティ対策など、採用事例を社内に閉じ込めておくのではなく、広く発信していくことも必要だと思っています。
もし、その取り組みが注目を集め、取材されるようなことがあれば、担当者の業界での市場価値が向上することにもつながる。『ジオテクノロジーズで働きたい』と思う人も、おのずと増えていくとはずです」
今後は、これまでに培われてきた遺産をモダナイズしていくだけでなく、社内の別部門との連携、さらには個人的なネットワークを活用した社外との連携にも、積極的に取り組んでいきたいという榎本。
榎本 「まずは営業・企画部門と共に、“トリマ”や人流データ分析を応用した新サービスを立ち上げたい。加えて、従来の取引先であるカーメーカー、測量会社、地図ソリューションだけでなく、ほかのITベンダーの協力を仰ぎながら、パッケージングのようなものを展開していきたいと思っています。
また、当社ではRPAのような自動ツールの導入も推進しています。それによって一定の成果を出し、生産性を上げていくのも私の役割。新しいものをどんどん取り入れる環境で働くことは、技術者にとってかなり楽しいと思います」
地図データという価値ある素材をもとに、新時代のサービスやソリューションの創出を目指すジオテクノロジーズ。スキルやビジネス視点を身につけ、技術者としての市場価値を高められる環境が、新たな仲間の参加を待ち受けています。