渋谷と秋葉原、2つのジョブトレ事業所による共同プロジェクトがスタート

ゼネラルパートナーズ(以下、GP)による今回の企画は、2019年2月にオープンしたatGPジョブトレIT・Web渋谷と、その1年後にオープンしたatGPジョブトレIT・Web秋葉原の2ヵ所の利用者が、atGPジョブトレのWebサイトに掲載するイラスト制作にチャレンジするというものでした。

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「ジョブトレ利用者が“リアルな仕事”に挑戦──「Webサイトイラスト制作プロジェクト」

atGPジョブトレIT・Webのミッションは、障がいのある方に対してITやWeb制作のスキルを身につけていただき就職につなげ、自分らしく長く働いていただくこと。つまり、就労支援です。

障がい者雇用と言うと、事務系や清掃業務を思い浮かべる方が多いと思いますが、近年の企業の現場では、Webサイトの構築やデザイン、プログラミングといった専門のスキルを担うような仕事も少しずつ増えてきています。

そこで、atGPジョブトレIT・Web渋谷の副施設長を務めている三田 幸代は、従来型の専門性の高いカリキュラムに加え、柔軟に対応できる技術や実際の職場の環境に近い研修などができないかと考えていたと言います。

GPでは、Webデザイナーを養成するにあたって社内サイトの制作などを手伝うことも当初から視野に入れており、今回のようなatGPジョブトレサイトに利用者が関わる可能性はもともとゼロではありませんでした。1年違いで立ち上げた渋谷と秋葉原の両事業所の運営が安定してきた時期と、atGPジョブトレのサイトリニューアルの時期がうまく重なったことにより、スタッフたちの賛同も受ける中、実現に至りました。

先に簡単なイラスト講座を実施してから応募者を募り、コンペ形式で決めようということで、約50名の応募者のうち最終的にジョブトレの利用者4名の方にお願いすることに。こうして4名の利用者による、前例のない新しいチャレンジが船出を迎えたのです。

チームのためにできることを考え、意見を交わすことでわかり合えた

▲主役の4人。スタッフはいつも見守っています。

実際にイラスト制作に携わったメンバーは4人。それぞれイラストのスキルにはばらつきがありましたが、絵を描くことが好きなこととチャレンジ精神があるという共通点がありました。

Iさん 「私の場合、決して上手いとか習っていたとかではないです。もともとイラストを描くのが好きだったことと、ジョブトレでいろんなチャレンジをしていきたいという気持ちが重なり応募を決めました」

Oさん 「私もイラストを描くのが好きで、それを知っていた事業所のスタッフの方にすすめられたのがきっかけです。『今度コンペがあるからチャレンジしてみない?』といわれて、『やってみよう』という気持ちになり、応募しました」

Nさん 「私は趣味でたまに絵を描く程度でした。もちろん、本格的にイラストを学んだこともありません。秋葉原に通所し始めて半年くらい経っていたのですが、それまで自分の絵を公にする機会もありませんでした。そこで、自分の力をちょっと試してみたいな、という気持ちからの応募です」

4名の役割の内訳は、主線担当者が1名、アシスタントが3名。アシスタント業務はイラストの着色や線の修正、清書を起こすまでのラフ案の制作など、多岐にわたります。直接的なイラストに関する作業だけでなく、4人で一緒にひとつの仕事を進めるためには、効率化も必要。自分たちで気づいたことを改善していくことも、重要な作業となりました。

Nさん 「4人で作業を進めるにあたっては、たとえばラフ案を所定の場所に貼り付けてアップロードできればわかりやすくなるので、共有のファイルを作って1カ所にまとめるなどしました。お互いアイデアや思っていることを自由に言い合って、確認していく好循環ができたと思います」

Oさん 「誰かひとりに任せてしまうのではなく、みんなで作り上げていきたい、という思いがありました。そのため、チームのためにできることをみんなで考えました」

Iさん 「チームで作業を進める上で、例えば洋服の柄ひとつとっても『こうした方がバラエティーに富んで、見ている人が楽しくなるのでは?』など細かいことでも自分の意見をきちんと伝えることが大切だと感じました」

メンバー同士で意見の違いがあっても、お互いしっかりと思いを伝え合うことで解決しながら進行しました。協力してひとつのものを創り上げる楽しさを見出せたのです。

試行錯誤しながらも「やってみよう、楽しもう」を体感できた

▲完成したイラスト集

4人でイラスト制作に取り組む中で、それぞれが個人的なスキルアップを実感できました。また、自分がイラストと向き合うスタンスや意識の変化も感じたといいます。

Nさん 「以前は、独学で得た知識だけで描いていましたが、今回の取り組みを通して、線の流れや体の向きなどプロの目線を意識して、いろいろと気をつけて描けるようになりました。

