ここに来れば何かがあるという居場所に。横浜初出店の新店舗への想い

今春開所する「atGPジョブトレ横浜」という事業所は、障害者総合支援法に基づいた福祉サービスのひとつであり、GPが運営する就労移行支援事業のひとつです。

GPの就労移行支援事業は、症状別で事業所を分けているのが特徴です。大手町には聴覚障がいの方専門、お茶の水には難病の方専門の事業所などがあり、「atGPジョブトレ横浜」では発達障がいの方向けとうつ症状の方向けのふたつの症状別コースを用意しています。

ひとつの事業所で、発達障がいとうつ症状のふたつのコースを提供するのは関東初です。どちらかのコースに所属をしていただくのですが、ご希望にあわせて別コースのカリキュラムにも参加することが可能です。運営面では難しい部分もありますが、発達がいの方が二次障がいで精神疾患を抱えるケースも多いので、ふたつの症状を抱える方によりサポートできる部分は「atGPジョブトレ横浜」ならではの魅力です。

就労移行支援事業・サービスの対象は、障害者手帳を持っている・持っていないによらず、障がいがある方です。事業所は現在離職中の方や、事情があって休職をしている方、あるいはすぐに就職するのは難しいけれど就職をしたいと思っている方が、一定期間通い訓練をして就職するお手伝いをする場所になります。

事業所の役割は、入所された方の就職に向けた訓練や就職活動の支援だけでなく、就職後に職場で長期にわたり働けるよう、定着支援もしています。

私がatGPジョブトレ横浜の施設長となるにあたって、施設全体の管理や安全の配慮、利用者様・職員が問題なく過ごしていただける管理などの通常業務に加えて、「この事業所をどういう場所にしていきたいか」をつくり上げることが大事な仕事だと思っています。

とくにスタートは大事だと思っているので、どういう雰囲気にしていきたいのか、支援員としてどういう対応をとっていくのが良いのかなど、一緒に働くメンバー全員でよく話をして決めながら運営をしていきたいと思っています。

支援員も利用者さんも、安心してこの場所にいられる、ここに来たら楽しい、ここに来たら相談できる相手がいる、学びや気づきがあるなど、「ここに来れば何かがある」と思い、通いたくなる居場所づくりをしていきたいです。

GPの支援員は、50代・60代から最年少は20代と年齢層が幅広く、前職では一般企業や就労支援をしていた人など、バックグラウンドもさまざま。ですが、明るい人が多くて、障がいのある方に関わりたい、こういった業務をしたいという想いがあって入社している職員ばかりです。

atGPジョブトレ横浜には、私を含めた6名が立ち上げメンバーとして配属されました。そのうちふたりとは以前も同じ就労移行支援事業部にいたのですが、同じ拠点、同じチームで働くのは今回が初めて。どういう想いを持って業務に取り組み、それがどのように事業所運営に反映されていくのか知っていくのはこれからなので、一緒に働けることがとても楽しみです。

障がいを知らないから差別偏見は生まれる──想いを共有するGPとの出会い

私が大学で障がい福祉を選択したのは、兄の影響が一番大きかったと思います。兄は知的障がいを持っていて、知的障がいの方が集まるサークルのようなものに、大学以前からよく一緒に参加していました。

兄は、中学までは公立の普通校、高校からは特別支援学校に通っていたのですが、周囲からの差別・偏見を感じることがありました。間近で見ていて、「兄が悪いことをしたわけではないのに、なんでこんな目に合わなければいけないのか」という想いがありました。

そういう弱い立場にいる方や生きづらさを抱えている人のために、少しでも何かをしたいという気持ちが積み重なって、将来は障がい者福祉に関わる仕事に就きたいと思うようになり、大学では福祉を専攻しました。

大学では、障がい者の入所施設で実習をさせていただく機会がありました。ある日、施設職員の方から「本当は施設ではなく、地域のグループホームなどで暮らしたい、暮らしてほしい利用者さんもいる。でも地域にグループホームをつくろうとすると近隣の住民の方から反対の声があがってしまって、なかなか思うように進まない」と伺いました。

障がいのある方がどんな方なのか知らないから差別偏見は生まれる、知ってもらいたくても知ろうと思ってもらえないといった問題があると知りました。その時に、障がい福祉の仕事をするなら、そこに問題意識をもっている企業で、問題意識をもった人と仕事をしたいと思ったんです。

しかし実は、第一志望はGPではありませんでした。第一志望の企業と並行して受けていたGPの面接が先にあり、練習のつもりで受けたんです(笑)。

最終選考が代表の進藤との面接でした。GPは「社会を変えたい」「社会問題を解決したい」という想いで事業を行っている会社です。そんな会社を経営している代表は、この先にどんな社会を思い描いているのか、どんな夢をもっているのか聞いてみたいと思い、面接でその疑問をぶつけました。

進藤からもらった回答はどれもおもしろそうで、自分が考えもしなかったものでした。この人の下で働いたら自分が見えていなかったことが見えておもしろそうだな、この人の下で働いてみたいなという気持ちが大きくなりました。進藤の人柄と、会社や世の中に対する想いに惹かれ、GPに入社を決めました。

