出産が転換点に。関心の向かう先は、ものづくりから障がい者雇用へ

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私は、2021年2月にゼネラルパートナーズ(以下、GP)へ入社し、法人営業を担当しています。

前職は複合機メーカーで、法人営業を7年、ソリューションサービス企画を3年経験しました。メーカーを選んだのは、幼少期から社会課題の解決に関心があったことがきっかけです。理系の大学院に在籍していて、世の中に役立つものづくりがしたいと思っていました。

前職の企業が提供しているビジネスソリューションは、さまざまな企業の事業を支えるもので、ひいてはそれが社会課題の解決や社会経済の発展につながっていくと考え入社しました。

法人営業で実際のビジネスの現場を経験した後に、もともとやりたいと考えていたサービス企画を希望して異動。そこでさまざまな企業の課題について情報収集しながら企画に携わりました。

そのころ、妊娠と出産を経験しています。出産した子どもが1kg未満の超低出生体重児で、かなりの確率で障がいが残るといわれたことが転機となりました。

この子は将来、きちんと働けるのだろうか、生きていけるのか……。そう考えたときに、障がいのある人が働きやすくなるソリューションを提供できないかと思い、障がい者雇用支援ソリューションの企画提案をすることにしたんです。

ところが、会社には「それはCSRではないのか」といわれ、私自身、業界や市場について研究不足だったこともあり、次の一手に出ることができませんでした。「障がい者雇用にはまだまだ可能性も市場性もある」という想いをその後も引き続き持っていたので、企画職から外れるタイミングで転職を決めたんです。

障がい者雇用の支援は、ボランティアや社会福祉という観点から携わる方法もありますが、無理なく継続していくためには、ビジネスとして資本を循環させていく必要があると考えています。そのため、転職先は障がい者雇用の支援を事業として行っている会社に絞って探し、その中でも柔軟なチャレンジができそうだと感じたGPに入社しました。

チャレンジの一環として取り組んだ、支援員と営業、部門の枠を超えた連携

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GP入社後は、法人営業を担当。企業から障がい者の採用ニーズをいただき、活用する採用ツールの選定や母集団形成の戦略立案、求人票の作成のほか、「障がい者採用の知識がない」「受け入れ体制がない」といった各企業の課題に応じて、情報提供や研修などのサポートも行っています。

入社理由のひとつだった“柔軟なチャレンジ”も実現できています。たとえば、「営業力強化が必要なのではないか」と考えて勉強会を提案し、開催にこぎつけました。大手企業と異なり、自分の担当役割ではないことも会社のため、メンバーのためになることはどんな提案も歓迎してくれるのはGPの魅力だと思います。

そんなチャレンジの事例としてもっとも印象的だったのが、就労移行支援事業所の支援員である黒田と協力し、発達障がいのあるAさんを再就職に導いたケースです。

就労移行支援事業所に通所されていたAさんは、RPAプログラマーとしてある企業への就職が決まり、2022年2月から働き始めました。Aさんは以前も一度、総務事務職で就職しましたが、就職先で障がい特性に十分な理解が得られず、コロナ禍で業務量が減ったこともあって、2021年2月に契約満了で退職することになってしまったんです。

その後、当社の就労移行支援事業所に通い直し、RPAの研修を受けてスキルを身につけたことで新たな企業との出会いがあり、見事採用が決まりました。その企業には、Aさんの障がい特性を理解していただいていて、その後の定着も順調です。

私が本件に関わったのは、AさんがRPA研修を受講しているときに、黒田から今後の進め方についての相談を受けたことがきっかけでした。当時の私は入社して間もないころ。黒田とも面識がなかったのですが、前職でRPAに関連する企画やサービスに携わっていた経験があったことから、私の上司を通じて声をかけてもらいました。

営業だからわかる企業の本当の課題。移行支援ならではの価値を提案

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左:就労移行支援事業所の支援員の黒田、右:佐居

本件で私が担ったのは、主にRPA研修や発表会に対するアドバイスと、企業との橋渡し役でした。

RPA発表会については、研修の進め方について相談を受けたときに、利用者が企業に向けてその成果を発表する場を設けたいという話を聞いたのが最初です。「RPAを活用する企業にとって何が課題なのか」「どのような人材なら受け入れてもらえるのか」「企業が気にするポイントに対して何を訴求すればいいのか」といったアドバイスを行いました。

また、当時たまたま同じ時期にRPAのスキルを持つ方を採用したいというニーズがある企業がいらっしゃったんです。担当者に発表会へお越しいただくよう働きかけ、その企業にアピールするための企画の立案にも参画しました。

発表会前には、黒田も交えてその企業との打ち合わせもセッティングしました。その企業は、障がい者採用に関して、「採用した人がなかなか定着しない」という課題を抱えていらっしゃったんです。それを受けて、「就労移行支援事業所からの採用であれば約2年半にわたって入社後のフォローを受けられるため、企業側にとっても入社される方にとっても安心できる」ことをお伝えしました。

さらに、発表会の後にも企業とミーティングの機会を設けて、Aさんについての感想をうかがいました。すると、「Aさんであれば書類選考せずに面接したい」とおっしゃっていただいて。Aさんが面接するにあたって不安に感じている点もあらかじめご相談いただいたので、臨みやすい環境を整えることができました。企業には前向きにご検討いただいていたこともあり、選考も順調に進んでいったように思います。

発表会から採用までの一連の流れを振り返って思うのは、企業が抱える本当の課題に気づき、それが解決できるように立ち回ることが重要だということ。今回採用いただいた企業の本当の課題は、「RPAの人材がほしい」ということではなく、「なかなか定着させることができない」ということでした。

障がい者採用において人材を定着させられない原因のひとつに、就労準備ができていない人が採用されていることが挙げられます。体調が安定しているか、自己障がい理解ができているかはもちろん、必要なスキルがあるかどうか、カルチャーフィットしているかどうか。それらも含め、事前にきちんと判断していくことが課題だと思っています。

とはいえ、そうした就労準備性の判断は、数時間の面接やご本人の報告だけでは非常に難しいものです。それに関しては、就労移行支援事業所では、通所している方の体調や配慮事項、スキルなどをスタッフがしっかり見て判断できるので、安定就労につなげられる可能性が高い。今回の企業にも、そういったメリットをきちんとお伝えできたことが、安心材料になったのではと思っています。

営業と就労移行支援の連携を深めていくと共に、企業側に対する支援の強化を

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今回、就労移行支援事業所と協力しながら進めていったことで、企業担当側にとっては就労準備性の判断を移行支援側にフォローしてもらえるところ、移行支援側にとっては通所者の就職先を見つけやすくなるところに、連携することの大きな意義があると感じました。

また、移行支援を介すことで、定着の面でメリットが生じることが魅力だと感じています。毎回といっていいほど移行支援側と協力し、見学会などに企業を招待するなど、その後も取り組みを続けています。

成功事例をチーム内で共有するようにしているのですが、企業が定着に課題を感じているようなケースでは、移行支援側の力を借りることを提案材料のひとつとしてメンバーにも勧めているところです。

2022年9月現在の障がい者雇用を取り巻く公的な環境において、障がい者本人に対しては就労センターや組合などのいろいろなサポートが用意されている一方で、企業側に対する支援は、補助金等で採用に関するノウハウを各社が情報収集したりトライアンドエラーを繰り返して経験を積み重ねる必要があります。そのため、個人的には、将来的にもう少し企業側の支援を手厚くできるよう、なんらかの仕組みやシステムを作ることに貢献していきたいと考えています。

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