「普通じゃない」といわれる人が抱える問題をビジネスで解決したい

▲子どものころ、母親と。働いていて家にいないことも多かったが、「かっこいい」と感じていた

株式会社エスママは、「シングルマザーが抱える問題をビジネスで解決したい」という想いのもと、シングルマザー向けの情報発信や就労支援を行っています。

2019年4月にGPの子会社として設立しましたが、もともとは私がGPでキャリアアドバイザー(現キャリアプランナー)を務めていたころに、社内新規事業起案制度にエントリーし、事業化したことが出発点です。起案から約2年半、GPのソーシャルビジネスデザイン本部(SBD)の伴走のもと、日々奮闘しています。

GPでは障がい者の就労、エスママではシングルマザーの抱えるさまざまな問題に、「ビジネスで解決する」魅力を感じ携わってきました。そして、そんなソーシャルビジネスへの想いは、子どものころから培われていたように思います。

私の母は重度視覚障がい者かつシングルマザー、姉には知的障がいがあり、 幼いころから“マイノリティ”は私にとって「普通」でした。でも、小、中学校と環境が変わるにつれ、「普通じゃない」と感じさせられる機会が増えて。同時に、「普通じゃない」といわれる人は生きづらさを感じる機会も多いのでは、と考えるようになったんです。

そして、「クリエイティブな力を使って障がい者の抱える問題を解決したい」と、デザイン系の大学に進学しました。障がいのある人も使いやすいプロダクトデザインを学び、就職活動時もデザイン系か広告業界を志望します。

しかし、ある日それまでの志望とは違う人材業界の会社説明会に偶然行ったら、社長の話がおもしろくて。ビビッときた私はその会社への就職を決めます。新卒1年目は求人メディアの営業として経験を積みました。

GPと出会ったのは新卒1年目のころ、代表の進藤 均のインタビュー記事がきっかけです。「障がい者支援に携わりたいけど、あくまでビジネスとして力になりたい」と考えていた私に、進藤の考えていることやGPの事業内容がビビッときました。そして、いてもたってもいられずに進藤に手紙を書いたんです。

今思えば、目的も何を言いたいのかもよくわからない手紙でした。でもそのような等身大の内容だったからこそ、進藤には新鮮に感じられたのかもしれません。「よければ一度お話ししてみませんか」と実際に会うことになりました。話しているうちに「うちに入社したら?」と。私も進藤やGPに対して「信頼できそう、一緒に働いたらおもしろそうだな」と、迷いはありませんでした。

誰もが持つ「働きたい」という希望。かなえるために奮闘する中訪れた変化

▲2018年4月、全社MVPにノミネートされたときには進藤と関西支社のメンバーがお祝いしてくれた

GP転職後、障がいがある方のキャリアカウンセリングを行う業務に初めて就きました。周りの人は親身に業務を教えてくれて、いい人すぎる社員ばかりでしたね(笑)。

当時は、今と比べて障がいに対する認知は進んでいない時代。企業の障がい者雇用意識も低く、応募書類さえ見てもらえないことも少なくありませんでした。それでも「働きたい」感覚は、障がいの有無に関係なくみんな持っているんですよね。どうしたら希望をかなえられるだろう?と毎日精一杯過ごしました。

難しい局面が多かったからこそ、候補者さんに内定をお伝えするときの幸せは大きかったです。声をあげて喜ぶ方、思わず泣き出してしまう方……そういう反応に触れる度、「この仕事をやっていて良かった」と思いました。

そして、4年ほどキャリアを積んだ私に、大きな転機が訪れます。それが、出産と離婚、そして東京から京都への引っ越しでした。ひとりでの子育て、人や文化も違う地域、そのようなプライベートの変化に加えて、GPも第2創業期を迎える準備を進めていて。本当に私の周りの環境がガラッと変わったんです。

実は、離婚後に一度退職を決めていました。ところが、進藤が京都までわざわざ会いに来て、こう言ってくれたんです。

「竹田さんはGPにとって必要な存在なんだよ」 

何事もネガティブに考えがちになっていた当時の私にとって、その言葉は本当に嬉しかった。そうしてGPの関西支社で再スタートすることを決めました。

首都圏と関西では市場や求人の傾向や候補者さんの感覚も違う。そのような感覚の違いに加え、子育てをしながら往復3時間の通勤をする日々。どんなに仕事を続けたくても、17時には会社を出て子どもを迎えに行かないといけません。候補者さんが活動しやすい時間帯にまったく仕事ができず、大変苦しみました。

つまり、さまざまな制限がある中で、今までとは違う業務の組み立て方が必要になったんです。そして私は、当たり前かもしれませんが仕事の緊急度と優先度を掛け合わせ、業務の優先事項を決めること。そして何より制限があるからこそ、誰にも負けないスピード感で候補者さんに対応することを意識しました。

すると「対応できる時間が限られていても、これだけ素早く対応してもらえるなら安心だな」と信頼してもらえるんですよね。次第に安定して就職決定を生み出せるようになっていきました。

自分自身が初めて感じた “生きづらさ” が、社会問題解決の入口だった

▲我が子が20歳を迎える日、「今が一番しあわせ」だと思いたい。その想いが竹田を支える

GPには新規事業を提案できる制度があり、社員誰もが事業アイデアをエントリーできます。第2創業期がスタートし、これまでと違ったタイプの人も入社してきたころ、その人たちの活動を目にしたり、一緒に話したりするたびに、「生き生きしているな」と感じていました。一方で、どこか「うらやましい」と感じている自分もいました。

そんな私が大きく影響を受けたのは、2017年10月の全社キックオフです。新規事業を提案した新卒1年目と新卒2年目の社員が審査を通過し、それぞれプレゼンしていました。その様子を見て「楽しそうだな」と思ったのですが、「思っている側でいいのか?」と。私も楽しむ側で、何かやりたい。さっそく私は、帰り道に起案内容を練り始めました。