物語の中心は、自分ではなく利用者。脇役として物語の支援をする

入社後は、うつ症状のある方専門の就労移行支援事業所「シゴトライ台東(現シゴトライ秋葉原)」に配属となりました。大学では福祉を学んでいたのですが、興味関心が知的障がいに向いていたため、精神障がいに関する知識は薄く、ほぼ一般の方と同じくらいでした。精神障がいの方と接することもほぼなかったので、すべてが新しい経験でした。

初めは「うつの方ってこんな方なんだ」「こんなことで困ってるんだ」など新しく知ることが多い反面、どう接していいかわかりませんでした。よくうつの方には「『頑張れ』と言ってはいけない」と聞くので「じゃあ何て言ったらいいんだろう」「何と言葉を返したらいいのか」と、一つひとつの声かけにとても悩みました。

また、利用者の方は全員私より年上、職歴がある方はお仕事もある程度経験されていて、人によっては10年や20年勤めあげている方もいました。キャリアある人生の先輩に対して、まだ社会もよく知らない新人ができることはなんなのかと悩み、考えていた1年目のことは、今でもよく覚えています。

そんな1、2年目の時に先輩社員に言われた「物語の中心を自分にしないこと」という言葉は、今でも支援をする中で大事にしています。

支援をする時に利用者さん本人の意思と支援員の「こうした方がいいだろう」という考えがぶつかることがよくあります。

支援員の立場で見ていると、「その道はたぶん失敗するだろうな」と思うこともあります。その時に「こうした方がいい」という自分の想いの主語は誰なのか、よく考えます。たとえばAとBという会社があり、Aの方が良いと思っているのは誰なのかです。

以前、支援をしている時に対応に困るケースがあったので先輩社員に相談したら「それは誰が困ってるの?」と聞かれました。その言葉でハッとしたのですが、困っているのは利用者さんではなくて、支援員の私だったんです、利用者さん本人はまったく困っていなくて(笑)。

主語が自分であれば、その方の人生の物語なのに本人を脇役にして、主人公を自分にしてしまっているということなんです。物語の中心を自分にしないこと、主語を自分にしないことを支援の中では常に意識するようにしています。

誰もが「自分らしく」いられる居場所づくり。頼れる施設長を目指して

▲「atGPジョブトレ横浜」事業所内

聴覚障がいのある方と発達障がいのある方専門の就労移行支援事業所「いそひと・リンクビー大手町」で初めて施設長を務めることになったのは、入社4年目でした。

私自身、人の上に立つのは向かない性格だと思っているので、施設長という立場への希望は出していませんでした。しかし、私が副施設長をしていたときの施設長が私のいい所も悪い所もしっかりと見てくれる方で、「杏奈さんならできる、一緒に頑張ってみよう」と言ってもらったので、施設長を引き受けることに決めました。

施設長になってすぐは、プレッシャーや不安がたくさんあり、毎日のようにその上司に電話をかけていましたね(笑)。

今まで支援員をやっていたときとの「視点の違い」にはとても苦労しました。

施設長として持たなければいけない視点を自分は持てているのか、その視点になったとき、新たに見える課題や解決しなければいけない問題が生じたら、どう対応していったらいいのかがわからず、よく上司に相談していました。

上司からもよく言われていたのが、「自分ひとりでなんとかしようと思わずに、周囲の力を借りること」でした。最初は「施設長」という肩書きにとらわれて「自分がなんとかしなければ、常にメンバーに頼られる存在でいなければ」とばかり思っていたんです。

でも勇気を出してメンバーに相談してみたら、皆さん協力的でした。しかも、私よりも社会人経験が豊富な方ばかりなのでとても頼りになるし、ひとりで悩んでいた時間がなんだったのかと思うくらい、物事がスムーズに進むようになりました。当たり前のことなんですが、より良い事業所は、メンバー全員でつくっていくものなのだなと改めて感じました。atGPジョブトレ横浜でも、メンバーの力を借りながら事業所運営を行っていきたいです。

GPの支援方針のひとつは「自分らしく」。卒業した後も、社会の中で自分らしく歩める力を身につけてもらうお手伝いができる事業所にしていきたいです。

カリキュラムには、「自己理解を深める」研修もあります。自分らしさを見つけるためにまず自分はどういう人間なのか、自分が何かを見つけることが必要だと思います。そこで利用者さんには、自身と向き合い、何か新しい発見をしてもらえたらうれしいです。

また、支援員も自分らしくいられたらいいなと思います。利用者さんに向かって「皆さん自分らしく生きましょうね」と言っている支援員がまったく自分らしくないのはどうなのかと思うので、自分らしさを出していける環境を整えていくのが施設長の仕事だと思っています。

施設長として、利用者さんやメンバーが悩んだときや迷ったときに「とりあえずあの人なら何でも言えるかな」と思ってもらえる存在になれるよう、今春の開所に向けて準備をしていきたいです。