ブランドサイトがリニューアル。よりわかりやすいGPブランドを目指して

▲「atGPジョブトレ」のトップイメージ

私は、障がいのある方の一般企業への就職をサポートする就労移行支援事業全体の運営を担う、atGP(アットジーピー)ジョブトレ部門の運営企画室で室長を務めています。

運営企画室が行なっていることは多岐に渡っているため、ひと言では言えないのですが、例えば利用者さんの募集の全体方針や戦略を作ることからコンテンツ作成まで、各事業所を横断して行うことをとりまとめています。利用者さんを直接支援するというよりは支援をする土台の部分を作る仕事になります。

2021年5月13日にatGPジョブトレがリニューアルしました。ブランドイメージの統一も運営企画室が主導して進めています。

ゼネラルパートナーズ(以下、GP)が運営する就労移行支援事業所では、秋葉原はうつ症状向けの「シゴトライ」、大手町には発達障がいの方を支援する「リンクビー」というように障がい・症状別に事業所を分けて、それぞれに名称がついていました。

そのため利用者さんには、「シゴトライ」「リンクビー」などそれぞれの事業所ごとの名称で認知されており、GPが運営していることが伝わりにくく、「atGP」という障がい者専門の就転職サービスと繋がっていることも見えづらいという課題がありました。

今回のリニューアルでは、GPのブランドとしてしっかり認知していただくために、各事業所の名称は「atGPジョブトレ」として統一し、「シゴトライ」「リンクビー」という名称をなくしました。

ただし障がい・症状別でのサポートができる強みは、これまで同様活かしていきたいので「うつ症状コース」「発達障がいコース」というようにわかりやすくしました。

これまであった障がい・症状別の事業所では、各事業所それぞれの方針で運営を行なってきました。たしかに、うつ症状の方の支援と発達障がいの方の支援には違いはありますが、支援するうえで大切にしたい根っこの部分は共通しています。

そのため、今回のブランド統合を期に、職員や運営側の共通認識として支援方針を言語化しました。

「ジョブトレは安心の場、ジョブトレは実験の場、ジョブトレは利用者が主体、ジョブトレはピアの力を信頼、ジョブトレは個別性を重視、ジョブトレは自己決定を尊重」というように、きちんと言語化できていなかったものを取りまとめて作成しました。事業所の皆さんと、共通認識をもって支援していきたいと思っています。

ジョブトレは就労移行支援のため、就職することが事業目的の一つではありますが、就職するためのスキルを身につけるだけではなく、これから先の人生を豊かに生きていけるように、一人ひとりの人生を見据えた支援をしていきたいです。私がこのようにやっていきたいと思ったのは、2014年に入社してから就労移行支援事業所の立ち上げにいくつも関わったことが大きく関係しています。

事業所立ち上げのプロセスの中で、多くの利用者さんの支援に携わりながら大事にすべきものが自分の中で明確になっていきました。

成功体験が自信に繋がる──私の考え方が変わるきっかけになった出来事

▲リンクビー大手町に勤務していた時(2014年ごろ)

私がGPに入社した2014年当時は、GPが運営する精神障がい者向けの就労移行支援事業所は関東に一つしかありませんでした。入社後、発達障がい者向けの事業所を立ち上げ、翌年には統合失調症の方向けの事業所を立ち上げるなど、事業所を一つ立ち上げたら次の事業所の準備をする、というように2014~2017年にかけては常に立ち上げに関わっていました。

私が初めて立ち上げにかかわった発達障がいの方専門の就労移行支援事業所「リンクビー大手町」(現atGPジョブトレ大手町)では、研修プログラムや運営の仕組みを作りながら、利用者支援を行っていたため非常に多忙でした。

あるとき、利用者のAさんに何か質問されてうまく説明できなかったときに、隣にいた利用者のBさんが「代わりに説明しておきます」と引き受けてくれたことがありました。

それまでは、職員が教えなければならない、支援をしなければならない、利用者さんは支援を受ける側で教えられる側だ、という固定観念がありました。当時の事業所では、職員と利用者さんは先生と生徒というような役割で、プログラムも講義形式のものしかなく一方的に講師が話し、利用者さんは聞いているという研修しかなかったんです。

