障がい者雇用の義務がない企業がなぜ?NTSとの出会い

▲左:藤 大介、真ん中:谷野 英継社長、右:田中 知実さん

株式会社NTSは、2017年9月に設立した従業員数18名の会社。2019年のWEB制作チーム立ち上げを機にリモートをメインとした業務を開始しました。週一回シェアオフィスで集まるという形をとっていましたが、コロナ禍における2020年9月現在は完全リモートとなっています。

2019年12月、「atGPジョブトレIT・Web渋谷」が主催し、初めての開催となった「クリエイターズスクランブル」。Web系人材の採用に役立つ情報の提供と利用者さんと企業様のマッチングを行うこのイベントにNTSの田中さんが参加しました。

谷野 「田中がデジタルハリウッド(以下、デジハリ)の卒業だったので、その関係でマッチングイベントを知りました。障がい者雇用について知るために参加してみようかなと思って、まずは田中に参加してもらい、そこで初めてジョブトレ渋谷との接点ができたんですよね」

藤 「atGPジョブトレIT・Web渋谷ではデジハリさんと提携し、教材を使用していて。法人担当の方がお客様にメルマガとかでクリエイターズスクランブルの情報を配信してくれているんです。それを見た田中さんに参加いただきました。そこで、『一度、社長さんを連れてきてくれませんか?』と私のほうから提案させていただいて、2度目のクリエイターズスクランブルでは谷野さんにも来ていただいて」

参加者である当の田中さんは、当時のことをこう語ります。

田中 「初めて参加したときは見学会と聞いていたので、どちらかというと普段の様子をこちら側が見るのかと思っていたんです。しかし参加している企業のみなさんは会社の説明をされていたので、そこでそうなのか……と(笑)。ただ、ジョブトレの利用者さんとはデジハリで勉強したという共通点があるので、デジハリの先輩みたいな感じで近い距離間で話ができました。

参加した感想として、ジョブトレのスタッフと利用者さんの距離が近くてアットホームだったことを感じましたね。そしてすごく熱心に勉強されていることも感じたんです。帰ってから社長にそのまま伝えました」

クリエイターズスクランブルには幅広い業種の企業が参加していましたが、従業員が10数名で障がい者雇用の義務のない企業で参加していたのはNTSだけでした。

藤「参加いただいた企業様に対して担当を割り振っていたときも、10数名の従業員で雇用義務のない企業さんがなんでそもそも参加してくれたんだろうって疑問だったんです(笑)。当時のメンバーでは、わたしが障がい者雇用の分野での経験が長かったので、NTSさんを担当させていただくことになりました」

NTSと藤の関係性はここからスタートしました。

慎重に、だけどまずは「やってみる」──インターン採用という決断

第1回目のクリエイターズスクランブルを経て、谷野社長は“感触”を感じたと言います。

谷野 「弊社はそのとき社員が10人ちょっとくらいで障がい者雇用の義務がない状況でした。でも、将来的なことも考えて知っていたほうがいいかなと思って軽い気持ちで田中に参加してもらって。それにもかかわらず、『反応がよかった』と報告を受けたんです。弊社の自由度の高い働き方がマッチしたみたいで。じゃあ、より深く接してみたいねっていうことで次はふたりで説明にうかがうことを決めました」

藤 「障がい者雇用といえば一般事務というイメージが強いと思います。そんな中で、クリエイター系のスキルを持った方がいるというのを企業の方に知ってもらって、求人を増やしていきたいという想いがありました。それがしっかり伝わっていたのはよかったです」

田中さんから利用者さんの様子や技術面を聞き、「atGPジョブトレIT・Web 渋谷」に興味を持った谷野社長ですが、イベントに参加した時点では障がい者雇用をすることまでは、まだ考えていなかったと言います。

谷野 「障がいのことを知らないのに最初の印象だけで雇っても責任を取れないなと思っていたので、イベントに参加した当初はまだ具体的には考えていなかったですね。まずは、施設全体とどんなふうに運営されているのか、今後を含めてどのような雰囲気なのかを確認したかったんです」

そのような中でNTSはAさんというジョブトレ渋谷の利用者さんに出会います。

藤 「初めて田中さんが参加してくれたイベントの後に『印象に残った人はいますか?』と確認したらAさんの名前が出たんですよね。イラストを描けるところがいいと言っていただけて。NTSさんは、リモートでお仕事をされていることもあり、もしかしたらAさんがマッチしているのではと勝手に盛り上がってました(笑)。それで社長が初めてお越しになられたとき、『Aさんに会ってみますか?』とご提案させていただいたんですよね」 

実際に両者が会ってみて、その予感は確信に変わりました。

谷野 「弊社に興味があるという熱意が感じられました。ポートフォリオを見て、そこでAさんの人となりを知って、今後について前向きに考え始めました。でも、その時点でもまだ雇用は考えていませんでした。実際に仕事をする中でどういう問題が出てくるのかもわかりませんでしたし、会社としても準備が整っていなかったので慎重を期したいな、と」

そしてNTSとの出会いから2カ月、藤の提案からNTSが初めてのインターンシップの実施を決めました。

田中 「ジョブトレさんからインターンとか1週間だけの体験機会をつくるのはどうかと聞かれて。ちょうど社内でもインターン制度の設計を行っていたので、ベストなタイミングでした。そこでAさんにもインターンのご提案させていただきました」

