どのような状況にあっても「働きたい人が働ける」人事制度が作りたかった

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▲GP クレド

2003年に誕生したゼネラルパートナーズ(以下、GP)は、2017年に第二創業期を掲げ、“GPクレド”(クレド:ラテン語で志や約束、信条を意味する。企業では社員の心がけや行動指針を指す)を明確に設定。これをきっかけに、働き方の設計も大きく変わりました。1月にクレドを発表、4月には新制度を導入しましたが、そのときの立役者のひとりが佐々木でした。

佐々木 「私たちのクレドでは『誰もが自分らしくワクワクする人生』をビジョンとし、『やってみよう、楽しもう』をカルチャーとして掲げています。

クレドができたのはちょうど私が人事に異動になって約1年後。“GPエンジン”(原動力となるエネルギー)=『挑戦・成長し続ける個人×多種多様なチーム』を具現化するために、何らかのエネルギー源を社員に提示しようということになりました。これをきっかけに思い切って働き方を変えよう、しかも段階的ではなく一気に変えた方がいいと、かなり振り切った制度にしたのです」

佐々木が最も力を入れて実現したのは、コアタイムなしの完全フルフレックス制。1日あたり5~7.5時間の時短勤務を誰でも選択できるようにし、たとえばその月の営業日が20日であったとしたら「5時間×20日」つまり100時間をどんな形であれ働けばいいことにしたのです。

佐々木 「たとえば、月に100時間働くとした場合、週に3日だけ働く(1日8時間超の労働)ことも可能。決まった時間帯の拘束ではなく、あくまで労働時間とパフォーマンスで見るのです。子育てや介護、その他さまざまな事情で働く時間を微調整したいというニーズにも対応して、時短勤務を1日あたり30分刻みで選択できるようにもしました。

さらに、フルリモートを可能とすると同時に副業も解禁したことで、制度改革がぐっと前進したと感じています」

2016年までのGPは、極めて一般的な勤務体系の会社。毎朝9時から朝礼、昼休みは12時から1時間、PCの持ち出しは不可でリモート勤務をする人などいませんでした。時差出勤制度はあったものの、前日までに上長に許可をもらう必要があり、気軽に使えるものではなかったのです。

佐々木 「硬直した人事制度や就業規則などについて、このままではよくないという思いはあったものの、変えるきっかけがありませんでした。ですから、クレドの制定は絶好のタイミング。イメージとしては、ユニバーサルデザインを意識し、どのような状況においても働く意欲のある人が働ける制度をつくろうと考えました」

多様な働き方の提示は社員から歓迎され、フルフレックス、フルリモートの導入もスムーズに移行できたと言います。毎朝全員スーツ姿で揃って朝礼を行っていた会社が、新卒でも副業をしたり時短で働いたりする人もいる、という多様性を尊重する働き方を採用した企業へと変身を遂げました。

社員一人ひとりが自主性をもって働き方を選択し、自分なりのやり方でパフォーマンスを発揮できる会社となったのです。

再入社後、東京本社配属に。愛知県からフルリモートで勤務する小林の働き方

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働き方改革推進の当事者だった佐々木とは異なり、2016年10月にGP入社し、名古屋でキャリアプランナーとして働いていた小林。2018年に退職するまでの2年間、ちょうど新しい制度が導入されたタイミングの狭間にいました。

小林 「現在は本社所属のキャリアプランナーをしていますが、入社時は名古屋支社に勤めていました。すごい制度が導入されたと思ったのを覚えています。

残念ながらパートナーの仕事の都合で、しばらく海外で暮らすことになり2018年の年末に退職。その後帰国し2021年4月に再入社したのですが、当時よりもさらに就業形態が多様化したと感じています。私自身、今は東京にある本社配属ですが、実は愛知県の自宅からフルリモートで勤務しています」

リモートであってもすぐにミーティングやチャットで対応し、バーチャルオフィスで他の社員に声をかけることもできるため、遠方からの勤務でもほとんど不便を感じずに仕事ができている、と小林は語ります。

小林 「今は、リモートで働く上で非常に便利なツールがたくさんありますし、リモートで働くことに違和感を持たないGPの雰囲気や社員の皆さんの感性といったものが、リモートでの働きやすさにつながっていると思います。

働き方に対して『こうあるべき』ではなく、自由な働き方を柔軟に受け入れる精神的な土壌がGPにはある。リモートでもすぐに相談できてレスポンスも早いですし、コミュニケーション上の課題は感じません」

小林の場合、一度退職しての再入社という形を取りましたが、GPには休職制度もあり最長1年6カ月、分割取得も可能。たとえば専門学校の実習が3カ月あるので休職したい、といったプライベートな理由でも、会社の了承が得られれば取得可能であるところはGPの制度の際立った特徴です。

小林 「私の場合は、人事に家族の都合で海外で暮らす相談をした際に、『一度退職して、また戻ってきたらいいよ』と言ってもらえたので、自分のキャリアに対する不安は感じずに退職できました。    

再入社してからは、子どもが小さいので1日6時間の時短勤務ですが、上司も子育て中のママですし、男性社員でも『パートナーが復職したら自分が子どもの送り迎えをする予定』と言う方もいます。管理職含めて、皆さんが何らかの事情で柔軟な働き方を求めているし、当事者として理解してくれる環境です」

介護と仕事を両立。本社所属ながら関西からリモート勤務する佐々木の働き方

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実は佐々木もGPの制度を活用して、仕事とプライベートを両立し柔軟な働き方を実践している社員のひとりです。