しかし、利用者さん同士で教え合う・学び合うことが、利用者さんにとって成功体験になり自信に繋がること、そして私たち支援者側にも気づきがたくさんあるということが分かりました。それを知ったときに、利用者さん同士でやってもらうほうが良い支援になると気がつきました。

私たちが支援している方たちの中に精神障がいの方がいますが、一見障がい者には見えません。しかし、その方に深く話を聞いてみると非常に生きづらさを感じているんです。

その生きづらさとは何かと考えた時に、「これができない」という類のものもありますが、根本には「自分のことを大事にできていない」「自分とうまく付き合えていない」という感覚があるケースが多いことに気づきました。

また客観的な評価と自己評価のズレがとても大きいなど、自分自身に満足できていない方が多いなと感じました。まずはそこを解決しなければ、いくらスキルを身につけるような支援をしても幸せに生きることに繋がっていかないないと思います。苦手さをサポートするだけでは解決しないんです。

ご本人が自分自身と向き合うことが非常に大事で、自分が人の役に立っているという感覚を感じながら自分自身に向けるまなざしを変えていくことで、この人たちは幸せに生きていくことができるのではないかと思いました。

そう考えると、就労移行支援事業所は「教える、支援する」というサービスではないと感じました。ご本人が自分に向き合い、「人の役に立っている、何かやってみようと思う、やってみてできた!」という成功体験や、失敗したとしても課題を発見し「ここが良くなかったから再度チャレンジしてみよう!」という体験をする場であることが非常に大事なのです。

それに気づいてから、利用者さんが「体験」をする場をつくっていくことにフォーカスしていきました。「これについて教えなければならない」「利用者さんはこれを知らない/できないからだめだ」ではなく、利用者さんが自分で知っていくプロセスを重視しました。

プログラム内容もそれまでとがらりと変わりました。何かお題を渡して、「このテーマについて話し合いましょう」「みんなで解決してください」というように研修内容を変えていきました。

現在はコロナの影響で一部在宅も取り入れながら運営をしているのですが、利用者さんたちは「事業所に行ってみんなに会いたい」「この場がとても好きだ」と言ってくれます。

また、就職後もホームのように思ってくれている方も多く、卒業したあとも事業所に来てくれたり、仕事帰りに立ち寄ってくれるなど、居場所になっています。

このようにプログラム内容が変化したり、支援方針が生まれたのは、利用者さんから多くのことを学んだからだと思っています。

失敗にこそ価値がある。実践形式で学ぶことの大切さ

私たちatGPジョブトレのサービス内容を、まだ利用いただいたことがない方たちにうまく伝えられていなかったというこれまでの反省があります。利用者さんから「サイトで受けた印象よりも実際に体験した内容のほうが良かった」「うまく伝えられてませんよ」とフィードバックをいただくことがありました。

今回のリニューアルにあたって、就職に向けてのスキルを身につけて準備をする場所ではなく、「みんなで話し合いながら人生を考えていく場」という中身をきちんと伝えることを意識しました。

また、atGPジョブトレではより実践的なトレーニングとして、事業所を実際のオフィスに見立てて事務職の模擬職場トレーニングを行なっています。「パソコンのスキルを身につける」だけではなく、実際の職場のどういう場面で、「報・連・相」をどの場面で誰に対してどのように行ったらよいのかを実践形式で学ぶようにしています。

というのも、障がいのある方が就職してつまずくのは、スキルの部分よりも、職場でのコミュニケーションの中で「これは質問して良いのか」と悩み、質問しなかったためミスにつながってしまうようなコミュニケーションの部分だからです。

模擬職場トレーニングでは、「上司役」の職員に対して、様々な場面におけるコミュニケーションのトレーニングをします。
例えば、「上司役」に相談しないと自分の仕事が進まないときに、「上司役」が他の人と話しているシチュエーションで、どう振る舞うべきか。なかにはそういったときに割り込んでしまう人もいるのですが、その際には「上司役」から「今、●●さんとお話していますよね。よほどの緊急性がある場合でないと、今のように割り込んで話をすると、不躾な人だと思われてしまいますよ」とフィードバックします。