当時世の中に課題が見えていて、自分自身も当事者だった社会問題は、シングルマザーの生きづらさ。私自身、保育園でママ友に「シングルマザーなんです」と話すと、一瞬で空気が凍り「何かごめんなさい」と言われることがありました。

母子家庭だからという理由で、周りに「生活が大変だろう」「パートナーがいた方が本当は良い」などと勝手に判断される、子どもも「シングルマザーの子」と見られて生きづらさを感じるかもしれない――きっと家庭環境や就労に困難を抱えるシングルマザーは、私よりも状況が深刻なはず。自分の手で変えたいと思いました。

まず最初にシングルマザーの現状を知るため、シングルマザーの交流イベントや、親ひとり子ひとりでの余暇活動の寂しさを解決するようなサービスを起案。そして新規事業案のエントリー後、最終審査を飛ばして事業の検証フェーズに入ることが決まりました。

審査を担当する経営層をはじめ応援してくれる人が社内に多く、とても心強かったですね。しかしGPの事業とはまったく異なるフィールドでの起業。誰に相談したらいいかもわからない状況でした。

そんな中でも同じ境遇の人たちの声から、足がかりを見いだせました。当事者の交流イベントを開催すると、オフラインの場に足を運べるのはある程度余裕のある人だと気づきました。ひとりきりの子育てでとくに時間のないシングルマザーが十分な収入を得るには、通勤時間も惜しいほど。余暇活動や交流も大事ですが、その前段階の就労面で困っている人も多かったんです。

そして、オンラインコミュニティの運営と、副業支援(在宅型のライティング業務受託)を2本柱に、2019年4月に会社を設立。同時にオウンドメディア「エスママwith」をリリースしました。

おもしろいビジネスの実現で、シングルマザーのイメージを変えていく

▲エスママの「S(エス)」は「Single(シングル)」だけでなく、「Smile(笑顔)」「Success(成功)」などの意味も込めて名付けた

会社を設立して1年がたちました。しかし、まだまだ道半ばの段階。社会問題解決とビジネスとしての成功を両立させていくことは難しいです。それでも「ソーシャルビジネスとして発展させていきたい」と思えるのは、自分自身が「楽しい」と思うことに取り組んでいるからかもしれません。

子どものころ、「働いているお母さんはかっこいい」と感じていました。それは、働くことを通して生きがいや他者に貢献できる喜びを得て、自信や自己肯定感が生まれる様を母親に見たからだと思います。それがさらにモチベーションになって、キャリアや人生をもっと楽しく、明るくさせる。だから私はキャリアに関するビジネスに携わることが好きで、これからももっと取り組んでいきたいと考えています。

もうひとつ、モチベーションの源泉になるのは、やはり実際に接するシングルマザーの皆さんの変化です。ライティング業務を企業から受託し、在宅でできる仕事としてシングルマザーの副業に切り出しているのですが、多い方では月額8万円、年間で約100万円を本業とは別に稼いでいます。

その方はお子さんの大学進学のために収入を増やしたいと考えていたものの、正社員の本業と子育てに加えて副業となると難しい部分も多く、それまでの副業では月に2-3万円の稼ぎが限度。でもエスママに出会って、自分のライフスタイルにあわせて働き、収入アップを実現しました。

これはエスママの副業支援の特徴として、ノルマがなく自分で決めた目標に対して働くこと、そして編集者がいるため記事のクオリティを担保しやすく、一業務の単価を高く受注できることが大きいと思います。とくに「目標や勤務時間を自分で決める」ことに関しては、こだわりを持って決めています。

私自身もシングルマザーになってから時間の制限には悩まされてきたので、とにかく忙しいシングルマザーのライフスタイルに柔軟に合わせられる仕事にしたい。そしてシングルマザーと一口に言っても、「子どもを大学に行かせてあげるために」や「将来起業するための資金に」など人それぞれ目標地点が異なるため、自分で決めて達成することの喜びを、働く上でのモチベーションにしてもらえたらと考えています。

今後は「シングルマザー✕在宅といえばエスママ」と当事者に認知してもらえるよう、より就労支援に力を入れていきます。とにかく時間のないシングルマザーがすきま時間にも仕事できるよう、在宅という働き方をエスママの特徴として極めていきたいですね。シングルマザーが家で働けるようになれば、少々の環境変化があったとしても収入面での大きな不安を感じることはなくなります。

シングルマザーにとっての収入は生きることに直結するといっても過言ではないので、その不安要素を取り除きたい。業務内容もこれまでのライティングに加え、企業求人のメディア掲載を行い、求人紹介をしていきます。現段階では求人掲載を無料にしているので、ぜひこの機会に企業には求人を掲載いただきたいです。

ただ、社会にはエスママを「シングルマザーのサービス」と認識されなくていいのかも、と思っています。「おもしろいビジネスをやっている会社とふたを開けたら、シングルマザーの集まりだった」というように。

そのために、たとえばライティング業務ひとつをとっても、クオリティを高めるスキルアップを行ったり、専門性の高い記事に特化したり、編集者だけでなくデザイナーの監修も入れてコンテンツの種類を増やしたりと、より高単価で受注できるようなビジネスアップデートを考えています。

まだまだ世の中では「シングルマザー」にネガティブなイメージが付いているのも確か。でも子どもをひとりで守ると決めて離婚するのは、実はすごい決断をしているんじゃないかと思うのです。「私シングルマザーなんだ」と言ったら、「何かごめんね」ではなく「すごいね!」と言ってもらえるような社会であってほしい。これからもビジネスとして、社会を変えることに挑戦し続けていきます。