先駆けて導入していた働き方があったからこそ実現できたインターン

▲ジョブトレ渋谷に在籍時のAさんの作品

藤 「インターンが始まるときに、配慮事項をAさんに説明してもらいました。一番大事な配慮事項は、聴覚情報より視覚情報のほうがいいとか、ビデオ会議があればその内容を録音させてもらえるかとか、あとで確認が取れるようにメモを取れるということでした。

しかしもともとNTSさんはフルリモートなので普段からチャットでコミュニケーションを取っていたり、ビデオ会議も実施されていたり、すでに彼女の配慮事項はすべてクリアされていたんですよね。なので比較的スムーズにインターンを始めることができるかなと思いました」

Aさんのインターンシップが決まり、4月に実施予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大という日本を震撼させる出来事が起こってしまいました。

谷野 「いざ、実施しようと決めたものの、コロナがあってインターンの実施も後ろ倒しにせざるを得ない状況で。ただ、取りやめにするという選択肢はありませんでした。『このままではらちがあかないし、そもそもうちはフルリモートだから来てもらう必要もないし、まずはやってから考えよう』ということでインターンの開始を決心しました」

コロナ禍の中で、NTS初のインターンシップが開始しました。

田中 「インターンの5日間は、私がサポートに入りました。私もインターンが始まる前に何度かお会いしていて人柄はわかっていたつもりだったので、その辺は心配していなかったんです。

でも、コミュニケーション部分に不安がありました。初めての職場だし、視覚のほうがやりやすいというのを聞いていたので、自分がうまく伝えられるかの不安があったんです。実際はslackなども使いつつ、できるだけわかりやすい伝え方を意識することで、コミュニケーションは問題なくできました。作業も滞りなくされていたので、不安はきれいに解消されました」

藤 「分からないことや忘れてしまったことも、slackを確認すると残っているので助かったという感想を本人からも聞いています」 

谷野 「実際に一緒に働いてみて好感触だったので、障がい者雇用についてハローワークに聞きに行って『よし、できるかな』と。あらためて面接をWebで行い、Aさんの採用を決めました」

Aさんが入社して、約2カ月が経過しますが、会社に大きく貢献してくれていると田中さんは語ります。

田中 「作業もスムーズにやってくれるし、新しい作業も対応できるようになって今までとは違った角度の視点での意見を逆にくれたりもするので、私たちにもいい刺激になってます。また、『イラストが上手だからロゴや社内のここにイラストとかいてもらいたいね』という役割分担も自然にできるようになっています」

「知らない」を「知る」に変える。GPが目指す障がい者雇用の在り方

コロナ禍でもフルリモートという独自の働き方で難なくインターンを実施し、採用を決めたNTS。今後はどのように採用活動は続けていくのでしょうか。

谷野 「状況が状況なので、採用に関しては慎重に考えていきたいと思います。今はまだ無理をするべきでないかなと。ただ、コロナ前からテレワークは進んでいくと予想していたのでリモートでの働き方は想定内ではありました。むしろ大手がどんどんテレワークに切り替えていってるので、運よくスライドできたかなと思います。今後は、地方など遠方の方の採用も積極的にできたらいいなと考えています」

コロナ禍でもインターン制度を導入したNTS。その成功の裏には「まずやってみよう」の精神がありました。

谷野 「何事もやってみないと始まらないですよね。受け入れてから考えようという判断をしました。でもチャレンジをするならそこに責任が発生することも忘れてはいけないと思っています。だから何かあったときは対処できるようにきちんと準備はします。そういった新しい取り組みから新しい何かが見えて、そこからまたみんな努力するだろうし、また新しい道が見れるんだろうなって考えています。

そういった意味では、藤さんは就職までのサポートのみならず、定着支援まで気を回してくださったのがありがたかったです。週に1回、Aさんからのヒアリング結果を伝えていただけたので大変助かりました。Aさんからは、こちらとは違う視点の意見があったり、色々なことを気にしながら努力しているというのが明確に見えましたから。その上でアプローチの方法を策定できたので確実にうまく関係性がつくれたんだと思います」

藤「Aさんは細かいことに悩みながら働いていらっしゃるので、それを理解いただける会社と出会えたことは我々としても嬉しいです。あと、月に2回社長が面談をしてくださっていることを『まるでジョブトレの職員さんみたいだね』って笑いながら話してくれました」

ゼネラルパートナーズの社長の進藤 均は普段から差別偏見は「知らない」に起因すると話しています。藤は、クリエイターズスクランブルの開催が、その「知らない」を解消する手段として大きな効果があるのだと確信しているのです。

藤 「今回のNTSさんの採用例も、直接話す機会を得ることで双方の『知らない』が解消されたのだと思います。コロナ禍においてもオンラインツールを活用して出会いの場をつくっていきたいですね。障がいを持っている方と企業の方の接点をつくることが、「知らない」を「知る」に変えていく大きな力をもつものだと信じています」

「知らない」が故の差別偏見をなくし、よりよい選択ができる社会を描くために──ゼネラルパートナーズはこれからも活動を続けていきます。