実際の職場で起こりうることを先に失敗体験として学んでもらうのです。ここでは、模擬体験の場なので失敗しても全く問題ありません。「失敗から学ぶ」は事業所でよく使われるキーワードです。実践形式で学び、プロセスとして体験して自信をつけてもらうということが大事なんです。

これまでは、こういったトレーニング内容が伝わっていなかったようなので、情報をきちんと伝えていきたいと考え、その想いも今回のリニューアルの中に盛り込んでいます。事業所ごとに全て異なっていたドメインも一つに集約し、ビジュアルも見やすく整えました。

サイト内のイラストの一部は、Web制作のスキルを学べる就労移行支援事業所「atGPジョブトレIT・Web」の利用者さんが制作しています。支援を必要とする方たちに対して具体的なイメージが伝わるように工夫しました。

「障がい者雇用」という仕組みをなくしたい。誰もが活躍できる社会へ

私は、これまで事業所を立ち上げていく中で、「体験を通し自ら学ぶ」ということをテーマにしてきました。

利用者さんに何か知識を教えるのではなく、お題を出して「みんなで調べてみんなで発表しましょう」という場所をつくるほうが学びになると思ったからです。

また支援者との関係性、つまり教える・教えられる、支援を与える人・受ける人ではなく利用者さんが主体的に行なっていくのを横で伴走しながらサポートする立ち位置が良いと思いました。

そして、これは、支援員を含めて事業所の運営に携わる職員のマインドが非常に大事で、現在でも課題です。支援に対して熱心な方であればあるほど、利用者さんに対して「何かをしてあげなくてはならない」「助けなくてはならない」と思っています。

もちろん助ける場面も必要ですがそればかりにならず、利用者さんが自分で乗り越えられるようにサポートすることを大事にしていけるように、今まで以上に職員の研修にも力を入れています。

4月に「atGPジョブトレ横浜」、5月には「atGPジョブトレIT・Web大宮」がオープンするなど事業所が増え、それに伴って職員数も増加しています。職員が増えることで様々な変化が起きていますが、それを良い方向にしていくためにも支援方針についての共通認識を持てるきちんとした土台づくりが必要です。

支援方針を職員に共有すると、みんな「そうだね、その通りだね」と思ってくれているものの、実際の支援の場面では支援方針と逆行することも発生します。

例えば、支援方針の中にある「安心・安全の場」と「実験の場」の両立が難しい場面があります。実験の場では失敗もOKで、色々と試せる場を作ることが大事ですが、グループワーク中に、AさんがBさんを傷つけるような言動をした場合、「実験の場」としてAさんにとって不適切な言葉を学ぶことに意味はありますが、一方でBさんの「安心・安全の場」を損なうことになります。

こういったことは日常的に発生するので、一人一人の利用者さんの支援を考えながらも、全体としての場をどうデザインするかという視点が必要になります。

支援は、正解がないことですし、ケースごとに「正解」と言われることも異なります。そこが面白い部分でもありますが、非常に大変な部分でもあります。そういったジレンマを様々な事例を通じて言語化し、職員同士でディスカッションしていきたいです。

また職員も自身の価値観と向き合うことも必要です。支援をして「あげたい」というのはその人の価値観から出てくるものですし、それ自体は決して悪い事ではありません。しかし、本来目指している支援方針とは逆行していないか、自分の中で確認しながら行ってほしいと思っています。これは私自身も気を付けていることです。

私にとって働くということは大事なことですし、働くことは人を豊かにすることだと思っています。障がいのある方にも働く機会をつくりたいですし、どんな人でも社会に貢献できる部分があると思うので、社会の中で活かせるよう支援していきたいです。

全てが整っていないと働けないということではなく、それぞれの人の強みを社会で上手に活かせるようになれば全ての人が社会の中でいきいきと生きていけると思います。

最終的には「障がい者雇用」という仕組みをなくしたい──

そういった仕組みがなくても、みんなで認め合える、できないところをフォーカスするのではなく、できないところはみんなでサポートしあう、それぞれの人の強みをしっかり引き出して誰もが活躍できる場がつくられている、そうして社会全体が良くなる方向へ動くと良いなと思っています。