関西支社の立ち上げに取り組んだ後、東京本社に戻り勤務していた佐々木ですが、家族の介護を担うことになり関西に移住。現在は、本社所属ながら大阪からフルリモートで勤務をしています。人事企画室の室長として採用や評価、育成、人事制度の設計など会社の核となる分野を担いながら、介護と両立の日々を送っています。

佐々木 「2019年の4月に関西に移って以降、フルリモート勤務です。半年ほどして介護の負担が重くなってきたので介護休業を取得。2020年4月から人事企画室に復職しました。復職当初は、週に2日は通いで介護をしていました。早朝や移動の合間などでメール対応などをし、他の3日は8時間フルで働くといったフレキシブルな勤務スタイルです」

介護休業の制度が整っていることは、もちろん社員にとっては安心要素です。しかし、佐々木の実感としては、介護や育児と仕事を両立することは大変だったといいます。

佐々木 「実は介護休業を取ったのは、全社で私が初めてでした。私自身、育児経験はありますが、介護は初めて。介護も育児も仕事をしながら片手間で、というのは正直なところ不可能です。仕事は仕事、と時間をきっぱり分けないと無理だと実感しました。

今後、介護休業取得者が増えるだろうと予想されますが、どのような状況であっても働ける選択肢があることを追求していくことで対応したいと考えています」

GPは比較的若い社員が多く、また介護と一口にいってもさまざまなケースがあるため、人事のマネジメントを担う佐々木自身がトップバッターとして介護休業を取得した意味は小さくありません。

介護や育児と仕事との両立の難しさを、自身の体験を通じて理解しながらロールモデルを示す。そして、人事として常に社員のモチベーションやポテンシャルを最大化しようと奮闘しています。

佐々木 「どのような状況であれ仕事ができる、という環境を制度として保持するためには、社員側にも努力が求められる側面もあります。どんな仕事でもリモート環境だと仕事とプライベートとの切り分けが難しいという問題は避けて通れません。私の場合、制度設計など考えて判断までしていく仕事も多く、集中力や情報収集力、自分を律する力が求められていると日々感じています」

人事戦略は経営戦略と連動するものであり、働き方のフレキシビリティを高めることで社員がどうお客様に貢献できるのか、という観点が重要だと佐々木は語ります。

働き方のフレキシビリティを高めることは、社員が自分の人生を大切にしながら働き続けるためでもありますが、優秀な人材の離脱を防ぐことや何らかの事情で働き方に制約のある社員のポテンシャルを最大限に引き出すためのものでもあります。

この制度が生産性向上や顧客価値の最大化につながっているかを注視していくことが大切だと考えています。

多様性を受容できる組織基盤があれば、そこからイノベーションを起こせる

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▲記事作成にあたり、ヒアリングの様子

GPで推進されてきた働き方の制度改革は、近年の社会情勢も追い風となり、多様性を受容できる組織基盤を作ることにつながってきました。そうした多様性を内包する組織だからこそ、新たなイノベーションを起こしていける、と佐々木は考えています。

佐々木 「働き方に限らず、個性も含めた相互尊重と多様性を持つチームでは、全員が誰かのミスをカバーしようとする相互のバックアップ意識が自然に高まり、業務効率化も進みやすいです。お互いの個性や強みを生かしたチームビルディングも自然とおこなわれます。

GPには、自分が働くことの意義やどう生きたいかがきちんとイメージできている人が多い。だからこそ、こうした働き方への移行がスムーズにいったと思います。もちろん、制度面においては職種による不公平をなくす整備や組織の柔軟性のアップといった課題はまだまだ残っていますが……」

リアルに交わす他愛のない会話から生まれるもの、周囲の会話から自然と学習できることなど、リモート環境ではすくえないリアルのメリットをどうカバーするか。働きやすさと効率化の両立など、まだまだ工夫を重ねる必要があるという佐々木。

佐々木 「一人ひとりさまざまな事情がありますし、障がいのある方もたくさんいますが、働く意欲と能力があるならその能力を活かしきってもらいたい。そのために柔軟な働き方の選択肢を用意するのだ、ということをこれからも一番に考えていきたいです」

それぞれの事情に合った働き方ができる制度は、小林にとっても非常に魅力的だったと言います。

小林 「私の場合、時短勤務でフルリモートという恵まれた環境で働かせていただいていますが、子育てと仕事の両方をどちらも我慢せずにやりたいと思っています。仕事で言えば、お客様と対面で話せなくても、またメンバーと対面でコミュニケーションを取らなくても、きちんと結果を残せるようになりたいです」

小林は、もともとGPの理念や社会問題を解決するビジネスという考え方に共感して就職したこともあり、一旦退職した時も復職という選択肢を考えていたと言います。

小林 「子どもが産まれて、自分の働き方を考えたときにやはりGPの制度はすごいなと改めて思いました。最初はフルリモートに戸惑いましたが、オンラインだからこそ面識のなかった営業の方など他部門の仲間とも親しく情報交換もできて、楽しく仕事ができています」

GPのこうした多様な働き方を受容する制度は、今後さらにその真価を発揮するものと期待されています。

『誰もがワクワクする人生を』つくることを共通のビジョンとし、障がいのある人や不自由を抱える人により多くの雇用機会や選択肢を作り出すため、そのエンジンとして多様な個性を活かせる働き方を推進していく。

人事の観点で世の中に貢献したいという佐々木の熱い想いと、小林のようなGP社員のチャレンジが、新しい“当たり前”を創っていくのです。