それから、主線担当に負担が行き過ぎないようにするために何ができるのか、「いま何か困ってることはある?」「進め方わかる?」と何度も話し合ったことも貴重な経験です。もちろん大変なこともありましたが、それを乗り越えられたときの達成感は大きかったです」

Oさん 「イラストを描くためのツールの使い方なども手探りでしたが、やりながら身についたことも多いと感じています。自分とは違うテイストのイラストに触れることで、描けるイラストの幅が広がったことも良かった点です」

Iさん 「通所した当初は全く使えなかったツールを、作業を進めながら勉強したり事業所の皆さんから教えてもらったりして使えるようになったことはとても嬉しいです。イラストを描くことが以前よりもっともっと好きになりました」

ほかのメンバーの大変さや懸命に取り組む姿勢から学んだことが大きい、と3人はいいます。また、実際に会える機会がほぼない中、チームワークをどう築くかといった環境的な現状を克服するために努力を重ねました。

Iさん 「私はチームの仕事では報・連・相(報告・連絡・相談)や挨拶などが大事だと思っていて、毎朝、『おはようございます、今日私はこの作業を進めます』といった挨拶をしませんか?と呼びかけました。制作を進めていくに従って本当にこのチームで一緒にできてよかったな、と思っていて。全然知らない同士でも、わかり合えたらいいものが創れる、という確信が持てたことも大きな収穫でした」

チームだからこその難しさと楽しさを、メンバーそれぞれが実感した密度の濃い半年。実際にサイトが公開されてからは、家族や友人、就活先からも良い反応をもらい、充実感と喜びもひとしおだと言います。

Oさん 「ひとりで描いているときとは違って、ほかの人の意見が加わってくる。そうすると、自分が思いもしないような作品ができることがわかって、関わっている間ずっとワクワクしていました。チームで創ることは本当に楽しいな、と。サイト公開後は、自分の携わったものが人の目に触れることで、応援されて認められたといった嬉しさと、責任感のようなものも感じました」

Nさん 「GPのカルチャーとして『やってみよう、楽しもう』という言葉がありますが、今回の私はその言葉そのままでした。コンペを知ったときに素直に『やってみたい』と思って実際に参加できて、やってみるととても楽しくて。終わったときには寂しくて、またやってみたいなと思いました。

見守ってくださる人たちがいて、一緒に頑張る仲間もいて、就労準備の期間がこんなに楽しいなんて思いもしなかったのです。この事業所を選んでよかったと心から思っています」

投げ出さずにやりきることで得られた成長と自信、新たな挑戦への意欲

▲作成したイラストが使用されているジョブトレサイト

今回の取り組みを経て、それぞれが自分なりの目標やチャレンジを見つけて歩みを進めています。

Nさん 「私はこの事業所で実現できたらいいなと思っている企画を練っているところです。まだまだ計画の途中なのですが、ここの利用者がそれぞれ自分のロゴを作ってはどうか、といった企画です。

イラスト制作では、やり切って無事公開できたときの達成感を味わうことができ、投げ出さずにやりきる大切さを学びました。スキルだけでなく、内面の成長にもつながることもわかったので、これからは何に対してもひるまずに挑戦していきたいです」

Oさん 「私の場合、まだまだ修行が必要です(笑)。でも、やはりイラストを描くのが大好きなので、イラストを使ったブランディングのデザインなどに関わってみたいな、という思いがあります。

イラストは趣味として、仕事とは切り離して考えていたのですが、きっぱり切り離さなくてもいいのかも、仕事にイラストを活かすことができるのではないか、と思えるようになりました。今学習しているWebデザインにも応用してみようと考えています」

Iさん 「私自身、障がいがあり病院通いが必要です。年齢も少し上なのですが、そういうことに関係なく、常にチャレンジし続けることが大切だな、と思っています。

今は就職活動をしていますが、今回の取り組みを経験して、自分のデザインしたものやイラストを活かした仕事がしたいという強い想いもあります。自分の作品が何かの一部になればいい、そういう仕事に携わることができればいいな、という気持ちですので、これからも勉強し続けたいです」

大変なことがあっても、逃げずに投げ出すことなく最後までやりきったことの自信や達成感。メンバーが得た経験は何物にも代えがたい価値あるものだったことが伝わってきます。

今回のイラスト制作の取り組みは、ひとつの成功体験が、その人の新たなチャレンジへの起爆剤となり、可能性の扉を大きく広げることを体現して見せてくれた、素晴らしいプロジェクトとなりました。プロジェクトに携わり学びを得た4人は、今後大きく活躍の幅を広げることでしょう。